第9話 魔物の巣窟 ~アグリサイド~
ー/ー
俺はシルフィーネ村へ着くと村長のところへ向かった。
途中ゾルダが姿を現したところは、ビックリしたけど。
周りの人たちも特に気にする素振りもないので、大丈夫かな。
村の中で暴れなければいいが……
村の長の屋敷へとたどり着くと、ドアをノックした。
「コンコン」
「アウレストリア王国の国王からの指令で来たアグリというものです」
ドアを開けると、美しい女の人が出てきた。
村の長というから、てっきりおじいさんが出てくるのかと思っていた。
「お待ちしておりました。
国王様からは勇者様が来られるとの連絡をいただいています」
美しい女性は穏やかな口調で話す。
「私がこのシルフィーネ村の長、アウラと申します」
丁寧な挨拶を受けて、中の応接間に通された。
聞けば、アウラさんはシルフ族という種族らしい。
人よりは長生きらしく、132歳とのことだ。
応接間の椅子に座り、状況の確認をする。
「国王からは魔物が増えてきているからという話でしたが……
今の状況はどうなっていますか?」
「はい。ここ最近いつもと違う魔物が増えてきて、往来も難しい状況でしたが……」
アウラさんは険しい顔をして話を進めていく。
「数日前から王都セントハム方面の森に出ていた魔物が突然姿を消したとの報告がありました」
んっ?
たしかその方向は、俺たちが来た方向の話だな。
「突然姿を消した……」
なんとなく思い当たるところがあるかもと考えながら、アウラさんの話を聞いていく。
「はい。
急な話だったものですから、確認のため、森へ腕がたつ者を向かわせました。
その者からの報告ですと、やはり魔物がいなくなっていたとのことでした」
あれ……もしかして……と考えていたら、ゾルダが割って入ってきた。
「魔物とはこれの事かのぅ」
ゾルダはどこからともなく、ウォーウルフキングの頭を取り出した。
「……ヒィッ……」
アウラさんがひきつった顔をして、目をそらす。
しかし確認もしないといけないのか、意を決したように指の隙間から見ている。
「は……はい
この魔物でございます」
アウラさんが確認できたのを見てか、ゾルダがウォーウルフキングの頭をしまった。
どこにそんなものを隠しているのか……
「そうか。
であれば、この魔物はこやつが倒したぞ」
ゾルダは体面上、俺ということにしてくれたらしい。
「なっ…なんと。
さすが勇者様でございます」
キラキラした目でこちらを見られても……
9割方はゾルダがやったんだけど……
「それじゃ、これで問題は解決したのでしょうか?」
アウラさんに訊ねてみる。
アウラさんはこめかみをポンポンと人差し指で軽く叩きながら話し始めた。
「そうですね。たぶんですが、問題の3割ほどといったところでしょうか。
さきほどの森のところは解決はしておりますが、他にまだ問題があります」
悩ましい顔をしながらアウラは話を続けた。
「その森と反対の山があります。
そこの麓にかなり奥に広がっている洞窟があるのです。
そこからかなりの魔物が湧き出てくるとの報告があります」
その一部が俺たちの通ってきた森にまで来ていたということか。
「だとすると、ウォーウルフキングはそこから森に出てきたということ?」
俺は確認の意味を込めてアウラに問いかけた。
「はい、そうなります」
あちゃー……
あれを倒すのにも苦労したのに、まだまだいるのか。
げんなりする。
その話を聞いてか、ゾルダは目を輝かせている。
「おぉぉぉー。
もっと戦えるそうじゃのぅ。
おぬし、すぐにでも行こうぞ」
いや、急ぎすぎだろ。
もうちょっと話を確認しようよ。
ゾルダの興奮はおいておき、改めてアウラさんに確認をする。
「どの程度の魔物がどのくらいいるかとかはわかりますか?」
アウラさんは間髪入れずに答える。
「詳細はわかりません。
ただ湧き出るように魔物がでてくるとのことなので、
そこにはさらに上位の魔物がいるのではないかと思われます」
ウォーウルフキングより上か……
今の俺で太刀打ちできるのか。
視線を落とし考え込む。
「おぬし、何を考えておるのじゃ」
ゾルダが俺の顔を覗き込んできた。
「いや、今の俺の力でなんとかなるのかと思って」
小声でゾルダに不安を告げてみた。
「なんとかなるかな?
そんなこと悩んでいても、ちっとも強くはならんぞ」
ゾルダは呆れた顔をして俺にそう言い放つ。
「まずは相手の状況がわからんし、
まずは洞窟周りの魔物の殲滅からじゃろ」
ゾルダの言うことももっともだ。
まずは少しずつでも相手の戦力を削る。
そして俺自身が強くなっていくことが大事だ。
「まぁ、ワシじゃったら一気に突っ込むがのぅ。
ワシより強い奴なぞおらんでな」
ゾルダは相変わらずの自信だ。
その自信を少しでも見習わないと。
改めて考え直した俺は、アウラさんの依頼を受けることにした。
「アウラさん、わかりました。
すぐに解決できるかはわかりませんが、やれるだけやってみます」
「ありがとうございます、勇者様」
アウラさんが俺の手を握り、嬉しそうにお礼を言う。
少し照れながら、なんとかしないとなと考えていた。
そしてしばらくしてからアウラさんの家を出て、手配してくれた宿に向かう。
他にも便宜を図ってくれているみたいで、食料や物資なども宿に届けてくれた。
そこまでしてくれているし、なんとかしないといけないな。
夕飯を食べた後に宿の部屋に戻り、考える。
さて、どうしたものかな。
「ゾルダ、さっきああ言っていたが、何か考えがあるのか?」
アウラさんでの家の話をゾルダに確認する。
「いや、言葉通りじゃ。
深い意味はない」
ゾルダは高笑いしながら答える。
「何にも策がないの?」
そんなことだろうとは思ったが、やっぱりそうだった。
強い奴は策などいらないし、考えないのだろう。
「おお、そうとも。
はっはっはっはっは」
ゾルダはひっくり返るほど上を向いて、高笑いを続ける。
策がないことを偉そうに言うことか。
それに、さっきお酒も飲んだせいか、ゾルダのテンションが高い。
「しかし、久々の酒はうまかったのぅ。
何百年ぶりじゃ」
呑気だなぁ……
こっちは明日以降のことで頭がいっぱいなのに。
悩んだ顔をしている俺に、ゾルダは不敵な笑みを浮かべながら語ってくる。
「そう悩むなおぬし。
悩んでも解決はせんぞ。
そういうときは動くのみじゃ」
俺の肩に手を回して絡んでくるゾルダ。
鬱陶しい。
絡み酒は昔から嫌いだ。
でもあれこれ悩んでもだいたいうまくいかない。
思い切って動いてみないと道が開けないのも確かだ。
まずは明日、魔物の巣窟となっている洞窟に近い場所を見て回ろう。
そう思いながら、ベッドに横になるのだった。
翌日ーーー
俺たちはシルフィーネ村を拠点にまだ魔物が殲滅されていない地域へと出向くことになった。
俺のレベルアップもしないといけないし、巣窟にいる上位魔物の正体も突き止めなければならない。
やることがいっぱいだ。
ゾルダもいろいろ文句はいいながらも手は貸してくれる。
ただ姿は村でしか現われない。
ゾルダ曰く
「おぬしの手に負えるうちは手は出さん。
おぬしにも強くなってもらわないとな。
強い魔物が出てきたら、剣から出てきてやる。
それまでは剣からの補助で十分じゃろ」
とのこと。
楽をしているなー。
そんなことを考えていたのを気づいたのか、ゾルダが俺の方を向きなおした。
「んっ?
おぬし、何か言ったか?」
ゾルダの言動に慌てて繕う俺。
「いや、何でもないよ。
いざというときは頼りにしてる、ゾルダ」
そう言いながら、北西部あたりの魔物の調査と殲滅に向かうのだった。
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途中ゾルダが姿を現したところは、ビックリしたけど。
周りの人たちも特に気にする素振りもないので、大丈夫かな。
村の中で暴れなければいいが……
村の長の屋敷へとたどり着くと、ドアをノックした。
「コンコン」
「アウレストリア王国の国王からの指令で来たアグリというものです」
ドアを開けると、美しい女の人が出てきた。
村の長というから、てっきりおじいさんが出てくるのかと思っていた。
「お待ちしておりました。
国王様からは勇者様が来られるとの連絡をいただいています」
美しい女性は穏やかな口調で話す。
「私がこのシルフィーネ村の長、アウラと申します」
丁寧な挨拶を受けて、中の応接間に通された。
聞けば、アウラさんはシルフ族という種族らしい。
人よりは長生きらしく、132歳とのことだ。
応接間の椅子に座り、状況の確認をする。
「国王からは魔物が増えてきているからという話でしたが……
今の状況はどうなっていますか?」
「はい。ここ最近いつもと違う魔物が増えてきて、往来も難しい状況でしたが……」
アウラさんは険しい顔をして話を進めていく。
「数日前から王都セントハム方面の森に出ていた魔物が突然姿を消したとの報告がありました」
んっ?
たしかその方向は、俺たちが来た方向の話だな。
「突然姿を消した……」
なんとなく思い当たるところがあるかもと考えながら、アウラさんの話を聞いていく。
「はい。
急な話だったものですから、確認のため、森へ腕がたつ者を向かわせました。
その者からの報告ですと、やはり魔物がいなくなっていたとのことでした」
あれ……もしかして……と考えていたら、ゾルダが割って入ってきた。
「魔物とはこれの事かのぅ」
ゾルダはどこからともなく、ウォーウルフキングの頭を取り出した。
「……ヒィッ……」
アウラさんがひきつった顔をして、目をそらす。
しかし確認もしないといけないのか、意を決したように指の隙間から見ている。
「は……はい
この魔物でございます」
アウラさんが確認できたのを見てか、ゾルダがウォーウルフキングの頭をしまった。
どこにそんなものを隠しているのか……
「そうか。
であれば、この魔物はこやつが倒したぞ」
ゾルダは体面上、俺ということにしてくれたらしい。
「なっ…なんと。
さすが勇者様でございます」
キラキラした目でこちらを見られても……
9割方はゾルダがやったんだけど……
「それじゃ、これで問題は解決したのでしょうか?」
アウラさんに訊ねてみる。
アウラさんはこめかみをポンポンと人差し指で軽く叩きながら話し始めた。
「そうですね。たぶんですが、問題の3割ほどといったところでしょうか。
さきほどの森のところは解決はしておりますが、他にまだ問題があります」
悩ましい顔をしながらアウラは話を続けた。
「その森と反対の山があります。
そこの麓にかなり奥に広がっている洞窟があるのです。
そこからかなりの魔物が湧き出てくるとの報告があります」
その一部が俺たちの通ってきた森にまで来ていたということか。
「だとすると、ウォーウルフキングはそこから森に出てきたということ?」
俺は確認の意味を込めてアウラに問いかけた。
「はい、そうなります」
あちゃー……
あれを倒すのにも苦労したのに、まだまだいるのか。
げんなりする。
その話を聞いてか、ゾルダは目を輝かせている。
「おぉぉぉー。
もっと戦えるそうじゃのぅ。
おぬし、すぐにでも行こうぞ」
いや、急ぎすぎだろ。
もうちょっと話を確認しようよ。
ゾルダの興奮はおいておき、改めてアウラさんに確認をする。
「どの程度の魔物がどのくらいいるかとかはわかりますか?」
アウラさんは間髪入れずに答える。
「詳細はわかりません。
ただ湧き出るように魔物がでてくるとのことなので、
そこにはさらに上位の魔物がいるのではないかと思われます」
ウォーウルフキングより上か……
今の俺で太刀打ちできるのか。
視線を落とし考え込む。
「おぬし、何を考えておるのじゃ」
ゾルダが俺の顔を覗き込んできた。
「いや、今の俺の力でなんとかなるのかと思って」
小声でゾルダに不安を告げてみた。
「なんとかなるかな?
そんなこと悩んでいても、ちっとも強くはならんぞ」
ゾルダは呆れた顔をして俺にそう言い放つ。
「まずは相手の状況がわからんし、
まずは洞窟周りの魔物の殲滅からじゃろ」
ゾルダの言うことももっともだ。
まずは少しずつでも相手の戦力を削る。
そして俺自身が強くなっていくことが大事だ。
「まぁ、ワシじゃったら一気に突っ込むがのぅ。
ワシより強い奴なぞおらんでな」
ゾルダは相変わらずの自信だ。
その自信を少しでも見習わないと。
改めて考え直した俺は、アウラさんの依頼を受けることにした。
「アウラさん、わかりました。
すぐに解決できるかはわかりませんが、やれるだけやってみます」
「ありがとうございます、勇者様」
アウラさんが俺の手を握り、嬉しそうにお礼を言う。
少し照れながら、なんとかしないとなと考えていた。
そしてしばらくしてからアウラさんの家を出て、手配してくれた宿に向かう。
他にも便宜を図ってくれているみたいで、食料や物資なども宿に届けてくれた。
そこまでしてくれているし、なんとかしないといけないな。
夕飯を食べた後に宿の部屋に戻り、考える。
さて、どうしたものかな。
「ゾルダ、さっきああ言っていたが、何か考えがあるのか?」
アウラさんでの家の話をゾルダに確認する。
「いや、言葉通りじゃ。
深い意味はない」
ゾルダは高笑いしながら答える。
「何にも策がないの?」
そんなことだろうとは思ったが、やっぱりそうだった。
強い奴は策などいらないし、考えないのだろう。
「おお、そうとも。
はっはっはっはっは」
ゾルダはひっくり返るほど上を向いて、高笑いを続ける。
策がないことを偉そうに言うことか。
それに、さっきお酒も飲んだせいか、ゾルダのテンションが高い。
「しかし、久々の酒はうまかったのぅ。
何百年ぶりじゃ」
呑気だなぁ……
こっちは明日以降のことで頭がいっぱいなのに。
悩んだ顔をしている俺に、ゾルダは不敵な笑みを浮かべながら語ってくる。
「そう悩むなおぬし。
悩んでも解決はせんぞ。
そういうときは動くのみじゃ」
俺の肩に手を回して絡んでくるゾルダ。
鬱陶しい。
絡み酒は昔から嫌いだ。
でもあれこれ悩んでもだいたいうまくいかない。
思い切って動いてみないと道が開けないのも確かだ。
まずは明日、魔物の巣窟となっている洞窟に近い場所を見て回ろう。
そう思いながら、ベッドに横になるのだった。
翌日ーーー
俺たちはシルフィーネ村を拠点にまだ魔物が殲滅されていない地域へと出向くことになった。
俺のレベルアップもしないといけないし、巣窟にいる上位魔物の正体も突き止めなければならない。
やることがいっぱいだ。
ゾルダもいろいろ文句はいいながらも手は貸してくれる。
ただ姿は村でしか現われない。
ゾルダ曰く
「おぬしの手に負えるうちは手は出さん。
おぬしにも強くなってもらわないとな。
強い魔物が出てきたら、剣から出てきてやる。
それまでは剣からの補助で十分じゃろ」
とのこと。
楽をしているなー。
そんなことを考えていたのを気づいたのか、ゾルダが俺の方を向きなおした。
「んっ?
おぬし、何か言ったか?」
ゾルダの言動に慌てて繕う俺。
「いや、何でもないよ。
いざというときは頼りにしてる、ゾルダ」
そう言いながら、北西部あたりの魔物の調査と殲滅に向かうのだった。