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第3章〜⑤〜

ー/ー



苦虫を噛み潰したような顔で、小嶋夏海の方に顔を向けると、彼女は、素知らぬ顔で、

「そうだ! 私は、プールに入る時間が短いと思うから、写真を撮ることにするよ! みんなは、私のぶんも楽しんで!」

ニコリと笑いながら提案する。
 その笑顔の意味と、『時のコカリナ』を彼女自身の手元に置いた真意を瞬時に理解したオレは、呆れながら

(まったく、大した策士だぜ)

と、彼女に向けて視線を送るが、無言のツッコミなど軽く交わされてしまう。
 そんな二人のアイコンタクトに、

「ねぇねぇ、ちょっと気になってたんだけどさ」

と、大嶋裕美子が割って入ってきた。

「さっき、私たちが、ここに来た時、男子三人で集まって、ナニか相談してたみたいだけどさ……どんな話しをしてたんだい?聞かせてよ」

 小柄な同級生は、肘で脇腹を突きながら、たずねてくる。

「あぁ、三人でプレイしてるソシャゲの攻略法についてだよ。今月のイベントは、なかなか対処が難しくてな」

 紳士らしい振る舞いで、オレは真っ当な答えを返す。
 さらに、

「そっちこそ、準備に時間が掛かってたみたいだが、()()()()()()()()に華を、咲かせてたのか?」

と、紳士的に質問を重ねると、大嶋は、ケラケラと笑いだし、

「ちょwwwww『ガールズ・トークに華を咲かす』って…………坂井って、時々、言葉使いがオジサンくさいよね」

と、質問には答えず、若さあふれるナイスガイに対して、失礼なことを言い放つ。
 そんな、自分と大嶋の会話を聞いていたのか、小嶋夏海が口をはさんできた。

「ごめんねユミコ。坂井は、おじさん構文の使い手なんだ。メッセージアプリでも、やたらと句読点や!マークを使う頻度が高いし……」

 失敬な!
 今どきのヤングであるところの坂井夏生が、文章を送る時に多用するのは、せいぜい顔文字と指マークのアイコンだけだ。
 しかし、オレが、抗議の声を挙げる前に、すでに女子二名は会話を進めている。

「そっか〜。ナツミも大変だね。アレって、文面を見ただけで、マジ萎えだもんね」

「そうそう! 坂井からメッセージが来るたびに、テンションが下がり気味になるのが、逆にウケるって言うか……」

 言いたい放題である。いや、これが小嶋夏海の本音なら、マジな話しでヘコむのだが――――――。
 そんな軽く落ち込みそうになっている繊細な男子をよそに、彼女は話しを続ける。

「あと、坂井に言っておくけど、私たち三人が話していたのは、『今日の写真をどんな感じでSNSにアゲるか』って、ことだから――――――ね、ユミコ?」

「えっ……と。そ、そうだったね! ナツミが、撮影してくれることになって、マジ助かる!!」

「うん! 坂井も、女子の会話の中身を知ったら、男子は泣きを見るだけだし、ヤメておいた方がイイんじゃない?」

 小嶋夏海は、忠告するように語る。
 そうか――――――やはり、女子らしいトークで盛り上がっていたんだな、とオジサン扱いされて下がりそうになったテンションを、何とか維持しつつ、彼女たちの会話を受け入れた。
 自分たち男子の不毛さに比べて、女子の会話の無邪気さに和んでいると、

「三人とも、そろそろ準備は良いか〜!?」

と、哲夫が声を掛けてきた。

「こっちは、オッケー! まずは、どこから行く!?」

大嶋が、元気よく返事をする。

「とりま、隣の『造波プール』ってヤツじゃね? 浅瀬もあるし、全員で行けるだろ!?」

 康之が提案した場所は、オレたちが集合している『トリトンの噴水』の隣りにあり、波打ち際に、優しく満ち引きを繰り返す波が打ち寄せ、水深が浅いので、小さな子どもでも安全に遊ぶことができるようになっている。これなら、水に浸かってハシャグつもりのなさそうな中嶋や小嶋も問題なく水と戯れることができそうだ。
 さりげなく気を使える康之に全員が賛同し、移動する。
『造波プール』の水辺に向かって歩く行くと、夏の陽射しにキラキラと輝く水面に、気分がアガる! 浅い水深のプールに、コバルトブルーの波が次から次へと押し寄せてくるようすは、まるで南の島のビーチのようだ。

「「ウォォォォ〜〜〜〜〜夏だ〜〜〜〜〜!!!!!!」」

と、叫びながら水面に駆けて行く康之と哲夫の姿は微笑ましく、つられて自分も笑顔になる。


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苦虫を噛み潰したような顔で、小嶋夏海の方に顔を向けると、彼女は、素知らぬ顔で、
「そうだ! 私は、プールに入る時間が短いと思うから、写真を撮ることにするよ! みんなは、私のぶんも楽しんで!」
ニコリと笑いながら提案する。
 その笑顔の意味と、『時のコカリナ』を彼女自身の手元に置いた真意を瞬時に理解したオレは、呆れながら
(まったく、大した策士だぜ)
と、彼女に向けて視線を送るが、無言のツッコミなど軽く交わされてしまう。
 そんな二人のアイコンタクトに、
「ねぇねぇ、ちょっと気になってたんだけどさ」
と、大嶋裕美子が割って入ってきた。
「さっき、私たちが、ここに来た時、男子三人で集まって、ナニか相談してたみたいだけどさ……どんな話しをしてたんだい?聞かせてよ」
 小柄な同級生は、肘で脇腹を突きながら、たずねてくる。
「あぁ、三人でプレイしてるソシャゲの攻略法についてだよ。今月のイベントは、なかなか対処が難しくてな」
 紳士らしい振る舞いで、オレは真っ当な答えを返す。
 さらに、
「そっちこそ、準備に時間が掛かってたみたいだが、|ガ《・》|ー《・》|ル《・》|ズ《・》|・《・》|ト《・》|ー《・》|ク《・》に華を、咲かせてたのか?」
と、紳士的に質問を重ねると、大嶋は、ケラケラと笑いだし、
「ちょwwwww『ガールズ・トークに華を咲かす』って…………坂井って、時々、言葉使いがオジサンくさいよね」
と、質問には答えず、若さあふれるナイスガイに対して、失礼なことを言い放つ。
 そんな、自分と大嶋の会話を聞いていたのか、小嶋夏海が口をはさんできた。
「ごめんねユミコ。坂井は、おじさん構文の使い手なんだ。メッセージアプリでも、やたらと句読点や!マークを使う頻度が高いし……」
 失敬な!
 今どきのヤングであるところの坂井夏生が、文章を送る時に多用するのは、せいぜい顔文字と指マークのアイコンだけだ。
 しかし、オレが、抗議の声を挙げる前に、すでに女子二名は会話を進めている。
「そっか〜。ナツミも大変だね。アレって、文面を見ただけで、マジ萎えだもんね」
「そうそう! 坂井からメッセージが来るたびに、テンションが下がり気味になるのが、逆にウケるって言うか……」
 言いたい放題である。いや、これが小嶋夏海の本音なら、マジな話しでヘコむのだが――――――。
 そんな軽く落ち込みそうになっている繊細な男子をよそに、彼女は話しを続ける。
「あと、坂井に言っておくけど、私たち三人が話していたのは、『今日の写真をどんな感じでSNSにアゲるか』って、ことだから――――――ね、ユミコ?」
「えっ……と。そ、そうだったね! ナツミが、撮影してくれることになって、マジ助かる!!」
「うん! 坂井も、女子の会話の中身を知ったら、男子は泣きを見るだけだし、ヤメておいた方がイイんじゃない?」
 小嶋夏海は、忠告するように語る。
 そうか――――――やはり、女子らしいトークで盛り上がっていたんだな、とオジサン扱いされて下がりそうになったテンションを、何とか維持しつつ、彼女たちの会話を受け入れた。
 自分たち男子の不毛さに比べて、女子の会話の無邪気さに和んでいると、
「三人とも、そろそろ準備は良いか〜!?」
と、哲夫が声を掛けてきた。
「こっちは、オッケー! まずは、どこから行く!?」
大嶋が、元気よく返事をする。
「とりま、隣の『造波プール』ってヤツじゃね? 浅瀬もあるし、全員で行けるだろ!?」
 康之が提案した場所は、オレたちが集合している『トリトンの噴水』の隣りにあり、波打ち際に、優しく満ち引きを繰り返す波が打ち寄せ、水深が浅いので、小さな子どもでも安全に遊ぶことができるようになっている。これなら、水に浸かってハシャグつもりのなさそうな中嶋や小嶋も問題なく水と戯れることができそうだ。
 さりげなく気を使える康之に全員が賛同し、移動する。
『造波プール』の水辺に向かって歩く行くと、夏の陽射しにキラキラと輝く水面に、気分がアガる! 浅い水深のプールに、コバルトブルーの波が次から次へと押し寄せてくるようすは、まるで南の島のビーチのようだ。
「「ウォォォォ〜〜〜〜〜夏だ〜〜〜〜〜!!!!!!」」
と、叫びながら水面に駆けて行く康之と哲夫の姿は微笑ましく、つられて自分も笑顔になる。