オークの村の救世主になろう 4
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「えーっと、いやその何というべきか」 目の前でハーレムを作るなどと言っている男が居たらとしたら、そいつはほぼ間違いなくクズだろうし軽蔑の対象になる。 しかしながらモモは純真な目でそんな野望を語る男に何と言葉を掛ければ良いのか戸惑った。 「そこでモモさん。さっき何でもしてくれるって言ってましたよね?」 「あっ、うっ、それはその」 このタイミングで先程の口約束を持ち出されたモモは身構えた。 ムツヤの考え、次の行動、発言の何ひとつが分からない。ロースも流石に顔をしかめる。 「本当はお礼とか別に良かったんですけど、少しだけ頼み事をお願いしたいので聞いてもらえませんか?」 まさかとモモは思う。 いくらなんでもオークの中でも一番ぐらいに醜い自分を、と思いながら高鳴る鼓動と真っ白になった頭ではパッと浮かんだ言葉を口から吐き出すことしか出来ない。 「えっえっと、ムツヤ殿は素敵な方で、でもムツヤ殿は人間で私はオークで、し、しかも私は醜いですし…… それに知り合って時間が急すぎると思いますし、確かに何でもと約束はしましたが、お互いをもっと良く知り合ってからというか、で、でもムツヤ殿がどうしてもと仰るのなら…… それでハーレムじゃなくて本当に真剣に私だけなら…… って私は何を言っておるのだ!」 「どうしたんですかー? モモさーん?」 ムツヤは今までとは明らかに違う、慌てふためくモモのことが若干心配になる。 モモは今まで男から甘い言葉を言われた事がない。 オークの美的感覚では鼻が低く、下顎から立派な牙が生え、体は太い者が美男美女とされている。 その価値観から言うとモモはオークにとっては醜く見えてしまう。 それ故に、せめて私は強くあろうと、逞しい戦士になれるようにと、この様な態度と話し方になったのだが、今やそれはみじんも感じられない。 「でもやはり勘違いで斬りかかった私を身を挺して助け、更には妹や村のみんなの命を救っていただいた恩は忘れる事が出来ませぬ。戦士に二言は無い! 私はムツヤ殿に一生忠誠を誓い」 「いや、別に一生じゃなくても良いんですけど…… 近くの大きな街まで案内してくれるだけで良いんだけどなーって」 首を傾げながらムツヤがそう言うとアレほど赤かったモモの顔が段々と真顔になって、静かに椅子に座った。 「あっはい、そうですよね、そうですよねー……」 村長は目を閉じ腕を組んでうーんと唸る。 伊達に70年も生きてはいない。 ある程度の嘘は見破れるし、人を見る目もそこそこにあるはずだ。 荒唐無稽な話だが、ムツヤが嘘を言っているようには見えなかった。 気まずい沈黙が流れ、それを打ち破る為にモモは提案をした。 「ムツヤ殿、今日はひとまず夜も遅いので私の家でおもてなしをさせてくれないか? 大したもてなしは出来ないでしょうが、私がいれば村のバラのような考えのオークも馬鹿な真似はしないでしょう。村長よろしいですか?」 モモが確認を取ると村長はゆっくりと頷いた。 「ムツヤ様の話、私は信じましょう。今は村がこんな状態でお礼もおもてなしも出来ませんが、戦士も命がある者は全員傷が癒えた。見回りは他のものに任せる、モモ出来る限りのもてなしを頼むぞ」 「かしこまりました」とモモは元気良く答え、それでは失礼しますと村長に一礼した。 それに見習いムツヤも一礼すると、村長は立ち上がり礼を返す。 「いやー、今日は外で寝るようかと思いましだが、助かりました」 ムツヤが嬉しそうにそう言うとモモは首を振った。 「恩人を野宿なんてさせたら一族の恥です。宿屋でもあれば良いのですが、私達の村は何も無いへんぴな場所にあり、旅人も来ないのでそういった施設が無いのです。私の家で本当に申し訳ないのですが……」 「わかりました、俺もお家で色々、もっとモモさんの事を知りたいので」 「い、色々とはなななんでしょうかムツヤ殿!?」 突然モモの堅苦しい調子が崩れてムツヤは首を傾げる。 またおかしな事でも言ってしまっただろうか。 「いえ、俺のことはもう大体は話しだので、ごの世界の事やオーグさん達の事まだ知らねんので……」 「そ、そうですよね、お任せ下さい!」 ムツヤは連れられてモモの家の中に入ると、すっかり元気になったモモの妹ヒレーが出迎えてくれた。 「人間の方、先程はありがとうございました」 着ている服だけを見ればとても可愛らしい、と思ってしまった自分をムツヤはまた戒める。
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