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第10章〜どらドラ!〜③

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そのような周囲の喧騒のなか、演奏が終わり、竜司やコーラス部の面々が搭乗しているフロートが中庭のステージと接触するのを確認すると、天竹葵は、すぐに紅野アザミのもとへ行こうと、足を踏み出した。
 しかし、再び、彼女のそばに姿を現していたマスク姿の女生徒が、うずくまるように、その場にしゃがみこむ。

「あっ!」

 声をあげた葵は、すぐに下級生らしき女子生徒に寄り添い、声を掛ける。

「あなた、大丈夫!?」

 コクコクとうなずきながらも、苦しそうな表情の彼女に額に手を当ててから、

「誰か保健室に!」

と、声を上げると、二人のようすが目に入ったのだろうか、

「葵、大丈夫!?」

そう言って、すぐに友人のアザミが駆け寄ってきた。

「この子が急にしゃがみこんで……顔色も良くないし、すぐに保健室に行かないと……」

 葵が友人に返答すると、アザミもうなずき、「うん、一緒に連れて行こう」と同意する。

「すみません……ご迷惑をおかけして……自分で歩けますので……」

 健気に語る彼女を、葵とアザミの二人は、両脇から支えながら中庭のステージを離れ、校舎内の保健室を目指す。
 通常授業の行われないこの日も、大勢の生徒や見学者が学内に来校するということで、保健室は開放され、養護教諭も待機している。

「陽射しが強かったからね……保健室で休ませてもらおう」

 アザミが優しく声をかけると、下級生らしき女子は、

「ありがとうございます。紅野センパイって、優しいんですね」

と、まだ名前を名乗っていない上級生の名を呼び、安堵したように校舎へと歩き始めた。



 一方、中庭のステージは、到着した竜司たちパレード隊を迎え、再びボルテージが上昇しつつあった。
 舞台上には、マーチングバンドを先導した吹奏楽部の寿副部長が駆け上がり、広報部の花金部長からマイクを受け取って、

「私たちのパレード、いかがでしたか〜?」

と、ステージ前の観衆に問いかけている。

「「「最高で〜す!」」」

 まるで、かつての自己啓発セミナーや新興宗教の会合のように、観客からは一致団結したレスポンスが返ってきた。
 そのようすを白草四葉とともに、満足気に眺めていた花金鳳花は、隣に立つ寿美奈子の手元に顔を寄せ、吹奏楽部副部長の持つマイクを通して、

「みなさん、ありがとうございます。それでは、この後のステージ企画もお楽しみください」

と、アナウンスを行い、一歩下がって、丁寧にお辞儀をする。
 彼女たちの声は、スピーカーを通して、全校に響いている。
 そして、紅野アザミと天竹葵が、マスクをした下級生とともに移動した先の保健室にも、上級生の澄んだ声が届いていた。

「さてさて、ココからは、どんなステージが待っているのか!? 実は、私たちにも知らされていないんだよね〜」

 マイクを手にした美奈子が再び語ると、ステージ前の群衆から、

「「「お、おぉ〜〜〜〜!!」」

と、声が上がった。

「――――――と、言っている間に主役の準備ができたようです!」

 すっかり、司会役になりきっている吹奏楽部副部長は、アナウンスを続けながら、

(鳳花、このあとは、黒田くんにおまかせ、ってことで良いんだよね?)

と、小声で広報部部長に確認する。

(さあ〜、私も詳しくは聞かされてないから〜。あとは、彼らに責任を取ってもらいましょ)

 ここから先の展開は自分の手を離れている、という開き直りなのか、責任を放棄しているとも取られかねない鳳花の返答に苦笑しながら、美奈子は、本日のメイン・イベンターの呼び込みを行った。

「さぁ、それでは、パレードで素晴らしいボーカルを披露してくれた黒田竜司くん!ステージにどうぞ!」

 上級生のアナウンスにうながされ、移動式のフロートからステージに移動した竜司は、深呼吸をしてから、ゆっくりと舞台の中央に移動した。
 四葉のステージのライブ中継用カメラは舞台上の映像を引き続き配信していて、中央の竜司に視線を送る彼女の姿を捉えている。


====================

このあと、何が起こるの?

この男の子って、竜馬
ちゃんねるのヒト?

あの人がドッキリの主役?

ヨツバチャン、何か話すて!

====================

《ミンスタライブ》のコメント欄は、白草四葉のフォロワーの熱心な書き込みが続いている。
 ライブ会場である中庭ステージとWEB画面の向こう側の双方が緊張に包まれる中、ステージ前のカメラを担当する広報部の荒木部員からマイクを受け取った竜司は、舞台の中央で中庭全体を見渡し、深呼吸をひとつしたあと、語り始めた。

 その瞬間、WEB中継用と録画用のカメラは、マイクを持つステージ中央の男子をとらえる。

「ステージ前の皆さん、そして、ネット中継を見てくれている皆さん、ご声援ありがとう!
 あらためて聞くけど、ライブとパレードは楽しんでくれたか〜!?」

「「「おお〜〜〜〜!」」」

というステージ前の歓声とともに、

==========

楽しかった〜〜〜〜!

四葉チャン、マジ神だった!

先輩のバイオリンも神!!
パレードもっと見たかった!

四葉チャンの歌も
センパイの演奏も
みんなのパレードも
どれも最高だったべ〜!!

==========

 コメント欄にも、書き込みがあふれる。
 ステージ前の観衆の反応に、

「ありがとう!」

と、うなずいた竜司は言葉を続けた。


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そのような周囲の喧騒のなか、演奏が終わり、竜司やコーラス部の面々が搭乗しているフロートが中庭のステージと接触するのを確認すると、天竹葵は、すぐに紅野アザミのもとへ行こうと、足を踏み出した。
 しかし、再び、彼女のそばに姿を現していたマスク姿の女生徒が、うずくまるように、その場にしゃがみこむ。
「あっ!」
 声をあげた葵は、すぐに下級生らしき女子生徒に寄り添い、声を掛ける。
「あなた、大丈夫!?」
 コクコクとうなずきながらも、苦しそうな表情の彼女に額に手を当ててから、
「誰か保健室に!」
と、声を上げると、二人のようすが目に入ったのだろうか、
「葵、大丈夫!?」
そう言って、すぐに友人のアザミが駆け寄ってきた。
「この子が急にしゃがみこんで……顔色も良くないし、すぐに保健室に行かないと……」
 葵が友人に返答すると、アザミもうなずき、「うん、一緒に連れて行こう」と同意する。
「すみません……ご迷惑をおかけして……自分で歩けますので……」
 健気に語る彼女を、葵とアザミの二人は、両脇から支えながら中庭のステージを離れ、校舎内の保健室を目指す。
 通常授業の行われないこの日も、大勢の生徒や見学者が学内に来校するということで、保健室は開放され、養護教諭も待機している。
「陽射しが強かったからね……保健室で休ませてもらおう」
 アザミが優しく声をかけると、下級生らしき女子は、
「ありがとうございます。紅野センパイって、優しいんですね」
と、まだ名前を名乗っていない上級生の名を呼び、安堵したように校舎へと歩き始めた。
 一方、中庭のステージは、到着した竜司たちパレード隊を迎え、再びボルテージが上昇しつつあった。
 舞台上には、マーチングバンドを先導した吹奏楽部の寿副部長が駆け上がり、広報部の花金部長からマイクを受け取って、
「私たちのパレード、いかがでしたか〜?」
と、ステージ前の観衆に問いかけている。
「「「最高で〜す!」」」
 まるで、かつての自己啓発セミナーや新興宗教の会合のように、観客からは一致団結したレスポンスが返ってきた。
 そのようすを白草四葉とともに、満足気に眺めていた花金鳳花は、隣に立つ寿美奈子の手元に顔を寄せ、吹奏楽部副部長の持つマイクを通して、
「みなさん、ありがとうございます。それでは、この後のステージ企画もお楽しみください」
と、アナウンスを行い、一歩下がって、丁寧にお辞儀をする。
 彼女たちの声は、スピーカーを通して、全校に響いている。
 そして、紅野アザミと天竹葵が、マスクをした下級生とともに移動した先の保健室にも、上級生の澄んだ声が届いていた。
「さてさて、ココからは、どんなステージが待っているのか!? 実は、私たちにも知らされていないんだよね〜」
 マイクを手にした美奈子が再び語ると、ステージ前の群衆から、
「「「お、おぉ〜〜〜〜!!」」
と、声が上がった。
「――――――と、言っている間に主役の準備ができたようです!」
 すっかり、司会役になりきっている吹奏楽部副部長は、アナウンスを続けながら、
(鳳花、このあとは、黒田くんにおまかせ、ってことで良いんだよね?)
と、小声で広報部部長に確認する。
(さあ〜、私も詳しくは聞かされてないから〜。あとは、彼らに責任を取ってもらいましょ)
 ここから先の展開は自分の手を離れている、という開き直りなのか、責任を放棄しているとも取られかねない鳳花の返答に苦笑しながら、美奈子は、本日のメイン・イベンターの呼び込みを行った。
「さぁ、それでは、パレードで素晴らしいボーカルを披露してくれた黒田竜司くん!ステージにどうぞ!」
 上級生のアナウンスにうながされ、移動式のフロートからステージに移動した竜司は、深呼吸をしてから、ゆっくりと舞台の中央に移動した。
 四葉のステージのライブ中継用カメラは舞台上の映像を引き続き配信していて、中央の竜司に視線を送る彼女の姿を捉えている。
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このあと、何が起こるの?
この男の子って、竜馬
ちゃんねるのヒト?
あの人がドッキリの主役?
ヨツバチャン、何か話すて!
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《ミンスタライブ》のコメント欄は、白草四葉のフォロワーの熱心な書き込みが続いている。
 ライブ会場である中庭ステージとWEB画面の向こう側の双方が緊張に包まれる中、ステージ前のカメラを担当する広報部の荒木部員からマイクを受け取った竜司は、舞台の中央で中庭全体を見渡し、深呼吸をひとつしたあと、語り始めた。
 その瞬間、WEB中継用と録画用のカメラは、マイクを持つステージ中央の男子をとらえる。
「ステージ前の皆さん、そして、ネット中継を見てくれている皆さん、ご声援ありがとう!
 あらためて聞くけど、ライブとパレードは楽しんでくれたか〜!?」
「「「おお〜〜〜〜!」」」
というステージ前の歓声とともに、
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楽しかった〜〜〜〜!
四葉チャン、マジ神だった!
先輩のバイオリンも神!!
パレードもっと見たかった!
四葉チャンの歌も
センパイの演奏も
みんなのパレードも
どれも最高だったべ〜!!
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 コメント欄にも、書き込みがあふれる。
 ステージ前の観衆の反応に、
「ありがとう!」
と、うなずいた竜司は言葉を続けた。