26. ビキニアーマーの痛み

ー/ー



「へぇ、あなたがOrangeの男爵様? 思ったよりお若いのね?」

 金の模様が入った漆黒のビキニアーマーで肌を露出した、Sランク女剣士ソリス・ブレイドウォーカーはニコッと笑ってタケルを見つめる。

「きょ、今日はよろしくお願いいたします」

 タケルは目のやり場に困り、慌ててお辞儀した。

 魔物の領域に手を出す上で、魔法のバリエーションを増やしておきたいタケルは遺跡探索をやろうと思い立ったのだ。魔道具の欠片でも残っていればそこからITスキルで古代の魔法のコードを吸い出せるかもしれない。そこで、ギルドに護衛として凄腕の剣士をお願いしたら美しい女性が来てしまったのだ。

「私を雇うなんて相当儲けていらっしゃるのね? フォンゲートは私も使わせていただいてますわ」

 ソリスはファサッと赤い髪の毛を揺らしながらほほ笑んだ。

「あ、ありがとうございます。おかげさまで事業は順調に伸びております」

「で? ギルドからは遺跡探索と聞いておりますが?」

「そ、そうなんです。魔法の研究をしていましてですね、ルミナセラフ遺跡で調査をしたいんですよ」

「うーん、昔行きましたけど……、あそこは壊れた遺構しか残ってないわよ?」

 ソリスは人差し指をあごにつけ、困惑気味に首をかしげる。

「無いなら無いでいいんです。無いことを確かめるのも研究なので……」

「はぁ、わたしとしては報酬いただければどこでも構わないですけどね……。あら、ビキニアーマーは初めて?」

 タケルがついついビキニに目が行っていることを見逃さなかったソリスは、ニヤッと笑った。

「あ、いや、素肌丸出しでどうやって防御しているのかと……」

「ふふっ、では、触ってみて下さる?」

「え……?」

「この辺をペタッと。口で言うより触ってみればわかるわ」

 ソリスは腹筋のあたりを指さす。

「で、では遠慮なく……」

 タケルはそーっと指を伸ばした。

 もうすぐ肌に触れようとした時だった――――。

 バチッ!

 痛ってーー!

 まるで冬の静電気にあったかのように指は弾かれてしまった。

「お分かりいただけましたか?」

 ソリスは楽しそうに微笑んでいる。

「そりゃもう、痛いほど……」

 タケルは顔を歪めながら辺りを見ると、クレアがまるで汚いものを見るような目でにらんでいる。

「私も行くわ!」

 クレアは何かに突き動かされるように宣言した。

「お、おい。遺跡調査は何が起こるか分からないんだぞ?」

「だから行くって言ってるの!」

 クレアは仏頂面で腕を組み、テコでも動きそうにない。

「あぁ、もう……」

 タケルは渋い顔で宙を仰いだ。

「ふふっ、いいわよ、可愛いお嬢ちゃん。遺跡で何が起こるかしらね? ふふっ」

「タケルさん、行きましょ!」

 クレアはソリスをキッとにらむと、タケルの手を引っ張っていく。

「あ、ちょ、ちょっと……。もう……。では、ソリスさん、お願いします!」

「はいはい。楽しい旅になりそうね。ふふっ」

 ソリスは長い髪をかき上げ、嬉しそうに笑った。


       ◇


 一行を乗せた馬車は城門をくぐり、見渡す限り続く麦畑を行く。爽やかな風の吹く、真っすぐの一本道をカッポカッポとのどかに進んでいった。

「お茶をどうぞ」

 タケルは魔法のポットからお茶を注ぎ、ソリスに出した。

「あっ! お茶ぐらい私がやります!」

 クレアはポットをタケルからひったくると、渋い顔をしながらお茶を注ぎ、タケルや護衛に配っていった。

「クレア、ありがとうね」

「タケルさんは貴族様なんですから、もっとどっしりとしていていただかないと困ります!」

 クレアは口をとがらせる。

「ごめんごめん、なんか暇でさ」

「ふふっ、可愛いお嬢さんね。婚約者さんかしら?」

 ソリスは二人を見ながら聞く。

「こ、婚約者だなんてぇ……、そう見えます? うふふ……」

 クレアは嬉しそうにクッキーをクレアに手渡した。

「こ、婚約はしてないですね。パートナー企業の令嬢です」

 タケルは苦笑いをしながら答える。

「あら、では男爵はまだフリー?」

 ソリスはブラウンの瞳をキラッと輝かせながらタケルの顔をのぞきこむ。

「ま、まぁ、フリーというか、今は忙しくて恋愛は……」

「仕事、仕事ばかりじゃ幸せ逃げると思いません?」

 クレアは肩をすくめると、ソリスに同意を求めた。

「でもまぁ、殿方はね、そういう時期もあるんだと思いますよ」

 ソリスは余裕のある笑みを浮かべ、クレアはつまらなそうに口をとがらせる。




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「へぇ、あなたがOrangeの男爵様? 思ったよりお若いのね?」
 金の模様が入った漆黒のビキニアーマーで肌を露出した、Sランク女剣士ソリス・ブレイドウォーカーはニコッと笑ってタケルを見つめる。
「きょ、今日はよろしくお願いいたします」
 タケルは目のやり場に困り、慌ててお辞儀した。
 魔物の領域に手を出す上で、魔法のバリエーションを増やしておきたいタケルは遺跡探索をやろうと思い立ったのだ。魔道具の欠片でも残っていればそこからITスキルで古代の魔法のコードを吸い出せるかもしれない。そこで、ギルドに護衛として凄腕の剣士をお願いしたら美しい女性が来てしまったのだ。
「私を雇うなんて相当儲けていらっしゃるのね? フォンゲートは私も使わせていただいてますわ」
 ソリスはファサッと赤い髪の毛を揺らしながらほほ笑んだ。
「あ、ありがとうございます。おかげさまで事業は順調に伸びております」
「で? ギルドからは遺跡探索と聞いておりますが?」
「そ、そうなんです。魔法の研究をしていましてですね、ルミナセラフ遺跡で調査をしたいんですよ」
「うーん、昔行きましたけど……、あそこは壊れた遺構しか残ってないわよ?」
 ソリスは人差し指をあごにつけ、困惑気味に首をかしげる。
「無いなら無いでいいんです。無いことを確かめるのも研究なので……」
「はぁ、わたしとしては報酬いただければどこでも構わないですけどね……。あら、ビキニアーマーは初めて?」
 タケルがついついビキニに目が行っていることを見逃さなかったソリスは、ニヤッと笑った。
「あ、いや、素肌丸出しでどうやって防御しているのかと……」
「ふふっ、では、触ってみて下さる?」
「え……?」
「この辺をペタッと。口で言うより触ってみればわかるわ」
 ソリスは腹筋のあたりを指さす。
「で、では遠慮なく……」
 タケルはそーっと指を伸ばした。
 もうすぐ肌に触れようとした時だった――――。
 バチッ!
 痛ってーー!
 まるで冬の静電気にあったかのように指は弾かれてしまった。
「お分かりいただけましたか?」
 ソリスは楽しそうに微笑んでいる。
「そりゃもう、痛いほど……」
 タケルは顔を歪めながら辺りを見ると、クレアがまるで汚いものを見るような目でにらんでいる。
「私も行くわ!」
 クレアは何かに突き動かされるように宣言した。
「お、おい。遺跡調査は何が起こるか分からないんだぞ?」
「だから行くって言ってるの!」
 クレアは仏頂面で腕を組み、テコでも動きそうにない。
「あぁ、もう……」
 タケルは渋い顔で宙を仰いだ。
「ふふっ、いいわよ、可愛いお嬢ちゃん。遺跡で何が起こるかしらね? ふふっ」
「タケルさん、行きましょ!」
 クレアはソリスをキッとにらむと、タケルの手を引っ張っていく。
「あ、ちょ、ちょっと……。もう……。では、ソリスさん、お願いします!」
「はいはい。楽しい旅になりそうね。ふふっ」
 ソリスは長い髪をかき上げ、嬉しそうに笑った。
       ◇
 一行を乗せた馬車は城門をくぐり、見渡す限り続く麦畑を行く。爽やかな風の吹く、真っすぐの一本道をカッポカッポとのどかに進んでいった。
「お茶をどうぞ」
 タケルは魔法のポットからお茶を注ぎ、ソリスに出した。
「あっ! お茶ぐらい私がやります!」
 クレアはポットをタケルからひったくると、渋い顔をしながらお茶を注ぎ、タケルや護衛に配っていった。
「クレア、ありがとうね」
「タケルさんは貴族様なんですから、もっとどっしりとしていていただかないと困ります!」
 クレアは口をとがらせる。
「ごめんごめん、なんか暇でさ」
「ふふっ、可愛いお嬢さんね。婚約者さんかしら?」
 ソリスは二人を見ながら聞く。
「こ、婚約者だなんてぇ……、そう見えます? うふふ……」
 クレアは嬉しそうにクッキーをクレアに手渡した。
「こ、婚約はしてないですね。パートナー企業の令嬢です」
 タケルは苦笑いをしながら答える。
「あら、では男爵はまだフリー?」
 ソリスはブラウンの瞳をキラッと輝かせながらタケルの顔をのぞきこむ。
「ま、まぁ、フリーというか、今は忙しくて恋愛は……」
「仕事、仕事ばかりじゃ幸せ逃げると思いません?」
 クレアは肩をすくめると、ソリスに同意を求めた。
「でもまぁ、殿方はね、そういう時期もあるんだと思いますよ」
 ソリスは余裕のある笑みを浮かべ、クレアはつまらなそうに口をとがらせる。