学校の授業

ー/ー



「はい、もう授業の時間よ。騒いでないで座った座った!」

 担任の稲崎先生がやってきた。確か物理担当の教師だったな。

「じゃあ私はここね!」

 当たり前だが席のないアリスがなぜか私の膝の上に座ってきた。邪魔だ。

 とはいえ人間にあまり近づかれても困るので、私が我慢するしかないだろう。

「ええと、その子はどうしたの?」

 稲崎先生がアリスに気付き、困惑した様子で私に尋ねてきた。それはそうだ。私が彼女の立場でも同じ反応をするだろう。

「故郷から遊びに来た私の親戚の子供だが、どうしても学校に行きたいとワガママを言うので仕方なく連れてきたのだ」

「ええー……面倒見てくれる大人はいないの? このご時世に一人でお留守番させるわけにもいかないもんねぇ」

 どんなご時世だ。子供が家に一人でいたら危ないのだろうか?

――マレビトがさらっていくこともあるのよ。

 アリスがテレパシーで補足説明をしてきた。なるほど、そういう者もいるのか。ところでなぜアリスは私の胸に頭をすり寄せてくるのだ。

「それじゃあ、今日は制動エネルギーについて――」

「せんせー、恋人はいるんですかー?」

 話し始めた教師を遮り、大きく手をあげて質問をするアリス。その質問は今しなくてはならないものなのか?

「ふぁっ!? い、いな――じゃなくって! ちょーっと大人しくしててねー、お兄ちゃんお姉ちゃん達がお勉強してるからね」

「えー、恋人いないんだー意外ー。美人なのにー」

 アリスをたしなめる稲崎先生にオリンピックが間をおかずに声をかけた。そういうものなのだろうか? 明蓮はどうだろうか。

「そ、そうかしら? あんまり出会いが無くてねえ」

 あからさまに相好(そうごう)を崩す稲崎先生。これは私も知っているぞ。「チョロい」というやつだ。

「えー、先生フリーなんすか? 狙っちゃおうかなー!」

「ちょ、何を言いだすの!」

 クラスの男子も便乗して騒ぎ出す。どうやら授業を受けたくない様子だ。しかしこのクラスには生徒会副会長もいるのだが、彼女が怒りださないだろうか。

 私が明蓮の方を見ると、彼女は必死でノートに何かを書き込んでいる。あれは英単語か。今は物理の授業ではなかったか。

「あっ、お兄ちゃんまた明蓮お姉ちゃんのこと見てる!」

 アリスが大声を上げた。なぜそれがそんなに気になるのだ。耳元で大声を出されてうるさいことこの上ない。

「ひあっ!? な、なに見てるのよ!」

 身体をビクッと硬直させた後、真っ赤な顔で抗議の声を上げる明蓮。これは怒っているのではないと私でも分かる。授業中に他のことをしていたのが見つかって慌てているのだ。なかなか珍しいものが見れた。

「こらー、静かにしなさーい!」

 にわかに騒がしくなったクラスに、稲崎先生の声が響いた。



「面白かったね!」

 一日の授業が終わり、アリスが満足そうに言った。結局ほとんど勉強をしていなかったのだが、クラスの生徒達はテストで酷い目に遭わないだろうか?

「それじゃあ私は五輪お姉ちゃんと一緒に行くね。ごゆっくりー」

 ごゆっくりとはどういう意味だろうか。アリスはオリンピックと共に学園の探索に向かった。私も一緒に行こうとしたが、オリンピックに手で制されてそのままクラスに残っている。

「まったく、めちゃくちゃな一日だったわ」

 同じくクラスに残っている明蓮が文句を言ってきた。大体アリスのせいなので、連れてきた私が責められても仕方ない。

「すまなかった。また勉強を教えようか?」

 明蓮はテストの成績を上げるために勉強をしている。私に出来ることと言えば、勉強を教えることぐらいだ。

「そうね……ううん、いい。それより、ちょっと付き合ってくれない?」

 明蓮はそう言って、鞄の中にある秘術の本を私にだけ見えるように示してきた。これは旅行の誘いか。彼女から誘ってくるとは珍しい。金欠なのかもしれない。

「ああ、では学園を出ようか」

「うん。いつもの場所に行きましょう」


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「はい、もう授業の時間よ。騒いでないで座った座った!」
 担任の稲崎先生がやってきた。確か物理担当の教師だったな。
「じゃあ私はここね!」
 当たり前だが席のないアリスがなぜか私の膝の上に座ってきた。邪魔だ。
 とはいえ人間にあまり近づかれても困るので、私が我慢するしかないだろう。
「ええと、その子はどうしたの?」
 稲崎先生がアリスに気付き、困惑した様子で私に尋ねてきた。それはそうだ。私が彼女の立場でも同じ反応をするだろう。
「故郷から遊びに来た私の親戚の子供だが、どうしても学校に行きたいとワガママを言うので仕方なく連れてきたのだ」
「ええー……面倒見てくれる大人はいないの? このご時世に一人でお留守番させるわけにもいかないもんねぇ」
 どんなご時世だ。子供が家に一人でいたら危ないのだろうか?
――マレビトがさらっていくこともあるのよ。
 アリスがテレパシーで補足説明をしてきた。なるほど、そういう者もいるのか。ところでなぜアリスは私の胸に頭をすり寄せてくるのだ。
「それじゃあ、今日は制動エネルギーについて――」
「せんせー、恋人はいるんですかー?」
 話し始めた教師を遮り、大きく手をあげて質問をするアリス。その質問は今しなくてはならないものなのか?
「ふぁっ!? い、いな――じゃなくって! ちょーっと大人しくしててねー、お兄ちゃんお姉ちゃん達がお勉強してるからね」
「えー、恋人いないんだー意外ー。美人なのにー」
 アリスをたしなめる稲崎先生にオリンピックが間をおかずに声をかけた。そういうものなのだろうか? 明蓮はどうだろうか。
「そ、そうかしら? あんまり出会いが無くてねえ」
 あからさまに|相好《そうごう》を崩す稲崎先生。これは私も知っているぞ。「チョロい」というやつだ。
「えー、先生フリーなんすか? 狙っちゃおうかなー!」
「ちょ、何を言いだすの!」
 クラスの男子も便乗して騒ぎ出す。どうやら授業を受けたくない様子だ。しかしこのクラスには生徒会副会長もいるのだが、彼女が怒りださないだろうか。
 私が明蓮の方を見ると、彼女は必死でノートに何かを書き込んでいる。あれは英単語か。今は物理の授業ではなかったか。
「あっ、お兄ちゃんまた明蓮お姉ちゃんのこと見てる!」
 アリスが大声を上げた。なぜそれがそんなに気になるのだ。耳元で大声を出されてうるさいことこの上ない。
「ひあっ!? な、なに見てるのよ!」
 身体をビクッと硬直させた後、真っ赤な顔で抗議の声を上げる明蓮。これは怒っているのではないと私でも分かる。授業中に他のことをしていたのが見つかって慌てているのだ。なかなか珍しいものが見れた。
「こらー、静かにしなさーい!」
 にわかに騒がしくなったクラスに、稲崎先生の声が響いた。
「面白かったね!」
 一日の授業が終わり、アリスが満足そうに言った。結局ほとんど勉強をしていなかったのだが、クラスの生徒達はテストで酷い目に遭わないだろうか?
「それじゃあ私は五輪お姉ちゃんと一緒に行くね。ごゆっくりー」
 ごゆっくりとはどういう意味だろうか。アリスはオリンピックと共に学園の探索に向かった。私も一緒に行こうとしたが、オリンピックに手で制されてそのままクラスに残っている。
「まったく、めちゃくちゃな一日だったわ」
 同じくクラスに残っている明蓮が文句を言ってきた。大体アリスのせいなので、連れてきた私が責められても仕方ない。
「すまなかった。また勉強を教えようか?」
 明蓮はテストの成績を上げるために勉強をしている。私に出来ることと言えば、勉強を教えることぐらいだ。
「そうね……ううん、いい。それより、ちょっと付き合ってくれない?」
 明蓮はそう言って、鞄の中にある秘術の本を私にだけ見えるように示してきた。これは旅行の誘いか。彼女から誘ってくるとは珍しい。金欠なのかもしれない。
「ああ、では学園を出ようか」
「うん。いつもの場所に行きましょう」