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第13話 大きな木 ~アグリサイド~

ー/ー



それにしても強い相手だった。
頭と体が離れるなんてどうなっているんだ。
苦戦はしたけど、なんとかアウルベアを倒すことが出来た。

「なんとかだったのはおぬしの方だけじゃ」

不意にゾルダがつぶやく。

「ん……
 そう思っただけじゃん。
 ……って、心を読むなよ」

実際に俺はギリギリだったんだし、ゾルダほど余裕がある訳ではない。

「相変わらず不格好な剣技じゃのぅ。
 なんとかならんのか」

ゾルダがブチブチと文句を言う。

「そう言われても、今までやったことないことだから。
 なんとかなっているならそれでいいだろ」

不格好でもいいではないか。
俺は俺なりにやっているんだから。

「こう、もっと、そうじゃのぅ……
 かっこよく勝てんもんかのぅ」

簡単に言うよな、ゾルダは。

「……
 出来ればやっているよ。
 いいだろ、結果出てるんだから」

まだそこまで戦っていないんだから、無理は言わないでくれよと思う。

「紙一重じゃ。
 今のうちになんとかしないと、後で苦しむぞ。
 結果だけじゃないぞ。
 過程も大事じゃ」

魔王のくせに正論をいいやがって。
わからんでもないが、まともに言われると正直傷つく。

「……善処するよ」

そうボソッと答える。
正論なだけに言い返すこともできない。

「ワシが手ほどきしてもいいからな」

相変わらず上から目線のゾルダだ。

「考えておくよ……」

そう言いながら、落ちた気持ちを奮い立たせようと、自分で両頬をパチンと叩いた。

よし、気持ちを切り替えてと。
ここ一帯はこれで落ち着くのかな。
あとは何か手がかりがないかの調査をしないと。

魔物が湧き出る洞窟か……
だいたいこういう類いは、封印が解けたとか、いたずらで社の宝珠を持って帰ったとか、そういうものでしょ。
でも、そんなことはアウラさん、言ってなかったな……

「ゾルダ~。
 お前も一緒に探してくれよ」

ゾルダは疲れたのか、アウルベアとの戦いの後は、剣の中に入って出てこない。

「ワシは嫌じゃ。
 疲れたので休憩じゃ。
 ただ索敵だけはしておてやるから安心せい」

きまぐれというかわがままというか。
魔王はそういうものなのか。

「ここら辺りをくまなく探すというのは結構大変だぞ。
 なんか魔力を感じたり、魔物が集まっていたり、するところはないの?」

ゾルダが何か感じていないか確認をしてみた。

「うーん。
 そういう意味じゃと、やっぱり大きな木のあたりかのぅ」

周りを見渡すが、大きい木がどこのことを指しているかはわからなかった。

「どういうこと?」

再度ゾルダに聞き返す。

「あれほど大きい木というのは、だいたい何かしらの力を持っているものじゃ。
 魔力なのか、霊力なのか、それはさまざまじゃがな。
 そうでないと、あれほどの大きさにならんからのぅ。
 大きい割には力が無いというか、力を感じないというか……
 そんな感じじゃったな」

しばらく腕を組み、空を見上げた。
あっ……
あの木か……

「なら、早く言ってよ。
 いろいろ探し回っちゃったじゃん」

ようやくゾルダの言っていた木を確認することが出来た。

「おぬしが探しているものなぞ、わからんし、興味がない。
 ワシはこの剣から出られればいいんじゃからのぅ」

ゾルダは憎まれ口は言うが、なんだかんだで肝心なところではヒントはだしてくれている。
わかっていて言っているのかどうかは……
とりあえずやみくもに探すよりかはいい。
急いで、大きな木のもとへ向かった。

道中にはグリズリーがいたが、そう多くもなかったこともあり、俺だけでなんとかなった。
強くなってきたこともあるのだろうし、戦い慣れてきたこともあるのだろう。
最初に比べると、簡単に倒せるようになった。

しばらく歩くと大きな木にたどり着いた。
根元や周りを調べてみると、人が1人は通れるぐらいの穴が木の根元にあった。
身をかがめて中を進んでいく。

少し奥まで入ると、立ってあるけるぐらいの空間になった。
壁を見ても、どうも自然に出来た感じはない。
誰かが手を入れたようになっている。

さらに奥へ進むと、大きな空間が広がっていた。
そこには小さな社が佇んでいる。

「この社はなんだろう」

近づいて覗き込む。
中には台座が置かれている。
その上に何かしらあった形跡はあるものの、落ちていたり、破壊されていたりはしなかった。

普通に考えると、ここに何かが置かれていたのだろう。
それが無くなったことが、今回の魔物たちが出てきた原因なのかもしれない。

「ゾルダは何かわかる?」

もしかしたらと思って聞いてみるが……

「ワシは探偵ではないぞ」

そっけない答えが返ってきた。

「探偵ではないのは知っている」

ゾルダなりにわかることがあるのではないかと思って再度聞き返すが……

「ワシは預言者じゃないぞ」

またそっけない返事が返ってきた。

「それも知っている。
 そうじゃなくて、気配とかなんかは感じないの?」

魔力だの霊力だのを感じにくい俺はゾルダのその察知能力に期待しているのだ。

「そうじゃのぉ……」

ゾルダが剣から出てきて社の周りや中を確認し始める。
魔力かなにかを感じるのだろうか。

「うーん……
 まったくもってわからん」

「わからんのかい」

思わず突っ込んでしまった。
集中して確認した割にはわからなかったようだ。

「大きな木の中に社を作っているということは、何かを祭っていたのは確かじゃと思う。
 これほど大きい木じゃから、何かしらの力を持っていたはずじゃし。
 それを取り出したのか何かしたのかはわからんが、その中心にあったものをここに飾っておったのじゃろう。
 それ以外はまったくわからん」

あれやこれやとゾルダはゾルダなりの見解を話す。

「そっか……
 アウラさんからも話は出てなかったしな」

他にも何かないか、くまなく周辺を探してみた。
ただ何も見つからなかった。
いろいろ探しても見つからないのであれば、もう何もないのだろう。

「一度このことをアウラさんへと報告するために、シルフィーネ村に戻ろう。
 まだいくつかの場所では魔物が出ているみたいだし、そっちの退治もゾルダはしたいだろうし」

分からないことも多いし、ここで考えていても仕方がない。
まずは戻って確認かな。

「とにかく小難しいことは考えとうない。
 その社の事はおぬしに任せる。
 ワシは戦う方が得意じゃ」

ゾルダは今は戦うこと以外はあまり興味が無いようだ。

「わかったわかった。
 ゾルダの方が強いし、何かあったら任せるよ」

社がある穴から抜け出すと、シルフィーネ村に向かって歩を進めていった。


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それにしても強い相手だった。
頭と体が離れるなんてどうなっているんだ。
苦戦はしたけど、なんとかアウルベアを倒すことが出来た。
「なんとかだったのはおぬしの方だけじゃ」
不意にゾルダがつぶやく。
「ん……
 そう思っただけじゃん。
 ……って、心を読むなよ」
実際に俺はギリギリだったんだし、ゾルダほど余裕がある訳ではない。
「相変わらず不格好な剣技じゃのぅ。
 なんとかならんのか」
ゾルダがブチブチと文句を言う。
「そう言われても、今までやったことないことだから。
 なんとかなっているならそれでいいだろ」
不格好でもいいではないか。
俺は俺なりにやっているんだから。
「こう、もっと、そうじゃのぅ……
 かっこよく勝てんもんかのぅ」
簡単に言うよな、ゾルダは。
「……
 出来ればやっているよ。
 いいだろ、結果出てるんだから」
まだそこまで戦っていないんだから、無理は言わないでくれよと思う。
「紙一重じゃ。
 今のうちになんとかしないと、後で苦しむぞ。
 結果だけじゃないぞ。
 過程も大事じゃ」
魔王のくせに正論をいいやがって。
わからんでもないが、まともに言われると正直傷つく。
「……善処するよ」
そうボソッと答える。
正論なだけに言い返すこともできない。
「ワシが手ほどきしてもいいからな」
相変わらず上から目線のゾルダだ。
「考えておくよ……」
そう言いながら、落ちた気持ちを奮い立たせようと、自分で両頬をパチンと叩いた。
よし、気持ちを切り替えてと。
ここ一帯はこれで落ち着くのかな。
あとは何か手がかりがないかの調査をしないと。
魔物が湧き出る洞窟か……
だいたいこういう類いは、封印が解けたとか、いたずらで社の宝珠を持って帰ったとか、そういうものでしょ。
でも、そんなことはアウラさん、言ってなかったな……
「ゾルダ~。
 お前も一緒に探してくれよ」
ゾルダは疲れたのか、アウルベアとの戦いの後は、剣の中に入って出てこない。
「ワシは嫌じゃ。
 疲れたので休憩じゃ。
 ただ索敵だけはしておてやるから安心せい」
きまぐれというかわがままというか。
魔王はそういうものなのか。
「ここら辺りをくまなく探すというのは結構大変だぞ。
 なんか魔力を感じたり、魔物が集まっていたり、するところはないの?」
ゾルダが何か感じていないか確認をしてみた。
「うーん。
 そういう意味じゃと、やっぱり大きな木のあたりかのぅ」
周りを見渡すが、大きい木がどこのことを指しているかはわからなかった。
「どういうこと?」
再度ゾルダに聞き返す。
「あれほど大きい木というのは、だいたい何かしらの力を持っているものじゃ。
 魔力なのか、霊力なのか、それはさまざまじゃがな。
 そうでないと、あれほどの大きさにならんからのぅ。
 大きい割には力が無いというか、力を感じないというか……
 そんな感じじゃったな」
しばらく腕を組み、空を見上げた。
あっ……
あの木か……
「なら、早く言ってよ。
 いろいろ探し回っちゃったじゃん」
ようやくゾルダの言っていた木を確認することが出来た。
「おぬしが探しているものなぞ、わからんし、興味がない。
 ワシはこの剣から出られればいいんじゃからのぅ」
ゾルダは憎まれ口は言うが、なんだかんだで肝心なところではヒントはだしてくれている。
わかっていて言っているのかどうかは……
とりあえずやみくもに探すよりかはいい。
急いで、大きな木のもとへ向かった。
道中にはグリズリーがいたが、そう多くもなかったこともあり、俺だけでなんとかなった。
強くなってきたこともあるのだろうし、戦い慣れてきたこともあるのだろう。
最初に比べると、簡単に倒せるようになった。
しばらく歩くと大きな木にたどり着いた。
根元や周りを調べてみると、人が1人は通れるぐらいの穴が木の根元にあった。
身をかがめて中を進んでいく。
少し奥まで入ると、立ってあるけるぐらいの空間になった。
壁を見ても、どうも自然に出来た感じはない。
誰かが手を入れたようになっている。
さらに奥へ進むと、大きな空間が広がっていた。
そこには小さな社が佇んでいる。
「この社はなんだろう」
近づいて覗き込む。
中には台座が置かれている。
その上に何かしらあった形跡はあるものの、落ちていたり、破壊されていたりはしなかった。
普通に考えると、ここに何かが置かれていたのだろう。
それが無くなったことが、今回の魔物たちが出てきた原因なのかもしれない。
「ゾルダは何かわかる?」
もしかしたらと思って聞いてみるが……
「ワシは探偵ではないぞ」
そっけない答えが返ってきた。
「探偵ではないのは知っている」
ゾルダなりにわかることがあるのではないかと思って再度聞き返すが……
「ワシは預言者じゃないぞ」
またそっけない返事が返ってきた。
「それも知っている。
 そうじゃなくて、気配とかなんかは感じないの?」
魔力だの霊力だのを感じにくい俺はゾルダのその察知能力に期待しているのだ。
「そうじゃのぉ……」
ゾルダが剣から出てきて社の周りや中を確認し始める。
魔力かなにかを感じるのだろうか。
「うーん……
 まったくもってわからん」
「わからんのかい」
思わず突っ込んでしまった。
集中して確認した割にはわからなかったようだ。
「大きな木の中に社を作っているということは、何かを祭っていたのは確かじゃと思う。
 これほど大きい木じゃから、何かしらの力を持っていたはずじゃし。
 それを取り出したのか何かしたのかはわからんが、その中心にあったものをここに飾っておったのじゃろう。
 それ以外はまったくわからん」
あれやこれやとゾルダはゾルダなりの見解を話す。
「そっか……
 アウラさんからも話は出てなかったしな」
他にも何かないか、くまなく周辺を探してみた。
ただ何も見つからなかった。
いろいろ探しても見つからないのであれば、もう何もないのだろう。
「一度このことをアウラさんへと報告するために、シルフィーネ村に戻ろう。
 まだいくつかの場所では魔物が出ているみたいだし、そっちの退治もゾルダはしたいだろうし」
分からないことも多いし、ここで考えていても仕方がない。
まずは戻って確認かな。
「とにかく小難しいことは考えとうない。
 その社の事はおぬしに任せる。
 ワシは戦う方が得意じゃ」
ゾルダは今は戦うこと以外はあまり興味が無いようだ。
「わかったわかった。
 ゾルダの方が強いし、何かあったら任せるよ」
社がある穴から抜け出すと、シルフィーネ村に向かって歩を進めていった。