48. 銀色に輝くシャトル

ー/ー



 大理石の回廊を進んでいくと、徐々にフワフワとしてきて体が軽くなってきた。突き当りから外を見ると、大小さまざまな宇宙船が所狭しと並んでいる。スペースポートまでやってきたのだ。

「うわぁ……」

 ソリスはその初めて見るSFのような光景に思わず感嘆の声を上げてしまう。

 豪華客船のような壮麗な物から、全長数キロはありそうなコンテナ船、そしてなぜか軍事目的に見える漆黒の戦闘艦まで停泊していた。そのバラエティの豊富さに神殿の活動の多彩さが垣間見える。

「僕らの船はアレだゾ!」

 シアンの指さした先には小型のシャトルが停泊していた。銀色の金属光沢が美しい、未来の科学が創造した船体はまるで空間を斬り裂くような鋭い翼が鋭角に広がり、海王星からの青い光を反射して幻想的な輝きを放っている。後方の二つのエンジンからは静かに青白い光が放たれ、出発準備は整っている様子だった。

「えっ……? あ、あの船……?」

 想像もしていなかった宇宙旅行の始まりにソリスの胸が高鳴る。これから一体どんな冒険になるのか分からないが、きっと一生忘れられない旅になるに違いない。ソリスはゴクリとのどを鳴らした。


       ◇


「セキュリティ解除! エネルギー充填100%! コンディショングリーン! エンジン始動!」

 シアンはシャトルのコクピットで画面に表示される計器を見ながらボタンを押していく。シャトルの室内はオレンジ色を基調とした近未来的なインテリアで、爽やかな柑橘(かんきつ)系の香りすら漂う快適な空間だった。

「キミはコレね」

 シアンはシルバーのペット服みたいな固定具を子ネコの体に装着すると、シートベルトにつなげた。

 ウニャァ……。

 半ば中吊りみたいになり、その慣れない感覚につい声が出てしまうソリス。

「衝撃には備えないとだからね。直撃受けないことを祈っててよ? ウシシシ……」

 シアンは悪い顔で笑った。

 ウニャッ!?

 ソリスはこの船で戦闘するかもしれないという事態にブルっと震えた。観光ではないことは分かってはいたが、宇宙での戦闘などどうなるのか全く想像もつかない。とは言え、ボロボロになってしまった自分の星を直すためには甘いことも言っていられないのだ。ソリスは口を結び、ギュッと目をつぶった。

「では、キミの星までひとっ飛び行きますか!」

 シアンはソリスの顔をのぞき込み、ウインクする。

「お、お願いします」

 女神さえ何ともならないその壊滅的事態をこの女の子は解決できるという。しかしそれには苛烈な戦闘が伴うらしい。ソリスはその想像を絶するOJTにブルっと身体が震えた。


      ◇


「航路クリアランスOK! 発進!」

 ソリスは画面をパシパシっと叩くと、ググッと操縦桿を引き上げる。

 キュィィィィィン!

 景気良くエンジンが吹け上がり、ゆっくりとシャトルが動き出す――――。

 ソリスは少しずつ流れていく風景に新たな人生の一ページが始まったような感覚を受け、並んでいる船たちを感慨深く眺めた。

 振り返れば、神殿の壮大な全貌(ぜんぼう)が現れてくる。満天の星々の中に全長数十キロはあろうかという巨大な葉巻型のクリスタルが輝き、随所に金属と大理石を巧みに組み合わされた構造が見られる。内部には緑も広がり、きっと森などもあるのだろう。その未来的で壮麗な造形に、ソリスは思わず感嘆のため息を漏らした。

 スペースポートを抜けるとシアンはググッと一気に操縦桿を引き上げる。

「それ行けー! きゃははは!」

 ドン! という衝撃音とともに爆発的なGがのしかかってくる。

 ウ、ウニャァァァ……。

 その強烈な加速にソリスは目を白黒させた。

 ドンドン小さく、見えなくなっていく神殿。仲間の命だけでなく、星に住む街の人たちや多くの生きとし生けるもの全ての命運がこの旅にかかっている。そう思うとソリスは身の引き締まる思いがした。


        ◇


 その時だった。

 ヴィーン! ヴィーン!

 けたたましく警告音が響き渡る。

『照準ロックされました。ミサイル着弾まで十、九、八……』

 スピーカーから恐ろしいメッセージが流れる。きっと女神の言っていたテロリストだろう。問答無用に撃ってくるその恐るべき攻撃性にソリスは戦慄した。

「バカめ! そんなの当たるかってんだよ!」

 シアンは画面をパシパシっと叩くと一気に操縦桿をひねりあげる。

 直後訪れる強烈な横G。

 ぐほぉぉ……。

 頭に血が行かなくなるくらいの激しい加速に、ソリスは意識を保つのに必死だった。

 刹那、閃光を放ちながら近づいてきた何かが、目の前ギリギリをかすめていく――――。

 ウニャァ!

 パン! パン! という衝撃波がシャトルを襲い、船体はグルグルとキリもみ状態となった。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 49. 逆神戦線


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 大理石の回廊を進んでいくと、徐々にフワフワとしてきて体が軽くなってきた。突き当りから外を見ると、大小さまざまな宇宙船が所狭しと並んでいる。スペースポートまでやってきたのだ。
「うわぁ……」
 ソリスはその初めて見るSFのような光景に思わず感嘆の声を上げてしまう。
 豪華客船のような壮麗な物から、全長数キロはありそうなコンテナ船、そしてなぜか軍事目的に見える漆黒の戦闘艦まで停泊していた。そのバラエティの豊富さに神殿の活動の多彩さが垣間見える。
「僕らの船はアレだゾ!」
 シアンの指さした先には小型のシャトルが停泊していた。銀色の金属光沢が美しい、未来の科学が創造した船体はまるで空間を斬り裂くような鋭い翼が鋭角に広がり、海王星からの青い光を反射して幻想的な輝きを放っている。後方の二つのエンジンからは静かに青白い光が放たれ、出発準備は整っている様子だった。
「えっ……? あ、あの船……?」
 想像もしていなかった宇宙旅行の始まりにソリスの胸が高鳴る。これから一体どんな冒険になるのか分からないが、きっと一生忘れられない旅になるに違いない。ソリスはゴクリとのどを鳴らした。
       ◇
「セキュリティ解除! エネルギー充填100%! コンディショングリーン! エンジン始動!」
 シアンはシャトルのコクピットで画面に表示される計器を見ながらボタンを押していく。シャトルの室内はオレンジ色を基調とした近未来的なインテリアで、爽やかな|柑橘《かんきつ》系の香りすら漂う快適な空間だった。
「キミはコレね」
 シアンはシルバーのペット服みたいな固定具を子ネコの体に装着すると、シートベルトにつなげた。
 ウニャァ……。
 半ば中吊りみたいになり、その慣れない感覚につい声が出てしまうソリス。
「衝撃には備えないとだからね。直撃受けないことを祈っててよ? ウシシシ……」
 シアンは悪い顔で笑った。
 ウニャッ!?
 ソリスはこの船で戦闘するかもしれないという事態にブルっと震えた。観光ではないことは分かってはいたが、宇宙での戦闘などどうなるのか全く想像もつかない。とは言え、ボロボロになってしまった自分の星を直すためには甘いことも言っていられないのだ。ソリスは口を結び、ギュッと目をつぶった。
「では、キミの星までひとっ飛び行きますか!」
 シアンはソリスの顔をのぞき込み、ウインクする。
「お、お願いします」
 女神さえ何ともならないその壊滅的事態をこの女の子は解決できるという。しかしそれには苛烈な戦闘が伴うらしい。ソリスはその想像を絶するOJTにブルっと身体が震えた。
      ◇
「航路クリアランスOK! 発進!」
 ソリスは画面をパシパシっと叩くと、ググッと操縦桿を引き上げる。
 キュィィィィィン!
 景気良くエンジンが吹け上がり、ゆっくりとシャトルが動き出す――――。
 ソリスは少しずつ流れていく風景に新たな人生の一ページが始まったような感覚を受け、並んでいる船たちを感慨深く眺めた。
 振り返れば、神殿の壮大な|全貌《ぜんぼう》が現れてくる。満天の星々の中に全長数十キロはあろうかという巨大な葉巻型のクリスタルが輝き、随所に金属と大理石を巧みに組み合わされた構造が見られる。内部には緑も広がり、きっと森などもあるのだろう。その未来的で壮麗な造形に、ソリスは思わず感嘆のため息を漏らした。
 スペースポートを抜けるとシアンはググッと一気に操縦桿を引き上げる。
「それ行けー! きゃははは!」
 ドン! という衝撃音とともに爆発的なGがのしかかってくる。
 ウ、ウニャァァァ……。
 その強烈な加速にソリスは目を白黒させた。
 ドンドン小さく、見えなくなっていく神殿。仲間の命だけでなく、星に住む街の人たちや多くの生きとし生けるもの全ての命運がこの旅にかかっている。そう思うとソリスは身の引き締まる思いがした。
        ◇
 その時だった。
 ヴィーン! ヴィーン!
 けたたましく警告音が響き渡る。
『照準ロックされました。ミサイル着弾まで十、九、八……』
 スピーカーから恐ろしいメッセージが流れる。きっと女神の言っていたテロリストだろう。問答無用に撃ってくるその恐るべき攻撃性にソリスは戦慄した。
「バカめ! そんなの当たるかってんだよ!」
 シアンは画面をパシパシっと叩くと一気に操縦桿をひねりあげる。
 直後訪れる強烈な横G。
 ぐほぉぉ……。
 頭に血が行かなくなるくらいの激しい加速に、ソリスは意識を保つのに必死だった。
 刹那、閃光を放ちながら近づいてきた何かが、目の前ギリギリをかすめていく――――。
 ウニャァ!
 パン! パン! という衝撃波がシャトルを襲い、船体はグルグルとキリもみ状態となった。