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第4章〜⑮〜

ー/ー



「なんだ、突然……? 花火を横から見たら、どう見えるか、だって?」

「うん……私の母親がね、小学生の頃、同級生の男の子たちが、『真横から見た花火は丸いか? 平べったいか?』どんな風に見えるか、賭けをしたんだって」

「ふ〜ん、そっか……」

 小嶋母の同級生の少年たち(当時)には申し訳ないが、答えは決まっている。
 先ほどまで打ち上げられていた、『ポカ物』と呼ばれるキャラクターものの花火ならともかく、世間一般でイメージされる大輪の華を咲かせる『割れ物』と呼ばれるタイプの花火なら、爆発時の火薬が球形かつ同心円状に放射されるため、どこから見ても、丸く見える設計になっている。
 そうでなければ、日本各地で行われる大規模な花火大会の観賞エリアは、ごく狭い場所に限られるハズだが、空高く打ち上がった花火が、かなり遠くの場所からでも、丸く綺麗に見えることからも、この理屈は間違っていないことが証明できる。
 ーーーーーーが、あえて、小嶋夏海の問いにのり、オレは、質問を返す。

「で、どっちが勝ったんだ? その賭けは?」

「それが、わからないんだって……ウチの母は、同級生の男の子と真下から、花火を見たから……」

(なんだ、それは……)

と、肩透かしをくらった気分になりつつ、笑みを浮かべながら、

「そっか……」

と、返答しておく。
 すると、彼女は、続けて質問を重ねてきた。

「ねぇ、真下から見た花火は、どう見えると思う?」

「お母さんに聞かなかったのか?」

 小嶋夏海は、首を横に振り、

「聞いたけど、教えてくれなかったんだよね」

と、寂しさと苦笑いが混じった複雑な表情で答えた。
 その言葉に、「そうか……」と、短く返事をしたあと、ある考えがひらめいて、そのアイデアを、そのまま口にする。

「下の方から見てみるか? 打ち上げ花火……」

 それは、意外な提案だったのだろうか、彼女は、驚きを隠せない表情で、「えっ!?」と口にしたあと、

「大丈夫なの……?」

と、こちらのようすをうかがうようにたずねてくる。

「そんなに驚かれるような提案をしたつもりはないんだが……たぶん、規制線みたいなモノが張られていると思うから、花火の真下には行けないと思うがな……可能な限り打ち上げ場所の近くまで行くことは、不可能じゃないと思うぞ」

 ここまで、一気に答えたあと、

「これが、あればな!」

『時のコカリナ』を親指と人差し指でつまみ、切り札を切るように力強く言い切った。
 こちらの言葉に、小嶋夏海は、大きく

「うん!」

と、うなずく。

「けど、コカリナの能力を使うのは、ある程度、移動してからの方が良いかもな。ちょっと、この場所を離れるってことを誰かに伝えておくか……」

 そう提案すると、こちらの意図を汲んだのか、

「じゃあ、ユカに言ってくる!」

 彼女は、素早く答えて、五メートルほど離れたテーブルの周辺に集まっているクラスメートの方に駆けて行った。
 長時間の時間停止を行うなら、これまでのように、なるべく人目につかない場所を選ぶ方が良い。ただ、花火観賞のクライマックスを迎える時に、無断で、この場を離れると、周りの人たちに余計な心配をさせてしまう。
 そして、誰かに一声掛けておくことを考えた時、オレと小嶋夏海のことを案じて、席を離れてくれた中嶋由香なら、気を利かしてくれるだろう。こちらから伝えずとも考慮されたベストの人選に、これまで、ひと月以上に渡って、ともに実験・観察を続けてきたパートナーへの信頼感が、より増すのを感じる。

(良く周りの人間を見ているよな……さすが、小嶋だ……)

 そんな感慨に耽っていると、友人に言伝をした彼女が戻ってきた。

「ユカに、『ちょっと坂井と二人で席を外す』って、伝えて来たよ」

 小嶋夏海の言葉を聞きながら、離れたテーブルの方を見ると、中嶋と目が合い、彼女は、こちらに向かって、拳を突き出してきた。
 気合を入れてくれているのだろうか?真意は定かではないが、その好意(であろう)に、大きく無言でうなずいて、返答する。

 その瞬間、

 ドド~~~~ン

という轟音とともに、静寂を破るように、三度目の大きな花火が夜空に舞い上がった。


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「なんだ、突然……? 花火を横から見たら、どう見えるか、だって?」
「うん……私の母親がね、小学生の頃、同級生の男の子たちが、『真横から見た花火は丸いか? 平べったいか?』どんな風に見えるか、賭けをしたんだって」
「ふ〜ん、そっか……」
 小嶋母の同級生の少年たち(当時)には申し訳ないが、答えは決まっている。
 先ほどまで打ち上げられていた、『ポカ物』と呼ばれるキャラクターものの花火ならともかく、世間一般でイメージされる大輪の華を咲かせる『割れ物』と呼ばれるタイプの花火なら、爆発時の火薬が球形かつ同心円状に放射されるため、どこから見ても、丸く見える設計になっている。
 そうでなければ、日本各地で行われる大規模な花火大会の観賞エリアは、ごく狭い場所に限られるハズだが、空高く打ち上がった花火が、かなり遠くの場所からでも、丸く綺麗に見えることからも、この理屈は間違っていないことが証明できる。
 ーーーーーーが、あえて、小嶋夏海の問いにのり、オレは、質問を返す。
「で、どっちが勝ったんだ? その賭けは?」
「それが、わからないんだって……ウチの母は、同級生の男の子と真下から、花火を見たから……」
(なんだ、それは……)
と、肩透かしをくらった気分になりつつ、笑みを浮かべながら、
「そっか……」
と、返答しておく。
 すると、彼女は、続けて質問を重ねてきた。
「ねぇ、真下から見た花火は、どう見えると思う?」
「お母さんに聞かなかったのか?」
 小嶋夏海は、首を横に振り、
「聞いたけど、教えてくれなかったんだよね」
と、寂しさと苦笑いが混じった複雑な表情で答えた。
 その言葉に、「そうか……」と、短く返事をしたあと、ある考えがひらめいて、そのアイデアを、そのまま口にする。
「下の方から見てみるか? 打ち上げ花火……」
 それは、意外な提案だったのだろうか、彼女は、驚きを隠せない表情で、「えっ!?」と口にしたあと、
「大丈夫なの……?」
と、こちらのようすをうかがうようにたずねてくる。
「そんなに驚かれるような提案をしたつもりはないんだが……たぶん、規制線みたいなモノが張られていると思うから、花火の真下には行けないと思うがな……可能な限り打ち上げ場所の近くまで行くことは、不可能じゃないと思うぞ」
 ここまで、一気に答えたあと、
「これが、あればな!」
『時のコカリナ』を親指と人差し指でつまみ、切り札を切るように力強く言い切った。
 こちらの言葉に、小嶋夏海は、大きく
「うん!」
と、うなずく。
「けど、コカリナの能力を使うのは、ある程度、移動してからの方が良いかもな。ちょっと、この場所を離れるってことを誰かに伝えておくか……」
 そう提案すると、こちらの意図を汲んだのか、
「じゃあ、ユカに言ってくる!」
 彼女は、素早く答えて、五メートルほど離れたテーブルの周辺に集まっているクラスメートの方に駆けて行った。
 長時間の時間停止を行うなら、これまでのように、なるべく人目につかない場所を選ぶ方が良い。ただ、花火観賞のクライマックスを迎える時に、無断で、この場を離れると、周りの人たちに余計な心配をさせてしまう。
 そして、誰かに一声掛けておくことを考えた時、オレと小嶋夏海のことを案じて、席を離れてくれた中嶋由香なら、気を利かしてくれるだろう。こちらから伝えずとも考慮されたベストの人選に、これまで、ひと月以上に渡って、ともに実験・観察を続けてきたパートナーへの信頼感が、より増すのを感じる。
(良く周りの人間を見ているよな……さすが、小嶋だ……)
 そんな感慨に耽っていると、友人に言伝をした彼女が戻ってきた。
「ユカに、『ちょっと坂井と二人で席を外す』って、伝えて来たよ」
 小嶋夏海の言葉を聞きながら、離れたテーブルの方を見ると、中嶋と目が合い、彼女は、こちらに向かって、拳を突き出してきた。
 気合を入れてくれているのだろうか?真意は定かではないが、その好意(であろう)に、大きく無言でうなずいて、返答する。
 その瞬間、
 ドド~~~~ン
という轟音とともに、静寂を破るように、三度目の大きな花火が夜空に舞い上がった。