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朝陽、白雪王子に狙われる?

ー/ー



「何事かと思ったわよ。まさか朝陽が、あの岬くんと並んで座ってるなんて」

 午前の講義が終わった昼休み、あたしは学食で柚乃(ゆの)心春(こはる)、二人の友人と合流した。さっきの授業に来ないなと思っていたら、後ろの方であたしの様子を見ていたらしい。

「二人とも、あの人知ってるの?」

 そう尋ねると、二人は顔を上気させてキャーキャー興奮しだした。

「あったり前でしょ! 今年、新都(しんと)大学から編入してきた(みさき)海理(かいり)くん!」

「目の保養よね~。ルーシャの血が入ってるんだってえ。“白雪王子”って呼ばれてるの、朝陽知らないの?」

「知らない」

 白雪姫じゃなく白雪王子か。そのネーミングセンスはどうなんだろう、という疑問はさておき。

 要約すると、あの混血イケメンな銀髪くんは、そのビジュアルと物腰の柔らかさで、学内中の注目を一身に集めているらしい。主に女子と、ごく一部の男子から。
 なるほど、今朝のあれはモテ氷山の一角だったということか。女好きなうちの(はやて)が聞いたら、地団太を踏んで妬みそうだ。

 でも、人の顔を覚えるのが得意ではないあたしは、残念ながら白かったということしか思い出せない。どんな顔立ちしてたっけ。ほんの数時間前のことなのに。ギブミー記憶力。

 すると、心春が何やら含みのある笑みを浮かべた。

「でも、そんな人がわざわざ朝陽の隣にねぇ……他にも席たくさん空いてたのに」

 それは確かに、あたしも少し思った。

「そうなんだよねえ。なんでだろ」

「ひょっとして朝陽、狙われてたりして?」

「狙われるって、何を? 命?」

「なんでそうなるのよ! あんた、馬鹿なの!?」

 なぜか二人に爆笑された。そんなにおかしいことを言ったんだろうか。命じゃなかったら何よ。お金? あたしは解せぬ思いに苛まれながら、学食のランチセットを五人前かき込んだ。

 しばらくして、次の講義があるという二人が行ってしまったので、一人学食に残ることになった。まだ満腹中枢が働いていないので、購買で買ってきた補食のホットドッグ四個を開封する。
 そうよ、あたしはさそり座……じゃなくて、大飯食らいの女。うちの家族は母以外、みんなこんな感じだ。

 でも、有事の際には少なく見積もって普通の人間十人分以上の働きをするので、燃費は決して悪くないと思う。っていうことを虎太郎の前で言ったら、「どんな理屈だ」と冷ややかな目で見られた。

 食事を続けていると、急に目の前にさっと薄い影が差した。

「やあ、瀬名朝陽さん」

 ホットドッグにかぶりつきながら目を上げると、今朝と同じあの人がテーブルを挟んだ向かい側に立っていた。銀色のトレーを手に持っている。

「ああ……今朝の(へはの)

「うん、さっきはどうも。迷惑じゃなかったら、ご一緒していいかな?」

 さっきまで心春が座っていた席を指し、銀髪くんはまたにこやかに尋ねてきた。

別にいいけど(へふひひひへほ)……」

 そう答えると、彼はまたさっきと同じように笑ってありがとうと言い、あたしの向かいに腰を下ろして昼食を摂り始めた。ヘルシーそうなシーフードサラダとミネストローネのセット。一人前よりも少ない量に見える。


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「何事かと思ったわよ。まさか朝陽が、あの岬くんと並んで座ってるなんて」
 午前の講義が終わった昼休み、あたしは学食で|柚乃《ゆの》と|心春《こはる》、二人の友人と合流した。さっきの授業に来ないなと思っていたら、後ろの方であたしの様子を見ていたらしい。
「二人とも、あの人知ってるの?」
 そう尋ねると、二人は顔を上気させてキャーキャー興奮しだした。
「あったり前でしょ! 今年、|新都《しんと》大学から編入してきた|岬《みさき》|海理《かいり》くん!」
「目の保養よね~。ルーシャの血が入ってるんだってえ。“白雪王子”って呼ばれてるの、朝陽知らないの?」
「知らない」
 白雪姫じゃなく白雪王子か。そのネーミングセンスはどうなんだろう、という疑問はさておき。
 要約すると、あの混血イケメンな銀髪くんは、そのビジュアルと物腰の柔らかさで、学内中の注目を一身に集めているらしい。主に女子と、ごく一部の男子から。
 なるほど、今朝のあれはモテ氷山の一角だったということか。女好きなうちの|兄《はやて》が聞いたら、地団太を踏んで妬みそうだ。
 でも、人の顔を覚えるのが得意ではないあたしは、残念ながら白かったということしか思い出せない。どんな顔立ちしてたっけ。ほんの数時間前のことなのに。ギブミー記憶力。
 すると、心春が何やら含みのある笑みを浮かべた。
「でも、そんな人がわざわざ朝陽の隣にねぇ……他にも席たくさん空いてたのに」
 それは確かに、あたしも少し思った。
「そうなんだよねえ。なんでだろ」
「ひょっとして朝陽、狙われてたりして?」
「狙われるって、何を? 命?」
「なんでそうなるのよ! あんた、馬鹿なの!?」
 なぜか二人に爆笑された。そんなにおかしいことを言ったんだろうか。命じゃなかったら何よ。お金? あたしは解せぬ思いに苛まれながら、学食のランチセットを五人前かき込んだ。
 しばらくして、次の講義があるという二人が行ってしまったので、一人学食に残ることになった。まだ満腹中枢が働いていないので、購買で買ってきた補食のホットドッグ四個を開封する。
 そうよ、あたしはさそり座……じゃなくて、大飯食らいの女。うちの家族は母以外、みんなこんな感じだ。
 でも、有事の際には少なく見積もって普通の人間十人分以上の働きをするので、燃費は決して悪くないと思う。っていうことを虎太郎の前で言ったら、「どんな理屈だ」と冷ややかな目で見られた。
 食事を続けていると、急に目の前にさっと薄い影が差した。
「やあ、瀬名朝陽さん」
 ホットドッグにかぶりつきながら目を上げると、今朝と同じあの人がテーブルを挟んだ向かい側に立っていた。銀色のトレーを手に持っている。
「ああ……|今朝の《へはの》」
「うん、さっきはどうも。迷惑じゃなかったら、ご一緒していいかな?」
 さっきまで心春が座っていた席を指し、銀髪くんはまたにこやかに尋ねてきた。
「|別にいいけど《へふひひひへほ》……」
 そう答えると、彼はまたさっきと同じように笑ってありがとうと言い、あたしの向かいに腰を下ろして昼食を摂り始めた。ヘルシーそうなシーフードサラダとミネストローネのセット。一人前よりも少ない量に見える。