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僕達には、とってつけたような希望なんていらない。そこにあるのは、僕が選り好んで定住することのできた居場所だけ――。
流血に性的感情を抱く大学生の光基と、痛覚を感じられなくなった小説家の優は、二人でルームシェアをして暮らしている。二人の性質は誰にも知られず、また理解されることもない。世間に知られたら、きっと二人は同じ空気を吸うことさえできなくなってしまうだろう。しかし、互いは決して互いを身体的に傷つけることなどない。二人は互いの存在を認識し合うように、なんの変哲もない日々を過ごしている。
これは、誰にも共感されることのない、二人の物語。
※本作は、犯罪行為を助長する内容、自殺や自傷行為を幇助する内容、差別的な内容を含むものではありません。
時代は令和。未曾有の感染症の流行により、政府が外出制限を発令するとともに、皆が一年を通してマスクを着用する……所謂、『ニューノーマル』な社会情勢が常態化していた。
バイオマスエネルギー発電所に勤務する父と、食品ロスには殊更に厳しい母をもつ三上 洋介は、恋人である笹山 加奈の実家が経営するレストラン『SEA SHINE』が、外出制限の影響を受けて苦境に立たされていることを知る。客足が途絶えたレストランでは、料理にするはずだった食材の保管期限切れによる廃棄も深刻な問題であった。
大学の海洋水産学科に通う洋介は、海洋生産学研究室・羽村教授の『エコフィード』の講義に感銘を受ける。エコフィードとは、食品廃棄物を飼料利用する技術のことで、元来は家畜用飼料に使う用語だが、講義では広義に解釈して海産物の飼料も指していた。
SEA SHINEの廃棄食材の件が強く頭に残っていた洋介は海洋生産学研究室への所属を決意する。キャベツを『アイゴ』という魚や『ガンガゼ』というウニに給与して、食用にするための研究をしている新田 明日香の下で勉強を重ねる洋介は、レストランの廃棄野菜を飼料として使用することを提案した。
洋介の働きかけにより、SEA SHINEでは地域の飲食店と共同で、ロットごとに食材を仕入れるとともに、廃棄野菜を海洋生産学研究室に提供、野菜で育てた海産物をレストランの食材として使用する『地球にやさしいレストラン』のビジネスモデル構築を開始する。その取組の中では、レストランで出た調理済みの食品廃棄物をバイオマスエネルギー発電所へ提供して電力に変えるなど、種々の『地球にやさしい』を実践して、SNSを通してその内容を発信することとなった。
感染症予防対策を徹底するレストラン『ニューノーマルなSEA SHINE』の『地球にやさしい』取組は話題を呼び、客足も以前に引けを取らぬほどに回復した。そこで、SEA SHINEは皆への感謝の気持ちの証として、人々が笑顔になれるような『人にやさしい』取組も同時に開始する。それは、海底火山噴火の憂き目に遭っているトンガ王国……以前、東日本大震災が発生した際に、日本に寄付をしてくれた温かな王国への支援であった。
新しい時代においても変わらない『言葉』のもつエネルギー。それは、人を動かし、お互いに影響し合って、少しずつ世界を動かしてゆく。どれだけ世相が移り変わろうとも、決して変わることはない……ニューノーマルな世界を生き抜く者の熱い想いに気付かせてくれる、新しい時代の青春ストーリーを贈ります。
地方都市の大学を舞台にした、胃がキリキリする青春恋愛群像劇。
二年生の田中逸郎とウブな新入生の中島弥生は同サーの先輩後輩。互いに想い合うことを確認し交際をはじめるはずだった飲み会の現場で、弥生は初対面のOBによる偽情報に乗せられて強引に持ち帰られてしまった。
目の前で彼女を連れ去られた失意の逸郎、いかがわしい動画アイドルと成り果てた弥生、逸郎と同期の超美形お嬢様、入学以来いつも弥生とツルむ押しの強い一年女子、逸郎の同期で親友の寮生男子、さらに途中から加わる新任の美人准教授。失楽した弥生の事件に振り回されて藻掻きつつ、それぞれが新たな関係を形成しながら成長していく物語。
・・・・・
「どっちにしたって覆水は盆に返ってきたりはしませんから」
「絶対に妥協しちゃだめだからね」
「生きてくのって、哀しいね」
「俺たちはもう充分に思い知った」
「もう私は独りで踏み出せる」
「世界に残ったのは俺らふたりだけ、みたいだな」