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第8章〜やるときはやるんだ〜④

ー/ー



4月18日(月)

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clover_field 実は新学期が始まってすぐにクラスの男の子から、恋愛相談を受けていました!
そこで、わたし白草四葉が、彼の告白の成功確率をあげるため、色々なアドバイスをさせてもらったよ!
今週から、そのアドバイスの内容をYourTubeの動画にアップしていくね!
お楽しみに!!

#新企画本格始動
#白草四葉の恋愛塾
#乞うご期待
====================

 シロが、自身の《ミンスタグラム》で新企画の情報を解禁したことで、オレたち三人の計画が、本格的にスタートした。
 ゴールデン・ウィークの終了する5月の第一土曜日に予定されているオープン・スクールまでの期間は三週間――――――。
 それまでの間、オレは各クラブとの打ち合わせを、壮馬は本番の舞台設定や音響の準備を、シロは自身のSNSでの更新を兼ねた実質的な宣伝活動を、それぞれの主なタスクとして進めていく。
 この日の放課後、オレは、生徒会副会長兼広報部の部長である花金鳳花(はながねほうか)先輩とともに、生徒会権限で借り切った大講義室で、体育会系および文化系クラブの代表者を前にプレゼンテーションを行っていた。

「クラブ紹介が終わって、すぐの週明けで、大変申し訳ないですが……来月上旬のオープン・スクールで、再び各クラブの皆さんに協力を仰ぎたいと思います」

 深く一礼をした鳳花部長は、

「じゃあ、黒田くん、あとはおねがい」

と言って、オレにプレゼンを一任する。

「了解です」

 部長の命を受けた竜司は、校内で支給されたばかりのクロームブックに、壮馬のまとめたスライドを表示させ、大講義室のスクリーンに投影させた。
 最後のサプライズ企画の説明だけを省いた資料をもとに、自分たちの企画の発表を行う。

「今回の企画のメインは、先週末のクラブ紹介でも、皆さんに、そのパフォーマンスを確認してもらった二年生の白草四葉さんのステージと、吹奏楽部のマーチングバンドが先導するパレードになります」

 各クラブの面々のようすを確認しながら、オレは、聞き手に届きやすいよう、つとめて、ゆったりとした口調で説明することを心がける。

「白草さんの歌唱力で、ステージ付近に集客をしつつ、吹奏楽部やコーラス部、ダンス部が主体となったパレードで、オープン・スクールで学校見学に来てくれた中学生たちにクラブ紹介を兼ねたパフォーマンスを披露してもらおうと考えています」

 事前の下準備通り、企画の主旨を説明するオレに、広い大講義室の最前列に陣取った吹奏楽部代表の一人、寿副部長が挙手せずに質問してきた。

「だいたいの内容は、週末に聞かせてもらってたけど、これだけで終わるわけじゃないんでしょ?」

 その声にすぐに反応した我らが広報部の部長は、表情を変えないまま、

「美奈子、いえ寿副部長。質問がある時は挙手願います」

と、やんわりと釘をさしつつ、

「その質問に答えたいのは、やまやまなんだけど、ウチの後輩二名と白草さんが、頑として内容を明かさないのよね〜。ここは、私に免じて、当日までのお楽しみ、ってことにしておいてくれない?」

と、細い目をさらに細くして答えた。

「ふ〜ん、そういうこと……まぁ、なんにしても、黒田くんは、パレードでも重要な役みたいだし、ウチの次期エースである可愛い後輩に、イイとこ見せなきゃね!」

 腕組みをしながらも、冗談めいた口調は崩さない吹奏楽部の副部長に、竜司は、曖昧な笑みで応えながら、

「アハハ……やれるだけ、がんばります」

と返答する。
 寿副部長の言動からもわかるとおり、オレは、週末のうちにオープン・スクールのステージやパレードで主力となる各部に対して、概要の説明および事前交渉(と裏取引)を終えていた。
 特に、今回の企画に関して、自分たちの部にメリットは無に等しく、パレードにおいて、縁の下の、いや《フロートの下の力持ち》役に徹してもらわなければならない、ラグビー部、サッカー部、野球部の面々に対しては、手厚い手当が施されることになっている。
 体育会系の活動は、県内でも上位の成績を残しているクラブが多いのだが、地域でも有数の偏差値を誇りながら、彼らが学業面での成績が疎かになっていない理由は、代々の生徒会が密かに受け継ぎ、情報更新(アップデート)を続けている定期テスト対策ノートの存在が大きい。
 生徒会と体育会系のクラブが良好な関係を保ちつつ、いざという時に、強力な協調関係をもって、有事に対応するために必要な、通称(テスノート)と呼ばれる存在を管理しているのが、生徒会副会長にして、我らが広報部部長の花金鳳花であった。
 表面上はわからないが、陰で強い力を持っている有り様を『隠然たる力』というが、この学園における彼女の存在感を表すのに、これ以上うってつけの言葉はない。

(ウチの部長は、いったいナニ者なんだよ……)

 鳳花部長が同席する外部折衝の場に出るたびに感じる疑問を、この日も感じながら、心のなかで苦笑しつつ、オレは、落ち着きを取り戻すため、一つ咳払いをして、説明を続けた。

「え〜、では……すでに一部のクラブの皆さんには視ていただいていますが、あらためて、今回の目玉企画の一つ、校内パレードの参考動画を視てもらいたいと思います」

 そう言ってから、クロームブックのブラウザに《YourTube》を表示させ、六年前の春、シロに見せたのと同じように、自分のお気に入り映画のダイジェスト動画を再生させる。

(あの時も、シロがどんな反応をするか、緊張したけど、今日も緊張するな……)

 そんなことを感じながら過ごす間に、およそ五分ほどの動画は終了した。
 動画の再生が終わると、再び最前列から声が上がる。

「マーチングの演奏は、任せておいて! 六月の『三千人の吹奏楽』の演奏向けの準備にもなるしね!」

 寿副部長が語ると、となりに座る吹奏楽部・早見部長も、

「先週は、クラブ紹介の撮影ありがとう! 今度は、広報部さんに恩返しさせてもらうね」

と、優しく微笑んだ。
 さらに、二人の後方から、

「歌の方は、私たちコーラス部が、みっちり仕込んであげるから、覚悟しておいて!」

 コーラス部の浦嶋ユリ部長の声が弾む。女子としては大柄な体躯から発せられる歌声は聞く者を魅了し、竜司が今回の企画で最も信頼を置いている人物の一人だ。

「ありがとうございます! よろしくお願いします」

 先輩女子たちに向けて最敬礼で応えると、続けとばかりに、最後方の席からも声が飛ぶ。

「台車の移動も任せろ! その代わり……例の件、しっかり頼んだぞ!」

「あざっす! 任せてください!」

 体育会系クラブの面々からの野太い声にもすぐに応答する。
 鳳花部長には報告していないが、実は、彼ら体育会系のクラブには、裏取引の材料として、もう一つの特典が用意されていた。


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次のエピソードへ進む 第8章〜やるときはやるんだ〜⑤


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 それまでの間、オレは各クラブとの打ち合わせを、壮馬は本番の舞台設定や音響の準備を、シロは自身のSNSでの更新を兼ねた実質的な宣伝活動を、それぞれの主なタスクとして進めていく。
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「クラブ紹介が終わって、すぐの週明けで、大変申し訳ないですが……来月上旬のオープン・スクールで、再び各クラブの皆さんに協力を仰ぎたいと思います」
 深く一礼をした鳳花部長は、
「じゃあ、黒田くん、あとはおねがい」
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「了解です」
 部長の命を受けた竜司は、校内で支給されたばかりのクロームブックに、壮馬のまとめたスライドを表示させ、大講義室のスクリーンに投影させた。
 最後のサプライズ企画の説明だけを省いた資料をもとに、自分たちの企画の発表を行う。
「今回の企画のメインは、先週末のクラブ紹介でも、皆さんに、そのパフォーマンスを確認してもらった二年生の白草四葉さんのステージと、吹奏楽部のマーチングバンドが先導するパレードになります」
 各クラブの面々のようすを確認しながら、オレは、聞き手に届きやすいよう、つとめて、ゆったりとした口調で説明することを心がける。
「白草さんの歌唱力で、ステージ付近に集客をしつつ、吹奏楽部やコーラス部、ダンス部が主体となったパレードで、オープン・スクールで学校見学に来てくれた中学生たちにクラブ紹介を兼ねたパフォーマンスを披露してもらおうと考えています」
 事前の下準備通り、企画の主旨を説明するオレに、広い大講義室の最前列に陣取った吹奏楽部代表の一人、寿副部長が挙手せずに質問してきた。
「だいたいの内容は、週末に聞かせてもらってたけど、これだけで終わるわけじゃないんでしょ?」
 その声にすぐに反応した我らが広報部の部長は、表情を変えないまま、
「美奈子、いえ寿副部長。質問がある時は挙手願います」
と、やんわりと釘をさしつつ、
「その質問に答えたいのは、やまやまなんだけど、ウチの後輩二名と白草さんが、頑として内容を明かさないのよね〜。ここは、私に免じて、当日までのお楽しみ、ってことにしておいてくれない?」
と、細い目をさらに細くして答えた。
「ふ〜ん、そういうこと……まぁ、なんにしても、黒田くんは、パレードでも重要な役みたいだし、ウチの次期エースである可愛い後輩に、イイとこ見せなきゃね!」
 腕組みをしながらも、冗談めいた口調は崩さない吹奏楽部の副部長に、竜司は、曖昧な笑みで応えながら、
「アハハ……やれるだけ、がんばります」
と返答する。
 寿副部長の言動からもわかるとおり、オレは、週末のうちにオープン・スクールのステージやパレードで主力となる各部に対して、概要の説明および事前交渉(と裏取引)を終えていた。
 特に、今回の企画に関して、自分たちの部にメリットは無に等しく、パレードにおいて、縁の下の、いや《フロートの下の力持ち》役に徹してもらわなければならない、ラグビー部、サッカー部、野球部の面々に対しては、手厚い手当が施されることになっている。
 体育会系の活動は、県内でも上位の成績を残しているクラブが多いのだが、地域でも有数の偏差値を誇りながら、彼らが学業面での成績が疎かになっていない理由は、代々の生徒会が密かに受け継ぎ、|情報更新《アップデート》を続けている定期テスト対策ノートの存在が大きい。
 生徒会と体育会系のクラブが良好な関係を保ちつつ、いざという時に、強力な協調関係をもって、有事に対応するために必要な、通称《テスノート》と呼ばれる存在を管理しているのが、生徒会副会長にして、我らが広報部部長の花金鳳花であった。
 表面上はわからないが、陰で強い力を持っている有り様を『隠然たる力』というが、この学園における彼女の存在感を表すのに、これ以上うってつけの言葉はない。
(ウチの部長は、いったいナニ者なんだよ……)
 鳳花部長が同席する外部折衝の場に出るたびに感じる疑問を、この日も感じながら、心のなかで苦笑しつつ、オレは、落ち着きを取り戻すため、一つ咳払いをして、説明を続けた。
「え〜、では……すでに一部のクラブの皆さんには視ていただいていますが、あらためて、今回の目玉企画の一つ、校内パレードの参考動画を視てもらいたいと思います」
 そう言ってから、クロームブックのブラウザに《YourTube》を表示させ、六年前の春、シロに見せたのと同じように、自分のお気に入り映画のダイジェスト動画を再生させる。
(あの時も、シロがどんな反応をするか、緊張したけど、今日も緊張するな……)
 そんなことを感じながら過ごす間に、およそ五分ほどの動画は終了した。
 動画の再生が終わると、再び最前列から声が上がる。
「マーチングの演奏は、任せておいて! 六月の『三千人の吹奏楽』の演奏向けの準備にもなるしね!」
 寿副部長が語ると、となりに座る吹奏楽部・早見部長も、
「先週は、クラブ紹介の撮影ありがとう! 今度は、広報部さんに恩返しさせてもらうね」
と、優しく微笑んだ。
 さらに、二人の後方から、
「歌の方は、私たちコーラス部が、みっちり仕込んであげるから、覚悟しておいて!」
 コーラス部の浦嶋ユリ部長の声が弾む。女子としては大柄な体躯から発せられる歌声は聞く者を魅了し、竜司が今回の企画で最も信頼を置いている人物の一人だ。
「ありがとうございます! よろしくお願いします」
 先輩女子たちに向けて最敬礼で応えると、続けとばかりに、最後方の席からも声が飛ぶ。
「台車の移動も任せろ! その代わり……例の件、しっかり頼んだぞ!」
「あざっす! 任せてください!」
 体育会系クラブの面々からの野太い声にもすぐに応答する。
 鳳花部長には報告していないが、実は、彼ら体育会系のクラブには、裏取引の材料として、もう一つの特典が用意されていた。