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現在

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「ふむ――小学五年生の時の、さらに十二、三年前、つまり今から二十七、八年くらい前の事件というわけだ」

 三本目の缶ビールを飲み干した田母神は、アルミ缶を丁寧に潰しながら云う。

 彼は私と同い年なので話が早い。

「まさかとは思うけど、そのタエ子さんの話が君の云う『奇妙な出来事』ってわけじゃないよな?」

 田母神はそう続けながら(いぶか)しむ。

「もちろん。今の話は前振りに過ぎないよ。君に聞いてもらいたいのはこの先だ」

 私は缶に残ったビールを一気に(あお)り、喉を潤してからそう答えた。

「そう来なくちゃ。シンジ少年たちの冒険(たん)を続けてくれ」

 田母神は満足気に、ニヤリと口角を上げる。

 気づけば、彼はいつの間にか秘蔵のウイスキーの瓶と氷、ミネラルウォーター、グラス二つを用意していた。相変わらず酒に関してだけは手間を惜しまない男である。手早く水割りを作ると、ひとつを私に差し出した。


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「ふむ――小学五年生の時の、さらに十二、三年前、つまり今から二十七、八年くらい前の事件というわけだ」
 三本目の缶ビールを飲み干した田母神は、アルミ缶を丁寧に潰しながら云う。
 彼は私と同い年なので話が早い。
「まさかとは思うけど、そのタエ子さんの話が君の云う『奇妙な出来事』ってわけじゃないよな?」
 田母神はそう続けながら|訝《いぶか》しむ。
「もちろん。今の話は前振りに過ぎないよ。君に聞いてもらいたいのはこの先だ」
 私は缶に残ったビールを一気に|呷《あお》り、喉を潤してからそう答えた。
「そう来なくちゃ。シンジ少年たちの冒険|譚《たん》を続けてくれ」
 田母神は満足気に、ニヤリと口角を上げる。
 気づけば、彼はいつの間にか秘蔵のウイスキーの瓶と氷、ミネラルウォーター、グラス二つを用意していた。相変わらず酒に関してだけは手間を惜しまない男である。手早く水割りを作ると、ひとつを私に差し出した。