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第2幕・Respect(リスペクト)の章〜⑫〜

ー/ー



6月4日(日)

 奈緒美(なおみ)さんとの二回目の野球観戦は、前回とは違い、天候にも恵まれた。
 座席は、SMBCシート(一塁側)。前回の観戦時よりも、さらにグラウンドやベンチに近く臨場感満点だ。

 野球ファンとしては、()()佐々木朗希(ささきろうき)投球(ピッチング)を間近で観られるという幸運にありつけたことは、チケットを譲ってくれた母の知人と母親に感謝するより他にない。

 ただ、この日の僕は、それ以上に気を配っておかなければいけないことがあった。
 それは、昼食をはじめとする、球場でのフード・飲み物事情に関わることだ。
 
 三週間前は、ショッピングモール内の人気パンケーキ店でランチすることになったため、参戦(いや、この時は観戦)用の服装は、控えめなモノにしたのだが……。
 今回は、2回目ということもあり、もう少し、()()()()を出して行こうと考えている。

 そんな訳で、僕は、この日の戦闘服に、背番号3があしらわれたタテ縞のレプリカユニフォームを選ぶ。
 奈緒美さんには、事前にこんな提案をしておいた。

 ==============

 今回は、甲子園の球場メシで
 ランチはいかかでしょうか?

 選手とのコラボメニューや
 オリジナルメニューなど
 参考になるモノもあるかもです
 
 ==============

 彼女からは、すぐに、返信があった。

 ==============

 球場グルメ、イイですね!
 楽しみです!

 コラボメニュー、色々と参考に
 させてもらおうと思います!

 ==============

 奈緒美さんの了承も得たことで、服装に関する懸念事項には片が付いた。
 実際に、試合開始の90分前に甲子園駅の改札口で待ち合わせた彼女と会ったときも、

「あら……中野くん、今日は気合いが入ってますね!」

と、微笑んでもらったので、自分の選択に間違いはなかったのだろうけど……。

 問題は、球場に入場してから発生した。

 ※

「あのお弁当、美味しそう! 九州ええとこ捕り(鶏)弁当に……こっちは、タコ飯幕の内弁当ですか……あっ、これもカワイイ! キュートなおむすび弁当! すいません、この3ついただけますか?」

「麺類も豊富なんですね! 今日は、少し気温が高いので……あごだし冷やしラーメンをお願いします!」

「シメは、やっぱりスイーツですよね! ここも思ったより充実してる……う〜ん、迷うけど……彩り豊かなイチゴ ✕ マンゴーかき氷にしようかな……? 中野くんは、どれがイイと思いますか?」

 奈緒美さんは、嬉しい悩みで困ったというような表情で、僕にたずねるが――――――。

「僕も、イチゴ ✕ マンゴーかき氷は、美味しそうだと思いますが……もう、そろそろ……食べ物は、持ちきれないです……」

 僕は、そう返答して、右手に提げたビニール袋入りのコラボ弁当3つと、左手に持った冷やしラーメンのドンブリをアピールするように、ゆっくりと上下させた。
 そのジェスチャーに、ようやく我に返ったのか、彼女は、ハッとした表情でになり、

「あっ、私ったら……いつの間に、こんなに……中野くん、ゴメンナサイ!」

と、大慌てで謝罪する。

「いや、大丈夫ですよ。ここのスイーツを買ったら、一度、座席に戻りましょうか?」

「そ、そうですね」

 奈緒美さんは、こちらの提案に同意したあと、

「彩り豊かなイチゴ ✕ マンゴーかき氷を1つお願いします」

と注文を続けた。

 僕の両手と奈緒美さんの左手には、

 ・梅ちゃんの九州ええとこ捕り(鶏)弁当
 ・淡路島出身!近本のタコ飯幕の内弁当
 ・湯浅のキュートなおむすび弁当

 各 1500円

 ・山形出身!中野の冷やしあごだしラーメン 950円
 ・大竹選手おすすめ!彩り豊かなイチゴ ✕ マンゴーかき氷 700円

しめて、6250円の品々がある(ちなみに、今日の観戦で座るSMBCシート1席分の値段と同等だ)。
 あらためて、その現実を目の当たりした彼女は、
 
「どうしよう……こんなに食べきれない……」

と、うなだれる。

「たしかに、ちょっと多いかもですが……僕も、お金を半分払うんで、御子柴(みこしば)さんは、食べれる分だけ食べてください」

 笑顔でそう言ってから席に着き、僕は、奈緒美さんに千円札を四枚手渡す。

「そんな! こんなに、いただけませんよ……」

 恐縮する相手になんとか、野口英世を受け取ってもらったものの、他にも気になることがあるようで、

「試合が始まるまでに食べ終わるでしょうか?」

奈緒美さんは不安げに口にする。
 試合開始までは、残り30分ほどだ。たっぷりの量のランチの数々をあらためて眺めながら、僕は苦笑しつつ、

「まあ、試合開始には間に合わないでしょうけど……」

と、答えたあと、提案した。

「安心してください。今日は、前回と違って、あまり得点シーンは見られないと思うので……お弁当を食べながら、静かな映画を観るみたいに、ゆっくり観戦しましょう?」

 そんな会話を交わしていると、スターティングメンバーが発表される時間になった。
 
 1番 中堅 近本
 2番 二塁 中野
 3番 左翼 ノイジー
 4番 一塁 大山
 5番 三塁 佐藤輝
 6番 右翼 島田
 7番 捕手 梅野
 8番 遊撃 木浪
 9番 投手 才木

 好調なチーム状態を反映して、今日も、投手以外は前回と変わらないメンバーだ。

 奈緒美さんとともに、たっぷりのランチに手をつけ始めると、Family with Tigers Dayの一環で、グリーンのキャップとロゴが特徴的な、普段とは異なるユニフォームに身を包んだ選手たちがグラウンドに飛び出してきた。




みんなのリアクション

6月4日(日)
 |奈緒美《なおみ》さんとの二回目の野球観戦は、前回とは違い、天候にも恵まれた。
 座席は、SMBCシート(一塁側)。前回の観戦時よりも、さらにグラウンドやベンチに近く臨場感満点だ。
 野球ファンとしては、|あ《・》|の《・》|佐々木朗希《ささきろうき》の|投球《ピッチング》を間近で観られるという幸運にありつけたことは、チケットを譲ってくれた母の知人と母親に感謝するより他にない。
 ただ、この日の僕は、それ以上に気を配っておかなければいけないことがあった。
 それは、昼食をはじめとする、球場でのフード・飲み物事情に関わることだ。
 三週間前は、ショッピングモール内の人気パンケーキ店でランチすることになったため、参戦(いや、この時は観戦)用の服装は、控えめなモノにしたのだが……。
 今回は、2回目ということもあり、もう少し、|自《・》|分《・》|の《・》|色《・》を出して行こうと考えている。
 そんな訳で、僕は、この日の戦闘服に、背番号3があしらわれたタテ縞のレプリカユニフォームを選ぶ。
 奈緒美さんには、事前にこんな提案をしておいた。
 ==============
 今回は、甲子園の球場メシで
 ランチはいかかでしょうか?
 選手とのコラボメニューや
 オリジナルメニューなど
 参考になるモノもあるかもです
 ==============
 彼女からは、すぐに、返信があった。
 ==============
 球場グルメ、イイですね!
 楽しみです!
 コラボメニュー、色々と参考に
 させてもらおうと思います!
 ==============
 奈緒美さんの了承も得たことで、服装に関する懸念事項には片が付いた。
 実際に、試合開始の90分前に甲子園駅の改札口で待ち合わせた彼女と会ったときも、
「あら……中野くん、今日は気合いが入ってますね!」
と、微笑んでもらったので、自分の選択に間違いはなかったのだろうけど……。
 問題は、球場に入場してから発生した。
 ※
「あのお弁当、美味しそう! 九州ええとこ捕り(鶏)弁当に……こっちは、タコ飯幕の内弁当ですか……あっ、これもカワイイ! キュートなおむすび弁当! すいません、この3ついただけますか?」
「麺類も豊富なんですね! 今日は、少し気温が高いので……あごだし冷やしラーメンをお願いします!」
「シメは、やっぱりスイーツですよね! ここも思ったより充実してる……う〜ん、迷うけど……彩り豊かなイチゴ ✕ マンゴーかき氷にしようかな……? 中野くんは、どれがイイと思いますか?」
 奈緒美さんは、嬉しい悩みで困ったというような表情で、僕にたずねるが――――――。
「僕も、イチゴ ✕ マンゴーかき氷は、美味しそうだと思いますが……もう、そろそろ……食べ物は、持ちきれないです……」
 僕は、そう返答して、右手に提げたビニール袋入りのコラボ弁当3つと、左手に持った冷やしラーメンのドンブリをアピールするように、ゆっくりと上下させた。
 そのジェスチャーに、ようやく我に返ったのか、彼女は、ハッとした表情でになり、
「あっ、私ったら……いつの間に、こんなに……中野くん、ゴメンナサイ!」
と、大慌てで謝罪する。
「いや、大丈夫ですよ。ここのスイーツを買ったら、一度、座席に戻りましょうか?」
「そ、そうですね」
 奈緒美さんは、こちらの提案に同意したあと、
「彩り豊かなイチゴ ✕ マンゴーかき氷を1つお願いします」
と注文を続けた。
 僕の両手と奈緒美さんの左手には、
 ・梅ちゃんの九州ええとこ捕り(鶏)弁当
 ・淡路島出身!近本のタコ飯幕の内弁当
 ・湯浅のキュートなおむすび弁当
 各 1500円
 ・山形出身!中野の冷やしあごだしラーメン 950円
 ・大竹選手おすすめ!彩り豊かなイチゴ ✕ マンゴーかき氷 700円
しめて、6250円の品々がある(ちなみに、今日の観戦で座るSMBCシート1席分の値段と同等だ)。
 あらためて、その現実を目の当たりした彼女は、
「どうしよう……こんなに食べきれない……」
と、うなだれる。
「たしかに、ちょっと多いかもですが……僕も、お金を半分払うんで、|御子柴《みこしば》さんは、食べれる分だけ食べてください」
 笑顔でそう言ってから席に着き、僕は、奈緒美さんに千円札を四枚手渡す。
「そんな! こんなに、いただけませんよ……」
 恐縮する相手になんとか、野口英世を受け取ってもらったものの、他にも気になることがあるようで、
「試合が始まるまでに食べ終わるでしょうか?」
奈緒美さんは不安げに口にする。
 試合開始までは、残り30分ほどだ。たっぷりの量のランチの数々をあらためて眺めながら、僕は苦笑しつつ、
「まあ、試合開始には間に合わないでしょうけど……」
と、答えたあと、提案した。
「安心してください。今日は、前回と違って、あまり得点シーンは見られないと思うので……お弁当を食べながら、静かな映画を観るみたいに、ゆっくり観戦しましょう?」
 そんな会話を交わしていると、スターティングメンバーが発表される時間になった。
 1番 中堅 近本
 2番 二塁 中野
 3番 左翼 ノイジー
 4番 一塁 大山
 5番 三塁 佐藤輝
 6番 右翼 島田
 7番 捕手 梅野
 8番 遊撃 木浪
 9番 投手 才木
 好調なチーム状態を反映して、今日も、投手以外は前回と変わらないメンバーだ。
 奈緒美さんとともに、たっぷりのランチに手をつけ始めると、Family with Tigers Dayの一環で、グリーンのキャップとロゴが特徴的な、普段とは異なるユニフォームに身を包んだ選手たちがグラウンドに飛び出してきた。