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性の六時間を共にしたクラスメイトの名前を知らない。
いや、覚えていたはずだ。思い出せない。
そんな彼女との出会いと別れの話。
時代は令和。未曾有の感染症の流行により、政府が外出制限を発令するとともに、皆が一年を通してマスクを着用する……所謂、『ニューノーマル』な社会情勢が常態化していた。
バイオマスエネルギー発電所に勤務する父と、食品ロスには殊更に厳しい母をもつ三上 洋介は、恋人である笹山 加奈の実家が経営するレストラン『SEA SHINE』が、外出制限の影響を受けて苦境に立たされていることを知る。客足が途絶えたレストランでは、料理にするはずだった食材の保管期限切れによる廃棄も深刻な問題であった。
大学の海洋水産学科に通う洋介は、海洋生産学研究室・羽村教授の『エコフィード』の講義に感銘を受ける。エコフィードとは、食品廃棄物を飼料利用する技術のことで、元来は家畜用飼料に使う用語だが、講義では広義に解釈して海産物の飼料も指していた。
SEA SHINEの廃棄食材の件が強く頭に残っていた洋介は海洋生産学研究室への所属を決意する。キャベツを『アイゴ』という魚や『ガンガゼ』というウニに給与して、食用にするための研究をしている新田 明日香の下で勉強を重ねる洋介は、レストランの廃棄野菜を飼料として使用することを提案した。
洋介の働きかけにより、SEA SHINEでは地域の飲食店と共同で、ロットごとに食材を仕入れるとともに、廃棄野菜を海洋生産学研究室に提供、野菜で育てた海産物をレストランの食材として使用する『地球にやさしいレストラン』のビジネスモデル構築を開始する。その取組の中では、レストランで出た調理済みの食品廃棄物をバイオマスエネルギー発電所へ提供して電力に変えるなど、種々の『地球にやさしい』を実践して、SNSを通してその内容を発信することとなった。
感染症予防対策を徹底するレストラン『ニューノーマルなSEA SHINE』の『地球にやさしい』取組は話題を呼び、客足も以前に引けを取らぬほどに回復した。そこで、SEA SHINEは皆への感謝の気持ちの証として、人々が笑顔になれるような『人にやさしい』取組も同時に開始する。それは、海底火山噴火の憂き目に遭っているトンガ王国……以前、東日本大震災が発生した際に、日本に寄付をしてくれた温かな王国への支援であった。
新しい時代においても変わらない『言葉』のもつエネルギー。それは、人を動かし、お互いに影響し合って、少しずつ世界を動かしてゆく。どれだけ世相が移り変わろうとも、決して変わることはない……ニューノーマルな世界を生き抜く者の熱い想いに気付かせてくれる、新しい時代の青春ストーリーを贈ります。
現代の日本。
山梨県のとある児童養護施設に育った中学3年生の相川愛美(あいかわまなみ)は、作家志望の女の子。卒業後は私立高校に進学したいと思っていた。でも、施設の経営状態は厳しく、進学するには施設を出なければならない。
そんな愛美に「進学費用を援助してもいい」と言ってくれる人物が現れる。
園長先生はその人物の名前を教えてくれないけれど、読書家の愛美には何となく自分の状況が『あしながおじさん』のヒロイン・ジュディと重なる。
春になり、横浜にある全寮制の名門女子高に入学した彼女は、自分を進学させてくれた施設の理事を「あしながおじさん」と呼び、その人物に宛てて手紙を出すようになる。
慣れない都会での生活・初めて持つスマートフォン・そして初恋……。
戸惑いながらも親友の牧村さやかや辺唐院珠莉(へんとういんじゅり)と助け合いながら、愛美は寮生活に慣れていく。
そして彼女は、幼い頃からの夢である小説家になるべく動き出すけれど――。
(原作:ジーン・ウェブスター『あしながおじさん』)