表示設定
表示設定
目次 目次




4式たりの真相

ー/ー



「村長、これからすることはなんですか」
「儀式じゃ」
「儀式? この前村全体でやりましたよね」
「それとは別の、わしと神主数人だけで行うものじゃ。翔も、参加せよ」
「じゃあ、一度荷物を置いてお父さんとお母さんに伝えてから──」
「時間が惜しい。今すぐ来なさい」

 有無を言わせず村長の家に連れ込まれる。2人ともそれなりの年配のはずなのに、僕を逃さないように腕を掴む力はギチギチと強くて、違和感を感じる。

 広間に着くと、その他の神主たちがいる。食事前だろうか。しかし皿の上には何も乗っていない。

「え、と……?」
「翔。少し早いが、勘付かれる前に全てを済ませよう。()()の肉も、美味じゃったのお……やはり若い子に限る」

 何を言っているのだろう。突っ立っていれば神主に真ん中へ連れて行かれ押し倒される。その他の男たちも加勢し僕の体を畳に押さえつけ……そして包丁を取り出す。

「──ぇ」
「恨むなよ、翔……これは村の式たりなんじゃ。若い子の肉を食って、魂を祠に入れて崇める……そうすると村が豊かになるんじゃ」

 何を、言っているのか。
 僕は、村長たちに食べられてしまうというのか。最後にお父さんとお母さんに別れも告げられず。行方不明になって終わる。

 魂を祠に入れる……ということは。

 前回、食べられてしまったのは。
 現在祠に閉じ込められている神様ということだ。

 神様、元はこの村に住んでいた青年だった。僕が生まれる前に、村長の犠牲になっていた。
 恨んでも仕方ないのに、5歳の僕の手を引いて村まで戻してくれた、優しい人。

 神様の心も体も踏み(にじ)って我が物にした村長たちは僕を食べることに興奮しているのか目が血走っている。

 気持ち悪い。怖い。

 服を脱がされそうになり、精一杯体を暴れさせて……肩にかけてある鞄の中に西瓜を切った包丁があることを思い出した。

 無我夢中で取り出し、振り回せば男の腕を掠る。赤い線が出来、床にポタポタと垂れる描写に男たちは慄き少し距離を取る。

 僕は包丁を振り回して男たちから離れながら、玄関へ走る。

「捕えろ! 逃すな!」

 村長の命令する声と、走ってくる男たちに怯えながら……、僕は家ではなく祠がある山へ一目散に走っていく。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 5あの祠を壊して


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「村長、これからすることはなんですか」
「儀式じゃ」
「儀式? この前村全体でやりましたよね」
「それとは別の、わしと神主数人だけで行うものじゃ。翔も、参加せよ」
「じゃあ、一度荷物を置いてお父さんとお母さんに伝えてから──」
「時間が惜しい。今すぐ来なさい」
 有無を言わせず村長の家に連れ込まれる。2人ともそれなりの年配のはずなのに、僕を逃さないように腕を掴む力はギチギチと強くて、違和感を感じる。
 広間に着くと、その他の神主たちがいる。食事前だろうか。しかし皿の上には何も乗っていない。
「え、と……?」
「翔。少し早いが、勘付かれる前に全てを済ませよう。|前《・》|回《・》の肉も、美味じゃったのお……やはり若い子に限る」
 何を言っているのだろう。突っ立っていれば神主に真ん中へ連れて行かれ押し倒される。その他の男たちも加勢し僕の体を畳に押さえつけ……そして包丁を取り出す。
「──ぇ」
「恨むなよ、翔……これは村の式たりなんじゃ。若い子の肉を食って、魂を祠に入れて崇める……そうすると村が豊かになるんじゃ」
 何を、言っているのか。
 僕は、村長たちに食べられてしまうというのか。最後にお父さんとお母さんに別れも告げられず。行方不明になって終わる。
 魂を祠に入れる……ということは。
 前回、食べられてしまったのは。
 現在祠に閉じ込められている神様ということだ。
 神様、元はこの村に住んでいた青年だった。僕が生まれる前に、村長の犠牲になっていた。
 恨んでも仕方ないのに、5歳の僕の手を引いて村まで戻してくれた、優しい人。
 神様の心も体も踏み|躙《にじ》って我が物にした村長たちは僕を食べることに興奮しているのか目が血走っている。
 気持ち悪い。怖い。
 服を脱がされそうになり、精一杯体を暴れさせて……肩にかけてある鞄の中に西瓜を切った包丁があることを思い出した。
 無我夢中で取り出し、振り回せば男の腕を掠る。赤い線が出来、床にポタポタと垂れる描写に男たちは慄き少し距離を取る。
 僕は包丁を振り回して男たちから離れながら、玄関へ走る。
「捕えろ! 逃すな!」
 村長の命令する声と、走ってくる男たちに怯えながら……、僕は家ではなく祠がある山へ一目散に走っていく。