67. 死のジェットコースター

ー/ー



 タケルはその美しい輝きに魅せられる。

「綺麗……ですね……」

 しかし、シアンは余裕のない様子で眉間にしわを寄せ、何やら渾身の力を振り絞り始めた。

 徐々に成長していく水の球……。やがて、それは直径数キロの巨大なサイズにまで膨れ上がっていく。

 シアンは満足げな表情でふぅと息をつくと、水筒を取り出し、ゴクゴクとアイスコーヒーでのどを潤した。

「水玉で……どうするんですか?」

「まぁ見てなよ。面白いよ! くふふふ……」

 見れば貨物船の輝きが一層増して、まぶしいくらいの閃光を放っている。全長三キロにも及ぶ巨大なコンテナの集合体はノズルスカートを前面に出し、大気と激しく反応しながらマッハ二十の超音速で海王星へと降りてきているのだ。

 見る見るうちに大きく見えてくる貨物船。それは吸い寄せられるように一直線に水玉を目指した。

「まさか、衝突させるんですか!?」

 ネヴィアは叫んだ。マッハ二十とは銃弾の二十倍の速度である。そんな速度で水に突っ込んだら大爆発を起こしてしまう。

「ピンポーン! そんなシーン今まで見たことないでしょ? くふふふ、楽しみっ!」

 シアンはいたずらっ子の笑みを浮かべて笑う。

「いやちょっと、マズいですって! こんなところに居たら巻き込まれますよ!!」

「だーいじょうぶだってぇ! ネヴィアは心配性だな。がははは!」

 パンパンとネヴィアの背中を叩くシアン。

「乗務員はどうなるんですか?」

 タケルは恐る恐る聞いた。

「テロリストの話があった時点で退避済み。あれは自動運転だよ」

「貨物は捨てちゃうってことですか?」

「テロリストに汚染された貨物なんて恐くて使えないからね。焼却処分さ」

 シアンは渋い顔で肩をすくめる。

「でも、貨物船は……もったいないのでは?」

「そんなの造り直せばいいだけさ。うちの弟子にやらせれば解決!」

「えっ!? 弟子って……?」

「僕に弟子なんて一人しかいないゾ!」

 シアンはニヤッと笑うとタケルを指さした。

「マ、マジですか!? あ、あんなの造れませんよぉ」

 タケルは泣きそうになる。

「頑張ればできる! 気合いだ! ほら来たぞぉ! 五、四、三……」

 シアンはウキウキしながらカウントダウンを始めた。

 激しい閃光を上げながら長大な貨物船は真っ白な光跡を描き、ものすごい超高速で一直線に水玉に突っ込んでいく――――。

 刹那、激烈な閃光が海王星を包んだ。

 巨大水玉に突っ込んだ貨物船はその膨大な運動エネルギーを瞬時に熱エネルギーに変え、大爆発を起こしたのだ。後方のコンテナ群は次々と折れ曲がりながらその爆心地に突っ込んでいき、さらなる爆発を加速した。

 グハァ! ひぃぃぃぃ!

 その激烈な閃光はシャトルを焦がし、タケルたちは顔を覆った。

 爆心地からは白く繭状の衝撃波が一気に広がっていく。

「退避! たーいひ!!」

 ネヴィアは目をつぶったままシャトルのエンジンをふかして逃げ始める。

 ズン!!

 直後、衝撃波がシャトルを襲い、まるで木の葉のように吹き飛ばされながらグルグルと回転していった。

 うわぁぁぁぁ! ひぃぃぃぃ! きゃはははは!

 三人は必死に振り落とされまいと座席にしがみつく。

 次に襲ってきたのはコンテナの残骸だった。ひしゃげた部品などが次々とシャトルに突っ込んできて当たり、ヤバそうな衝撃音を立てている。

「だからマズいって言ったんじゃーー!」

 涙目のネヴィアは必死に操船しながら叫ぶ。しかし、シアンはジェットコースターに乗った子供のように笑った。

「きゃははは! たーのしーっ!」

 タケルはとんでもない人の弟子になってしまったことを後悔しながら、虚ろな目で激しく揺れるシャトルのシートにしがみついていた。



           ◇


「あー、楽しかった!」

 シアンはご満悦で座席にドスッと座りなおすと、水筒を取り出しておいしそうにアイスコーヒーを飲んだ。

「『楽しかった』じゃないですよ! 一歩間違えば死んでたんですから!」

 ネヴィアはプリプリしながら言った。

「でも、なかなかできない体験だったでしょ?」

「普通やりませんからな」

 ネヴィアは口を尖らせた。

「まぁ、これで懸案は解決! それじゃ、どうやってクレアちゃんを復活させるつもりだったか見せてもらうゾ! 出発進行!!」

 シアンはピコピコハンマーで楽しそうに座席を叩いた。


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 タケルはその美しい輝きに魅せられる。
「綺麗……ですね……」
 しかし、シアンは余裕のない様子で眉間にしわを寄せ、何やら渾身の力を振り絞り始めた。
 徐々に成長していく水の球……。やがて、それは直径数キロの巨大なサイズにまで膨れ上がっていく。
 シアンは満足げな表情でふぅと息をつくと、水筒を取り出し、ゴクゴクとアイスコーヒーでのどを潤した。
「水玉で……どうするんですか?」
「まぁ見てなよ。面白いよ! くふふふ……」
 見れば貨物船の輝きが一層増して、まぶしいくらいの閃光を放っている。全長三キロにも及ぶ巨大なコンテナの集合体はノズルスカートを前面に出し、大気と激しく反応しながらマッハ二十の超音速で海王星へと降りてきているのだ。
 見る見るうちに大きく見えてくる貨物船。それは吸い寄せられるように一直線に水玉を目指した。
「まさか、衝突させるんですか!?」
 ネヴィアは叫んだ。マッハ二十とは銃弾の二十倍の速度である。そんな速度で水に突っ込んだら大爆発を起こしてしまう。
「ピンポーン! そんなシーン今まで見たことないでしょ? くふふふ、楽しみっ!」
 シアンはいたずらっ子の笑みを浮かべて笑う。
「いやちょっと、マズいですって! こんなところに居たら巻き込まれますよ!!」
「だーいじょうぶだってぇ! ネヴィアは心配性だな。がははは!」
 パンパンとネヴィアの背中を叩くシアン。
「乗務員はどうなるんですか?」
 タケルは恐る恐る聞いた。
「テロリストの話があった時点で退避済み。あれは自動運転だよ」
「貨物は捨てちゃうってことですか?」
「テロリストに汚染された貨物なんて恐くて使えないからね。焼却処分さ」
 シアンは渋い顔で肩をすくめる。
「でも、貨物船は……もったいないのでは?」
「そんなの造り直せばいいだけさ。うちの弟子にやらせれば解決!」
「えっ!? 弟子って……?」
「僕に弟子なんて一人しかいないゾ!」
 シアンはニヤッと笑うとタケルを指さした。
「マ、マジですか!? あ、あんなの造れませんよぉ」
 タケルは泣きそうになる。
「頑張ればできる! 気合いだ! ほら来たぞぉ! 五、四、三……」
 シアンはウキウキしながらカウントダウンを始めた。
 激しい閃光を上げながら長大な貨物船は真っ白な光跡を描き、ものすごい超高速で一直線に水玉に突っ込んでいく――――。
 刹那、激烈な閃光が海王星を包んだ。
 巨大水玉に突っ込んだ貨物船はその膨大な運動エネルギーを瞬時に熱エネルギーに変え、大爆発を起こしたのだ。後方のコンテナ群は次々と折れ曲がりながらその爆心地に突っ込んでいき、さらなる爆発を加速した。
 グハァ! ひぃぃぃぃ!
 その激烈な閃光はシャトルを焦がし、タケルたちは顔を覆った。
 爆心地からは白く繭状の衝撃波が一気に広がっていく。
「退避! たーいひ!!」
 ネヴィアは目をつぶったままシャトルのエンジンをふかして逃げ始める。
 ズン!!
 直後、衝撃波がシャトルを襲い、まるで木の葉のように吹き飛ばされながらグルグルと回転していった。
 うわぁぁぁぁ! ひぃぃぃぃ! きゃはははは!
 三人は必死に振り落とされまいと座席にしがみつく。
 次に襲ってきたのはコンテナの残骸だった。ひしゃげた部品などが次々とシャトルに突っ込んできて当たり、ヤバそうな衝撃音を立てている。
「だからマズいって言ったんじゃーー!」
 涙目のネヴィアは必死に操船しながら叫ぶ。しかし、シアンはジェットコースターに乗った子供のように笑った。
「きゃははは! たーのしーっ!」
 タケルはとんでもない人の弟子になってしまったことを後悔しながら、虚ろな目で激しく揺れるシャトルのシートにしがみついていた。
           ◇
「あー、楽しかった!」
 シアンはご満悦で座席にドスッと座りなおすと、水筒を取り出しておいしそうにアイスコーヒーを飲んだ。
「『楽しかった』じゃないですよ! 一歩間違えば死んでたんですから!」
 ネヴィアはプリプリしながら言った。
「でも、なかなかできない体験だったでしょ?」
「普通やりませんからな」
 ネヴィアは口を尖らせた。
「まぁ、これで懸案は解決! それじゃ、どうやってクレアちゃんを復活させるつもりだったか見せてもらうゾ! 出発進行!!」
 シアンはピコピコハンマーで楽しそうに座席を叩いた。