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第53話 筋肉先生を倒さないと大変!

ー/ー



「りょうた、止めないで頂戴。これは絶対に負けられない戦いなの」
 筋肉先生との戦いへ赴くのりこは、さながら出兵する戦士そのもの。何人たりとも、彼女達を止めることは叶わないだろう。
『積年の雪辱は、決起の狼煙だ! 本陣のその向こう、敵将を討伐する勇者!!』
 一同はなおも『進軍の語り部』を口ずさむ。鬼気迫る表情の集団に周囲は恐れ戦くばかり。
あまりの殺気に、さすがのりょうたも身を退かざるを得ない。
「あわわわ......」
 集団から撤退したものの、りょうたはその恐怖を振り払って駆け出す。彼の目指す先はどこなのだろうか?
――
 ここは、小学校の校門前。ムキムキタンクトップの肥瑠が竹刀を携え、目を光らせている。
「今日の筋肉占いは大吉だったはず。卑劣極まりない敵に、僕のヒラメ筋が憤りを隠せないよ!」
 のりこ達へ憤怒して、肥瑠は一層目が血走っている。怒気に満ちた雰囲気に、児童達は彼を避けるようして下校している。
「......おや、ようやくお出ましみたいだね?」
 待ち侘びたと言わんばかりの表情で、迎撃態勢に入る肥瑠。彼は剣道における中段の構えで、彼らを迎撃する腹積もりのようだ。
 中段は正眼の構えとも言われ、攻防一致の構えである。今の彼に死角など考えられないが、のりこたちはどう立ち向かうのか?
「ここはSK(さるかに)作戦一択。みんな、作戦通りに行くわよっ!!」
 羽馴軍師のりこが指示を掛ける。彼女の自信に満ちた風格はさながら黒田官兵衛だ。
『おうっ!!!』
 のりこの指示に呼応して一同は肥瑠に突進していく。果たして、のりこ達はさるかに合戦からどのようなヒントを得たのだろうか??
「前からの突進か。認めたくないものだね、若さ故の過ちと言うものを......」
 一同の突進に相対しても肥瑠は動じない。その佇まいはさながら、どもんの求める木鶏そのものだ。
「......飛ぶ斬撃を、見たことがありますか?」
 やや遠間でこたろうが進撃を止め、抜刀の構えを取る。本来の抜刀術は鍔元に右手を添えるのだが、どういうわけか彼は柄頭に右手を添えている。
 これでは刀身を長く持つことになり、抜刀には不向きなのだが......?
「明日香神風一刀流・飛燕(ひえん)!!!」
 こたろうは肚に力を込め、腰の回転を最大限利用する。それと同時に木刀が投擲され、肥瑠目掛けてミサイルの如く飛来してくる。
 そう、飛燕とは刀を投擲することで敵を刺殺する抜刀術なのである!!
「......っ!!?」
 あまりにも突飛な一撃に肥瑠は動揺。咄嗟に竹刀を振り被ってこたろうの一撃を叩き落とした。
「何て狂暴な剣なんだ......!!」
 数々の戦国武将が畏怖した剣術に、ムキムキタンクトップの肥瑠ですら冷や汗を滲ませた。一歩間違えばその一撃で倒されていたかもしれない。
 そういう意味で、明日香神風一刀流は凶悪な殺人剣なのだ。
「これは想定内! 次っ!!!」
 軍師のりこは、即座に次の作戦を指示する。こたろうの一撃を放つ間に、たけるが肥瑠との間合いを詰めていた。
「......いつの間にっ!!?」
 足が臭いことをアイデンティティにされつつあるが、たけるは校内でもトップクラスの身体能力を持
つ。その中でも、特に駆け足の速さはずば抜けている。
 彼にとって、瞬時に間合いを詰めるなどお茶の子さいさい。
 間合いを詰めたたけるは、竹刀の振り下ろされた肥瑠の両腕へ飛び移る。その動きは、さながら猫のように身軽だ。
「僕を踏み台にしたっ!?」
 肥瑠が困惑する間に、たけるは肥瑠の顔面へ飛び蹴りをお見舞いする。だが間一髪のところで肥瑠は首を振り、またしても攻撃は届かない。
「......うっっっ!!?」
 辛うじてたけるの攻撃を躱したものの、足の臭さまでは躱すことが出来なかった。アンモニアの鼻を(つんざ)く悪臭、肥瑠は思わず両手で鼻を塞ぐ。
「これも想定内。一気に決めるわよ、どもん!!」
 たけるの攻撃に続いて、どもんは肥瑠の懐へ潜り込んでいた。あまりの悪臭に、肥瑠の下半身は無防備となっていた。
「極東流・金剛玉砕拳!!」
 どもんの重い一撃が、肥瑠の股間へ打ち込まれる。その一撃は金剛石(ダイヤモンド)を粉々にするほどで、男子にとって発狂を禁じ得ない。
「うっっっ......!!!」
 痛恨の一撃を受けた肥瑠は、無言で崩れ落ちる。平和の象徴が崩壊し、児童達は震撼した。
『......やったぁっっっ!!! 筋肉先生を倒したぁぁぁっっっ!!!』
 一方、肥瑠を打倒したのりこ達は歓喜に包まれていた。一致団結して掴んだ勝利は、美酒にも等しい。
「君達は......強い......!」
 悶絶しながらも、肥瑠は彼らを称賛した。その強さを認める姿は、まさに教師の鑑だ。
「こんな悪ガキ共に負けたんかぁ? 教育委員会で懲罰もんやでぇ?」
 そんな矢先、烈火の如く怒れる拳を構えて現れた壮年男性教師。彼は乾小学校の教頭を務める木場嶋竜人である。
 強面にサングラスという組み合わせが、いかにも危ない世界の人物を連想させてしまう。
「嘘......サラマンダー教頭......!?」
 さすがの軍師のりこも、これは想定外。彼の怒れる鉄槌で、多くの非行児童達が更生したという。
 そのような経緯から、彼は『サラマンダー教頭』の異名を持つ。そんな猛者を、のりこたちの手に負えるはずもない。
「この戦いを終わらせに来たよ、おねえちゃん!」
 竜人の物陰から顔を出したのは、どこかへ逃亡したはずのりょうただった。彼が竜人へ助けを求めたことは想像に難くない。
「戦いは......終わりよ!」
 自らの敗北を悟ったのりこは降伏せざるを得なかった。その後のりこ達は職員室へ呼び出され、厳しく叱られた。


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「りょうた、止めないで頂戴。これは絶対に負けられない戦いなの」
 筋肉先生との戦いへ赴くのりこは、さながら出兵する戦士そのもの。何人たりとも、彼女達を止めることは叶わないだろう。
『積年の雪辱は、決起の狼煙だ! 本陣のその向こう、敵将を討伐する勇者!!』
 一同はなおも『進軍の語り部』を口ずさむ。鬼気迫る表情の集団に周囲は恐れ戦くばかり。
あまりの殺気に、さすがのりょうたも身を退かざるを得ない。
「あわわわ......」
 集団から撤退したものの、りょうたはその恐怖を振り払って駆け出す。彼の目指す先はどこなのだろうか?
――
 ここは、小学校の校門前。ムキムキタンクトップの肥瑠が竹刀を携え、目を光らせている。
「今日の筋肉占いは大吉だったはず。卑劣極まりない敵に、僕のヒラメ筋が憤りを隠せないよ!」
 のりこ達へ憤怒して、肥瑠は一層目が血走っている。怒気に満ちた雰囲気に、児童達は彼を避けるようして下校している。
「......おや、ようやくお出ましみたいだね?」
 待ち侘びたと言わんばかりの表情で、迎撃態勢に入る肥瑠。彼は剣道における中段の構えで、彼らを迎撃する腹積もりのようだ。
 中段は正眼の構えとも言われ、攻防一致の構えである。今の彼に死角など考えられないが、のりこたちはどう立ち向かうのか?
「ここは|SK《さるかに》作戦一択。みんな、作戦通りに行くわよっ!!」
 羽馴軍師のりこが指示を掛ける。彼女の自信に満ちた風格はさながら黒田官兵衛だ。
『おうっ!!!』
 のりこの指示に呼応して一同は肥瑠に突進していく。果たして、のりこ達はさるかに合戦からどのようなヒントを得たのだろうか??
「前からの突進か。認めたくないものだね、若さ故の過ちと言うものを......」
 一同の突進に相対しても肥瑠は動じない。その佇まいはさながら、どもんの求める木鶏そのものだ。
「......飛ぶ斬撃を、見たことがありますか?」
 やや遠間でこたろうが進撃を止め、抜刀の構えを取る。本来の抜刀術は鍔元に右手を添えるのだが、どういうわけか彼は柄頭に右手を添えている。
 これでは刀身を長く持つことになり、抜刀には不向きなのだが......?
「明日香神風一刀流・|飛燕《ひえん》!!!」
 こたろうは肚に力を込め、腰の回転を最大限利用する。それと同時に木刀が投擲され、肥瑠目掛けてミサイルの如く飛来してくる。
 そう、飛燕とは刀を投擲することで敵を刺殺する抜刀術なのである!!
「......っ!!?」
 あまりにも突飛な一撃に肥瑠は動揺。咄嗟に竹刀を振り被ってこたろうの一撃を叩き落とした。
「何て狂暴な剣なんだ......!!」
 数々の戦国武将が畏怖した剣術に、ムキムキタンクトップの肥瑠ですら冷や汗を滲ませた。一歩間違えばその一撃で倒されていたかもしれない。
 そういう意味で、明日香神風一刀流は凶悪な殺人剣なのだ。
「これは想定内! 次っ!!!」
 軍師のりこは、即座に次の作戦を指示する。こたろうの一撃を放つ間に、たけるが肥瑠との間合いを詰めていた。
「......いつの間にっ!!?」
 足が臭いことをアイデンティティにされつつあるが、たけるは校内でもトップクラスの身体能力を持
つ。その中でも、特に駆け足の速さはずば抜けている。
 彼にとって、瞬時に間合いを詰めるなどお茶の子さいさい。
 間合いを詰めたたけるは、竹刀の振り下ろされた肥瑠の両腕へ飛び移る。その動きは、さながら猫のように身軽だ。
「僕を踏み台にしたっ!?」
 肥瑠が困惑する間に、たけるは肥瑠の顔面へ飛び蹴りをお見舞いする。だが間一髪のところで肥瑠は首を振り、またしても攻撃は届かない。
「......うっっっ!!?」
 辛うじてたけるの攻撃を躱したものの、足の臭さまでは躱すことが出来なかった。アンモニアの鼻を|劈《つんざ》く悪臭、肥瑠は思わず両手で鼻を塞ぐ。
「これも想定内。一気に決めるわよ、どもん!!」
 たけるの攻撃に続いて、どもんは肥瑠の懐へ潜り込んでいた。あまりの悪臭に、肥瑠の下半身は無防備となっていた。
「極東流・金剛玉砕拳!!」
 どもんの重い一撃が、肥瑠の股間へ打ち込まれる。その一撃は|金剛石《ダイヤモンド》を粉々にするほどで、男子にとって発狂を禁じ得ない。
「うっっっ......!!!」
 痛恨の一撃を受けた肥瑠は、無言で崩れ落ちる。平和の象徴が崩壊し、児童達は震撼した。
『......やったぁっっっ!!! 筋肉先生を倒したぁぁぁっっっ!!!』
 一方、肥瑠を打倒したのりこ達は歓喜に包まれていた。一致団結して掴んだ勝利は、美酒にも等しい。
「君達は......強い......!」
 悶絶しながらも、肥瑠は彼らを称賛した。その強さを認める姿は、まさに教師の鑑だ。
「こんな悪ガキ共に負けたんかぁ? 教育委員会で懲罰もんやでぇ?」
 そんな矢先、烈火の如く怒れる拳を構えて現れた壮年男性教師。彼は乾小学校の教頭を務める木場嶋竜人である。
 強面にサングラスという組み合わせが、いかにも危ない世界の人物を連想させてしまう。
「嘘......サラマンダー教頭......!?」
 さすがの軍師のりこも、これは想定外。彼の怒れる鉄槌で、多くの非行児童達が更生したという。
 そのような経緯から、彼は『サラマンダー教頭』の異名を持つ。そんな猛者を、のりこたちの手に負えるはずもない。
「この戦いを終わらせに来たよ、おねえちゃん!」
 竜人の物陰から顔を出したのは、どこかへ逃亡したはずのりょうただった。彼が竜人へ助けを求めたことは想像に難くない。
「戦いは......終わりよ!」
 自らの敗北を悟ったのりこは降伏せざるを得なかった。その後のりこ達は職員室へ呼び出され、厳しく叱られた。