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ヘリオース・エルガーベラスの薔薇

ー/ー








 朝起きて、早速私はマクリヌスに指示を出した。

 「マクリヌス、今日から貴方は私の連絡係ね。下で雇っといた奴隷と一緒に頑張ってよ」

 彼は戦車競技をしていた人だから馬に乗るのが上手い。だから私の個人的な連絡係りとしてパシらせる事にした。

 「……言わなきゃよかったっすね」

 「仕方ないよ。これが私の役割だから」

 寝室から出て朝食を済まし、昼に執務をこなしてあっという間に夜になった。と言う訳で昨日の話を通り、私は戦勝記念パーティに参加する。
 広間の柱には薔薇やオリーブなどの植物の装飾が付いており、また中央のテーブルには巨大なケーキやローストチキン、お酒、チーズできた飾りなど様々な物が用意されていた。

 「皆様、お集まりいただきありがとうございます」

 戦場記念パーティという訳で主賓は軍の一番偉い人なんだけど、皇帝は軍の統帥権を持っているので私が主賓である。だから祝辞として、招待された消耗達に達に祝辞を述べる必要がある。

 「7年前、カルタゴン戦争にて我々は帝都近郊にまで追い込まれました。他ならぬハンニヴァルカによって。しかし2年前、ハンニヴァルカは遥か北方のゲルマンの地にて、貴方方とスピキ将軍によって討たれました」

 「よって私は今時のハンニヴァルカについても貴方方に同様の活躍を期待します。そして彼が討たれれば、貴方方にかつてと同様の名誉と栄光を約束致しましょう。では!」

 緑だったり赤だったりする特殊な杯を高く掲げて開式とする。ここに居る男も女も誰もが杯の高く掲げていた。

 「おぉ、一段と美しい。まるで絵画を見ているようだ」

 ブルースは青のドレスを着ている私にそう言った。青のドレスは私が了承しているという事を意味しており、一段の美しいは準備完了という事を表している。

 「ありがとうございます、ブルース。では後で、ダンスの時間にご一緒できませんか?」

 予定通り踊りの時間に仕掛けを発動するよ。

 「それは喜ばしい事です。では後で」

 彼との会話を終え、和気あいあいと話している将軍達を脇目に私はスピキ将軍と話す事にした。だって彼は今回の計画を知らないし、何より部屋の角でご老人が一人で寂しそうにちびちびとお酒を啜っていると言うのは、なんと言うか心痛い。

 「今日もこの城は騒がしい物ですね、皇帝陛下」

 「えぇ、まったく。それでスピキ将軍、ハンニヴァルカの件ですが……」

 「わかっています。それ所じゃなくなっているんでしょう?」

 その通りである。ハンニヴァルカは恐ろしい、しかし今は破局噴火のせいで彼への対応は取れない。だからこそハンニヴァルカは行動を起こすだろう。故に私はその対策としてスピキ将軍を頭として少数の対策人員を組もうかなと考えている。

 「はい、ですから貴方に頼みたいのです。ハンニヴァルカを知る貴方に」

 「私としては本望ですが……どうやって議会を説得なさるんです?」

 ハンニヴァルカ対策。それをするにも議会の承認を得なくちゃならない。だって大規模な編成をする予定だからね。そうなると金も食糧も掛かるし、強制的な捜査には法律が絡んでくるから特権を与えないと〜とか色々やり出すと本当にややこしくなる。

 「議会を説得させる必要は無くなりました」

 私が何をしようとしているのか理解したんだろう。だから彼は一度上を向いて溜め息を吐いてから答えた。

 「はぁ……なるほど、そうですか。私としてはありがたいですが、貴方の選択はとても辛い物だ。なにせ貴方に残された道は帝国の破壊者になるか帝国最大の英雄となるかの二択になってしまいましたから」

 「覚悟の上です、スピキ将軍。私はマレ・ノストルム帝国の第30代皇帝ですから」

 彼としばらく話していると音楽が変わった。少しリズムの速い、ダンスにピッタリな曲である。そう、社交ダンスだ。戦争で勝った男達に女を与える為にダンスという場で選ばせるって事である。

 「中央には決して近づかぬようにお願いします、スピキ将軍」

 中央は食事場である為、ダンスはやってない。そして鳩派の首魁がずっと自分の好物を漁っている。だって首魁であるセリヌスさんはブルースとは真逆の人で、清廉潔白を是とする人格者だからね。女を当てがおうってやってもいやいいですって言ってご飯食べてる人だ。今みたいに。

 「ブルース、約束でしょう?」

 「えぇ、皇帝陛下」

 彼がアイサインを仕掛け人に送ると、天井から薔薇の花びらが降ってくる。会場のほぼ全ての人がそのあまりの綺麗さに見惚れていた。

 「皇帝陛下って本当に女性みたいな身体してますね、正直びっくりです、こんなに腰が細いとは」

 「ん、ん?あぁ、ありがとうって言っておきます。でもブルースこそ意外とエスコートがお上手なんですね」

 踊りつつ仕掛け人にサインを送りながら中央からそれて行く。

 「落としますよ、陛下」

 「お願い」

 彼が仕掛け人に最後のアイコンタクトをした時、突如天井から大量の薔薇の花びらが中央、鳩派が首魁と共に食事を取っている所に落ちてきた。その音はあまりにも重く、まるで津波のようであった。

 「あぁ!下がって!危ない!」

 コップの葡萄酒は床を溢れ、花びらに混じる。男は戸惑い女は悲鳴をあげる。中には花びらに近づこうとする人もいたが、二次被害を防ぐ為と仕込みの人たちに遮られる。
 私は上手く演じられているだろうか。

 「お、落ち着いてください!」

 ブルースはいつもと変わらず道化だ。だから演技も上手い。

 「近付かないで!巻き込まれては危ない!!」

 彼の指示により、しばらくの間花びらに近づこうとする人は居なかった為、大量の薔薇の花びらに埋もれて中央には居た人は圧死した。これで計画は完了である。

 「……あははっ、ははっ」

 私は一人、乾いた笑いを溢した。







 マレ・ノストルム皇帝群像記より、ヘリオース・エルガーベラスの薔薇。


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 朝起きて、早速私はマクリヌスに指示を出した。
 「マクリヌス、今日から貴方は私の連絡係ね。下で雇っといた奴隷と一緒に頑張ってよ」
 彼は戦車競技をしていた人だから馬に乗るのが上手い。だから私の個人的な連絡係りとしてパシらせる事にした。
 「……言わなきゃよかったっすね」
 「仕方ないよ。これが私の役割だから」
 寝室から出て朝食を済まし、昼に執務をこなしてあっという間に夜になった。と言う訳で昨日の話を通り、私は戦勝記念パーティに参加する。
 広間の柱には薔薇やオリーブなどの植物の装飾が付いており、また中央のテーブルには巨大なケーキやローストチキン、お酒、チーズできた飾りなど様々な物が用意されていた。
 「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
 戦場記念パーティという訳で主賓は軍の一番偉い人なんだけど、皇帝は軍の統帥権を持っているので私が主賓である。だから祝辞として、招待された消耗達に達に祝辞を述べる必要がある。
 「7年前、カルタゴン戦争にて我々は帝都近郊にまで追い込まれました。他ならぬハンニヴァルカによって。しかし2年前、ハンニヴァルカは遥か北方のゲルマンの地にて、貴方方とスピキ将軍によって討たれました」
 「よって私は今時のハンニヴァルカについても貴方方に同様の活躍を期待します。そして彼が討たれれば、貴方方にかつてと同様の名誉と栄光を約束致しましょう。では!」
 緑だったり赤だったりする特殊な杯を高く掲げて開式とする。ここに居る男も女も誰もが杯の高く掲げていた。
 「おぉ、一段と美しい。まるで絵画を見ているようだ」
 ブルースは青のドレスを着ている私にそう言った。青のドレスは私が了承しているという事を意味しており、一段の美しいは準備完了という事を表している。
 「ありがとうございます、ブルース。では後で、ダンスの時間にご一緒できませんか?」
 予定通り踊りの時間に仕掛けを発動するよ。
 「それは喜ばしい事です。では後で」
 彼との会話を終え、和気あいあいと話している将軍達を脇目に私はスピキ将軍と話す事にした。だって彼は今回の計画を知らないし、何より部屋の角でご老人が一人で寂しそうにちびちびとお酒を啜っていると言うのは、なんと言うか心痛い。
 「今日もこの城は騒がしい物ですね、皇帝陛下」
 「えぇ、まったく。それでスピキ将軍、ハンニヴァルカの件ですが……」
 「わかっています。それ所じゃなくなっているんでしょう?」
 その通りである。ハンニヴァルカは恐ろしい、しかし今は破局噴火のせいで彼への対応は取れない。だからこそハンニヴァルカは行動を起こすだろう。故に私はその対策としてスピキ将軍を頭として少数の対策人員を組もうかなと考えている。
 「はい、ですから貴方に頼みたいのです。ハンニヴァルカを知る貴方に」
 「私としては本望ですが……どうやって議会を説得なさるんです?」
 ハンニヴァルカ対策。それをするにも議会の承認を得なくちゃならない。だって大規模な編成をする予定だからね。そうなると金も食糧も掛かるし、強制的な捜査には法律が絡んでくるから特権を与えないと〜とか色々やり出すと本当にややこしくなる。
 「議会を説得させる必要は無くなりました」
 私が何をしようとしているのか理解したんだろう。だから彼は一度上を向いて溜め息を吐いてから答えた。
 「はぁ……なるほど、そうですか。私としてはありがたいですが、貴方の選択はとても辛い物だ。なにせ貴方に残された道は帝国の破壊者になるか帝国最大の英雄となるかの二択になってしまいましたから」
 「覚悟の上です、スピキ将軍。私はマレ・ノストルム帝国の第30代皇帝ですから」
 彼としばらく話していると音楽が変わった。少しリズムの速い、ダンスにピッタリな曲である。そう、社交ダンスだ。戦争で勝った男達に女を与える為にダンスという場で選ばせるって事である。
 「中央には決して近づかぬようにお願いします、スピキ将軍」
 中央は食事場である為、ダンスはやってない。そして鳩派の首魁がずっと自分の好物を漁っている。だって首魁であるセリヌスさんはブルースとは真逆の人で、清廉潔白を是とする人格者だからね。女を当てがおうってやってもいやいいですって言ってご飯食べてる人だ。今みたいに。
 「ブルース、約束でしょう?」
 「えぇ、皇帝陛下」
 彼がアイサインを仕掛け人に送ると、天井から薔薇の花びらが降ってくる。会場のほぼ全ての人がそのあまりの綺麗さに見惚れていた。
 「皇帝陛下って本当に女性みたいな身体してますね、正直びっくりです、こんなに腰が細いとは」
 「ん、ん?あぁ、ありがとうって言っておきます。でもブルースこそ意外とエスコートがお上手なんですね」
 踊りつつ仕掛け人にサインを送りながら中央からそれて行く。
 「落としますよ、陛下」
 「お願い」
 彼が仕掛け人に最後のアイコンタクトをした時、突如天井から大量の薔薇の花びらが中央、鳩派が首魁と共に食事を取っている所に落ちてきた。その音はあまりにも重く、まるで津波のようであった。
 「あぁ!下がって!危ない!」
 コップの葡萄酒は床を溢れ、花びらに混じる。男は戸惑い女は悲鳴をあげる。中には花びらに近づこうとする人もいたが、二次被害を防ぐ為と仕込みの人たちに遮られる。
 私は上手く演じられているだろうか。
 「お、落ち着いてください!」
 ブルースはいつもと変わらず道化だ。だから演技も上手い。
 「近付かないで!巻き込まれては危ない!!」
 彼の指示により、しばらくの間花びらに近づこうとする人は居なかった為、大量の薔薇の花びらに埋もれて中央には居た人は圧死した。これで計画は完了である。
 「……あははっ、ははっ」
 私は一人、乾いた笑いを溢した。
 マレ・ノストルム皇帝群像記より、ヘリオース・エルガーベラスの薔薇。