表示設定
表示設定
目次 目次




12

ー/ー



「ち、ちょっと待って。食べられないんじゃなかったの?」
「和らげれば大丈夫かと……それに、あなたにばかり負担をかけては申し訳ない」
「私は自分から言い出したんだってば」
「あのリストは、二人で埋めていくと話し合ったので」
「リストって?」
 加地くんが尋ねるので、ナオヤくんはあの『実験リスト』を開いて見せた。上から下までじーっと見ると、加地くんは瞬きを繰り返していた。
「何だこれ。こんなの実験になるのか?」
「僕にとっては、十分試す価値があります」
「えー……俺だったらこれ、一日あったら全部できそう」
「全部できたのなら、新しい項目を追加すればいいんです。実験はいくつも繰り返して、検証していくものですから。検証の材料はいくらあったって、いいんです」
 加地くんは今度こそ、ぽかんとしていた。私も同じ気分だ。
 その強固な意志は、この無表情な顔のいったいどこから湧いてくるんだろう。
「はぁ……まぁよくわかんねえけど、頑張れな。ところで実験て何のための実験なんだ?」 しまった、と思った。
『私たちがよりオリジナルに近づくための実験』だなんて、言えない。私はともかく、ナオヤくんはクローンとして登録されていない上に、オリジナルとしてここにいるんだから。
 実験のことを話したら、違法な存在だってことまで知られてしまうかもしれない。
 案の定、ナオヤくんは固まっている。うまい言い訳を考えているのだろうけど、深海くんならどう切り抜けたのかといった記憶を検索して、見つからないんだろう。
 彼曰くの『脳の処理』が追いついていないんだ。
 私が、何か言わないと……!
「せ、青春の実験だよ」
「え?」
「『青春の実験』? 何それ?」
 虚を突かれた顔をしているナオヤくんに、私は頷いて伝えた。ここは任せろ、と。
「えーとね……そう。高校を卒業したら大学でしょ。専門的なことを勉強するのに、私たち、まだどんなことをやりたいとか興味があるとか、わからなくて……だから、今のうちに色々試そうって話になったの」
「つまり『自分探し』とか『個性の確立』をやりたいんだな。いいじゃん、それ。応援する」
「ありがとう!」
 加地くんは豪快に笑って、手を差し出した。それが握手を求めているんだと気付くのに、少し時間がかかった。
 手を握り返すと、逞しい笑みが降ってくるようだった。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 13


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「ち、ちょっと待って。食べられないんじゃなかったの?」
「和らげれば大丈夫かと……それに、あなたにばかり負担をかけては申し訳ない」
「私は自分から言い出したんだってば」
「あのリストは、二人で埋めていくと話し合ったので」
「リストって?」
 加地くんが尋ねるので、ナオヤくんはあの『実験リスト』を開いて見せた。上から下までじーっと見ると、加地くんは瞬きを繰り返していた。
「何だこれ。こんなの実験になるのか?」
「僕にとっては、十分試す価値があります」
「えー……俺だったらこれ、一日あったら全部できそう」
「全部できたのなら、新しい項目を追加すればいいんです。実験はいくつも繰り返して、検証していくものですから。検証の材料はいくらあったって、いいんです」
 加地くんは今度こそ、ぽかんとしていた。私も同じ気分だ。
 その強固な意志は、この無表情な顔のいったいどこから湧いてくるんだろう。
「はぁ……まぁよくわかんねえけど、頑張れな。ところで実験て何のための実験なんだ?」 しまった、と思った。
『私たちがよりオリジナルに近づくための実験』だなんて、言えない。私はともかく、ナオヤくんはクローンとして登録されていない上に、オリジナルとしてここにいるんだから。
 実験のことを話したら、違法な存在だってことまで知られてしまうかもしれない。
 案の定、ナオヤくんは固まっている。うまい言い訳を考えているのだろうけど、深海くんならどう切り抜けたのかといった記憶を検索して、見つからないんだろう。
 彼曰くの『脳の処理』が追いついていないんだ。
 私が、何か言わないと……!
「せ、青春の実験だよ」
「え?」
「『青春の実験』? 何それ?」
 虚を突かれた顔をしているナオヤくんに、私は頷いて伝えた。ここは任せろ、と。
「えーとね……そう。高校を卒業したら大学でしょ。専門的なことを勉強するのに、私たち、まだどんなことをやりたいとか興味があるとか、わからなくて……だから、今のうちに色々試そうって話になったの」
「つまり『自分探し』とか『個性の確立』をやりたいんだな。いいじゃん、それ。応援する」
「ありがとう!」
 加地くんは豪快に笑って、手を差し出した。それが握手を求めているんだと気付くのに、少し時間がかかった。
 手を握り返すと、逞しい笑みが降ってくるようだった。