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「ほら桔平、動けって。お前は、あっち」
私の対角線上に座っていた人が、幹事に促されて面倒くさそうに席を立ち、私の隣にドカッと座った。
バニラのような甘い匂いが、ふわりと鼻腔をくすぐる。なんの香りだろう。香水?
「姫野愛茉です」
「最初に聞いたよ」
この私がニッコリ笑って挨拶したというのに、その人は表情を動かさず、こっちを一瞥しただけ。そして私の存在を無視するように、自分の取り皿に料理を盛って食べ始める。
……なんなのよ、この人。
「ごめんなさい。私、記憶力が悪いから、もう一度お名前教えてもらえますか?」
負けじと満面の笑みで食らいついてみる。
「浅尾桔平」
こっちを見もせず、ぶっきらぼうな言い方だった。
さっきの軽い男と違って、あまり……ううん、まったく愛想がない。でも耳障りのいい程よい低音の声は、かなりイケボ。結構……ううん、めちゃくちゃ好みかもしれない。
とてもカラフルで、変わったデザインの服装だけど……迷彩柄って、こんなに派手だっけ?
「浅尾さんですね。桔平さんって呼んだほうがいいですか?」
「どっちでも」
やっぱり、浅尾さんはこっちを見ない。間に分厚い壁を感じる……。
目つきが鋭いしガタイが良いから少し怖い印象だけど、今回のメンバーの中で浅尾さんがいちばん整った顔をしている。
ほかの三人とは異質というか、ひとりだけ雰囲気がまったく違う。なんていうか、色気がやばい。
でも席替え前もあまり喋ってなさそうだったし、そこまで楽しそうに見えないし、この人はどうしてこの場にいるのかしら。
「浅尾さん、あんまり楽しくないですか?」
「なにが?」
「この合コン」
「いや、別に?」
「でも、喋らないし……」
「ああ、飯が美味くてさ。朝から、なにも食ってなかったもんで」
そう言って少し微笑んだ顔に、思わずドキッとしてしまった。
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「ほら桔平、動けって。お前は、あっち」
私の対角線上に座っていた人が、幹事に促されて面倒くさそうに席を立ち、私の隣にドカッと座った。
バニラのような甘い匂いが、ふわりと鼻腔をくすぐる。なんの香りだろう。香水?
「姫野愛茉です」
「最初に聞いたよ」
この私がニッコリ笑って挨拶したというのに、その人は表情を動かさず、こっちを一瞥しただけ。そして私の存在を無視するように、自分の取り皿に料理を盛って食べ始める。
……なんなのよ、この人。
「ごめんなさい。私、記憶力が悪いから、もう一度お名前教えてもらえますか?」
負けじと満面の笑みで食らいついてみる。
「浅尾|桔平《きっぺい》」
こっちを見もせず、ぶっきらぼうな言い方だった。
さっきの軽い男と違って、あまり……ううん、まったく愛想がない。でも耳障りのいい程よい低音の声は、かなりイケボ。結構……ううん、めちゃくちゃ好みかもしれない。
とてもカラフルで、変わったデザインの服装だけど……迷彩柄って、こんなに派手だっけ?
「浅尾さんですね。桔平さんって呼んだほうがいいですか?」
「どっちでも」
やっぱり、浅尾さんはこっちを見ない。間に分厚い壁を感じる……。
目つきが鋭いしガタイが良いから少し怖い印象だけど、今回のメンバーの中で浅尾さんがいちばん整った顔をしている。
ほかの三人とは異質というか、ひとりだけ雰囲気がまったく違う。なんていうか、色気がやばい。
でも席替え前もあまり喋ってなさそうだったし、そこまで楽しそうに見えないし、この人はどうしてこの場にいるのかしら。
「浅尾さん、あんまり楽しくないですか?」
「なにが?」
「この合コン」
「いや、別に?」
「でも、喋らないし……」
「ああ、飯が美味くてさ。朝から、なにも食ってなかったもんで」
そう言って少し微笑んだ顔に、思わずドキッとしてしまった。