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第5章〜白草四葉センセイの超恋愛学演習・応用〜③

ー/ー



「か、可愛い………………」

 つぶやくように声を絞り出したオレの反応に満足したように笑みを浮かべると、自称・カリスマ講師は、今度は、少し恥ずかしそうな表情を作って口元を左手で覆った。
 その仕草に、またも反応が遅れてしまった、成績が良いと言えない生徒に、彼女は、再度、上向きの手のひらで、手招きのジェスチャーを送ってくる。

「カワイイ……」

 再び、つぶやくように発したオレの言葉を確認すると、白草はウンウンとうなずき、今度は目の前のテーブルに両肘をついて、両手にあごをのせ、やや物憂げな表情で、眉をハの字にした状態で虚空を見つめる。

「かわいい……」

 さすがに慣れてきたので、今回は、デキが良いと言えないオレも即座に反応することができた。
 続けて、白草は、右手の人差し指で目尻に触れ、涙を拭うような仕草を見せる。

「可愛い……」

 やや顔が火照るの感じながらつぶやくオレに、

「良く出来ました」

といった感じでうなずいて、講師は眠たそうな表情を作り、目を擦った。

「カワイイ」

 リズム良く応じるオレに、満足したような表情で、白草は髪の毛をかき上げる仕草をする。

「かわいいっ!」

 テンポ良く反応したオレに向かって、「やればデキるじゃない……」という風に首を縦に振って、彼女は、左手で後ろ髪を束ね、豊かな髪を結ぶ仕草をとった。

「可愛いっ!!」

 コツを掴んだこちらのようすに気を良くしたのか、はにかんだ表情で、白草は髪を結ぼうとしていた仕草をとき、つややかなロングヘアーを少し揺する。室内には、ほのかにシャンプーのフローラルな香りが漂った。

「カワイイッ!!!」

 これまでより、語気の強くなった、その一言に、少し目を丸くしながら、彼女は上着として羽織っているスプリングニットの袖を少し伸ばして、いわゆる『萌え袖』の状態を作り、両手でマグカップを持つような仕草で、温かい飲み物を冷ますように、「フ〜」と、息を吹きかける。

「かわい〜」

 その仕草に合わせるように、オレが余韻を含んだようなつぶやきが発したのを確認すると、同世代のカリスマ女子は、小首をかしげる仕草をした。

「可愛い?」

 彼女の仕草に同調するように、疑問形に近い感じでつぶやいた一言に対し、最後は「プ〜」と頬を膨らませて、プイッとそっぽを向く。

「ハァ……カワイイ…………」

 ため息をつくように、言葉を吐き出したオレに対し、白草は、

「うん、シチュエーションその2は、これくらいにしておいてあげる」

と言って、これまでになかった屈託のない笑顔を見せた。
 その表情こそが、もっとも魅力的に映ったが、そのことは、口に出さないでおく。
 そんな繊細な男子学生の心情を知ってか知らずか、白草四葉は、続けて、

「じゃあ、次は、シチュエーションその3ね!」

と、ロール・プレイングの継続をうながしてきた。

「げっ! まだ、やるのかよ!?」

 思わず声をあげるオレに、自身の主張には非の打ちドコロなど無いと言わんばかりに、白草は説得を続ける。

「当たり前じゃない! 何事も、実際の場面を想定した訓練が必要でしょ? どんなシチュエーションが良い? わたしが、実際に演じてみせるからさ」

 ――――――が、今度はオレの意志も固かった。

「もう、羞恥プレイは勘弁してくれ……これ以上は、こっちの精神力が持たない……」

「なに、こんなところで音をあげてるの!? 視線を反らしながら、『かわいいんじゃね?』って、言うだけじゃない? そしたら、『いま、なんて言ったの? もう一回言ってみて』って、確認するから」

 断固拒否の姿勢を貫こうとする生徒に、あくまで実演の再開をうながす講師。

「いや! だいたい紅野は、『いま、なんて言った?』とか、そんな風に絡んでこね〜から……」

 カリスマ講師の執拗な要求に、つい漏れてしまった一言。
 そのフレーズに、白草四葉は、露骨に顔をしかめた。

「あっ、そう……そういうこと言うんだ!? あのコは、わたしと違って、自分から男子に絡んだりしなさそうだモンね!」

 先ほどまで、ジャレ合うように語りかけてきた彼女がまとっている空気が、一瞬にして険悪なモノに変わろうとする。
 しかし、その雰囲気を察してか、オレたちのかたわらで、クロームブックの画面に目を向けながらも、仲介の言葉を発する声がした。

「今のは、竜司が悪いと思うよ〜。せっかく、白草さんがロープレの時間を作ってくれてるのに……」

 あるいはイイ加減、オレと白草の掛け合いに、ウンザリしていただけなのかも知れないが……。

「それより、コレを見てよ!」

 そう言って、彼は、タブレットPCの画面を二人の方に向けた。
 目の前の女子との間に流れかけた空気の悪さを払拭するかのように、ディスプレイを覗き込んだオレは、画面に表示されているPDF化されたパワーポイントの資料の文字を読み上げる。

「『恋愛の社会格差に対する行政支援の将来像』」
「『人生百年時代における婚姻と家庭に関する調査会』」

「なんだ、コレは……!?」

 壮馬が示したのは、国の行政機関主導で行われた研究会の資料を男女共同参画局が公表しているものだった。

「ボクが気になったのは、ココ!」

 友人は、そう言って、三十ページ以上あるスライドの二十六ページ目を表示させる。
 そのスライドには、こんな文言が書かれている。

『(六十代男性インタビュー)「小学校でチョコを貰えないと、ずっともらえない」』
『恋愛格差が(人生百年の間)ずっと継続するかも』
『そのため、ハンデを是正し、「恋愛弱者」にもチャンスを平等化するために「恋愛支援」が必要かも』

「そして、コレ……!!」

 壮馬が次のページを表示させると、

『結婚支援事業に、恋愛支援を組み込む』
『教育に組み込む――――――壁ドン・告白・プロポーズの練習、恋愛ゼミ』

との文言とともに、どこかの大学のゼミ室で撮影されたモノなのだろうか?
 男性が壁際に立つ女性に向かって、手を壁に付き、何かを言葉を発しようとしている姿が映った画像が添付されていた。


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「か、可愛い………………」
 つぶやくように声を絞り出したオレの反応に満足したように笑みを浮かべると、自称・カリスマ講師は、今度は、少し恥ずかしそうな表情を作って口元を左手で覆った。
 その仕草に、またも反応が遅れてしまった、成績が良いと言えない生徒に、彼女は、再度、上向きの手のひらで、手招きのジェスチャーを送ってくる。
「カワイイ……」
 再び、つぶやくように発したオレの言葉を確認すると、白草はウンウンとうなずき、今度は目の前のテーブルに両肘をついて、両手にあごをのせ、やや物憂げな表情で、眉をハの字にした状態で虚空を見つめる。
「かわいい……」
 さすがに慣れてきたので、今回は、デキが良いと言えないオレも即座に反応することができた。
 続けて、白草は、右手の人差し指で目尻に触れ、涙を拭うような仕草を見せる。
「可愛い……」
 やや顔が火照るの感じながらつぶやくオレに、
「良く出来ました」
といった感じでうなずいて、講師は眠たそうな表情を作り、目を擦った。
「カワイイ」
 リズム良く応じるオレに、満足したような表情で、白草は髪の毛をかき上げる仕草をする。
「かわいいっ!」
 テンポ良く反応したオレに向かって、「やればデキるじゃない……」という風に首を縦に振って、彼女は、左手で後ろ髪を束ね、豊かな髪を結ぶ仕草をとった。
「可愛いっ!!」
 コツを掴んだこちらのようすに気を良くしたのか、はにかんだ表情で、白草は髪を結ぼうとしていた仕草をとき、つややかなロングヘアーを少し揺する。室内には、ほのかにシャンプーのフローラルな香りが漂った。
「カワイイッ!!!」
 これまでより、語気の強くなった、その一言に、少し目を丸くしながら、彼女は上着として羽織っているスプリングニットの袖を少し伸ばして、いわゆる『萌え袖』の状態を作り、両手でマグカップを持つような仕草で、温かい飲み物を冷ますように、「フ〜」と、息を吹きかける。
「かわい〜」
 その仕草に合わせるように、オレが余韻を含んだようなつぶやきが発したのを確認すると、同世代のカリスマ女子は、小首をかしげる仕草をした。
「可愛い?」
 彼女の仕草に同調するように、疑問形に近い感じでつぶやいた一言に対し、最後は「プ〜」と頬を膨らませて、プイッとそっぽを向く。
「ハァ……カワイイ…………」
 ため息をつくように、言葉を吐き出したオレに対し、白草は、
「うん、シチュエーションその2は、これくらいにしておいてあげる」
と言って、これまでになかった屈託のない笑顔を見せた。
 その表情こそが、もっとも魅力的に映ったが、そのことは、口に出さないでおく。
 そんな繊細な男子学生の心情を知ってか知らずか、白草四葉は、続けて、
「じゃあ、次は、シチュエーションその3ね!」
と、ロール・プレイングの継続をうながしてきた。
「げっ! まだ、やるのかよ!?」
 思わず声をあげるオレに、自身の主張には非の打ちドコロなど無いと言わんばかりに、白草は説得を続ける。
「当たり前じゃない! 何事も、実際の場面を想定した訓練が必要でしょ? どんなシチュエーションが良い? わたしが、実際に演じてみせるからさ」
 ――――――が、今度はオレの意志も固かった。
「もう、羞恥プレイは勘弁してくれ……これ以上は、こっちの精神力が持たない……」
「なに、こんなところで音をあげてるの!? 視線を反らしながら、『かわいいんじゃね?』って、言うだけじゃない? そしたら、『いま、なんて言ったの? もう一回言ってみて』って、確認するから」
 断固拒否の姿勢を貫こうとする生徒に、あくまで実演の再開をうながす講師。
「いや! だいたい紅野は、『いま、なんて言った?』とか、そんな風に絡んでこね〜から……」
 カリスマ講師の執拗な要求に、つい漏れてしまった一言。
 そのフレーズに、白草四葉は、露骨に顔をしかめた。
「あっ、そう……そういうこと言うんだ!? あのコは、わたしと違って、自分から男子に絡んだりしなさそうだモンね!」
 先ほどまで、ジャレ合うように語りかけてきた彼女がまとっている空気が、一瞬にして険悪なモノに変わろうとする。
 しかし、その雰囲気を察してか、オレたちのかたわらで、クロームブックの画面に目を向けながらも、仲介の言葉を発する声がした。
「今のは、竜司が悪いと思うよ〜。せっかく、白草さんがロープレの時間を作ってくれてるのに……」
 あるいはイイ加減、オレと白草の掛け合いに、ウンザリしていただけなのかも知れないが……。
「それより、コレを見てよ!」
 そう言って、彼は、タブレットPCの画面を二人の方に向けた。
 目の前の女子との間に流れかけた空気の悪さを払拭するかのように、ディスプレイを覗き込んだオレは、画面に表示されているPDF化されたパワーポイントの資料の文字を読み上げる。
「『恋愛の社会格差に対する行政支援の将来像』」
「『人生百年時代における婚姻と家庭に関する調査会』」
「なんだ、コレは……!?」
 壮馬が示したのは、国の行政機関主導で行われた研究会の資料を男女共同参画局が公表しているものだった。
「ボクが気になったのは、ココ!」
 友人は、そう言って、三十ページ以上あるスライドの二十六ページ目を表示させる。
 そのスライドには、こんな文言が書かれている。
『(六十代男性インタビュー)「小学校でチョコを貰えないと、ずっともらえない」』
『恋愛格差が(人生百年の間)ずっと継続するかも』
『そのため、ハンデを是正し、「恋愛弱者」にもチャンスを平等化するために「恋愛支援」が必要かも』
「そして、コレ……!!」
 壮馬が次のページを表示させると、
『結婚支援事業に、恋愛支援を組み込む』
『教育に組み込む――――――壁ドン・告白・プロポーズの練習、恋愛ゼミ』
との文言とともに、どこかの大学のゼミ室で撮影されたモノなのだろうか?
 男性が壁際に立つ女性に向かって、手を壁に付き、何かを言葉を発しようとしている姿が映った画像が添付されていた。