第7話 ゴスロリで迫る凜花
ー/ー月曜の夜、6時
「……っ、よし。これで完璧」
凜花は自分の部屋で、全身鏡を背にして屈み込み、股の間に丸い手鏡をかざした。11月の冷え込んだ空気の中、暖房を強めにした室内で、彼女の額には薄っすらと汗が浮かんでいる。
今日は「急な腹痛」という嘘をついて、部活を早退した。毎日、0.1秒を削るためにストイックに走り込んでいる陸上部の自分にとって、こんな不誠実な真似は本来あり得ない。でも、今の凜花を突き動かしているのは、トラックを走る時以上の熱量と、一刻も早く悠馬に会いたいという焦燥感だった。
鏡に映る自分をすみずみまでチェックする。
「とんでもない場所から一本だけ剃り残しではみ出している……なんて、絶対にあっちゃいけないもんね」
女子高生の意地と執念。丁寧に処理された肌を鏡越しに確認し、「よし、ハミ毛なし!」と小さく頷いた。
ベッドの上には、二つの選択肢が並んでいる。
遥と一緒に選んだ、あの黒の光沢レギンスと、そして――ソフトゴスロリの衣装だ。
黒の光沢レギンスで良いんじゃないか?ゴスロリは刺激が強すぎるかも?と迷った。まず、黒のカルバンクラインのショーツをはいてみて、全身鏡と手鏡ですみずみまでチェックする。「よし!剃毛してるし、これはハミ毛なし!」次に、光沢レギンスをはく。
「よし!縦筋は視えない!レギンスの方が『陸上部』っぽくて安心かな……。ううん、でも、今日は『ご褒美』なんだから。中途半端はダメだ~!」
凜花は覚悟を決めて、ゴスロリ衣装を手に取った。まずは下着。際どい黒のTバックを穿き、再び鏡の前で前後のラインをチェックする。
「よし、オシリは問題なし」
次にニーハイストッキング。ガーターベルト風の黒いレースが付いたそれを、指先で慎重に手繰り寄せる。「映画のシーンとかだと、こうやって……脚を突き上げて穿くんだよね」
陸上部の柔軟な脚をスッと天井へ向け、つま先からゆっくりとナイロンの膜を滑らせていく。膝を越え、太ももの柔らかい肉をレースが締め付けた瞬間、鏡の中の自分を見て絶句した。
「ゲェ……すっげ~エッチ。何これ、自分で引くわ」
ティアードミニスカートを重ね、黒ニットトップを着る。黒のロングコート風アウターを羽織る。鏡の中には、いつもの「陸上部の凜花」はどこにもいなかった。クールな美人顔を妖しく、かつ甘くデコレーションしたゴスロリの姫。フリルが重なるたび、自分の身体が「悠馬への贈り物」になっていく感覚に、心臓の鼓動が激しくなる。
「いやらしい、いやらしい……いやらしい~! これ、男子が見たら絶対に襲いかかる代物じゃん!」
悶々としながら、ふと我に返る。
「……いや、このままじゃ中央線に乗れないじゃん」
慌ててクローゼットから膝下丈の黒のレインコートを引っ張り出した。ボタンを一番上まで留めれば、首元のチョーカー以外は完璧に隠れる。電車の中で、誰もこの下がガーターニーハイとティアードスカートだなんて気づくまい。まるで爆弾を抱えて街に出るようなスリルが、背筋をゾクゾクとさせた。
玄関から持ってきた黒のローファーを新聞紙の上で履き、最後の仕上げにチョーカーを整える。鏡の中の「完璧な自分」を見て、凜花はニンマリと不敵に笑った。
「……あ、もう6時40分!やばい、遅れる!」
彼女はバッグを掴むと、夜の冷気の中へと飛び出した。
月曜の夜、7時半
四谷の駅を降りてから、悠馬のアパートまでの道のりが、これまでの人生で一番長く感じられた。
黒いレインコートの下は、あの恥ずかしいゴスロリ衣装だ。歩くたびにパニエのフリルがカサカサと鳴り、ガーターベルトが太ももの肉をキュッと噛んでいる。すれ違う人は誰も、このコートの中がこんなふうになっているなんて気づいていない。
そう思うだけで顔が火照って、心臓の音が耳元まで響いてくる。……あ!はしたない!もう、歩いているだけでアソコが……。
「……よし、落ち着け、凜花。今日はお勉強なんだから」
深呼吸をして、震える指先でチャイムを鳴らした。
ピンポーン。
ドアが開いた瞬間、私は我慢できずにバッとレインコートを脱ぎ捨てた。
「悠馬!……どう?これ、遥と一緒に買ったんだよ」
目の前の悠馬が、ドアノブを握ったまま石のように固まった。私の黒髪には小さなリボン。首筋を締める黒いチョーカー、ふんわり広がるティアードスカート。そして167センチの脚をこれでもかと強調する、ガーターベルト風の黒いレース付きニーハイ。
悠馬の視線が、私の首筋のチョーカーから、むき出しの太ももへと吸い寄せられるのがわかった。
「……凜花……それ……ヤバい……エロすぎるだろ」
悠馬の声が掠れている。やった、大成功だ!
恥ずかしさで爆発しそうだったけど、彼のその反応を見た瞬間、私の中の『肉食女子』がニヤリと笑った。
「えへへ。悠馬の好みにピッタリでしょ?じゃあ……お勉強の前に、ご褒美タイムにする?」
私はズカズカと部屋に入り込み、ダイニングテーブルの椅子に座った。わざとスカートを捲り上げ、レースの縁を悠馬に見せつけるように脚を揃える。
「悠馬、今日も物理と数学教えて?その代わり……この格好のまま、私をめちゃくちゃにしていいよ?」
そう言った自分の声が、甘く震えていた。
勉強なんて、最初から頭に入るわけがない。隣の椅子に座った悠馬の体温が伝わってくるたび、私のニーハイの脚は勝手に彼の膝に触れにいく。
悠馬が説明する物理の公式なんて、右から左へ抜けていく。意識はすべて、テーブルの下で触れ合っている脚の感触と、首筋をチクチク刺激するチョーカーに集中していた。
「もう……勉強無理……」
悠馬が音を上げた。ペンを置く手の震えを見て、私は勝利を確信した。
私は、「じゃあ、お言葉に甘えて……」私はテキストもノートも乱暴に放り出して、彼の手を引いてソファーベッドへ移動した。
座るやいなや、悠馬の手が私の首筋に伸びた。チョーカーのレースを指先でなぞられ、そのまま顎を持ち上げられる。
「……こんな格好で来るなんて、反則だろ」
悠馬が低く囁き、深いキスを落としてきた。甘い熱が口の中に広がり、ティアードスカートのフリルがカサカサと音を立てる。ゴスロリのレースが二人の間で擦れる感触。チョーカーが首を締め付ける感覚。そして悠馬と寄り添っている、この上ない充足感。。
レインコートの中で溜め込んできた私の熱が、もう限界だった。
あぁ、本当は大人しく悠馬に引っ張られたい気もした。でも、ずっと溜め込んできた気持ちが先に溢れ出してしまって、気づけば私の方から彼の胸に飛び込んでいた。
悠馬の腕が静かに私を包んだ。
…………
汗の匂いと、シャンプーの香り。このまま時間が止まればいいのに。
「悠馬……明日も……来ていい?」
胸に顔を埋めたまま、私は縋るように聞いた。明日、彼が彩花姉ちゃんと会うことなんて、本当は分かっている。でも、今の私は、このゴスロリのレースのように、彼にがんじがらめに縛られて、離れることなんてできない。
悠馬は迷ったように沈黙した。でも、私の脚が彼の腰に絡みついたまま離さないのを感じて、彼はただ、私の髪を優しく撫でてくれた。
「……っ、よし。これで完璧」
凜花は自分の部屋で、全身鏡を背にして屈み込み、股の間に丸い手鏡をかざした。11月の冷え込んだ空気の中、暖房を強めにした室内で、彼女の額には薄っすらと汗が浮かんでいる。
今日は「急な腹痛」という嘘をついて、部活を早退した。毎日、0.1秒を削るためにストイックに走り込んでいる陸上部の自分にとって、こんな不誠実な真似は本来あり得ない。でも、今の凜花を突き動かしているのは、トラックを走る時以上の熱量と、一刻も早く悠馬に会いたいという焦燥感だった。
鏡に映る自分をすみずみまでチェックする。
「とんでもない場所から一本だけ剃り残しではみ出している……なんて、絶対にあっちゃいけないもんね」
女子高生の意地と執念。丁寧に処理された肌を鏡越しに確認し、「よし、ハミ毛なし!」と小さく頷いた。
ベッドの上には、二つの選択肢が並んでいる。
遥と一緒に選んだ、あの黒の光沢レギンスと、そして――ソフトゴスロリの衣装だ。
黒の光沢レギンスで良いんじゃないか?ゴスロリは刺激が強すぎるかも?と迷った。まず、黒のカルバンクラインのショーツをはいてみて、全身鏡と手鏡ですみずみまでチェックする。「よし!剃毛してるし、これはハミ毛なし!」次に、光沢レギンスをはく。
「よし!縦筋は視えない!レギンスの方が『陸上部』っぽくて安心かな……。ううん、でも、今日は『ご褒美』なんだから。中途半端はダメだ~!」
凜花は覚悟を決めて、ゴスロリ衣装を手に取った。まずは下着。際どい黒のTバックを穿き、再び鏡の前で前後のラインをチェックする。
「よし、オシリは問題なし」
次にニーハイストッキング。ガーターベルト風の黒いレースが付いたそれを、指先で慎重に手繰り寄せる。「映画のシーンとかだと、こうやって……脚を突き上げて穿くんだよね」
陸上部の柔軟な脚をスッと天井へ向け、つま先からゆっくりとナイロンの膜を滑らせていく。膝を越え、太ももの柔らかい肉をレースが締め付けた瞬間、鏡の中の自分を見て絶句した。
「ゲェ……すっげ~エッチ。何これ、自分で引くわ」
ティアードミニスカートを重ね、黒ニットトップを着る。黒のロングコート風アウターを羽織る。鏡の中には、いつもの「陸上部の凜花」はどこにもいなかった。クールな美人顔を妖しく、かつ甘くデコレーションしたゴスロリの姫。フリルが重なるたび、自分の身体が「悠馬への贈り物」になっていく感覚に、心臓の鼓動が激しくなる。
「いやらしい、いやらしい……いやらしい~! これ、男子が見たら絶対に襲いかかる代物じゃん!」
悶々としながら、ふと我に返る。
「……いや、このままじゃ中央線に乗れないじゃん」
慌ててクローゼットから膝下丈の黒のレインコートを引っ張り出した。ボタンを一番上まで留めれば、首元のチョーカー以外は完璧に隠れる。電車の中で、誰もこの下がガーターニーハイとティアードスカートだなんて気づくまい。まるで爆弾を抱えて街に出るようなスリルが、背筋をゾクゾクとさせた。
玄関から持ってきた黒のローファーを新聞紙の上で履き、最後の仕上げにチョーカーを整える。鏡の中の「完璧な自分」を見て、凜花はニンマリと不敵に笑った。
「……あ、もう6時40分!やばい、遅れる!」
彼女はバッグを掴むと、夜の冷気の中へと飛び出した。
月曜の夜、7時半
四谷の駅を降りてから、悠馬のアパートまでの道のりが、これまでの人生で一番長く感じられた。
黒いレインコートの下は、あの恥ずかしいゴスロリ衣装だ。歩くたびにパニエのフリルがカサカサと鳴り、ガーターベルトが太ももの肉をキュッと噛んでいる。すれ違う人は誰も、このコートの中がこんなふうになっているなんて気づいていない。
そう思うだけで顔が火照って、心臓の音が耳元まで響いてくる。……あ!はしたない!もう、歩いているだけでアソコが……。
「……よし、落ち着け、凜花。今日はお勉強なんだから」
深呼吸をして、震える指先でチャイムを鳴らした。
ピンポーン。
ドアが開いた瞬間、私は我慢できずにバッとレインコートを脱ぎ捨てた。
「悠馬!……どう?これ、遥と一緒に買ったんだよ」
目の前の悠馬が、ドアノブを握ったまま石のように固まった。私の黒髪には小さなリボン。首筋を締める黒いチョーカー、ふんわり広がるティアードスカート。そして167センチの脚をこれでもかと強調する、ガーターベルト風の黒いレース付きニーハイ。
悠馬の視線が、私の首筋のチョーカーから、むき出しの太ももへと吸い寄せられるのがわかった。
「……凜花……それ……ヤバい……エロすぎるだろ」
悠馬の声が掠れている。やった、大成功だ!
恥ずかしさで爆発しそうだったけど、彼のその反応を見た瞬間、私の中の『肉食女子』がニヤリと笑った。
「えへへ。悠馬の好みにピッタリでしょ?じゃあ……お勉強の前に、ご褒美タイムにする?」
私はズカズカと部屋に入り込み、ダイニングテーブルの椅子に座った。わざとスカートを捲り上げ、レースの縁を悠馬に見せつけるように脚を揃える。
「悠馬、今日も物理と数学教えて?その代わり……この格好のまま、私をめちゃくちゃにしていいよ?」
そう言った自分の声が、甘く震えていた。
勉強なんて、最初から頭に入るわけがない。隣の椅子に座った悠馬の体温が伝わってくるたび、私のニーハイの脚は勝手に彼の膝に触れにいく。
悠馬が説明する物理の公式なんて、右から左へ抜けていく。意識はすべて、テーブルの下で触れ合っている脚の感触と、首筋をチクチク刺激するチョーカーに集中していた。
「もう……勉強無理……」
悠馬が音を上げた。ペンを置く手の震えを見て、私は勝利を確信した。
私は、「じゃあ、お言葉に甘えて……」私はテキストもノートも乱暴に放り出して、彼の手を引いてソファーベッドへ移動した。
座るやいなや、悠馬の手が私の首筋に伸びた。チョーカーのレースを指先でなぞられ、そのまま顎を持ち上げられる。
「……こんな格好で来るなんて、反則だろ」
悠馬が低く囁き、深いキスを落としてきた。甘い熱が口の中に広がり、ティアードスカートのフリルがカサカサと音を立てる。ゴスロリのレースが二人の間で擦れる感触。チョーカーが首を締め付ける感覚。そして悠馬と寄り添っている、この上ない充足感。。
レインコートの中で溜め込んできた私の熱が、もう限界だった。
あぁ、本当は大人しく悠馬に引っ張られたい気もした。でも、ずっと溜め込んできた気持ちが先に溢れ出してしまって、気づけば私の方から彼の胸に飛び込んでいた。
悠馬の腕が静かに私を包んだ。
…………
汗の匂いと、シャンプーの香り。このまま時間が止まればいいのに。
「悠馬……明日も……来ていい?」
胸に顔を埋めたまま、私は縋るように聞いた。明日、彼が彩花姉ちゃんと会うことなんて、本当は分かっている。でも、今の私は、このゴスロリのレースのように、彼にがんじがらめに縛られて、離れることなんてできない。
悠馬は迷ったように沈黙した。でも、私の脚が彼の腰に絡みついたまま離さないのを感じて、彼はただ、私の髪を優しく撫でてくれた。
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