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第47話 共犯者

ー/ー



 ザーザー

 雨足が強まり始めた闇夜の道路を1台のピックアップトラックが駆け抜ける。

「んーっ! んんんんーっ!」

 その車内には黒のリボンで声を封じられ縄で両手を拘束されるクルクスと、麻酔でスヤスヤと眠らされるニナニナがいた。

「ふんふん、ふーん、ふふんっ♪」

 そしてもう1人────その(かたわ)らの運転席には、彼女ら2人を誘拐した張本人が座っている。

 キーッ

 犯人は路肩に車を停車させ振り向く。

「それじゃあ……始めるわね?」

 そう言いシートベルトを犯人は外し、少女の耳に吐息がかかるところまで接近し、そのキーワードを妖艶(ようえん)(ささや)いた。

「──ドゥームノアリバース」

 直後、クルクスが偽っていた意識──『自己認識』のダイヤルがリセットされる。

「……今ほどくわね」

 すると犯人は拘束していた少女の縄と口元のリボンを速やかに外す。

「調子はどう──?」

 その言葉に「……問題ない」とただ一言だけ、外の雨音に掻き消されない声量でそう返す少女。
「ほんっと、思い切りがスゴイわね。あたいが回収に失敗して解除コードを言わなかったら、一生あのままだったのよ……?」
 両腕と足を前に組みながら、「その懸念を払拭できずにいたのよ」と吐露する誘拐犯に
「……事実、百も承知の賭けに……あたしは勝った」
 と「杞憂に終わったのだから、この話を続けても時間の無駄」とクルクスは冷たく言い放つ。

「……これ以上聞くのは野暮ね。──はいこれ」

 犯人は彼女にある物を手渡す。

「……ペンダン、ト?」

 手のひらに乗るそれをクルクスは凝視する。
「アンタの父親──ミスター・トーマスから2ほど拝借したの。1つは部屋の引き出し、もう1つは彼が持っていたわ。──これは妹ちゃんのね」
 ニナニナの分と言って2つ目のペンダントを取り出した誘拐犯に向けて、
「……どろぼうじゃん」
 と少女は受け取りながらぽつりと呟き、
「……ありがとう」
 と続けて言った。

「……そっか。……まだ……あたしたちのこと──」

 両手のペンダントを胸に頬を僅かに緩めたクルクスだったが、嬉しさのせいか表情には笑いが溢れていた。
「もっと顔に出しても構わないのよ?」
 誘拐犯の言葉に彼女は首を左右に振った。

「……最期はこの子に、取っておきたいから──」

 クルクスは笑みを浮かべそう言うと、ちらりと横目を向けてニナニナを見た後──ロケットペンダントに写真を()める。
「──はいっ! この話題はこれでもうお終い、お終い……っ! ──で、本当にやるの……?」
 湿っぽい雰囲気を取り払おうと、パンッと両手を合わせてから少女に向き直り、確認を取る犯人。
「……この選択に悔いはない。……むしろ心臓(ここ)は、高揚してとても(たか)ぶってる。……歩むと決めた以上、お姉ちゃんとして──この(いばら)の道を……突き進むだけ」
 胸に手を当て決意を表明するクルクス。
「そっ……ならあたいも、そのお姉ちゃんに合わせて、動くとしましょうっ、か……っ!」
 ぐーっと背伸びをする犯人。

「……その、リーダーに──お願いがあるの」

 少女の様子はまるで、親に自分の思っているを必死に言い出そうとする、子どものようだった。




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 ザーザー
 雨足が強まり始めた闇夜の道路を1台のピックアップトラックが駆け抜ける。
「んーっ! んんんんーっ!」
 その車内には黒のリボンで声を封じられ縄で両手を拘束されるクルクスと、麻酔でスヤスヤと眠らされるニナニナがいた。
「ふんふん、ふーん、ふふんっ♪」
 そしてもう1人────その傍《かたわ》らの運転席には、彼女ら2人を誘拐した張本人が座っている。
 キーッ
 犯人は路肩に車を停車させ振り向く。
「それじゃあ……始めるわね?」
 そう言いシートベルトを犯人は外し、少女の耳に吐息がかかるところまで接近し、そのキーワードを妖艶《ようえん》に囁《ささや》いた。
「──ドゥームノアリバース」
 直後、クルクスが偽っていた意識──『自己認識』のダイヤルがリセットされる。
「……今ほどくわね」
 すると犯人は拘束していた少女の縄と口元のリボンを速やかに外す。
「調子はどう──?」
 その言葉に「……問題ない」とただ一言だけ、外の雨音に掻き消されない声量でそう返す少女。
「ほんっと、思い切りがスゴイわね。あたいが回収に失敗して解除コードを言わなかったら、一生あのままだったのよ……?」
 両腕と足を前に組みながら、「その懸念を払拭できずにいたのよ」と吐露する誘拐犯に
「……事実、百も承知の賭けに……あたしは勝った」
 と「杞憂に終わったのだから、この話を続けても時間の無駄」とクルクスは冷たく言い放つ。
「……これ以上聞くのは野暮ね。──はいこれ」
 犯人は彼女にある物を手渡す。
「……ペンダン、ト?」
 手のひらに乗るそれをクルクスは凝視する。
「アンタの父親──ミスター・トーマスから《《2つ》》ほど拝借したの。1つは部屋の引き出し、もう1つは彼が持っていたわ。──これは妹ちゃんのね」
 ニナニナの分と言って2つ目のペンダントを取り出した誘拐犯に向けて、
「……どろぼうじゃん」
 と少女は受け取りながらぽつりと呟き、
「……ありがとう」
 と続けて言った。
「……そっか。……まだ……あたしたちのこと──」
 両手のペンダントを胸に頬を僅かに緩めたクルクスだったが、嬉しさのせいか表情には笑いが溢れていた。
「もっと顔に出しても構わないのよ?」
 誘拐犯の言葉に彼女は首を左右に振った。
「……最期はこの子に、取っておきたいから──」
 クルクスは笑みを浮かべそう言うと、ちらりと横目を向けてニナニナを見た後──ロケットペンダントに写真を嵌《は》める。
「──はいっ! この話題はこれでもうお終い、お終い……っ! ──で、本当にやるの……?」
 湿っぽい雰囲気を取り払おうと、パンッと両手を合わせてから少女に向き直り、確認を取る犯人。
「……この選択に悔いはない。……むしろ心臓《ここ》は、高揚してとても昂《たか》ぶってる。……歩むと決めた以上、お姉ちゃんとして──この茨《いばら》の道を……突き進むだけ」
 胸に手を当て決意を表明するクルクス。
「そっ……ならあたいも、そのお姉ちゃんに合わせて、動くとしましょうっ、か……っ!」
 ぐーっと背伸びをする犯人。
「……その、リーダーに──お願いがあるの」
 少女の様子はまるで、親に自分の思っている《《何か》》を必死に言い出そうとする、子どものようだった。