強制LOGOUT

ー/ー



「シューメイ、他のみんなも今日はありがと~」
「じゃまた今度な!」
「おう、シノブ!」
「またレイドしようぜ~シノブちゃ~ん」
 もう土曜の朝3時だ。メニューのLOGOFFをタップ。今日は疲れた。頭からギアを外したと同時に寝落ち。



 オレは高岡 忍(たかおか しのぶ)、33歳独身。身長165センチ、体重50キロやせ型。小学校4年からメガネ使用。顔は普通。どこにでもいる極々普通の男だ。
 彼女いない歴と年齢が同じ……つまり、もうとっくに魔法使いになってなきゃいけない年齢だ。
 仕事はプログラマ兼SE。といってもオンライン系ではなくメインフレーム、つまり汎用コンピュータのお守り。COBOLで書かれたプログラムのメンテナンスが中心だ。
 なんてったってCOBOL技術者は減少傾向にあるから希少価値があるし、まだ当分仕事はなくならないと踏んで、入社時からもう10年近くCOBOL屋をやっている。
 しっかし、昔の人は仕様書だの設計書をすべて手書きで作成しているもんだから、仕様変更があっても書き換えられてないときてるんで、その文書データ化とソースコードから仕様変更を読み取って、設計書のアップデートまでやってるから仕事は多い。

 唯一といっていい趣味は、3年ほど前のリリース時から始めたフルダイブシステムのオンライン・シューティング・ゲームだ。
 大人数のパーティには属せず、同じ会社の同期で同僚の勝野 秀明(かつの ひであき・男)、オンライン名『シューメイ』とペアを組んでいる。近距離で銃とナイフを使った格闘戦を担当。ちなみにオレはスナイパーでオンライン名『シノブ』。
 三度の飯よりゲーム好きで、このゲームに引っ張り込んだのも英明だった。が、彼女ができてからはそうでもなくなり、平日夜と日曜はきっちりとすることはしているらしい。
 そんなわけで、平日は一人でPvP(Player versus player)やモンスターを倒してゴールドやアイテムを手に入れ、金曜と土曜はシューメイとその場にいた少人数のパーティに参加し、レイドに出ることが多い。あ、あとは半年ごとに開催されるPvP大会に参加したりかな。
 アバターは女性タイプを選んだ。
 自分と異なる性別のアバター使うなんてザラだろ? オンラインゲームで女性アバターは、まぁ99パーセント男だろうし、この3年間リアル女性のプレイヤーなんて会ったことがない。
 最初は好みの長身・黒目・黒髪ロングタイプにしていたけど、PvP大会の賞金と貯めたゴールドでレアスキルを持つ赤目・金髪ロングのアバターTHX-1489を手に入れ、今ではそれを使っている。
 レアスキルは敵味方の距離をセンチメートル単位で把握出来るもので、スナイパーには欠かせない。その代わり、視覚系スキル持ち共通の虹彩が赤色なので少しだけ眩しいのが欠点だ。もう一つあるけど、これはシステム依存なんでスキルといえるかどうか……。
 一方シューメイのリアル、勝野 秀明は身長180センチ、体重80キロオーバーの体育会系のガチムチ男で、アバターもリアルに近い格闘家っぽいT-9000を選んでいる。
 リアルでもお互いを英明、忍と呼び合う、なにかと気の合う二人だ。
 スナイパーをやってるヤツは割と少ないから重宝されるし、用心棒っぽいヤツとペアを組んでいるから女性タイプのアバターでもちょっかいを出されない。
 ま、中の人が男でも野郎ばっかのチームより、外見だけでも女性がいた方が臨時パーティでも楽しくレイドできるってもんだろ?



 今日は金曜なので22時に英明と待ち合わせし、ダイブ。周りを見ても臨時メンバーを探しているパーティがいなかったので、二人でモンスター狩りをすることにした。
 その最中、突然システムアラートが鳴り響き全世界――ってもゲーム内だけど、景色が赤く染まる。
『緊急メンテナンスを行いますのでプレイヤーは60秒以内にLOGOFFしてください。60秒以内にLOGOFFしない場合緊急処理として強制LOGOUTになりますのでプレイヤーデータの保証は致しかねます。繰り返します。緊急メンテナンスを――』
「あ? あんだって? おい、シノブ早くLOGOFFしないとやばそうだぞ!」
「ま、待てよ……あと20メーターであのラージ級が射程に入るんだから……」
 約1,500メートル先の獲物をレアスキルで測距する。
「んなこと言って強制LOGOUTされたらなんかやばそうだぞ!」
「あと、10……5……」
 照準を合わせ、獲物が射程内に入ったと同時にトリガーを引く――それと同タイミングでシステムから強制LOGOUTさせられた。
 そのとき、頭の中で閃光が走ったような感覚と、めちゃくちゃ頭痛がして全身に激痛が走った――。
 
 ――気がつくと自室の部屋のベッドの上に戻っていた。
 ふぅ~、無事LOGOFFできたようだ。ギアをずらして時計を見るとまだ金曜の23時だ。
 1時間もLOGONしていないぞ? 何で今日はこんな突然のメンテナンスなんてやったんだ? あとで運営にクレームメールを入れてやる。
 シューメイも間に合っただろうか? なんかオレが足引っ張っちゃったみたいだから後でメッセージ入れておくか。今日はもうLOGONできそうもないので、頭からギアを外す。と同時に猛烈な睡魔に襲われ、寝落ちした。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 朝おん


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「シューメイ、他のみんなも今日はありがと~」
「じゃまた今度な!」
「おう、シノブ!」
「またレイドしようぜ~シノブちゃ~ん」
 もう土曜の朝3時だ。メニューのLOGOFFをタップ。今日は疲れた。頭からギアを外したと同時に寝落ち。
 オレは高岡 忍(たかおか しのぶ)、33歳独身。身長165センチ、体重50キロやせ型。小学校4年からメガネ使用。顔は普通。どこにでもいる極々普通の男だ。
 彼女いない歴と年齢が同じ……つまり、もうとっくに魔法使いになってなきゃいけない年齢だ。
 仕事はプログラマ兼SE。といってもオンライン系ではなくメインフレーム、つまり汎用コンピュータのお守り。COBOLで書かれたプログラムのメンテナンスが中心だ。
 なんてったってCOBOL技術者は減少傾向にあるから希少価値があるし、まだ当分仕事はなくならないと踏んで、入社時からもう10年近くCOBOL屋をやっている。
 しっかし、昔の人は仕様書だの設計書をすべて手書きで作成しているもんだから、仕様変更があっても書き換えられてないときてるんで、その文書データ化とソースコードから仕様変更を読み取って、設計書のアップデートまでやってるから仕事は多い。
 唯一といっていい趣味は、3年ほど前のリリース時から始めたフルダイブシステムのオンライン・シューティング・ゲームだ。
 大人数のパーティには属せず、同じ会社の同期で同僚の勝野 秀明(かつの ひであき・男)、オンライン名『シューメイ』とペアを組んでいる。近距離で銃とナイフを使った格闘戦を担当。ちなみにオレはスナイパーでオンライン名『シノブ』。
 三度の飯よりゲーム好きで、このゲームに引っ張り込んだのも英明だった。が、彼女ができてからはそうでもなくなり、平日夜と日曜はきっちりとすることはしているらしい。
 そんなわけで、平日は一人でPvP(Player versus player)やモンスターを倒してゴールドやアイテムを手に入れ、金曜と土曜はシューメイとその場にいた少人数のパーティに参加し、レイドに出ることが多い。あ、あとは半年ごとに開催されるPvP大会に参加したりかな。
 アバターは女性タイプを選んだ。
 自分と異なる性別のアバター使うなんてザラだろ? オンラインゲームで女性アバターは、まぁ99パーセント男だろうし、この3年間リアル女性のプレイヤーなんて会ったことがない。
 最初は好みの長身・黒目・黒髪ロングタイプにしていたけど、PvP大会の賞金と貯めたゴールドでレアスキルを持つ赤目・金髪ロングのアバターTHX-1489を手に入れ、今ではそれを使っている。
 レアスキルは敵味方の距離をセンチメートル単位で把握出来るもので、スナイパーには欠かせない。その代わり、視覚系スキル持ち共通の虹彩が赤色なので少しだけ眩しいのが欠点だ。もう一つあるけど、これはシステム依存なんでスキルといえるかどうか……。
 一方シューメイのリアル、勝野 秀明は身長180センチ、体重80キロオーバーの体育会系のガチムチ男で、アバターもリアルに近い格闘家っぽいT-9000を選んでいる。
 リアルでもお互いを英明、忍と呼び合う、なにかと気の合う二人だ。
 スナイパーをやってるヤツは割と少ないから重宝されるし、用心棒っぽいヤツとペアを組んでいるから女性タイプのアバターでもちょっかいを出されない。
 ま、中の人が男でも野郎ばっかのチームより、外見だけでも女性がいた方が臨時パーティでも楽しくレイドできるってもんだろ?
 今日は金曜なので22時に英明と待ち合わせし、ダイブ。周りを見ても臨時メンバーを探しているパーティがいなかったので、二人でモンスター狩りをすることにした。
 その最中、突然システムアラートが鳴り響き全世界――ってもゲーム内だけど、景色が赤く染まる。
『緊急メンテナンスを行いますのでプレイヤーは60秒以内にLOGOFFしてください。60秒以内にLOGOFFしない場合緊急処理として強制LOGOUTになりますのでプレイヤーデータの保証は致しかねます。繰り返します。緊急メンテナンスを――』
「あ? あんだって? おい、シノブ早くLOGOFFしないとやばそうだぞ!」
「ま、待てよ……あと20メーターであのラージ級が射程に入るんだから……」
 約1,500メートル先の獲物をレアスキルで測距する。
「んなこと言って強制LOGOUTされたらなんかやばそうだぞ!」
「あと、10……5……」
 照準を合わせ、獲物が射程内に入ったと同時にトリガーを引く――それと同タイミングでシステムから強制LOGOUTさせられた。
 そのとき、頭の中で閃光が走ったような感覚と、めちゃくちゃ頭痛がして全身に激痛が走った――。
 ――気がつくと自室の部屋のベッドの上に戻っていた。
 ふぅ~、無事LOGOFFできたようだ。ギアをずらして時計を見るとまだ金曜の23時だ。
 1時間もLOGONしていないぞ? 何で今日はこんな突然のメンテナンスなんてやったんだ? あとで運営にクレームメールを入れてやる。
 シューメイも間に合っただろうか? なんかオレが足引っ張っちゃったみたいだから後でメッセージ入れておくか。今日はもうLOGONできそうもないので、頭からギアを外す。と同時に猛烈な睡魔に襲われ、寝落ちした。