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第9章〜To Love You More(もっとあなたを好きになる)〜③

ー/ー



残された壮馬は、すぐに、スマホでLANEのアプリを起動し、天竹葵にメッセージを送信する。

==============

広報部のメンバーは放送室を
出て行ったよ!

部長にも許可をもらったから
いつでも、放送室にどうぞ!

==============

 一週間前の土曜日、竜司と四葉との通話を終えたあと、壮馬は葵から、こんなメッセージを受け取っていた。

==============

やっぱり、白草さんの言動は
気になります。

オープン・スクールの日に、
何か起きそうな気がします。
相談に乗ってもらえませんか?

==============

 内容は、漠然としたものであったが、一学期の初日に葵とアザミの二名から、「白草四葉の言動について、注視してほしい」という要請を受けて、承諾していた。そのため、壮馬としては、彼女からの相談依頼を無視する訳にはいかなかったのだ。
 さらに、壮馬自身にも、白草四葉という、対外的には人当たりが良く見える転入生を信用しきれない部分があることは事実だった。
 その上、彼女と交流を持ってからというもの、特に、この数週間は、小学生時代からの友人である黒田竜司の態度にも、どこか違和感を覚えることが多い。

(竜司と白草さんには、きっと何か秘密がある)

 確固たる証拠のない不確かな感触である上に、対象となる人物が自分と親しい人間ということもあって、誰にも相談できない想いを分かち合える存在がいる、という事実は、現在の壮馬にとって得難い幸運であった。
 彼は、この「良くない意味での胸騒ぎ」にも似た、自分の内心のモヤモヤする気持ちの原因が、どこにあるのかを整理しながら、ルーチンワークである映像配信と確認用の機材の確認に入る。
 この日、校内に配置されている有人・無人を含めた十台のカメラは、放送室の端末をホストとして、テレビ会議システムのGoogle Meetで接続され、室内にいながらにして、全台の確認が可能になっている。
 一台ずつカメラに映る映像の確認作業をしていると、

==============

十時頃に学校に到着予定です。

学校に着いたら、すぐに
放送室に向かいます。

==============


という、文芸部の二年生部長からの返信メッセージが着信した。



 鳳花部長とともに、リハーサル室の一つである芸術棟四階の音楽教室に入室すると、すでにシロとコーラス部の部長である浦嶋ユリ先輩はじめ、コーラス部の面々が揃っていた。

「おはよう、黒田クン!」

 入室してきた広報部のオレと鳳花部長の姿を確認すると、シロが真っ先に声を掛けてきた。
 さらに、彼女は、

「花金センパイ! 今日は演奏を引き受けて下さり、ありがとうございます。センパイとのコラボ、すごく楽しみです!」

と、上級生にも気配りを怠らず、我が部の部長に向かって、礼儀正しくお辞儀をする。

「こちらこそ、よろしく、白草さん。当日まで練習の時間が取れなくて、ゴメンね。私も、あなたの歌と一緒に演奏できるのを楽しみにしてるわ」

 シロに対して、鳳花部長もニッコリと笑顔で返答し、和やかなムードを醸し出している。
 一方、オレとともにマーチングの歌唱パートを担当するコーラス組からは、

「黒田くん! こっちは、ゆっくりしている時間はないからね」

ワハハと、豪快に笑う浦嶋部長の声が掛かる。
 事実、マーチングバンドを行う吹奏楽部や他の部活の出番のタイミングなどを合わせる必要があるオレたちは、ボーカルの調整を軽く行ったあと、別棟にある吹奏楽部の練習室に移動して、入念なリハーサルを行う予定になっていた。

「承知しています、浦嶋先輩! 今日は、一日ヨロシクお願いします!」

 コーラス部の部長に返答すると、

「張り切って行こう!」

「オー!!」

と、複数の声が返ってきた。

「そういう訳で、早速、リハ、リハ!」

 浦嶋部長は、パンパンと手を叩き、オレと部員たちを先導し、音楽教室の片隅に移動する。
 吹奏楽部の演奏に合わせるために、実際のマーチングの演奏を録音したものを、ノートPCから音声ファイルで再生させ、『Twist and Shout』組のリハーサルが始まった。



 その練習風景を四葉は、慈しむような視線で眺める。

「白草さん、黒田くんのようすが気になるの?」

 静かに声を掛けてきた鳳花に、小さくうなずきながら、

「はい、彼もがんばってるんだなって……」

 柔和な表情で答える四葉。
 そんな彼女に、

「そうね……私たちも頑張りましょう」

 鳳花は、自分たちの部の後輩のことを気に掛ける下級生に優しく応じる。
 その後、本格的なセッションに入る前の四葉と鳳花が、楽曲の歌唱と演奏に関する打ち合わせをしていると、コーラスパートのリハーサルを終えた竜司たちが、二人のもとにやってきた。

「こっちは、ボーカルのリハーサルが終わったから、そろそろ移動するわ。遠慮なく、白草たちのリハーサルをしてくれ」

 竜司が、四葉に声を掛ける。

「ありがとう! 黒田クンたちもがんばって! わたしも、今日のステージでは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 四葉は、そう言って、笑みを見せながら、

「クロの歌とサプライズの演出、楽しみにしてる」

と、付け加えた。
 竜司には、その表情が、とても妖艶なモノに見え、一瞬、息を飲んでしまったが、上級生たち周囲の目を意識し、

「あ、あぁ……シロ……白草のステージもな……」

と、言葉に詰まりながら、返答する。
 すると、

「今から、緊張してて、どうすんの黒田くん! しっかり頼むよ!」

 二人の会話を聞いていた浦嶋ユリが、竜司の背中をパン、と軽く叩いて発破をかけた。

「う、うッス!」

 上級生に気合いを入れられた二年生男子は、最後に

「それじゃ、行ってくる!」

と、言い残して、音楽教室を後にした。


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残された壮馬は、すぐに、スマホでLANEのアプリを起動し、天竹葵にメッセージを送信する。
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広報部のメンバーは放送室を
出て行ったよ!
部長にも許可をもらったから
いつでも、放送室にどうぞ!
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 一週間前の土曜日、竜司と四葉との通話を終えたあと、壮馬は葵から、こんなメッセージを受け取っていた。
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やっぱり、白草さんの言動は
気になります。
オープン・スクールの日に、
何か起きそうな気がします。
相談に乗ってもらえませんか?
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 内容は、漠然としたものであったが、一学期の初日に葵とアザミの二名から、「白草四葉の言動について、注視してほしい」という要請を受けて、承諾していた。そのため、壮馬としては、彼女からの相談依頼を無視する訳にはいかなかったのだ。
 さらに、壮馬自身にも、白草四葉という、対外的には人当たりが良く見える転入生を信用しきれない部分があることは事実だった。
 その上、彼女と交流を持ってからというもの、特に、この数週間は、小学生時代からの友人である黒田竜司の態度にも、どこか違和感を覚えることが多い。
(竜司と白草さんには、きっと何か秘密がある)
 確固たる証拠のない不確かな感触である上に、対象となる人物が自分と親しい人間ということもあって、誰にも相談できない想いを分かち合える存在がいる、という事実は、現在の壮馬にとって得難い幸運であった。
 彼は、この「良くない意味での胸騒ぎ」にも似た、自分の内心のモヤモヤする気持ちの原因が、どこにあるのかを整理しながら、ルーチンワークである映像配信と確認用の機材の確認に入る。
 この日、校内に配置されている有人・無人を含めた十台のカメラは、放送室の端末をホストとして、テレビ会議システムのGoogle Meetで接続され、室内にいながらにして、全台の確認が可能になっている。
 一台ずつカメラに映る映像の確認作業をしていると、
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十時頃に学校に到着予定です。
学校に着いたら、すぐに
放送室に向かいます。
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という、文芸部の二年生部長からの返信メッセージが着信した。
 鳳花部長とともに、リハーサル室の一つである芸術棟四階の音楽教室に入室すると、すでにシロとコーラス部の部長である浦嶋ユリ先輩はじめ、コーラス部の面々が揃っていた。
「おはよう、黒田クン!」
 入室してきた広報部のオレと鳳花部長の姿を確認すると、シロが真っ先に声を掛けてきた。
 さらに、彼女は、
「花金センパイ! 今日は演奏を引き受けて下さり、ありがとうございます。センパイとのコラボ、すごく楽しみです!」
と、上級生にも気配りを怠らず、我が部の部長に向かって、礼儀正しくお辞儀をする。
「こちらこそ、よろしく、白草さん。当日まで練習の時間が取れなくて、ゴメンね。私も、あなたの歌と一緒に演奏できるのを楽しみにしてるわ」
 シロに対して、鳳花部長もニッコリと笑顔で返答し、和やかなムードを醸し出している。
 一方、オレとともにマーチングの歌唱パートを担当するコーラス組からは、
「黒田くん! こっちは、ゆっくりしている時間はないからね」
ワハハと、豪快に笑う浦嶋部長の声が掛かる。
 事実、マーチングバンドを行う吹奏楽部や他の部活の出番のタイミングなどを合わせる必要があるオレたちは、ボーカルの調整を軽く行ったあと、別棟にある吹奏楽部の練習室に移動して、入念なリハーサルを行う予定になっていた。
「承知しています、浦嶋先輩! 今日は、一日ヨロシクお願いします!」
 コーラス部の部長に返答すると、
「張り切って行こう!」
「オー!!」
と、複数の声が返ってきた。
「そういう訳で、早速、リハ、リハ!」
 浦嶋部長は、パンパンと手を叩き、オレと部員たちを先導し、音楽教室の片隅に移動する。
 吹奏楽部の演奏に合わせるために、実際のマーチングの演奏を録音したものを、ノートPCから音声ファイルで再生させ、『Twist and Shout』組のリハーサルが始まった。
 その練習風景を四葉は、慈しむような視線で眺める。
「白草さん、黒田くんのようすが気になるの?」
 静かに声を掛けてきた鳳花に、小さくうなずきながら、
「はい、彼もがんばってるんだなって……」
 柔和な表情で答える四葉。
 そんな彼女に、
「そうね……私たちも頑張りましょう」
 鳳花は、自分たちの部の後輩のことを気に掛ける下級生に優しく応じる。
 その後、本格的なセッションに入る前の四葉と鳳花が、楽曲の歌唱と演奏に関する打ち合わせをしていると、コーラスパートのリハーサルを終えた竜司たちが、二人のもとにやってきた。
「こっちは、ボーカルのリハーサルが終わったから、そろそろ移動するわ。遠慮なく、白草たちのリハーサルをしてくれ」
 竜司が、四葉に声を掛ける。
「ありがとう! 黒田クンたちもがんばって! わたしも、今日のステージでは、|歌《・》|詞《・》|に《・》|タ《・》|ッ《・》|プ《・》|リ《・》|と《・》|気《・》|持《・》|ち《・》|を《・》|込《・》|め《・》|な《・》|が《・》|ら《・》、|歌《・》|わ《・》|せ《・》|て《・》|も《・》|ら《・》|う《・》|か《・》|ら《・》……」
 四葉は、そう言って、笑みを見せながら、
「クロの歌とサプライズの演出、楽しみにしてる」
と、付け加えた。
 竜司には、その表情が、とても妖艶なモノに見え、一瞬、息を飲んでしまったが、上級生たち周囲の目を意識し、
「あ、あぁ……シロ……白草のステージもな……」
と、言葉に詰まりながら、返答する。
 すると、
「今から、緊張してて、どうすんの黒田くん! しっかり頼むよ!」
 二人の会話を聞いていた浦嶋ユリが、竜司の背中をパン、と軽く叩いて発破をかけた。
「う、うッス!」
 上級生に気合いを入れられた二年生男子は、最後に
「それじゃ、行ってくる!」
と、言い残して、音楽教室を後にした。