第3話 ベールを脱いだ
ー/ー1941年12月24日
クリスマスは史上最悪の日を迎えた。
「繰り返す! これは演習に非ず! これは演習に非ず!」
アメリカ領ミッドウェー島はハワイから漏れる物と者の受け皿と機能する。太平洋最大の拠点であるハワイもアメリカンな本土ほどに受け入れることはできなかった。基地機能の最大化と効率化のために一部がミッドウェー島に移される。艦隊も演習のために利用した。航空隊は一時待機のために立ち寄る。B-17など重爆撃機も中継に用いた。ハワイに隠れがちであるが米軍の重要なサブである。
それ故に掣肘を加えられた。ハワイへ向かう艦隊に船団、航空機の一切を監視できる。友軍に情報を提供して襲撃させることでハワイの孤立を見込んだ。そう易々と陥落させまい。B-17を集結させて、空母3隻を集中して、太平洋艦隊もバックアップして、沿岸砲台に20cm砲を増設して等々の大盤振る舞いだ。仮に陥落しようと即座に奪還する用意を整える。いつでも来るんだなとアメリカンなワードが飛び出た。
日独同盟をあまりにも甘く見ている。米軍すら知らないルートから接近を許してしまった。彼らが攻撃に気づくころには至近距離にまで迫られる。セイロン島に向かう船団や仏印とタイ王国の国境紛争などノイズのような情報も多すぎた。ありとあらゆる要素が複雑に絡み合う。これこそ日独同盟が仕掛けた奇襲攻撃なんだ。ドイツ軍の情報戦と日本軍の奇策が綺麗にかみ合う。
「どこから、どこから飛んできた!」
「今は隠れてください! 防空壕にいれば安全です!」
「今日はクリスマスなんだぞ!」
「ケーキもターキーも後で食べられます! 今は避難を!」
ミッドウェー島は早朝から銀の翼に包まれた。朝から航空隊の大移動は聞いていない。レーダー担当は問い合わせようとした瞬間に消し飛んだ。レーダー本体から施設に至る全てに対して陸用爆弾が降り注ぐ。演習用の模擬弾はよくある事故に終わった。あいにく、これは演習に非ずと叫ぶ羽目に陥る。ミッドウェー島に鳴り響くサイレンは切れなかった。
第一航空機同艦隊を夜明け前に発進した攻撃隊はミッドウェー島の大飛行場と小飛行場に殺到する。まずはB-17を筆頭に敵航空機を地上ないし空中で撃破した。制空権を確保せずに上陸すれば悲惨なことになる。したがって、地上に待機する重爆撃機から港に係留される飛行艇までだ。各機は端から端まで目に付く航空機を破壊していく。主に零戦隊が航空機の撃破を担当した。
「よお見えるわい。やっぱり塗装はしっかりせんといかん」
「20mmで穴らだらけにしてやりましょう」
「早くしないと。搭乗員が走っています」
「敵さんには悪いがここでやらせてもらう!」
ドイツ製航空無線機は優秀である。短距離だがハッキリと聞き取ることができた。これまでのハンドサインや目線を用いた意思疎通は無駄と一刀両断する。職人気質は否定しないが戦争の場においては効率が勝敗を分けた。敵機発見を伝えるだけでも時間短縮を見込む。現に無線機で共有してからバンクを振って緩やかに降下を始めた。
零戦隊が見下ろす大飛行場ではB-17が緊急発進の準備を進めている。これを一網打尽にするためには爆弾であるが、あいにくの制空任務のため持参しておらず、機首と主翼の機銃を掃射して穴だらけに変えた。うまくやれば鹵獲できるかもしれない。すでにB-17に迫る重爆撃機を運用していた。敵国の研究材料はいくつあっても足りない。銀色のメタリックなデザインは太陽の光を反射して遠方からでも存在を知らせた。そこへ懸命に駆ける敵兵は哀れを極めている。
「20mmの大雨だ。13mmもついでに持っていけ」
「空の要塞だか何だか知らねえぇが飛べなきゃガラクタだろうに」
「零戦をなめるなよ。空は俺たちのもんだ」
ルフトヴァッフェと幾度となく模擬戦を行ってきた。まさに腕利きの艦載機乗りたちは地上に並ぶB-17を嘲笑するように撃破していく。最悪は連続した。なんと燃料タンクはタプタプに満たされている。本来は安全を重視して満たさないところ、大規模な移動という事情があり、マニュアルを無視して予め満載状態にしていた。まさか日本が本当に襲い掛かってくるとは想定していない。事故が起こっても迅速に消化できるはずだった。よもやどこからともなく戦闘機が飛んでくるとは想定していない。
「燃えたぞ。これで終いだな」
「あれじゃ世話ありません。次へ行きましょう」
「あぁ、燃料と弾丸が持つ限りは飛ぶ。今日で落とすって話だからな」
「歯応えのない連中です。俺たちをどんだけ侮っていたのか」
「各機へ次ぐ、低空飛行は厳に慎め。第二次攻撃が始まる」
「そういや、そうだったな。高度を上げる」
「はい」
とはいえ、万事に徹底を徹底すべしと二度目の攻撃が始まった。この奇襲攻撃のために大戦力を用意している。油は一気に消費するがシベリアと満州で産出された。ドイツから効率的な採掘と生成の技術も来ている。長年にわたり備蓄してきた。これを解き放つに相応しい攻撃を披露する。戦闘機から爆撃機、攻撃機は大急ぎで高度を上げた。低空飛行中に友軍の爆撃に巻き込まれると機体が損傷して墜落する。そんな不名誉な死に方はできなかった。高射砲の対空砲火に気を付けながら眺めていると下を何かが通過していく。
「あれが噂の飛行爆弾か。100番並の威力を秘めながら自力で飛行できる。射程距離こそ零戦に遠く及ばないが艦砲射撃の10倍に迫った」
「ヘンテコな爆弾ですが使い勝手はよさそうです。何よりも人が死なない」
「味方はな? 敵は死ぬぞ」
「素晴らしいことじゃありませんか。馬鹿な俺でもわかりますよ」
「ガキでもわかる。理想的な攻撃だ」
詳細こそ知らされていなかった。噂は風に乗ってくる。1t爆弾に匹敵する破壊力を持ちながら特殊な推進機関を装備した。大重量の爆弾が自力で飛行しては次々と自爆攻撃を敢行する。通称は無人飛行機や飛行爆弾だ。大威力の爆弾を航空機の運搬に頼らない。上空から見ている限りでは四方八方に着弾して精度面は荒削りに見えた。しかし、理想的な攻撃であることは否定できない。搭乗員という人間を消耗せずに損害を押し付けた。艦載機はおろか旧式機にも劣る射程距離は兵士を使いつぶさない点で補って余りあった。何よりも一見して自爆攻撃なため精神的なショックは大きい。アメリカ人にとって理解できなくて当然のことだ。
「滑走路は穴だらけです。あれじゃ戦闘機も飛ばせません」
「なるほどなぁ…よく考えられている」
「感心している暇はないようだ。次の仕事が自ら来てくれた」
「へっグラマンですかい。慌てて助けてに来たが遅かった」
「敵空母がいるらしい。全て叩き落とす!」
これ以上の不法行為は認められない。そう言わんばかりにグラマンが出向いてきた。敵飛行場は大も小も潰している。それなのに敵戦闘機が上がってきた。主力級のF4Fことワイルドキャットと識別する。グラマンは陸上機ではなく艦載機のはずだ。つまり、どこかに米海軍の空母がいる。ミッドウェー島の救援要請を受けて急行してきた。敵からやってきてくれた以上は敬意を以て迎える。残りの弾薬と燃料を気にしながら第二戦に突入した。
ミッドウェー島において大規模な空戦が繰り広げられる。その頃の戦艦部隊は封鎖を敷いていた。上陸時の艦砲射撃は巡洋艦と駆逐艦に任せる。戦艦にしかできない仕事を全うすべきと改めた。彼らの主砲は一様にハワイ方面を眺めている。もちろん、主砲が届くはずがなかった。無駄弾を吐き出すつもりはない。
「電探に反応! 敵艦隊! 反応強度から戦艦と予想される!」
「砲撃戦用意! 長門と陸奥、ビスマルクとティルピッツで仕留める! 二水戦の護衛を解き敵艦隊に向け突撃せよ!」
「ビスマルクのフランツ司令より、ビスマルクとティルピッツが先行すると」
「38cmだからか。甘えてはならんぞ! 初弾必中! 一発轟沈だ!」
続く
クリスマスは史上最悪の日を迎えた。
「繰り返す! これは演習に非ず! これは演習に非ず!」
アメリカ領ミッドウェー島はハワイから漏れる物と者の受け皿と機能する。太平洋最大の拠点であるハワイもアメリカンな本土ほどに受け入れることはできなかった。基地機能の最大化と効率化のために一部がミッドウェー島に移される。艦隊も演習のために利用した。航空隊は一時待機のために立ち寄る。B-17など重爆撃機も中継に用いた。ハワイに隠れがちであるが米軍の重要なサブである。
それ故に掣肘を加えられた。ハワイへ向かう艦隊に船団、航空機の一切を監視できる。友軍に情報を提供して襲撃させることでハワイの孤立を見込んだ。そう易々と陥落させまい。B-17を集結させて、空母3隻を集中して、太平洋艦隊もバックアップして、沿岸砲台に20cm砲を増設して等々の大盤振る舞いだ。仮に陥落しようと即座に奪還する用意を整える。いつでも来るんだなとアメリカンなワードが飛び出た。
日独同盟をあまりにも甘く見ている。米軍すら知らないルートから接近を許してしまった。彼らが攻撃に気づくころには至近距離にまで迫られる。セイロン島に向かう船団や仏印とタイ王国の国境紛争などノイズのような情報も多すぎた。ありとあらゆる要素が複雑に絡み合う。これこそ日独同盟が仕掛けた奇襲攻撃なんだ。ドイツ軍の情報戦と日本軍の奇策が綺麗にかみ合う。
「どこから、どこから飛んできた!」
「今は隠れてください! 防空壕にいれば安全です!」
「今日はクリスマスなんだぞ!」
「ケーキもターキーも後で食べられます! 今は避難を!」
ミッドウェー島は早朝から銀の翼に包まれた。朝から航空隊の大移動は聞いていない。レーダー担当は問い合わせようとした瞬間に消し飛んだ。レーダー本体から施設に至る全てに対して陸用爆弾が降り注ぐ。演習用の模擬弾はよくある事故に終わった。あいにく、これは演習に非ずと叫ぶ羽目に陥る。ミッドウェー島に鳴り響くサイレンは切れなかった。
第一航空機同艦隊を夜明け前に発進した攻撃隊はミッドウェー島の大飛行場と小飛行場に殺到する。まずはB-17を筆頭に敵航空機を地上ないし空中で撃破した。制空権を確保せずに上陸すれば悲惨なことになる。したがって、地上に待機する重爆撃機から港に係留される飛行艇までだ。各機は端から端まで目に付く航空機を破壊していく。主に零戦隊が航空機の撃破を担当した。
「よお見えるわい。やっぱり塗装はしっかりせんといかん」
「20mmで穴らだらけにしてやりましょう」
「早くしないと。搭乗員が走っています」
「敵さんには悪いがここでやらせてもらう!」
ドイツ製航空無線機は優秀である。短距離だがハッキリと聞き取ることができた。これまでのハンドサインや目線を用いた意思疎通は無駄と一刀両断する。職人気質は否定しないが戦争の場においては効率が勝敗を分けた。敵機発見を伝えるだけでも時間短縮を見込む。現に無線機で共有してからバンクを振って緩やかに降下を始めた。
零戦隊が見下ろす大飛行場ではB-17が緊急発進の準備を進めている。これを一網打尽にするためには爆弾であるが、あいにくの制空任務のため持参しておらず、機首と主翼の機銃を掃射して穴だらけに変えた。うまくやれば鹵獲できるかもしれない。すでにB-17に迫る重爆撃機を運用していた。敵国の研究材料はいくつあっても足りない。銀色のメタリックなデザインは太陽の光を反射して遠方からでも存在を知らせた。そこへ懸命に駆ける敵兵は哀れを極めている。
「20mmの大雨だ。13mmもついでに持っていけ」
「空の要塞だか何だか知らねえぇが飛べなきゃガラクタだろうに」
「零戦をなめるなよ。空は俺たちのもんだ」
ルフトヴァッフェと幾度となく模擬戦を行ってきた。まさに腕利きの艦載機乗りたちは地上に並ぶB-17を嘲笑するように撃破していく。最悪は連続した。なんと燃料タンクはタプタプに満たされている。本来は安全を重視して満たさないところ、大規模な移動という事情があり、マニュアルを無視して予め満載状態にしていた。まさか日本が本当に襲い掛かってくるとは想定していない。事故が起こっても迅速に消化できるはずだった。よもやどこからともなく戦闘機が飛んでくるとは想定していない。
「燃えたぞ。これで終いだな」
「あれじゃ世話ありません。次へ行きましょう」
「あぁ、燃料と弾丸が持つ限りは飛ぶ。今日で落とすって話だからな」
「歯応えのない連中です。俺たちをどんだけ侮っていたのか」
「各機へ次ぐ、低空飛行は厳に慎め。第二次攻撃が始まる」
「そういや、そうだったな。高度を上げる」
「はい」
とはいえ、万事に徹底を徹底すべしと二度目の攻撃が始まった。この奇襲攻撃のために大戦力を用意している。油は一気に消費するがシベリアと満州で産出された。ドイツから効率的な採掘と生成の技術も来ている。長年にわたり備蓄してきた。これを解き放つに相応しい攻撃を披露する。戦闘機から爆撃機、攻撃機は大急ぎで高度を上げた。低空飛行中に友軍の爆撃に巻き込まれると機体が損傷して墜落する。そんな不名誉な死に方はできなかった。高射砲の対空砲火に気を付けながら眺めていると下を何かが通過していく。
「あれが噂の飛行爆弾か。100番並の威力を秘めながら自力で飛行できる。射程距離こそ零戦に遠く及ばないが艦砲射撃の10倍に迫った」
「ヘンテコな爆弾ですが使い勝手はよさそうです。何よりも人が死なない」
「味方はな? 敵は死ぬぞ」
「素晴らしいことじゃありませんか。馬鹿な俺でもわかりますよ」
「ガキでもわかる。理想的な攻撃だ」
詳細こそ知らされていなかった。噂は風に乗ってくる。1t爆弾に匹敵する破壊力を持ちながら特殊な推進機関を装備した。大重量の爆弾が自力で飛行しては次々と自爆攻撃を敢行する。通称は無人飛行機や飛行爆弾だ。大威力の爆弾を航空機の運搬に頼らない。上空から見ている限りでは四方八方に着弾して精度面は荒削りに見えた。しかし、理想的な攻撃であることは否定できない。搭乗員という人間を消耗せずに損害を押し付けた。艦載機はおろか旧式機にも劣る射程距離は兵士を使いつぶさない点で補って余りあった。何よりも一見して自爆攻撃なため精神的なショックは大きい。アメリカ人にとって理解できなくて当然のことだ。
「滑走路は穴だらけです。あれじゃ戦闘機も飛ばせません」
「なるほどなぁ…よく考えられている」
「感心している暇はないようだ。次の仕事が自ら来てくれた」
「へっグラマンですかい。慌てて助けてに来たが遅かった」
「敵空母がいるらしい。全て叩き落とす!」
これ以上の不法行為は認められない。そう言わんばかりにグラマンが出向いてきた。敵飛行場は大も小も潰している。それなのに敵戦闘機が上がってきた。主力級のF4Fことワイルドキャットと識別する。グラマンは陸上機ではなく艦載機のはずだ。つまり、どこかに米海軍の空母がいる。ミッドウェー島の救援要請を受けて急行してきた。敵からやってきてくれた以上は敬意を以て迎える。残りの弾薬と燃料を気にしながら第二戦に突入した。
ミッドウェー島において大規模な空戦が繰り広げられる。その頃の戦艦部隊は封鎖を敷いていた。上陸時の艦砲射撃は巡洋艦と駆逐艦に任せる。戦艦にしかできない仕事を全うすべきと改めた。彼らの主砲は一様にハワイ方面を眺めている。もちろん、主砲が届くはずがなかった。無駄弾を吐き出すつもりはない。
「電探に反応! 敵艦隊! 反応強度から戦艦と予想される!」
「砲撃戦用意! 長門と陸奥、ビスマルクとティルピッツで仕留める! 二水戦の護衛を解き敵艦隊に向け突撃せよ!」
「ビスマルクのフランツ司令より、ビスマルクとティルピッツが先行すると」
「38cmだからか。甘えてはならんぞ! 初弾必中! 一発轟沈だ!」
続く
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