昭和三十一年、それまで母と離婚した父と暮らしていたのに、父親が夜逃げをしたために、母親に引き取られた少年(筆者)の目を通して、昭和三十年代前半の小倉の駅前の飲み屋街の生活が活写されている。
待遇は悪いが、憎めないところのある父への筆者の思慕、そしてよくしてくれるのに何となくよそよそしくなる母との関係を縦糸に、父と母とがそれぞれにやっていた飲み屋で働く人や常連客なども書きこまれている。(中略)
小倉出身でない私はこれを読みながら、つくづく地図が欲しいと思った。本にする時は地図やできれば写真、挿絵などが欲しい。
(三浦朱門先生 評)