第三話 脱獄

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「待たせたな」

 カンテラを掲げた黒いバンダナを額に巻いた白銀の髪の男は言った。襟元まで伸ばした髪が灯りに照らされて輝く。思わずニーナは後ずさりしてしまった。

「あなたはだぁれ?」
ニーナの乾いた唇をついて言葉が出る。

「自己紹介は後だ。今は時間がない。ここから出るぞ」

そういって男は鍵を取り出し、牢の扉に差し込む。

「え?」

 状況を把握出来ていないニーナは、体を固まらせたまま男のやや強引な動きを見ていた。耳を刺す金属音と共に扉が開く。男はかがんで中に入ってきて、ニーナに手を伸ばした。

「立てるか?」

 男はそう言って、ニーナをじっと見つめる。ニーナは腰が抜けてしまっていた。
 ニーナが立てないのを悟って、彼はニーナの体を抱き上げ、一緒に牢を出ようとする。しかし、彼女はそれに強く抗ってうずくまった。

「すまない。ここでグズグズしていると看守に見つかるのでな。詳しいことは後で説明する。今は、ついてきてほしい」

 彼は少し困った顔でニーナの目を見て言った。
 この男について行ったら何が起こるのか、皆目見当もつかず、ニーナはさらに身を固くする。
 しかし彼は、ニーナが立てないのを見て、彼女に黒いマントを被せ、抱き上げた。急ぎつつも足音を立てないように牢の出口を目指す。ニーナは男の顔をじっと見つめていた。

 どうやらニーナが閉じ込められていた牢獄は地下にあったらしく、男はニーナを抱えたまま階段を登る。その途中で何人か看守が伸びているのを見かけた。怪我をしている様子はないが、起き上がる気配も感じられない。
 彼が来る直前に聞こえた声は彼らの短い悲鳴は看守たちのものだったことをニーナは理解した。

 階段を登り切った先には、敷き詰められた石の壁と夜空が広がっていた。
 ニーナが『ハイリゲ・リッター』というグナーテ王国騎士団に捕らえられた時は昼であったが、暗い牢に何時間、———いや何日間も閉じ込められていたかもしれない———。
 ずっと長い時間を牢で過ごしていたことが分かった。

 男は地下から出ると迷わず、右の方へ進んだ。道端にはのびている兵士たちが複数人いた。
 しかし、まだ夜襲を受けていることは気付かれていないのか、周囲は静まっていた。
 しばらくすると、壁に出入り口があるのが見えた。男は悠々とその場所を通って行った。

 ここはどこなんですか? と男に聞きたい気持ちはあったが、ニーナは言葉を飲み込んで、ただ兵士たちがやって来て襲ってくることがないように願っていた。

 牢獄のある建物を出た後は静まった街を通った。夜が遅いのか、明かりはちらほらと付いているものの、誰も通りを歩いていなかった。
 男が敢えて人の少ない通りを歩いているのは、街の雰囲気からしてなんとなく分かる。だが、街は広いようで入り組んだ道が何度も続いていた。

 そして、街の出口に差し掛かる。その辺りにはやたらと明かりが付けられていた。
 男はそこでニーナを下ろし、「少し待っていてくれ」と言って、彼は様子を伺いながら、出口の方に向かって行った。

 すると、「ぎゃっ」「ぐわっ」と声が聞こえ、彼は時間を待たずに戻ってきた。男は、「さあ、行こう」とニーナの手を右手で優しく掴み、連れて行こうとする。
 ニーナは呆然としながら、歩みを進めた。

 出口には倒れている兵士たちがいる。血は流れておらず、眠っているようにも見えた。
 今までの番兵たちがのびている姿を見るに、牢から街の出口に至るまで、ニーナの手を握るこの男が腰の右側に()いた剣を抜くことなく制圧したのだろう。
 ニーナは兵士たちを横目に見て、その場を後にした。

 街からはかなり歩いただろうか。特に番兵に見つかって追いかけられることもなかった。
 彼に従って道を進んでいくと、森の中に入って行った。周りは暗く、目先のものさえ見えない。
 彼はカンテラに明かりを付けて、左手に持ち、右手はニーナの手を握ったまま、彼女の視界に明かりを寄せて前方を照らした。

 彼は幾度か後方を振り向き、追手がやって来ていないか確認する。しばらく歩くと、野営地の跡が見えた。
 彼は黒いマントの上にニーナを座らせ、自分の荷物からカンテラを三つ取り出し、持っていたカンテラと合わせて四方の木々に括りつけた。
 カンテラの光を確認して、ニーナの元にやって来た。

 しばらくの間、沈黙が続く。
 ニーナは座り込んで、膝に顔を埋めていた。男は小さな火を起こした。
 整った顔と白銀の髪が火に照らされてよく見える。

 彼は、ニーナに語りかけた。
 
「寒くないか?」

 ニーナは身動き一つせず、答えない。
 男は独りで言葉を紡ぎ出した。

「俺はアルベルト。お前をあの牢獄から助けるために来た」

 アルベルトと名乗ったのを聞いて、ニーナは顔を上げ、答えた。

「どうして私を助けたんですか?あの場所はなんだったんですか?」

 疑問がとめどなく溢れてくる。アルベルトはその一つひとつに答えていく。

「お前を助けた理由は、ニーナ、お前の母親のベアトリスから頼まれたんだ」

 そして、こうも言った。

「お前が閉じ込められていた場所は、グナーテ王国の首都リヒトだ」

 アルベルトの口から母親の名前を聞いた時、ニーナは目を見開いて言った。

「どうしてお母さんを知っているんですか? お母さんは私が捕まることを知っていたんですか?」

 アルベルトは荷物を探りながら話す。

「いや、お前が牢に入れられるとは思っていなかった。ただ、お前がいずれ危機に陥るということは知っていた」

 そう言ってから、彼は干した果物や肉と水の入った容器をニーナに差し出した。

「お腹が空いて、喉も渇いているんじゃないか? これを食べた方がいい」

 ニーナはそれらを受け取ったものの、口にするかどうかを悩んでいる。それを見てアルベルトは、「毒は入っていない」と呟いた。
 ニーナは決意したように干し肉を齧り出す。渇いた喉に肉が引っかかって、むせて水も飲み始めた。
 アルベルトは目元の緊張を少し緩め、彼女が食事を終えるのを待っていた。

 ニーナが全て食べ終えると、少し黙った後に突然涙を流し始めた。
 彼女は涙を拭うこともなく、長い黒髪が濡れていく。アルベルトは黙ってその様子を見ている。

「ごめんなさい。私ずっと怖くって」

 泣きじゃくりながら、ニーナは言葉を続ける。

「アルベルトさん……だっけ。あなたのことを教えてほしい。あなたは誰なの? お母さんのことをどうして知っているの?」

 アルベルトは言葉を受けて、しばし考えた後、口を開いた。

「俺は一介の旅人だ。お前の母親とは、お前の父親を通して10年前に知り合った。父親の名前はセルジュと言ったな。二人には世話になった。その恩義というのもあって、お前を助けたんだ」

「父に会ったことがあるんですか?」

ニーナは驚いたように言った。

「ああ、友人だった。今は行方が分からなくなっていたな。俺は10年間あちこちを冒険しながらお前の父親を探していた」

 アルベルトの話す量の多さにニーナの頭は混乱をきたしていた。
 それでも、彼の話を聞きたくて次々と質問を投げかけていた。そして最後に、疑問の核心を彼に尋ねた。

「どうして私はグナーテ王国に捕まったんですか?」

 アルベルトはニーナを見つめて、「ショックを受けないか?」と聞いた。
 ニーナは言葉に詰まったものの、すぐに頷いた。

「それは、お前の顔の痣のことだ」

 アルベルトは続ける。

「ニーナの顔の痣は、グナーテ王国にとって都合の悪いものなんだ。お前はずっと王国から目を付けられていた。だが、大人になるまで王国側は手出しをしなかったんだろうな」

 ニーナは思わず、自分の右頬の痣に触れる。

「都合の悪いって……一体」

 こういって、ニーナはアルベルトの目を見つめる。アルベルトは目を逸らして、言葉を発した。

「それは……、お前が『闇の子』であるということだ」

 ニーナは聞き覚えのある言葉に俯いた。村に来た兵士の一番偉い人間、大将軍と呼ばれた男が言っていた。
 
「お前は『闇の子』か」と。ニーナは右頬に爪を立てて、アルベルトに聞いた。

「闇の子って、どうしてそれで捕まるんですか」

「グナーテ王国は光の神を信仰していると称している国だ。そこに、闇の力を持つ人間の証である痣を持つ者が国内にいたら、その人間は国外に追い出すか、外に出さないで囚人として捕らえたままにしておくか、どちらかを選択するだろう」

 ニーナの爪を立てる指先に力が入る。肩を震わせてニーナは言った。

「おかしい……私は何も悪いことをしていないのに。この頬の痣だって生まれつきなんですよ!この痣があるせいで囚人のように扱われなきゃいけないんですか!」

 取り乱したニーナをアルベルトは宥めようとするが、ニーナは言葉を吐き散らし続けた。
 感情が落ち着くまでには、かなりの時間を要した。

「ごめんなさい。アルベルトは関係がないのに迷惑をかけてしまった」

 ニーナはまた膝に顔を埋めたまま、アルベルトに話している。
 アルベルトは「もう休め」と言って、毛布をニーナにかけた。ニーナはこてんと横になって、目を閉じた。

 眠れるわけがない。ただ、今は安らげる時間がほしい。そう思いながら、ニーナは一夜を過ごした。


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「待たせたな」
 カンテラを掲げた黒いバンダナを額に巻いた白銀の髪の男は言った。襟元まで伸ばした髪が灯りに照らされて輝く。思わずニーナは後ずさりしてしまった。
「あなたはだぁれ?」
ニーナの乾いた唇をついて言葉が出る。
「自己紹介は後だ。今は時間がない。ここから出るぞ」
そういって男は鍵を取り出し、牢の扉に差し込む。
「え?」
 状況を把握出来ていないニーナは、体を固まらせたまま男のやや強引な動きを見ていた。耳を刺す金属音と共に扉が開く。男はかがんで中に入ってきて、ニーナに手を伸ばした。
「立てるか?」
 男はそう言って、ニーナをじっと見つめる。ニーナは腰が抜けてしまっていた。
 ニーナが立てないのを悟って、彼はニーナの体を抱き上げ、一緒に牢を出ようとする。しかし、彼女はそれに強く抗ってうずくまった。
「すまない。ここでグズグズしていると看守に見つかるのでな。詳しいことは後で説明する。今は、ついてきてほしい」
 彼は少し困った顔でニーナの目を見て言った。
 この男について行ったら何が起こるのか、皆目見当もつかず、ニーナはさらに身を固くする。
 しかし彼は、ニーナが立てないのを見て、彼女に黒いマントを被せ、抱き上げた。急ぎつつも足音を立てないように牢の出口を目指す。ニーナは男の顔をじっと見つめていた。
 どうやらニーナが閉じ込められていた牢獄は地下にあったらしく、男はニーナを抱えたまま階段を登る。その途中で何人か看守が伸びているのを見かけた。怪我をしている様子はないが、起き上がる気配も感じられない。
 彼が来る直前に聞こえた声は彼らの短い悲鳴は看守たちのものだったことをニーナは理解した。
 階段を登り切った先には、敷き詰められた石の壁と夜空が広がっていた。
 ニーナが『ハイリゲ・リッター』というグナーテ王国騎士団に捕らえられた時は昼であったが、暗い牢に何時間、———いや何日間も閉じ込められていたかもしれない———。
 ずっと長い時間を牢で過ごしていたことが分かった。
 男は地下から出ると迷わず、右の方へ進んだ。道端にはのびている兵士たちが複数人いた。
 しかし、まだ夜襲を受けていることは気付かれていないのか、周囲は静まっていた。
 しばらくすると、壁に出入り口があるのが見えた。男は悠々とその場所を通って行った。
 ここはどこなんですか? と男に聞きたい気持ちはあったが、ニーナは言葉を飲み込んで、ただ兵士たちがやって来て襲ってくることがないように願っていた。
 牢獄のある建物を出た後は静まった街を通った。夜が遅いのか、明かりはちらほらと付いているものの、誰も通りを歩いていなかった。
 男が敢えて人の少ない通りを歩いているのは、街の雰囲気からしてなんとなく分かる。だが、街は広いようで入り組んだ道が何度も続いていた。
 そして、街の出口に差し掛かる。その辺りにはやたらと明かりが付けられていた。
 男はそこでニーナを下ろし、「少し待っていてくれ」と言って、彼は様子を伺いながら、出口の方に向かって行った。
 すると、「ぎゃっ」「ぐわっ」と声が聞こえ、彼は時間を待たずに戻ってきた。男は、「さあ、行こう」とニーナの手を右手で優しく掴み、連れて行こうとする。
 ニーナは呆然としながら、歩みを進めた。
 出口には倒れている兵士たちがいる。血は流れておらず、眠っているようにも見えた。
 今までの番兵たちがのびている姿を見るに、牢から街の出口に至るまで、ニーナの手を握るこの男が腰の右側に|佩《は》いた剣を抜くことなく制圧したのだろう。
 ニーナは兵士たちを横目に見て、その場を後にした。
 街からはかなり歩いただろうか。特に番兵に見つかって追いかけられることもなかった。
 彼に従って道を進んでいくと、森の中に入って行った。周りは暗く、目先のものさえ見えない。
 彼はカンテラに明かりを付けて、左手に持ち、右手はニーナの手を握ったまま、彼女の視界に明かりを寄せて前方を照らした。
 彼は幾度か後方を振り向き、追手がやって来ていないか確認する。しばらく歩くと、野営地の跡が見えた。
 彼は黒いマントの上にニーナを座らせ、自分の荷物からカンテラを三つ取り出し、持っていたカンテラと合わせて四方の木々に括りつけた。
 カンテラの光を確認して、ニーナの元にやって来た。
 しばらくの間、沈黙が続く。
 ニーナは座り込んで、膝に顔を埋めていた。男は小さな火を起こした。
 整った顔と白銀の髪が火に照らされてよく見える。
 彼は、ニーナに語りかけた。
「寒くないか?」
 ニーナは身動き一つせず、答えない。
 男は独りで言葉を紡ぎ出した。
「俺はアルベルト。お前をあの牢獄から助けるために来た」
 アルベルトと名乗ったのを聞いて、ニーナは顔を上げ、答えた。
「どうして私を助けたんですか?あの場所はなんだったんですか?」
 疑問がとめどなく溢れてくる。アルベルトはその一つひとつに答えていく。
「お前を助けた理由は、ニーナ、お前の母親のベアトリスから頼まれたんだ」
 そして、こうも言った。
「お前が閉じ込められていた場所は、グナーテ王国の首都リヒトだ」
 アルベルトの口から母親の名前を聞いた時、ニーナは目を見開いて言った。
「どうしてお母さんを知っているんですか? お母さんは私が捕まることを知っていたんですか?」
 アルベルトは荷物を探りながら話す。
「いや、お前が牢に入れられるとは思っていなかった。ただ、お前がいずれ危機に陥るということは知っていた」
 そう言ってから、彼は干した果物や肉と水の入った容器をニーナに差し出した。
「お腹が空いて、喉も渇いているんじゃないか? これを食べた方がいい」
 ニーナはそれらを受け取ったものの、口にするかどうかを悩んでいる。それを見てアルベルトは、「毒は入っていない」と呟いた。
 ニーナは決意したように干し肉を齧り出す。渇いた喉に肉が引っかかって、むせて水も飲み始めた。
 アルベルトは目元の緊張を少し緩め、彼女が食事を終えるのを待っていた。
 ニーナが全て食べ終えると、少し黙った後に突然涙を流し始めた。
 彼女は涙を拭うこともなく、長い黒髪が濡れていく。アルベルトは黙ってその様子を見ている。
「ごめんなさい。私ずっと怖くって」
 泣きじゃくりながら、ニーナは言葉を続ける。
「アルベルトさん……だっけ。あなたのことを教えてほしい。あなたは誰なの? お母さんのことをどうして知っているの?」
 アルベルトは言葉を受けて、しばし考えた後、口を開いた。
「俺は一介の旅人だ。お前の母親とは、お前の父親を通して10年前に知り合った。父親の名前はセルジュと言ったな。二人には世話になった。その恩義というのもあって、お前を助けたんだ」
「父に会ったことがあるんですか?」
ニーナは驚いたように言った。
「ああ、友人だった。今は行方が分からなくなっていたな。俺は10年間あちこちを冒険しながらお前の父親を探していた」
 アルベルトの話す量の多さにニーナの頭は混乱をきたしていた。
 それでも、彼の話を聞きたくて次々と質問を投げかけていた。そして最後に、疑問の核心を彼に尋ねた。
「どうして私はグナーテ王国に捕まったんですか?」
 アルベルトはニーナを見つめて、「ショックを受けないか?」と聞いた。
 ニーナは言葉に詰まったものの、すぐに頷いた。
「それは、お前の顔の痣のことだ」
 アルベルトは続ける。
「ニーナの顔の痣は、グナーテ王国にとって都合の悪いものなんだ。お前はずっと王国から目を付けられていた。だが、大人になるまで王国側は手出しをしなかったんだろうな」
 ニーナは思わず、自分の右頬の痣に触れる。
「都合の悪いって……一体」
 こういって、ニーナはアルベルトの目を見つめる。アルベルトは目を逸らして、言葉を発した。
「それは……、お前が『闇の子』であるということだ」
 ニーナは聞き覚えのある言葉に俯いた。村に来た兵士の一番偉い人間、大将軍と呼ばれた男が言っていた。
「お前は『闇の子』か」と。ニーナは右頬に爪を立てて、アルベルトに聞いた。
「闇の子って、どうしてそれで捕まるんですか」
「グナーテ王国は光の神を信仰していると称している国だ。そこに、闇の力を持つ人間の証である痣を持つ者が国内にいたら、その人間は国外に追い出すか、外に出さないで囚人として捕らえたままにしておくか、どちらかを選択するだろう」
 ニーナの爪を立てる指先に力が入る。肩を震わせてニーナは言った。
「おかしい……私は何も悪いことをしていないのに。この頬の痣だって生まれつきなんですよ!この痣があるせいで囚人のように扱われなきゃいけないんですか!」
 取り乱したニーナをアルベルトは宥めようとするが、ニーナは言葉を吐き散らし続けた。
 感情が落ち着くまでには、かなりの時間を要した。
「ごめんなさい。アルベルトは関係がないのに迷惑をかけてしまった」
 ニーナはまた膝に顔を埋めたまま、アルベルトに話している。
 アルベルトは「もう休め」と言って、毛布をニーナにかけた。ニーナはこてんと横になって、目を閉じた。
 眠れるわけがない。ただ、今は安らげる時間がほしい。そう思いながら、ニーナは一夜を過ごした。