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はじめての武器屋 5

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『ギルスウドパンゼ』   ギルスのいい武器屋という意味だ。  いい武器屋を名乗る割にはこじんまりとして、お世辞にも繁盛しているとは言いにくい。  武器屋には大きく分けて2種類あり、1つは鍛冶場を持っている大きな武器屋。  そして、もう1つは武器を仕入れて売り買いする仲介屋に近いこの店のような小さな武器屋だ。  ドアを開けるとカランカランと心地よいドアチャイムの音が迎えてくれた。  それとは対照的に気だるそうな男の声が聞こえる。 「あーはいはいお客さんチョット待ってねー」  よっこらせとカウンター後ろの部屋から男が出てきた。  サズァン程ではないが少し色黒の肌で金髪、額にはタオルを巻いている。 「お、モモちゃんじゃなーい、どうしたの? また剣でも研ぎに来たの? ってもしかしてそっちの子彼氏?」 「ば、馬鹿を言うなギルス!! こちらはムツヤ殿だ、訳あってこの方の旅の従者としてお供をしている」  モモがそう言うとふんふんとギルスは腕を組んで頷いた。 「わかる、ヒジョーにわかるよモモちゃん。しかしあの一匹狼のモモちゃんを惚れさせて従者にするなんて相当やるな君は」 「いい加減にしないか馬鹿者!!」  モモが顔を赤くしてそう言うと、悪かった悪かったとギルスは謝り、改めてムツヤに自己紹介をする。 「ようこそギルスのいい武器屋へ、俺は店主のギルスだ」  ギルスはそう言ってムツヤに近付き、握手のための手を伸ばす。男はムツヤより少し背が高い。 「こ、ごんにぢは始めまじで! お、私はムツヤと言いますよろしくおねがいします!」  握手のための手を完全に無視し、ムツヤは深々と頭を下げたのでギルスは肩透かしを食らってしまった。 「ムツヤ殿、こういった時は手を握りながら挨拶をするのです」  そう言われると慌ててムツヤはギルスの手を握って、お辞儀をする。  腕を引っ張られてギルスはバランスを崩す。 「す、すんません、俺田舎育ちで……」 「あー良いって良いって、大事なお客さんだもの」  ギルスは笑顔を作ってはいるが、目線はムツヤが片手に握り締める剣に止まっていた。 「ギルス、どうせお前には嘘が通用しないから最初に言っておくぞムツヤ殿は少々『訳あり』だ」  意味深にモモはそう言うが、ギルスは笑って答える。 「大丈夫大丈夫、俺はこの店で盗みを働く者以外は、冒険者から殺人犯まで誰でもウェルカムだ!」  ギルスは徹底的に客を選ばなかった。誰からでも買うし誰にでも売る。  良くも悪くも大衆とは違う倫理観を持っていた。 「で、その剣を売りたいんでしょ?」  言葉に出してもいないのに自分の望みが分かるなんて、流石は商人だなとムツヤは感心する。  だが、普通の服装で高価な剣だけを握りしめて武器屋に入れば誰だってわかるものだ。 「これ、親の形見の剣なんでず。俺は冒険者になってハーレムを作るために田舎から来ました。だからこれを買って下さい!」  しまった、とモモはまた額に手を充てた。外でハーレムハーレム言わないようにちゃんとムツヤを教育しておくべきだったと。 「ハーレム? ってことはモモちゃんはハーレム要員1号って事!?」 「ち、違う!!」 「モモさんは違いまず、俺も勘違いしでだんですが。本当はオークは女騎士を襲わないし人間とオークが好きになる事は無いんですって」  それを聞いてギルスはまた笑い出す。また今日も退屈な1日になるかと思っていたが、退屈せずに済みそうな予感がした。 「まぁいいや、親の形見ね。そういう事にしておくよ」  ギルスはにやりとモモに意味ありげな笑顔を見せる。  商売をする上でお客と仲良くなることは必要ではあるが、面倒に巻き込まれそうな事は聞かないほうが良い。  そうでないと、善意の第三者で居られなくなってしまう。 「それじゃ査定をするから貸してくれるかなムツヤくん、俺のことはギルスって呼んでくれ」 「あ、それじゃお願いしますギルスさん!」



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『ギルスウドパンゼ』   ギルスのいい武器屋という意味だ。  いい武器屋を名乗る割にはこじんまりとして、お世辞にも繁盛しているとは言いにくい。  武器屋には大きく分けて2種類あり、1つは鍛冶場を持っている大きな武器屋。  そして、もう1つは武器を仕入れて売り買いする仲介屋に近いこの店のような小さな武器屋だ。  ドアを開けるとカランカランと心地よいドアチャイムの音が迎えてくれた。  それとは対照的に気だるそうな男の声が聞こえる。 「あーはいはいお客さんチョット待ってねー」  よっこらせとカウンター後ろの部屋から男が出てきた。  サズァン程ではないが少し色黒の肌で金髪、額にはタオルを巻いている。 「お、モモちゃんじゃなーい、どうしたの? また剣でも研ぎに来たの? ってもしかしてそっちの子彼氏?」 「ば、馬鹿を言うなギルス!! こちらはムツヤ殿だ、訳あってこの方の旅の従者としてお供をしている」  モモがそう言うとふんふんとギルスは腕を組んで頷いた。 「わかる、ヒジョーにわかるよモモちゃん。しかしあの一匹狼のモモちゃんを惚れさせて従者にするなんて相当やるな君は」 「いい加減にしないか馬鹿者!!」  モモが顔を赤くしてそう言うと、悪かった悪かったとギルスは謝り、改めてムツヤに自己紹介をする。 「ようこそギルスのいい武器屋へ、俺は店主のギルスだ」  ギルスはそう言ってムツヤに近付き、握手のための手を伸ばす。男はムツヤより少し背が高い。 「こ、ごんにぢは始めまじで! お、私はムツヤと言いますよろしくおねがいします!」  握手のための手を完全に無視し、ムツヤは深々と頭を下げたのでギルスは肩透かしを食らってしまった。 「ムツヤ殿、こういった時は手を握りながら挨拶をするのです」  そう言われると慌ててムツヤはギルスの手を握って、お辞儀をする。  腕を引っ張られてギルスはバランスを崩す。 「す、すんません、俺田舎育ちで……」 「あー良いって良いって、大事なお客さんだもの」  ギルスは笑顔を作ってはいるが、目線はムツヤが片手に握り締める剣に止まっていた。 「ギルス、どうせお前には嘘が通用しないから最初に言っておくぞムツヤ殿は少々『訳あり』だ」  意味深にモモはそう言うが、ギルスは笑って答える。 「大丈夫大丈夫、俺はこの店で盗みを働く者以外は、冒険者から殺人犯まで誰でもウェルカムだ!」  ギルスは徹底的に客を選ばなかった。誰からでも買うし誰にでも売る。  良くも悪くも大衆とは違う倫理観を持っていた。 「で、その剣を売りたいんでしょ?」  言葉に出してもいないのに自分の望みが分かるなんて、流石は商人だなとムツヤは感心する。  だが、普通の服装で高価な剣だけを握りしめて武器屋に入れば誰だってわかるものだ。 「これ、親の形見の剣なんでず。俺は冒険者になってハーレムを作るために田舎から来ました。だからこれを買って下さい!」  しまった、とモモはまた額に手を充てた。外でハーレムハーレム言わないようにちゃんとムツヤを教育しておくべきだったと。 「ハーレム? ってことはモモちゃんはハーレム要員1号って事!?」 「ち、違う!!」 「モモさんは違いまず、俺も勘違いしでだんですが。本当はオークは女騎士を襲わないし人間とオークが好きになる事は無いんですって」  それを聞いてギルスはまた笑い出す。また今日も退屈な1日になるかと思っていたが、退屈せずに済みそうな予感がした。 「まぁいいや、親の形見ね。そういう事にしておくよ」  ギルスはにやりとモモに意味ありげな笑顔を見せる。  商売をする上でお客と仲良くなることは必要ではあるが、面倒に巻き込まれそうな事は聞かないほうが良い。  そうでないと、善意の第三者で居られなくなってしまう。 「それじゃ査定をするから貸してくれるかなムツヤくん、俺のことはギルスって呼んでくれ」 「あ、それじゃお願いしますギルスさん!」



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