第3章〜㉒〜
ー/ー
7月27日(火) 天候・晴れ
夏休みらしい猛暑は、さらに続く。
恒例行事のように、午前九時に図書館に集合したオレ達は、いつものように、館内で別フロアに別れて、それぞれの業務(?)に入った。
前日、あのようなことがあったにもかかわらず、夕方からの『実験』が楽しみなのだろうか、小嶋夏海は、体調不良など感じさせないくらい心身ともに好調のようすだ。
午前中、順調に各自の課題が進んだことを確認しつつ、昼食は、暗黙の了解でショッピング・モールに向かうことは避け、図書館から徒歩五分ほどの場所にある私鉄のターミナル駅の駅ナカにあるファーストフード店でとった。
その後、午後も各々の課題に取り組み、図書館の窓に差し込む陽射しが傾いてきたことを確認できる時間帯になると、コカリナの調査に取り組むパートナーから、メッセージが届いた。
==============
そろそろ今日の調査を
終わろうと思う。
坂井は、どうする?
==============
こちらも、数学の課題冊子のページを終えたところだったので、
==============
こっちも、そろそろ
切り上げようと思っていた。
片付けたら、一階に降りる。
==============
と、すぐにメッセージを返し、学習室をあとにする準備を始めた。
※
図書館一階の交流ルームで合流したオレ達は、前日の午後と同じく、自転車で小嶋家の方角を目指した。
真夏の太陽は、角度が低くなっても相変わらず強烈な陽射しを提供しつづけ、アスファルトに蓄えられた熱気は、今夜も寝苦しい夜になることを予想させる。
そんな環境でも、前日とは違い、小嶋夏海は足取り軽くペダルを漕いでいるように見えた。
すこぶる機嫌の良さそうな彼女に、気になっていることをたずねる。
屋外を動き回る猫の生態について詳しくないため、昨日の昼間、公園で寝転がっていたあの猫がどんな行動を取っているのか予測がつかない。
「オレが昨日見たネコと、小嶋が言っているネコが同じなのかはワカランが、今日も公園に居ると思うか?」
「だいたい、夕方くらいから公園に居ることが多いから、今日も大丈夫なんじゃないかな? あの子が昼間に公園に居ることは珍しいから、会えた坂井はラッキーだったね」
公園に居着いている猫に遭遇することが、幸運なのかどうかは判断に迷うところだが、昨日あの猫を目撃することがなければ、こうして、彼女とともに、公園に向かうこともなかったかも知れない。
(その意味では、ツキがあったと言えるのかもな)
などと、取り留めもないことを考えながら、ペダルを漕ぎ続け、目的の公園に到着した。
小嶋夏海は、自宅の敷地内に自転車を停めに行ったので、自分は公園の鉄棒とベンチの近くに自転車を置き、コカリナを首に掛けて、昨日、目撃した猫を探す。
人気のない児童公園を周回しながら猫探索を行うと、自転車を停めたのと反対側の小さな藤棚が設置されている場所の草むらの近くに、あの猫がいた!
藤棚が作る日陰と草むらになっている地面は居心地が良いのだろうか、あくびをしながら、のんびりと、くつろいでいるように見える。
昨日のように、不用意に近づいて逃げられないよう、五メートルほど距離を置いてキジトラ模様を観察していると、足音を忍ばせた小嶋夏海が、そばに寄って来ていた。
(あのネコか!?)
指を差しつつ、無言で確認すると、
コクリーーーーーー。
彼女も、言葉を発することなく、うなずく。
やや暴走気味だった小嶋夏海の猫に関する考察は、どうやら間違っていなかったようだ。
二人で息を殺すようにキジトラ猫を見つめていると、観察対象は、再びあくびをしたあと、前脚をグッと伸ばして、全身を反らしたあと、ゴロンと草むらに寝転んだ。
「!!」
思わず、二人で目を見合わせ、今度は互いに、小さくうなずきあい、オレは首に掛けていた『時のコカリナ』を手に取り、隣に立つ実験のパートナーに触れるように促す。
コクリーーーーーー。
ふたたび首をタテに振った彼女がコカリナに触れたことを確認すると、左手の親指だけを穴にあて、吹口から大きく息を吹き込んだ。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
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恒例行事のように、午前九時に図書館に集合したオレ達は、いつものように、館内で別フロアに別れて、それぞれの業務(?)に入った。
前日、あのようなことがあったにもかかわらず、夕方からの『実験』が楽しみなのだろうか、小嶋夏海は、体調不良など感じさせないくらい心身ともに好調のようすだ。
午前中、順調に各自の課題が進んだことを確認しつつ、昼食は、暗黙の了解でショッピング・モールに向かうことは避け、図書館から徒歩五分ほどの場所にある私鉄のターミナル駅の駅ナカにあるファーストフード店でとった。
その後、午後も各々の課題に取り組み、図書館の窓に差し込む陽射しが傾いてきたことを確認できる時間帯になると、コカリナの調査に取り組むパートナーから、メッセージが届いた。
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そろそろ今日の調査を
終わろうと思う。
坂井は、どうする?
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こちらも、数学の課題冊子のページを終えたところだったので、
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こっちも、そろそろ
切り上げようと思っていた。
片付けたら、一階に降りる。
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と、すぐにメッセージを返し、学習室をあとにする準備を始めた。
※
図書館一階の交流ルームで合流したオレ達は、前日の午後と同じく、自転車で小嶋家の方角を目指した。
真夏の太陽は、角度が低くなっても相変わらず強烈な陽射しを提供しつづけ、アスファルトに蓄えられた熱気は、今夜も寝苦しい夜になることを予想させる。
そんな環境でも、前日とは違い、小嶋夏海は足取り軽くペダルを漕いでいるように見えた。
すこぶる機嫌の良さそうな彼女に、気になっていることをたずねる。
屋外を動き回る猫の生態について詳しくないため、昨日の昼間、公園で寝転がっていたあの猫がどんな行動を取っているのか予測がつかない。
「オレが昨日見たネコと、小嶋が言っているネコが同じなのかはワカランが、今日も公園に居ると思うか?」
「だいたい、夕方くらいから公園に居ることが多いから、今日も大丈夫なんじゃないかな? あの子が昼間に公園に居ることは珍しいから、会えた坂井はラッキーだったね」
公園に居着いている猫に遭遇することが、幸運なのかどうかは判断に迷うところだが、昨日あの猫を目撃することがなければ、こうして、彼女とともに、公園に向かうこともなかったかも知れない。
(その意味では、ツキがあったと言えるのかもな)
などと、取り留めもないことを考えながら、ペダルを漕ぎ続け、目的の公園に到着した。
小嶋夏海は、自宅の敷地内に自転車を停めに行ったので、自分は公園の鉄棒とベンチの近くに自転車を置き、コカリナを首に掛けて、昨日、目撃した猫を探す。
人気のない児童公園を周回しながら猫探索を行うと、自転車を停めたのと反対側の小さな藤棚が設置されている場所の草むらの近くに、あの猫がいた!
藤棚が作る日陰と草むらになっている地面は居心地が良いのだろうか、あくびをしながら、のんびりと、くつろいでいるように見える。
昨日のように、不用意に近づいて逃げられないよう、五メートルほど距離を置いてキジトラ模様を観察していると、足音を忍ばせた小嶋夏海が、そばに寄って来ていた。
(あのネコか!?)
指を差しつつ、無言で確認すると、
コクリーーーーーー。
彼女も、言葉を発することなく、うなずく。
やや暴走気味だった小嶋夏海の猫に関する考察は、どうやら間違っていなかったようだ。
二人で息を殺すようにキジトラ猫を見つめていると、観察対象は、再びあくびをしたあと、前脚をグッと伸ばして、全身を反らしたあと、ゴロンと草むらに寝転んだ。
「!!」
思わず、二人で目を見合わせ、今度は互いに、小さくうなずきあい、オレは首に掛けていた『時のコカリナ』を手に取り、隣に立つ実験のパートナーに触れるように促す。
コクリーーーーーー。
ふたたび首をタテに振った彼女がコカリナに触れたことを確認すると、左手の親指だけを穴にあて、吹口から大きく息を吹き込んだ。