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第5章〜白草四葉センセイの超恋愛学演習・応用〜⑧

ー/ー



「おや〜、おやおやおや〜。我が部の次期エースは、演奏以外のことでも注目されてるのかな〜? まったく、スミに置けませんニャ〜」

 声の主は、部長である早見先輩以上に、部員の統率に能力を発揮していそうな寿副部長だ。
 新しいオモチャを見つけたネコのような笑顔で、彼女は後輩の紅野の肩に手を回す。

「あ、あの……」

 そして、明らかに、彼女が困惑しているようすを楽しみながら、華奢な左腕を後輩に絡ませ、寿副部長は、反対の手で人差し指で

「ウリウリ……」

と、ほおをつついた。
 そんな二人を眺めながら、苦笑しつつ声を掛けるのは、早見部長。

「美奈子、もうそのへんで……」

 注意を受けた寿先輩は、

「は〜い、さおりんが、そう言うならね〜」

と言って、アッサリと紅野を解放した。

「ゴメンね、ちゃんと撮影のお礼を言おうと思ったんだけど……」

 副部長を筆頭に、いつも活発すぎる部員たちの言動に手を焼いているのだろうか、相変わらず苦笑いの表情を崩さないまま部長の早見先輩は、そう言ったあと、

「今日は、私たちと顧問のワガママに付き合ってくれて、ありがとう」

と、言葉を付け加えた。
 櫻井先生を指す単語を語る時だけ、かなり声のトーンを落としていたことは、ご愛嬌だ。

「いえいえ、素晴らしい演奏を間近で聞かせてもらえて、オレたちも感謝です。ありがとうございました」

 こちらが、そう応じると、

「黒田くんだっけ? あとは、私たちの演奏が《()え》るように、シッカリと編集を頼むよ! 特に、序盤のサックスのソロ・パートはね!!」

 ニシシ……と笑いながら寿副部長は、そう言ったあと、ハタと気が付いた、というように、こんなことをたずねてきた。

「あれ? そう言えば、キミ、どっかで見た顔だと思ったら(ミンスタ)のストーリーに、失恋動画を上げてなかった? 一週間くらい前に、二年の女子たちが盛り上がってたのを、ちょこっと見せてもらったんだけど……」

「あ〜! 編集の時間が迫ってきてるので、オレたちは、ここで失礼します!!」

声を上げ、自分が担当していたカメラを手早く片付けると、急いで退散することにする。
 もう一度、音楽教室全体に届くように、

「ありがとうございました! これで、失礼します!!」

と声を張り、一礼すると、室内に残った部員から

「ありがとうございました〜」

と言う声が聞こえ、離れた場所にいた櫻井先生も一礼をしてくれた。
 出口にあたる扉のところで、壮馬と合流し、退室の際に二人揃って、再度、礼をすると、そそくさという表現がピッタリ当てはまるように、音楽室をあとにする。
 去り際に、チラリと部員たちの方に目を向けると、ニヤニヤとした笑みを浮かべる寿先輩、柔和な微笑みをたたえて見送ってくれる早見先輩、そして、少し戸惑いながらもコチラの視線に気づきニコリと笑顔を見せてくれた紅野が視界に入った。
 自分も小さく手を振り返してから、音楽室の外に出ると、「フ〜〜」と、息をついた壮馬が、

「無事に終わって良かったね……それにしても、『吹奏楽部の三女神』と称えられている三人から笑顔で見送ってもらえるなんて、ボク達も、ずい分とエラくなったものだね」

と、口にした。

「紅野と早見先輩は、その名に相応しいかも知れないが、あの副部長も、女神サマなのか?」

ふと湧いた疑問を投げかけると、

「さぁ? 少なくとも部員からの信頼は篤いみたいじゃん? それに、ああいうタイプの先輩を好む男子もいるんじゃない? 知らんけど……」

相変わらず無責任な発言で応じる壮馬。
 そんな相棒はさらに、

「まぁ、あの三人の中には、ボク達じゃなくて、竜司を歓迎してたヒトもいるみたいだけど……」

と、言葉を続けた。
 自分たちが色恋沙汰とは無縁の学生生活を続けてきた、というのも大きな理由ではあるだろうが、長い付き合いながら、壮馬がこのテの話しに言及するのは珍しい。
 コイツなりの精一杯の皮肉であることは理解できたが、

「いや、そんなこともないだろう……」

などと、否定の言葉で応じても、口元を緩めずにいられた自信はない。
 そんな、こちらのようすにあきれたような表情で、

「まったく……こういう時は、ニヤけてしまうモノかも知れないけど、自分たちの活動は、手を抜かないようにね」

と、友人はため息まじりに語る。

(スマンスマン……)

心のなかで、相棒にそう謝りながら、ふと、まったく別の想いが脳裏をよぎった。

(さっき、思わず口にしてしまった、何度も練習をさせられた、アノ言葉の相手が、白草四葉だったら……)

(『えっ!? ナニナニ? 聞こえな〜い! もう一回! もう一回、言ってみ!?』なんて、しつこく絡んできたんだろうな……)

などと想像し、思わず苦笑いがこぼれる。

「なんだよ、またニヤけて……気持ち悪いなぁ……」

 そう言って顔をしかめる壮馬には、自身の表情の変化の理由を語れる訳もなく、

「いや、悪ぃ……」

と、一言だけ謝って、オレは編集を行う放送部の部室へと向かうことにした。


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「おや〜、おやおやおや〜。我が部の次期エースは、演奏以外のことでも注目されてるのかな〜? まったく、スミに置けませんニャ〜」
 声の主は、部長である早見先輩以上に、部員の統率に能力を発揮していそうな寿副部長だ。
 新しいオモチャを見つけたネコのような笑顔で、彼女は後輩の紅野の肩に手を回す。
「あ、あの……」
 そして、明らかに、彼女が困惑しているようすを楽しみながら、華奢な左腕を後輩に絡ませ、寿副部長は、反対の手で人差し指で
「ウリウリ……」
と、ほおをつついた。
 そんな二人を眺めながら、苦笑しつつ声を掛けるのは、早見部長。
「美奈子、もうそのへんで……」
 注意を受けた寿先輩は、
「は〜い、さおりんが、そう言うならね〜」
と言って、アッサリと紅野を解放した。
「ゴメンね、ちゃんと撮影のお礼を言おうと思ったんだけど……」
 副部長を筆頭に、いつも活発すぎる部員たちの言動に手を焼いているのだろうか、相変わらず苦笑いの表情を崩さないまま部長の早見先輩は、そう言ったあと、
「今日は、私たちと顧問のワガママに付き合ってくれて、ありがとう」
と、言葉を付け加えた。
 櫻井先生を指す単語を語る時だけ、かなり声のトーンを落としていたことは、ご愛嬌だ。
「いえいえ、素晴らしい演奏を間近で聞かせてもらえて、オレたちも感謝です。ありがとうございました」
 こちらが、そう応じると、
「黒田くんだっけ? あとは、私たちの演奏が《|映《ば》え》るように、シッカリと編集を頼むよ! 特に、序盤のサックスのソロ・パートはね!!」
 ニシシ……と笑いながら寿副部長は、そう言ったあと、ハタと気が付いた、というように、こんなことをたずねてきた。
「あれ? そう言えば、キミ、どっかで見た顔だと思ったら、《ミンスタ》のストーリーに、失恋動画を上げてなかった? 一週間くらい前に、二年の女子たちが盛り上がってたのを、ちょこっと見せてもらったんだけど……」
「あ〜! 編集の時間が迫ってきてるので、オレたちは、ここで失礼します!!」
声を上げ、自分が担当していたカメラを手早く片付けると、急いで退散することにする。
 もう一度、音楽教室全体に届くように、
「ありがとうございました! これで、失礼します!!」
と声を張り、一礼すると、室内に残った部員から
「ありがとうございました〜」
と言う声が聞こえ、離れた場所にいた櫻井先生も一礼をしてくれた。
 出口にあたる扉のところで、壮馬と合流し、退室の際に二人揃って、再度、礼をすると、そそくさという表現がピッタリ当てはまるように、音楽室をあとにする。
 去り際に、チラリと部員たちの方に目を向けると、ニヤニヤとした笑みを浮かべる寿先輩、柔和な微笑みをたたえて見送ってくれる早見先輩、そして、少し戸惑いながらもコチラの視線に気づきニコリと笑顔を見せてくれた紅野が視界に入った。
 自分も小さく手を振り返してから、音楽室の外に出ると、「フ〜〜」と、息をついた壮馬が、
「無事に終わって良かったね……それにしても、『吹奏楽部の三女神』と称えられている三人から笑顔で見送ってもらえるなんて、ボク達も、ずい分とエラくなったものだね」
と、口にした。
「紅野と早見先輩は、その名に相応しいかも知れないが、あの副部長も、女神サマなのか?」
ふと湧いた疑問を投げかけると、
「さぁ? 少なくとも部員からの信頼は篤いみたいじゃん? それに、ああいうタイプの先輩を好む男子もいるんじゃない? 知らんけど……」
相変わらず無責任な発言で応じる壮馬。
 そんな相棒はさらに、
「まぁ、あの三人の中には、ボク達じゃなくて、竜司を歓迎してたヒトもいるみたいだけど……」
と、言葉を続けた。
 自分たちが色恋沙汰とは無縁の学生生活を続けてきた、というのも大きな理由ではあるだろうが、長い付き合いながら、壮馬がこのテの話しに言及するのは珍しい。
 コイツなりの精一杯の皮肉であることは理解できたが、
「いや、そんなこともないだろう……」
などと、否定の言葉で応じても、口元を緩めずにいられた自信はない。
 そんな、こちらのようすにあきれたような表情で、
「まったく……こういう時は、ニヤけてしまうモノかも知れないけど、自分たちの活動は、手を抜かないようにね」
と、友人はため息まじりに語る。
(スマンスマン……)
心のなかで、相棒にそう謝りながら、ふと、まったく別の想いが脳裏をよぎった。
(さっき、思わず口にしてしまった、何度も練習をさせられた、アノ言葉の相手が、白草四葉だったら……)
(『えっ!? ナニナニ? 聞こえな〜い! もう一回! もう一回、言ってみ!?』なんて、しつこく絡んできたんだろうな……)
などと想像し、思わず苦笑いがこぼれる。
「なんだよ、またニヤけて……気持ち悪いなぁ……」
 そう言って顔をしかめる壮馬には、自身の表情の変化の理由を語れる訳もなく、
「いや、悪ぃ……」
と、一言だけ謝って、オレは編集を行う放送部の部室へと向かうことにした。