「何ですか?」
そう言うと、一旦離れて、リスト端末を操作した。そして私と彼の間に、『実験リスト』を表示させる。
さっき加地くんや弓槻さんたちと話し合って、項目がだいぶ増えている。その、最後にもう一行付け足した。
「これは……」
「これを実行するのは、私だけ。ナオヤくんも、弓槻さんも加地くんも、やる必要はない。だけど……勇気がほしい。一人だけじゃ、できないかもしれないから」
リストと、私と、ナオヤくんは交互に見て、ほんの少し眉を下げていた。色々と、心配をかけているんだろうと思う。
だけど、私がやらなきゃいけないことだ。そして、ナオヤくんとおばさんの姿を見て、私も立ち向かわないといけないと、そう思った。
勝手なお願いだったかと、不安になって顔を上げると、そこにはナオヤくんの穏やかな笑みが待っていた。清流のような、曇りのない面持ちだった。
「僕の勇気なんて、あなたに比べれば微々たるものだ。それでも良ければ、ありったけ持って行って構いません」
そう言うと、今度はナオヤくんが大きく両手を広げて、私をまるごとすっぽりと腕に収めてしまった。そのまま、ぎゅぅっと、力一杯締め付ける。
「うっ……痛い痛い! 強い!」
「ありったけの勇気なので」
「ありったけじゃなくていいよ。ちょっとでいい、ちょっとで!」
笑い声と共に、ほんの少し腕が緩まる。一瞬絞め殺されるかと思ってじろりと睨み上げるけど、すぐに、やっぱり笑ってしまった。
片手でリスト端末を操作する。もう一つの、二人だけのファイルをそっと開いて、指でそっと、3本線を引いた。
リストに残っていたうちの、3つ。
『きれいな夕日を見る』『強く抱きしめる』『心から「好きだ」と言う』……この、3つに。
「……どうか、頑張って」
「うん……ありがとう」
そう答えて、私は……私たちは、お互いにもう一度強く、互いの温もりをその腕に刻みつけた。