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5話 使命のために

ー/ー



 私の魂が肉体へと戻ると同時に光の結界は解けた。
 どうやら無事に大聖堂の地下の聖域に戻ってこれたようね。

「殿下!」

 ミハイルは迫る勢いで駆け出した。それに気づいた私はそれを止めた。

「少し落ち着きなさい」
「一体何があったのでしょうか?殿下が光の結界で見えなくなっておりましたので」
「魂のみ神界に召されてました。加護と使命をいただくために」
「加護と使命?それは本当なのですか?本当であるならば直ぐにでも陛下に報告を…」
「いえ、報告は上げない、上げてはならない。報告なんてしたら余計な政治闘争や混乱を招いて使命の邪魔になるだけよ。それは私も困るの」
「…わかりました。ひとまず我々教会としては支援をしたいと考えておりますので、その内容を確認したいのですが…」
「そうね、支援してもらえるにしても内密にしてもらうし、教会関係者含め許可なく他人に漏らさないことが条件になるわ。敵はどこに潜んでいるかわからないもの」

 敵の所在が不明、それがミハイルにとって恐怖なのだろう。王国政府内部にも敵が潜んでる可能性を考慮しなければならない。陛下に報告すら出来ないのも情報を護るためである。

「わかりました。話は漏らさないと誓います」

 ミハイルは私をサポートするつもりでいるはずだ。知らなければ大神官としてサポートもできない。情報を求めるために意を決したわね。

「この使い捨ての魔導書に印されている契約魔法を使うわ。今回の話はそれだけ重いということよ」

 契約魔法、それは行動を縛る戒めである。これが使われるのは余程重要な案件だけというのが世の中の常識、それだけ重大な案件であり、そんなものまで持ち出す必要があった。
 ミハイルも疑問に思ったようだったけど、それを受け入れた。それだけリスクの高い話だと予想がついたからだ。

 私は神々より授けられし使命と加護、伝えられし敵の情報を彼に語った。
 ミハイルの予想通りだった為、私がアンの転生体であることに関しては驚かれはしなかった。
 しかし邪なる者、それは伝説上の危険な存在としてミハイルも知っていた。その復活の予兆というだけでも驚くのに十分な程である。
しかしその悪い話はそこで終わらない。連中がどこに潜むか判らない、これが一種の底しれぬ恐怖を感じていたはずね。私も非常に厄介だと思う。

「この話が漏れれば混乱が起きるわ。それは奴等にとって思う壺、極力情報を隠蔽し敵に悟られないよう隠れて動くしかないわ」
「確かにそのようですね…。これは非常に動きづらい…邪なる者の復活の情報が広まれば世界中がパニックに陥ります。こと慎重に動かねばなりません」
「そこまで分かれば十分よ、ひとまず数年は私は武力を鍛えつつ王女として大人しく過ごすつもりよ、支援は出奔して社会に出てから頼むわ。流石に社会に出ようにも今の私は幼すぎる」
「わかりました、そのように取り計らいます」
「一度第一応接室に戻りましょう。とは言っても体調は悪化してので補助お願いします」

 ミハイルに情報共有した私は体の不調をこらえながら神官たちの補助を受け第一応接室に戻り他の神官と面会した後、大聖堂を出た。
 玄関には既に馬車が横付けされており護衛とお世話係の侍女と騎士達が待機していた。王宮関係者たちはミハイルより状況と対処方法を確認し疲労が溜まった私を保護するように馬車に乗せるとすぐに王宮に帰還した。
 大聖堂に2時間近く滞在しその間には神界に招かれるというとんでもない経験をしたゆえの疲労である。当然馬車の中で寝落ちしてしまい王宮のベットに運ばれた。


 王宮に帰還した私はあまりの体調の悪さに1週間ほど寝込むことになった。

ーーーーーーーーーー

 体調が回復してからはその日のうちに国王である父に面会し回復したことを報告し、将来に向けて力をつけるべく訓練や勉強を進めた。特に今後の戦いで必要となる剣技と魔法に打ち込んだ。
 そのモチベーションは社会で生き残るために、邪なる者を打ち倒す為に、そして己を必要以上に縛られないようにするために努力の必要性があると気づいたからである。

 私は特権を捨てて王族としての義務を放棄してまで使命を果たす道を歩むことを決意していた。使命だけではなく今世は自由に生きたいという願望も含まれてはいるが…。

 そんなある日のこと、私は侍女たちが世間話をしているところを見つけ観察していた。

「アリシア殿下、最近大人しくなりましたね」
「えぇ、病を患い懲りたのでしょうか?」
「あのアリシア殿下ですよ?懲りると思いますか?」
「懲りたところでまたどこかでやんちゃしだすと思います」
「そうならないと良いですけどね」
「剣や魔法の熱意を見てると騎士団に入ろうとしてるのでは?と思ったりしますわ」
「まあ何であれ落ち着いてくれたので前よりは楽できそうじゃないかしら?」
「それはそうね」

 この会話を聞いて計画がバレてないことに少し安堵した。少しでもバレていたら監視が強まるのは明らかだからね。油断はしてはいけない。
 私は見つからない内に退散し王宮図書院で邪なる者について情報収集を開始することにした。
 これまで勉強嫌いから図書院は避けていた。それでも情報収集の為にはそうも言ってられないと思っていた。アンだった頃でも勉強は嫌いだったが必要な情報を集める必要性を嫌というほど感じていた為である。強い魔物や過酷な環境は対策がどこまでできるかが勝負だと身をもって知っている。

「思った以上に情報がないわね…」

 普通に考えれば存在しててほしくない存在は隠しておきたいのが人の常だ。この日、私はここで諦めた。
 翌日以降も図書院を訪れ情報収集に行うことにして図書院を後にした。
 因みに集める情報は邪なる者に限らなかった。今と昔の違いを調べるべく統計上の差異が無いか、地理に違いが無いか、庶民の暮らしに変わりが無いか、社会制度に変わりが無いか、出奔して生き残るためにこれでもかと言う程色んな資料に手を出していた。無論偽装のために貴族に関することも見るようにはしてた(ただし読んだふりであった)

 生活の変化は王宮の皆の認めるところとなった。


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 私の魂が肉体へと戻ると同時に光の結界は解けた。 どうやら無事に大聖堂の地下の聖域に戻ってこれたようね。
「殿下!」
 ミハイルは迫る勢いで駆け出した。それに気づいた私はそれを止めた。
「少し落ち着きなさい」
「一体何があったのでしょうか?殿下が光の結界で見えなくなっておりましたので」
「魂のみ神界に召されてました。加護と使命をいただくために」
「加護と使命?それは本当なのですか?本当であるならば直ぐにでも陛下に報告を…」
「いえ、報告は上げない、上げてはならない。報告なんてしたら余計な政治闘争や混乱を招いて使命の邪魔になるだけよ。それは私も困るの」
「…わかりました。ひとまず我々教会としては支援をしたいと考えておりますので、その内容を確認したいのですが…」
「そうね、支援してもらえるにしても内密にしてもらうし、教会関係者含め許可なく他人に漏らさないことが条件になるわ。敵はどこに潜んでいるかわからないもの」
 敵の所在が不明、それがミハイルにとって恐怖なのだろう。王国政府内部にも敵が潜んでる可能性を考慮しなければならない。陛下に報告すら出来ないのも情報を護るためである。
「わかりました。話は漏らさないと誓います」
 ミハイルは私をサポートするつもりでいるはずだ。知らなければ大神官としてサポートもできない。情報を求めるために意を決したわね。
「この使い捨ての魔導書に印されている契約魔法を使うわ。今回の話はそれだけ重いということよ」
 契約魔法、それは行動を縛る戒めである。これが使われるのは余程重要な案件だけというのが世の中の常識、それだけ重大な案件であり、そんなものまで持ち出す必要があった。
 ミハイルも疑問に思ったようだったけど、それを受け入れた。それだけリスクの高い話だと予想がついたからだ。
 私は神々より授けられし使命と加護、伝えられし敵の情報を彼に語った。
 ミハイルの予想通りだった為、私がアンの転生体であることに関しては驚かれはしなかった。
 しかし邪なる者、それは伝説上の危険な存在としてミハイルも知っていた。その復活の予兆というだけでも驚くのに十分な程である。
しかしその悪い話はそこで終わらない。連中がどこに潜むか判らない、これが一種の底しれぬ恐怖を感じていたはずね。私も非常に厄介だと思う。
「この話が漏れれば混乱が起きるわ。それは奴等にとって思う壺、極力情報を隠蔽し敵に悟られないよう隠れて動くしかないわ」
「確かにそのようですね…。これは非常に動きづらい…邪なる者の復活の情報が広まれば世界中がパニックに陥ります。こと慎重に動かねばなりません」
「そこまで分かれば十分よ、ひとまず数年は私は武力を鍛えつつ王女として大人しく過ごすつもりよ、支援は出奔して社会に出てから頼むわ。流石に社会に出ようにも今の私は幼すぎる」
「わかりました、そのように取り計らいます」
「一度第一応接室に戻りましょう。とは言っても体調は悪化してので補助お願いします」
 ミハイルに情報共有した私は体の不調をこらえながら神官たちの補助を受け第一応接室に戻り他の神官と面会した後、大聖堂を出た。
 玄関には既に馬車が横付けされており護衛とお世話係の侍女と騎士達が待機していた。王宮関係者たちはミハイルより状況と対処方法を確認し疲労が溜まった私を保護するように馬車に乗せるとすぐに王宮に帰還した。
 大聖堂に2時間近く滞在しその間には神界に招かれるというとんでもない経験をしたゆえの疲労である。当然馬車の中で寝落ちしてしまい王宮のベットに運ばれた。
 王宮に帰還した私はあまりの体調の悪さに1週間ほど寝込むことになった。
ーーーーーーーーーー
 体調が回復してからはその日のうちに国王である父に面会し回復したことを報告し、将来に向けて力をつけるべく訓練や勉強を進めた。特に今後の戦いで必要となる剣技と魔法に打ち込んだ。
 そのモチベーションは社会で生き残るために、邪なる者を打ち倒す為に、そして己を必要以上に縛られないようにするために努力の必要性があると気づいたからである。
 私は特権を捨てて王族としての義務を放棄してまで使命を果たす道を歩むことを決意していた。使命だけではなく今世は自由に生きたいという願望も含まれてはいるが…。
 そんなある日のこと、私は侍女たちが世間話をしているところを見つけ観察していた。
「アリシア殿下、最近大人しくなりましたね」
「えぇ、病を患い懲りたのでしょうか?」
「あのアリシア殿下ですよ?懲りると思いますか?」
「懲りたところでまたどこかでやんちゃしだすと思います」
「そうならないと良いですけどね」
「剣や魔法の熱意を見てると騎士団に入ろうとしてるのでは?と思ったりしますわ」
「まあ何であれ落ち着いてくれたので前よりは楽できそうじゃないかしら?」
「それはそうね」
 この会話を聞いて計画がバレてないことに少し安堵した。少しでもバレていたら監視が強まるのは明らかだからね。油断はしてはいけない。
 私は見つからない内に退散し王宮図書院で邪なる者について情報収集を開始することにした。
 これまで勉強嫌いから図書院は避けていた。それでも情報収集の為にはそうも言ってられないと思っていた。アンだった頃でも勉強は嫌いだったが必要な情報を集める必要性を嫌というほど感じていた為である。強い魔物や過酷な環境は対策がどこまでできるかが勝負だと身をもって知っている。
「思った以上に情報がないわね…」
 普通に考えれば存在しててほしくない存在は隠しておきたいのが人の常だ。この日、私はここで諦めた。
 翌日以降も図書院を訪れ情報収集に行うことにして図書院を後にした。
 因みに集める情報は邪なる者に限らなかった。今と昔の違いを調べるべく統計上の差異が無いか、地理に違いが無いか、庶民の暮らしに変わりが無いか、社会制度に変わりが無いか、出奔して生き残るためにこれでもかと言う程色んな資料に手を出していた。無論偽装のために貴族に関することも見るようにはしてた(ただし読んだふりであった)
 生活の変化は王宮の皆の認めるところとなった。