第4話 奴隷令嬢と女将の事情
ー/ー
「それでは女将さん、行ってまいりますわ」
その日の夕刻、ララはいつものように町中へ向かおうと家の戸を開ける。
「ララ!!」
それを見たミレーヌが大きな声で呼び止める。
「どうしましたの?」
キョトンとした顔で首をかしげる少女。
「え、えっと、その……」
いつも歯に衣着せぬ物言いで話す彼女にしては珍しく、落ち着きの無い様子で口ごもりながら、
「今日は外出るのやめにしないか? 疲れてるだろう?」
どことなくソワソワとした所作でそう言うのだった。
「いいえ、わたくしはまだ元気ですが……」
「で、でも最近町は物騒らしいからさ」
「そうでしょうか? 別段変わり無いように思いますけど」
「ほ、ほら、ララはカワイイからさ。ヘンな男たちに絡まれやしないか心配なんだ」
「まあ、それはたしかにウザいでしょうが……」
不審を感じたララはミレーヌの方へズンズンと歩み寄り、
「女将さん、一体何をかくしてらっしゃいますの?」
宝珠のように透き通った碧い瞳で見上げ、問い詰めた。
「べ、別に何もかくしてなんかいないよ……」
「ウソですわね」
困惑して目を背けるミレーヌにララはハッキリと告げた。
「だったらさ、アタシも一緒に行くよ! 今夜の食材の買い出しもしたいし。それならイイだろ?」
「……まあ、わたくしはそれでも構いませんが」
結局不審の理由がわからないままであったが、ララは小さくため息を吐くとそれを認めたのだった。
「それでは女将さん、お先に湯をいただきますわね」
その日の夜、いつものように湯浴みに向かおうと声を掛けると、
「あ、ちょっと待ってララ」
台所の後片付けをしていたミレーヌが慌てて呼び止める。
「あ、あのさ……一緒に入らないかい?」
「え?」
思わぬ提案に少女は首をかしげた。
「イヤかい?」
「そういうワケではありませんが……」
「よし、それじゃ入ろうか」
そう言うとミレーヌはなかば強引に少女と共に浴室へと向かう。
「ララの髪、長くてキレイだね。まるで上質な生糸みたいだ」
浴室で少女の背中を流しながら、ミレーヌはうっとりとした口調で言う。
「肌も雪みたいに白くて蜜蝋みたいに艶があって、まるで芸術品だよ」
「ありがとうございます。ですが女将さんだっておキレイではありませんこと?」
「アタシがかい? アンタと比べたらアタシなんてただのオバちゃんだよ」
けらけらと笑うミレーヌ。
「そんなことないと思いますけど……」
ララは不満そうにつぶやく。
「まだお若いですし、おひとりなのが不思議なくらいですわ」
「あれ? まだ話してなかったかい?」
ミレーヌが驚いたように言うと、
「アタシはね、旦那がいたんだよ。まあ、五年前に死んじまったんだけどね」
サバサバとした口調で告げる。
「え?」
「そのころ大ブリタニアとの戦争が始まってね、旦那はそれに従軍したんだ。それからたった三ヶ月後のことだったよ。旦那が戦死したって報せが届いたのは……」
ピタリと手を止めて、ミレーヌは静かに語りだす。
「つらかったよ。だけど、もっとつらかったのはそのショックでお腹の中にいた旦那との子供まで流産しちまったことさ」
「そんな……」
背中越しから悲哀を感じ取る少女。
「死のうと思ったよ。もう生きてても仕方ないって。でもね、ちょうどそのころウチにいた奴隷のコが言ってくれたんだ。一度断ち切れたとしても、生きていれば縁の糸はまた紡ぐことができる、って……」
「縁の糸……」
「そう。だからアタシは紡ぎ続けることにした。そして縁あってウチに来た奴隷のコに織物の技術を身につけさせて、少しでもイイ待遇の場所で働けるようにさせたいと思ったんだ」
「……」
初めて知るミレーヌの過去に、ララはしばらく押し黙ってしまう。
そして、
「ごめんなさい、女将さん! わたくし、以前アナタには失礼なことを言ってしまいましたわ!!」
まだ現実が受け入れきれずに仕事を拒否していた時にもらした失言を思い出し、頭を下げて詫びるのだった。
「べ、別にアタシは気にしてなんかないよ。だからホラ、、頭上げなって」
「でも……」
「ララは自分に対しても相手に対してもホントにまっすぐだね。アタシは好きだよ、アンタのそういうトコ」
くしゃくしゃと頭を撫でて笑う。
「……ありがとうございます。では、今度はわたくしがお背中をお流ししますわ。背中を向けてくださる?」
ララは笑顔を取り戻して言った。
そしてミレーヌの背中を流していた、その時だった――
「あら? こんなところに痣ができてますわ」
脇腹の辺りにある赤紫色に変色してしまった肌をそっと慰る。
「あ、ああ。気づかない間にどこかにぶつけちまったんだねぇ」
そう言って笑うミレーヌだったが、ララは今日の彼女の言動と同様に何となく引っかかるものを感じるのだった。
そしてその日の夜も、ミレーヌはララと同じ部屋で就寝することを提案してきた。
ララは何も言わずにそれを受け入れたが、次の日も、そしてその次の日もミレーヌは必ず少女と行動を共にするようになったのだった。
そんなある日のことだった――
「ララ、お使いに行って来てほしいんだ」
その日の仕事を終えた後、ミレーヌはそう告げたのだ。
「ええ、構いませんが……」
いつもは決してひとりで町中に行かせなかったはずなのに、突然そのように言われて戸惑うララ。
「町のはずれにあるお得意さんの糸屋まで頼むよ。これは地図とお金だ」
そう言ってミレーヌは一枚の紙切れと巾着袋に入ったお金を渡した。
「……女将さんはご一緒ではありませんの?」
「アタシはまだやっておかなきゃならない仕事があってさ。悪いけどひとりお願い。それと、余ったお金は自由に使っていいからね」
そう言うとミレーヌはさっさと工場の方に戻ってしまう。
不審を感じながらも、ララは言われたとおりに家を後にした。
「おかしい……ぜーったいにおかしいですわ!」
ズンズンと大股で歩きながら、少女はモヤモヤとした気持ちを叫びに変える。
「最近までずっとわたくしにべったりで離れなかったのに、急にひとりで行ってこいだなんて絶対に何かあるに決まってますわ。だって、これではまるでわたくしを遠ざけるための――」
刹那、ハッと何かに気づいたララは踵を返し、来た道を急いで戻るのだった。
そして家に着くとまずは窓から中の様子をうかがう。
「……ここにはいませんわね」
そこに人の気配がないことを確認したララは足音を忍ばせて家の中に入り、ゆっくりと工場の方へと向かった。
「※※※※※」
ふと、何者かの声が工場の中から聞こえる。
ララは腰を屈めてさらに慎重な足取りで、中が見える窓の方へと近づく。
「なぁ、ミレーヌ。いい加減俺の頼みを聞いてくれてもイイんじゃねぇか?」
「くっ……誰がアンタの言うことなんか……」
窓際までたどり着くと、男女の声がハッキリと聞こえてくる。
「ッ!!」
そっと顔を近づけて中を覗いてみたララは衝撃を受けた。
見たことのない男が後ろから腰を激しく突き立て、|ミレーヌはいつもララが使っている作業台に手をつき、眉間にシワ寄せてその男を睨み上げていたのだ。
――犯されてる!?
かつて同じような光景を目の当たりにしたことがあるため、二人が何をしているのかすぐに理解した。
「何でそんな冷たくすんだよ。俺がララを買い取るって言ってるだけじゃん? 全然悪い話じゃないだろうが」
「ララはアタシの奴隷だよ! たとえ一万金積まれたとしても渡す気なんか無いねぇ!!」
男の力にねじ伏せられて一方的な凌辱を受けながらも、ミレーヌは敢然と啖呵を切るのだった。
――女将さん……。
ララは思わず涙ぐんだ。
「ああ、そうかよッ!!」
ゴッ!!
刹那、冷酷な眼差しを向けて男がミレーヌの顔を殴打し、乾いた痛音が室内に響く。
――アイツ……。
ララは怒りに打ち震え、立ちあがろうとする。
しかし、その時だった――
どくん――
心臓が跳ね上がるように大きく脈打つと、ぐらりと視界が歪みだし、今まで感じたことの無い衝動が少女の全身を支配する。
「何、ですの……熱い……」
ララは突然訪れた衝動に抗うことができず、その場に崩れ落ちるとスカートの中に手を捩じこみ、しなやかな指先で自らの陰部を愛撫し始めた。
――なぜ……? なぜわたくしはこんなはしたないコトを……
自問しながらも少女はその衝動を鎮めるため、まるでケモノのように一心不乱に自らを慰める。
――女将……さん
壁越しに犯されている女を見つめながら――
「いいか、ミレーヌ。次に来る時にはイイ返事を聞かせてくれよ」
行為を終えて満足した男は、見下したような笑みと共にそう言って工場を後にする。
「……二度と来んじゃないよ、このゲス野郎がッ!」
誰もいなくなった室内でぐったりと倒れ伏せるミレーヌは、荒々しい吐息と共に叫んだ。
――わたくしは……一体どうしてしまったの?
同じように荒い吐息をもらしながら、ララは自己嫌悪に陥ると共に自らの体に訪れた異変に畏れを抱くのだった。
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「それでは|女将《おかみ》さん、行ってまいりますわ」
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「どうしましたの?」
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「え、えっと、その……」
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「で、でも最近町は物騒らしいからさ」
「そうでしょうか? 別段変わり無いように思いますけど」
「ほ、ほら、ララはカワイイからさ。ヘンな男たちに絡まれやしないか心配なんだ」
「まあ、それはたしかにウザいでしょうが……」
不審を感じたララはミレーヌの方へズンズンと歩み寄り、
「|女将《おかみ》さん、一体何をかくしてらっしゃいますの?」
宝珠のように透き通った|碧《あお》い瞳で見上げ、問い詰めた。
「べ、別に何もかくしてなんかいないよ……」
「ウソですわね」
困惑して目を背けるミレーヌにララはハッキリと告げた。
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「……まあ、わたくしはそれでも構いませんが」
結局不審の理由がわからないままであったが、ララは小さくため息を吐くとそれを認めたのだった。
「それでは|女将《おかみ》さん、お先に湯をいただきますわね」
その日の夜、いつものように湯浴みに向かおうと声を掛けると、
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「あ、あのさ……一緒に入らないかい?」
「え?」
思わぬ提案に少女は首をかしげた。
「イヤかい?」
「そういうワケではありませんが……」
「よし、それじゃ入ろうか」
そう言うとミレーヌはなかば強引に少女と共に浴室へと向かう。
「ララの髪、長くてキレイだね。まるで上質な生糸みたいだ」
浴室で少女の背中を流しながら、ミレーヌはうっとりとした口調で言う。
「肌も雪みたいに白くて蜜蝋みたいに艶があって、まるで芸術品だよ」
「ありがとうございます。ですが|女将《おかみ》さんだっておキレイではありませんこと?」
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「そんなことないと思いますけど……」
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「まだお若いですし、おひとりなのが不思議なくらいですわ」
「あれ? まだ話してなかったかい?」
ミレーヌが驚いたように言うと、
「アタシはね、旦那がいたんだよ。まあ、五年前に死んじまったんだけどね」
サバサバとした口調で告げる。
「え?」
「そのころ大ブリタニアとの戦争が始まってね、旦那はそれに従軍したんだ。それからたった三ヶ月後のことだったよ。旦那が戦死したって報せが届いたのは……」
ピタリと手を止めて、ミレーヌは静かに語りだす。
「つらかったよ。だけど、もっとつらかったのはそのショックでお腹の中にいた旦那との子供まで流産しちまったことさ」
「そんな……」
背中越しから悲哀を感じ取る少女。
「死のうと思ったよ。もう生きてても仕方ないって。でもね、ちょうどそのころウチにいた奴隷のコが言ってくれたんだ。一度断ち切れたとしても、生きていれば|縁《えにし》の糸はまた紡ぐことができる、って……」
「|縁《えにし》の糸……」
「そう。だからアタシは紡ぎ続けることにした。そして縁あってウチに来た奴隷のコに織物の技術を身につけさせて、少しでもイイ待遇の場所で働けるようにさせたいと思ったんだ」
「……」
初めて知るミレーヌの過去に、ララはしばらく押し黙ってしまう。
そして、
「ごめんなさい、|女将《おかみ》さん! わたくし、以前アナタには失礼なことを言ってしまいましたわ!!」
まだ現実が受け入れきれずに仕事を拒否していた時にもらした失言を思い出し、頭を下げて詫びるのだった。
「べ、別にアタシは気にしてなんかないよ。だからホラ、、頭上げなって」
「でも……」
「ララは自分に対しても相手に対してもホントにまっすぐだね。アタシは好きだよ、アンタのそういうトコ」
くしゃくしゃと頭を撫でて笑う。
「……ありがとうございます。では、今度はわたくしがお背中をお流ししますわ。背中を向けてくださる?」
ララは笑顔を取り戻して言った。
そしてミレーヌの背中を流していた、その時だった――
「あら? こんなところに|痣《あざ》ができてますわ」
脇腹の辺りにある赤紫色に変色してしまった肌をそっと|慰《いたわ》る。
「あ、ああ。気づかない間にどこかにぶつけちまったんだねぇ」
そう言って笑うミレーヌだったが、ララは今日の彼女の言動と同様に何となく引っかかるものを感じるのだった。
そしてその日の夜も、ミレーヌはララと同じ部屋で就寝することを提案してきた。
ララは何も言わずにそれを受け入れたが、次の日も、そしてその次の日もミレーヌは必ず少女と行動を共にするようになったのだった。
そんなある日のことだった――
「ララ、お使いに行って来てほしいんだ」
その日の仕事を終えた後、ミレーヌはそう告げたのだ。
「ええ、構いませんが……」
いつもは決してひとりで町中に行かせなかったはずなのに、突然そのように言われて戸惑うララ。
「町のはずれにあるお得意さんの糸屋まで頼むよ。これは地図とお金だ」
そう言ってミレーヌは一枚の紙切れと巾着袋に入ったお金を渡した。
「……|女将《おかみ》さんはご一緒ではありませんの?」
「アタシはまだやっておかなきゃならない仕事があってさ。悪いけどひとりお願い。それと、余ったお金は自由に使っていいからね」
そう言うとミレーヌはさっさと工場の方に戻ってしまう。
不審を感じながらも、ララは言われたとおりに家を後にした。
「おかしい……ぜーったいにおかしいですわ!」
ズンズンと大股で歩きながら、少女はモヤモヤとした気持ちを叫びに変える。
「最近までずっとわたくしにべったりで離れなかったのに、急にひとりで行ってこいだなんて絶対に何かあるに決まってますわ。だって、これではまるでわたくしを遠ざけるための――」
刹那、ハッと何かに気づいたララは|踵《きびす》を返し、来た道を急いで戻るのだった。
そして家に着くとまずは窓から中の様子をうかがう。
「……ここにはいませんわね」
そこに人の気配がないことを確認したララは足音を忍ばせて家の中に入り、ゆっくりと工場の方へと向かった。
「※※※※※」
ふと、何者かの声が工場の中から聞こえる。
ララは腰を屈めてさらに慎重な足取りで、中が見える窓の方へと近づく。
「なぁ、ミレーヌ。いい加減俺の頼みを聞いてくれてもイイんじゃねぇか?」
「くっ……誰がアンタの言うことなんか……」
窓際までたどり着くと、男女の声がハッキリと聞こえてくる。
「ッ!!」
そっと顔を近づけて中を覗いてみたララは衝撃を受けた。
見たことのない男が後ろから腰を激しく突き立て、|ミレーヌはいつもララが使っている作業台に手をつき、眉間にシワ寄せてその男を睨み上げていたのだ。
――犯されてる!?
かつて同じような光景を目の当たりにしたことがあるため、二人が何をしているのかすぐに理解した。
「何でそんな冷たくすんだよ。俺がララを買い取るって言ってるだけじゃん? 全然悪い話じゃないだろうが」
「ララはアタシの奴隷だよ! たとえ一万金積まれたとしても渡す気なんか無いねぇ!!」
男の力にねじ伏せられて一方的な凌辱を受けながらも、ミレーヌは|敢然《かんぜん》と|啖呵《たんか》を切るのだった。
――|女将《おかみ》さん……。
ララは思わず涙ぐんだ。
「ああ、そうかよッ!!」
ゴッ!!
刹那、冷酷な眼差しを向けて男がミレーヌの顔を殴打し、乾いた痛音が室内に響く。
――アイツ……。
ララは怒りに打ち震え、立ちあがろうとする。
しかし、その時だった――
どくん――
心臓が跳ね上がるように大きく脈打つと、ぐらりと視界が歪みだし、今まで感じたことの無い衝動が少女の全身を支配する。
「何、ですの……熱い……」
ララは突然訪れた衝動に抗うことができず、その場に崩れ落ちるとスカートの中に手を捩じこみ、しなやかな指先で自らの陰部を愛撫し始めた。
――なぜ……? なぜわたくしはこんなはしたないコトを……
自問しながらも少女はその衝動を鎮めるため、まるでケモノのように一心不乱に自らを慰める。
――|女将《おかみ》……さん
壁越しに犯されている女を見つめながら――
「いいか、ミレーヌ。次に来る時にはイイ返事を聞かせてくれよ」
行為を終えて満足した男は、見下したような笑みと共にそう言って工場を後にする。
「……二度と来んじゃないよ、このゲス野郎がッ!」
誰もいなくなった室内でぐったりと倒れ伏せるミレーヌは、荒々しい吐息と共に叫んだ。
――わたくしは……一体どうしてしまったの?
同じように荒い吐息をもらしながら、ララは自己嫌悪に|陥《おちい》ると共に自らの体に訪れた異変に畏れを抱くのだった。