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第4話「見た目と若さ」

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「男ありきで女、女ありきで男。これは絶対の摂理よ。男女間で、これだけ肉体的差があるにも関わらず、何とか平等に近い関係を保てつつあるのは『子孫を残す』という生物として、共通の本能が男女にあるからよ」  急に彼女が、熱を帯びて語り出した事に私は驚いた。 「確かに、その共通の目的がなかったら、体が小さく肉体的に弱い『女』は男の奴隷として生きる事になってても、おかしくないものね」 「まあ、概ねそれに近しい歴史は、あったでしょうけど……現代になって、ちょっとはマシになったのかもね。ただ、完全に女が男と同等の権力を手に入れたら、『男の国』と『女の国』に分裂して、戦争でも起こりそう。子孫を残すどころじゃなくなって、人類滅びそうね」  そう呟くと、彼女は可笑しそうにクスクスと可愛らしく笑った。 「ねえ、男が一番好きな年頃の女って、何歳だと思う?」 「え?……やっぱり、大人だけど若い年齢……二十歳から二十五歳くらい?」 「男は小さい子から年寄りまで、大体二十歳から二十一歳までの女が好きらしいわよ。自分の子孫を孕んで、産ませるのに最も適した年齢って、本能的に分かってるのね」   「だから、女の価値のもう一つは『若さ』って事?」   「そう。しかも、男は女を初見で瞬時に美しいか見分ける。要は性的対象として魅力的か。フェミニストが何て言おうが、『女』の存在価値を見出せるのは、性の対たる男だけ。その男が本能で若く美しい女が良いって言ってるのよ? 醜く若くない女に女の価値なんか、ないじゃない?」  彼女は無遠慮に答えた。 「それじゃあ、醜く若くない女は生きている価値ないって事? 美しくない女と、二十二歳以上の女が存在しなかったら、随分と人口減りそうね……」 「女として価値はないけど、性の概念を脱ぎ捨てて、ただの「人間」として、生きればいいのよ。女である必要なんかないわ」  そこまで言い切る彼女の容赦なさに脱帽しつつも、私に一つの疑問が生まれたのだ。  美しくなく、若くない女は、女として価値がないと、まるで自分以外の女を見下す彼女でさえも―― 「……いつかは、誰からも若さは確実に失われる……それは貴方も同じなんじゃない?」  彼女の美しく整った眉が、僅かにぴくりと動いた。私は彼女の醜く歪む怒った顔が見られるのではと、少し期待していた。  だが―― 「……そうね」  彼女はほんの少し、目を伏せて悲しそうに、でも今までで一番美しく微笑んでいた。  その、何物にも形容し難い微笑みは、私の心を掴んで離さなかった。  私が彼女と話をしたのは、これが最初で最後だった。 つづく



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第4話「見た目と若さ」

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「男ありきで女、女ありきで男。これは絶対の摂理よ。男女間で、これだけ肉体的差があるにも関わらず、何とか平等に近い関係を保てつつあるのは『子孫を残す』という生物として、共通の本能が男女にあるからよ」  急に彼女が、熱を帯びて語り出した事に私は驚いた。 「確かに、その共通の目的がなかったら、体が小さく肉体的に弱い『女』は男の奴隷として生きる事になってても、おかしくないものね」 「まあ、概ねそれに近しい歴史は、あったでしょうけど……現代になって、ちょっとはマシになったのかもね。ただ、完全に女が男と同等の権力を手に入れたら、『男の国』と『女の国』に分裂して、戦争でも起こりそう。子孫を残すどころじゃなくなって、人類滅びそうね」  そう呟くと、彼女は可笑しそうにクスクスと可愛らしく笑った。 「ねえ、男が一番好きな年頃の女って、何歳だと思う?」 「え?……やっぱり、大人だけど若い年齢……二十歳から二十五歳くらい?」 「男は小さい子から年寄りまで、大体二十歳から二十一歳までの女が好きらしいわよ。自分の子孫を孕んで、産ませるのに最も適した年齢って、本能的に分かってるのね」   「だから、女の価値のもう一つは『若さ』って事?」   「そう。しかも、男は女を初見で瞬時に美しいか見分ける。要は性的対象として魅力的か。フェミニストが何て言おうが、『女』の存在価値を見出せるのは、性の対たる男だけ。その男が本能で若く美しい女が良いって言ってるのよ? 醜く若くない女に女の価値なんか、ないじゃない?」  彼女は無遠慮に答えた。 「それじゃあ、醜く若くない女は生きている価値ないって事? 美しくない女と、二十二歳以上の女が存在しなかったら、随分と人口減りそうね……」 「女として価値はないけど、性の概念を脱ぎ捨てて、ただの「人間」として、生きればいいのよ。女である必要なんかないわ」  そこまで言い切る彼女の容赦なさに脱帽しつつも、私に一つの疑問が生まれたのだ。  美しくなく、若くない女は、女として価値がないと、まるで自分以外の女を見下す彼女でさえも―― 「……いつかは、誰からも若さは確実に失われる……それは貴方も同じなんじゃない?」  彼女の美しく整った眉が、僅かにぴくりと動いた。私は彼女の醜く歪む怒った顔が見られるのではと、少し期待していた。  だが―― 「……そうね」  彼女はほんの少し、目を伏せて悲しそうに、でも今までで一番美しく微笑んでいた。  その、何物にも形容し難い微笑みは、私の心を掴んで離さなかった。  私が彼女と話をしたのは、これが最初で最後だった。 つづく



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