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第3章〜②〜

ー/ー



その意図を察して、

「あぁ! ちゃんと持ってきてるぜ」

答えて、ショルダーバッグのポケットに入れていたコカリナをチラリと見せる。
 確認を終えた彼女は、満足したようにうなずいて、

「今日も楽しい一日にしよう!」

と、笑顔を見せた。
 そんな会話を交わしていると、

「じゃあ、そろそろ行くか? 二人とも良いか~?」

と、哲夫の声がした。どうも、オレたち二人に気を使っているようである。
 その一言で、オレたち六人は、自動改札を通りホームに向かうことにした。
途中、康之に、

「まったく、朝っぱらから二人でイチャつきやがって! 羨ましいヤツめ!」

と、かかとにトゥ・キックをお見舞いされた。
 どうやら、小嶋夏海が夏休み前から張っていた伏線のおかげで、自分たち二人が親しげに話すこと自体は、日常風景の一つとして受け入れられつつあるようだ。

 しかしながら――――――。

 実験のパートナーである彼女にとって、それは、あくまで、周囲の人間にオレと二人で居ることを怪しまれないための(親しいフリ)でしかないのである。
 その事実を認識すると、何故か、チクリ…………と、心が痛んだ。



 全員が集合時間に遅れずに集まったことで、八時〇二分発車の各駅停車に間に合った。
 それから、三つ先の駅で快速電車に乗り換える。夏休みと言っても、休日の早い時間帯とあって、乗り換えた列車の車両に乗客は少なく、六人全員の座席を確保することができた。
 康之たち四人が、ドア付近にある二人づつが向き合う形のクロスシートを占拠したので、オレは、小嶋夏海とともに、通路を挟んだ席の窓際に向かい合って座ることになった。
 乗り換える前よりも、お互いの距離が近くなったことと、四人と少し距離が出来たためなのか、目の前の彼女は、声のトーンを絞りながら、こんな提案をしてきた。

「ねぇ、坂井に相談と言うか、お願いがあるんだけど……プールにいる間、コカリナを私に預けてくれない?」

 突然の申し出に、少し驚きながら、

「ん? オレが持ってちゃ、マズいのか?」

と、素直に疑問をぶつける。

「そうじゃないけど……男子は、プールサイドに小物入れなんて、持ち込まないでしょ? 坂井の水着には、ポケットが付いていなかったハズだし、プールにいる間、ずっとコカリナを首から提げているのも不自然じゃない?」

 言われてみれば、その通りだ。
 もちろん、着替えや貴重品とともに、更衣室のコインロッカーに預けておき、必要な時に取りに行って、使い終わったら元に戻しておく方法もある。コインロッカーは、施設の滞在中は何度でも荷物の出し入れが可能なタイプらしいので、タイミングを見計らって、プールサイドと更衣室を往復しても良い、とも考えたのだが……。

「コインロッカーに置いておいても良いけど、プールサイドと行き来するのも面倒だな……なら、小嶋に預けておくか」

 そう言って、オレは、ショルダーバッグから、『時のコカリナ』を取り出して彼女に手渡す。

「言っておくけど、一人で勝手に使わないでくれよ」

 冗談めかした口調で、念のためにクギを刺すが、小嶋夏海は

「坂井たち男子の対応に問題がなければね。何かあったら、時間を止めて、私たち三人だけで帰るかも」

 澄ました表情で、脅しとも、冗談ともつかないコトを言う。

(やっぱり、手元にコカリナを確保しておくべきだったか……)

 後悔しつつ、万が一にも、悪友二名(特に康之)が、規範から外れた行動を取らないように、と願わずにはいられなかった。


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その意図を察して、
「あぁ! ちゃんと持ってきてるぜ」
答えて、ショルダーバッグのポケットに入れていたコカリナをチラリと見せる。
 確認を終えた彼女は、満足したようにうなずいて、
「今日も楽しい一日にしよう!」
と、笑顔を見せた。
 そんな会話を交わしていると、
「じゃあ、そろそろ行くか? 二人とも良いか~?」
と、哲夫の声がした。どうも、オレたち二人に気を使っているようである。
 その一言で、オレたち六人は、自動改札を通りホームに向かうことにした。
途中、康之に、
「まったく、朝っぱらから二人でイチャつきやがって! 羨ましいヤツめ!」
と、かかとにトゥ・キックをお見舞いされた。
 どうやら、小嶋夏海が夏休み前から張っていた伏線のおかげで、自分たち二人が親しげに話すこと自体は、日常風景の一つとして受け入れられつつあるようだ。
 しかしながら――――――。
 実験のパートナーである彼女にとって、それは、あくまで、周囲の人間にオレと二人で居ることを怪しまれないための、《親しいフリ》でしかないのである。
 その事実を認識すると、何故か、チクリ…………と、心が痛んだ。
 全員が集合時間に遅れずに集まったことで、八時〇二分発車の各駅停車に間に合った。
 それから、三つ先の駅で快速電車に乗り換える。夏休みと言っても、休日の早い時間帯とあって、乗り換えた列車の車両に乗客は少なく、六人全員の座席を確保することができた。
 康之たち四人が、ドア付近にある二人づつが向き合う形のクロスシートを占拠したので、オレは、小嶋夏海とともに、通路を挟んだ席の窓際に向かい合って座ることになった。
 乗り換える前よりも、お互いの距離が近くなったことと、四人と少し距離が出来たためなのか、目の前の彼女は、声のトーンを絞りながら、こんな提案をしてきた。
「ねぇ、坂井に相談と言うか、お願いがあるんだけど……プールにいる間、コカリナを私に預けてくれない?」
 突然の申し出に、少し驚きながら、
「ん? オレが持ってちゃ、マズいのか?」
と、素直に疑問をぶつける。
「そうじゃないけど……男子は、プールサイドに小物入れなんて、持ち込まないでしょ? 坂井の水着には、ポケットが付いていなかったハズだし、プールにいる間、ずっとコカリナを首から提げているのも不自然じゃない?」
 言われてみれば、その通りだ。
 もちろん、着替えや貴重品とともに、更衣室のコインロッカーに預けておき、必要な時に取りに行って、使い終わったら元に戻しておく方法もある。コインロッカーは、施設の滞在中は何度でも荷物の出し入れが可能なタイプらしいので、タイミングを見計らって、プールサイドと更衣室を往復しても良い、とも考えたのだが……。
「コインロッカーに置いておいても良いけど、プールサイドと行き来するのも面倒だな……なら、小嶋に預けておくか」
 そう言って、オレは、ショルダーバッグから、『時のコカリナ』を取り出して彼女に手渡す。
「言っておくけど、一人で勝手に使わないでくれよ」
 冗談めかした口調で、念のためにクギを刺すが、小嶋夏海は
「坂井たち男子の対応に問題がなければね。何かあったら、時間を止めて、私たち三人だけで帰るかも」
 澄ました表情で、脅しとも、冗談ともつかないコトを言う。
(やっぱり、手元にコカリナを確保しておくべきだったか……)
 後悔しつつ、万が一にも、悪友二名(特に康之)が、規範から外れた行動を取らないように、と願わずにはいられなかった。