生徒は皆、帰宅するか部活動に出てしまった後、二人だけの教室に、ナオヤくんの申し出が悲しく響いた。
一瞬、何を言っているのか、わからなかった。
「ナオヤくん、なんて?」
「他の方と行かれてはどうかと、提案しました」
「……プラネタリウムが嫌なんだったら、別の場所でも……」
「いえ、今後一切の共同の外出に関して言っています」
「今後、一切……?」
聞けば聞くほど、何を言っているのか、わからない。
「あの、一応これって実験の一環じゃなかったっけ? 恋人検証の方の……」
「そうでしたが、どうも乗り気じゃなさそうなので」
昨日の今日で、何を言っているんだろう。昨日、ナオヤくんの前で泣いてしまったから? でも嫌がるようなことは言わなかったはずなのに。
「私は、乗り気じゃないわけない。自分から誘ったんだよ?」
「そう……ですね。すみません」
結局は、ナオヤくんが乗り気じゃないということみたいだ。だけど、今後一切というのはどうしてなんだろう。
説明を求める視線を向けると、ナオヤくんは気まずいといった風に、逸らせた。
「さっきのコールが何か関係あるの?」
ナオヤくんの体が、ぴくんと跳ねた。やっぱり、そうみたいだ。あのコールが私だけにかかって来ていないことを考えると、コールの主は私の関係者。そんなことができそうなのは、一人しかいない。
「私の……お父さんから、だった?」
ナオヤくんは答えない。否定もしない。それが、答えだった。
「……何を言われたの」
「何か言われたから、断ったんじゃありません」
「じゃあなんで、今後一切なんて……」
「僕とあなたは、違うから」
ナオヤくんは、顔を上げて、まっすぐに私を見返して、そう言った。
「違うって、なに? 同じクローンで、オリジナルを目指してる途中のプロトタイプで、協力しようって言ったのに」
ナオヤくんは更に、小さく首を横に振った。私の言った言葉を、一つ一つ丁寧に否定していくように。
「そもそもの前提が違ったんです。あなたは愛さんのクローンとして望まれて生まれて、育った。スペアという扱いは酷いものですが、実際には姉妹扱い。ちゃんと『天宮ヒトミ』としての籍もある。この世界に、唯一無二の人間として、きちんと存在している」
「それは、でも……登録の問題で……」
「あなたは、ちゃんと『天宮ヒトミ』という一個人だ。そこに『愛』を重ねる必要はないんです。そんなことをしなくても、あなたはちゃんと存在できる」
「何それ……だったらナオヤくんだって」
「僕は違う」
きっぱりと、彼は言い切った。それは、拒絶の色を含んでいた。