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冒険者になろう 3

29/62





 食事と会計を終えた二人は一度冒険者ギルドのレストランを出た。  オークの村の村長に口止めを頼むためにどこか人気のない場所を探す。しかし街中で使えばどこで誰に見られるか分からないので宿を取る事にする。 「私が街に来る時、使っている宿があります。そこで空き部屋が無いか聞いてみましょう」  モモに案内され少し道を歩いてたどり着いた宿屋を見たムツヤの感想は「お世辞にも綺麗とは言えない」というものだった。  しかし、それは経年劣化でサビや塗装が剥がれてそう感じるだけで、決して不衛生ではない。  扉を開けて中に入ると掃除が行き届いたフロントがそれを物語る。 「誰かと思えばえーっと、あぁ、オークのモモちゃんかい」  メガネを掛けた白髪の老婆が2人を出迎えた、客を出迎えるのに立っておじぎをするでも無く。ロッキングチェアにどんと座り、ゆらゆらと揺れていた。  フロントで数人の亜人や貧乏な冒険者たちが座ってタバコを吸っている椅子よりもよっぽど豪華だ。 「後ろの兄ちゃんは連れかい?」  いぶかしげに老婆はムツヤを見た。この宿は一見さんが歓迎されないことと、上からの目線の接客に目をつぶれば安くそこそこ綺麗な部屋に泊まれるのだが。 「は、はじめましで!! 俺はムツヤっでいいまず!」 「はっ、どこの田舎っぺだいその訛りは」  老婆は歳をとった女独特のネチッこい、シャクにさわる声色で言う。このままではまたムツヤの心が折れて三角座りを始めると思い、モモはすかさずフォローに入る。 「グネばあさん、ムツヤ殿は異国より来たのだ。多少の言葉の違いもある、私は訳あってムツヤ殿の旅のお供を」 「訳って何だい? 惚れた腫れたかい?」  モモは顔に血液が集まってくるのを感じた、左手を胸に当てて前のめりに否定をした。 「ち、ちがう、ムツヤ殿に少し世話になっただけだ!!」 「わかったわかった、そういう事なら一緒の部屋で良いね?」  グネばあさんと言われた老婆はそう言ってニヤリと笑う。わざとか勘違いかは分からないがこの状況を楽しんでいることだけは確かだった。 「い、いや、流石に同じ部屋で寝るってのは……」 「別に俺は大丈夫ですよ、モモさんどは一緒に寝ましだし」  ムツヤがそういった後、少し騒がしかったフロントは静まり返る。  少し考えてモモは理解した、きっとムツヤ殿は自分の家に泊めた時の事を言っているのだと。  しかし、あまりにも言葉が足りなすぎる。沈黙を破ったのはグネばあさんの笑い声だった。 「ひゃっはっはっは、何だいそういう事かい。それならセミダブルベッドの部屋でいいね?」 「ち、ちが、ムツヤ殿とは」 「良いじゃないか、平等宣言されたんだから恋愛だって自由さ」  グネばあさんはうんうんと一人で納得してそう言う。  モモはどこから何を説明すれば良いのかパニックを起こして心臓の鼓動が高鳴りすぎて気絶しそうだ。  ムツヤは何が起こっているのか全く分からない様でアホ面で取り残されている。 「良いかい、汚すんじゃないよ?」  ニヤリと笑ってそう言うとグネばあさんはよっこらせと立つ、そしてシワシワの手で握った鍵を台の上にコトリと置いた。 「だ、だから、ムツヤ殿が言っているのはそういう変な意味ではなく私の家に招待した時の」  しまったとモモは思う、まるで泥にハマった時の様にもがけばもがくほど勘違いは深くなっていくみたいだ。 「モモちゃん、他のお客もいるんだ。わたしゃそういう話は嫌いじゃないが後でゆっくり聞かせてもらうよ」



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 食事と会計を終えた二人は一度冒険者ギルドのレストランを出た。  オークの村の村長に口止めを頼むためにどこか人気のない場所を探す。しかし街中で使えばどこで誰に見られるか分からないので宿を取る事にする。 「私が街に来る時、使っている宿があります。そこで空き部屋が無いか聞いてみましょう」  モモに案内され少し道を歩いてたどり着いた宿屋を見たムツヤの感想は「お世辞にも綺麗とは言えない」というものだった。  しかし、それは経年劣化でサビや塗装が剥がれてそう感じるだけで、決して不衛生ではない。  扉を開けて中に入ると掃除が行き届いたフロントがそれを物語る。 「誰かと思えばえーっと、あぁ、オークのモモちゃんかい」  メガネを掛けた白髪の老婆が2人を出迎えた、客を出迎えるのに立っておじぎをするでも無く。ロッキングチェアにどんと座り、ゆらゆらと揺れていた。  フロントで数人の亜人や貧乏な冒険者たちが座ってタバコを吸っている椅子よりもよっぽど豪華だ。 「後ろの兄ちゃんは連れかい?」  いぶかしげに老婆はムツヤを見た。この宿は一見さんが歓迎されないことと、上からの目線の接客に目をつぶれば安くそこそこ綺麗な部屋に泊まれるのだが。 「は、はじめましで!! 俺はムツヤっでいいまず!」 「はっ、どこの田舎っぺだいその訛りは」  老婆は歳をとった女独特のネチッこい、シャクにさわる声色で言う。このままではまたムツヤの心が折れて三角座りを始めると思い、モモはすかさずフォローに入る。 「グネばあさん、ムツヤ殿は異国より来たのだ。多少の言葉の違いもある、私は訳あってムツヤ殿の旅のお供を」 「訳って何だい? 惚れた腫れたかい?」  モモは顔に血液が集まってくるのを感じた、左手を胸に当てて前のめりに否定をした。 「ち、ちがう、ムツヤ殿に少し世話になっただけだ!!」 「わかったわかった、そういう事なら一緒の部屋で良いね?」  グネばあさんと言われた老婆はそう言ってニヤリと笑う。わざとか勘違いかは分からないがこの状況を楽しんでいることだけは確かだった。 「い、いや、流石に同じ部屋で寝るってのは……」 「別に俺は大丈夫ですよ、モモさんどは一緒に寝ましだし」  ムツヤがそういった後、少し騒がしかったフロントは静まり返る。  少し考えてモモは理解した、きっとムツヤ殿は自分の家に泊めた時の事を言っているのだと。  しかし、あまりにも言葉が足りなすぎる。沈黙を破ったのはグネばあさんの笑い声だった。 「ひゃっはっはっは、何だいそういう事かい。それならセミダブルベッドの部屋でいいね?」 「ち、ちが、ムツヤ殿とは」 「良いじゃないか、平等宣言されたんだから恋愛だって自由さ」  グネばあさんはうんうんと一人で納得してそう言う。  モモはどこから何を説明すれば良いのかパニックを起こして心臓の鼓動が高鳴りすぎて気絶しそうだ。  ムツヤは何が起こっているのか全く分からない様でアホ面で取り残されている。 「良いかい、汚すんじゃないよ?」  ニヤリと笑ってそう言うとグネばあさんはよっこらせと立つ、そしてシワシワの手で握った鍵を台の上にコトリと置いた。 「だ、だから、ムツヤ殿が言っているのはそういう変な意味ではなく私の家に招待した時の」  しまったとモモは思う、まるで泥にハマった時の様にもがけばもがくほど勘違いは深くなっていくみたいだ。 「モモちゃん、他のお客もいるんだ。わたしゃそういう話は嫌いじゃないが後でゆっくり聞かせてもらうよ」



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