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第6幕 その1

ー/ー



 生きるって決めたんだ――夕食を買いがてらメメ子をJR浜松駅近くまで送っていく間もその後も、その言葉と『必要な子』なら自殺しても死なないという言葉が俺の頭をグルグル堂々巡りしていた。

 生きるために自殺を試みたメメ子……生きることを決めた自殺少女。まるでロシアンルーレットで生き残ったように。

 部屋で独りため息をする。何となくクソゲー日本の未来が見えた気がした。もしかしたら若者の命のガチャが始まるかもしれない。妄想で終わらないかもしれない。

「……やっぱり居場所作んないとな……」

 決意を新たにするように独りごちる。

 そんな俺の謎の危機感をよそに夏は過ぎていく。

 メメ子は俺の貸したアメコミ、バットマン・アーカムアサライムを気に入ってくれたようだ。つげ義春のねじ式が好きなら夢みたいな作品は好きだろうな。今度デヴィッド・リンチの映画でも勧めてみようか。

 ODに関しては今のところ二回目をするか迷っているようだった。ゆっくりやればいいさ。

 そうやって日めくりカレンダーのように日は過ぎて、俺にはKANKEIない夏休みも終盤となった八月二十三日金曜日昼前、相変わらず俺がだらしなく惰眠を貪っているとスマホが鳴った。

 メメ子から通話だ。珍しい。何だろう。

『もしもし、おはよう』

 呑気な俺の挨拶に対し返ってきたのはメメ子の真剣な声色だった。

『ねえ青ちゅ~さん、自殺しようとしてる子がいる』

『今? これから?』

『今これからっていうか、自殺配信してる』

『マジか』

『何度か遊んだことある子で――あっそうだ、浜松なんだその子』

『――それで……どうしたい?』

 ちょっと酷かと思ったが尋ねることにする。

『助けたい』

『お節介でないと言える?』

『わかんない、わかんないけど……助けてって、ここにいるよって言ってる気がして……それで――』

『――ヨシ、助けよう』

『!? ありがとう! ヨシ!』

 配信してるなら急ぐべきだ。とはいえ変に不安を煽っても何だから冷静に行こう。

『じゃあ細かいこと教えてくれる? 配信サイトとか自殺しようとしてる場所とかは?』

 浜松住みらしいが近年の市町村合併で浜松市と一口に言っても結構広い。そうだ車使えるやつがいないか……。ってか市内とも限らないのか。

『ま、待ってね。リンク送る……場所はわからないけどどこかの屋上みたい。飛び降りる気だと思う。名前は七氏ねーセブンとうじー』

 先ほどの真剣さから、いくらか調子をいつものように戻してメメ子が説明してくれる。名無しな七氏さんね。

『浜松市内かわかる?』

『配信観てるけど、タンクとかが映ってて景色が見えないんだ』

『特定がムズイか』

 話しながら俺はLINEのフレンドに『助けてください!』の現場猫スタンプを一斉送信。その後に『自殺配信してる子を助けたい。多分静岡県浜松市かその近くで配信してて場所を特定したい。リンクこれ――』と送る。

 その間に起動したパソコンで配信をチェックする。

 JKらしきマスクの女の子の姿が目に入る。画面は揺れ、女の子自身もどこか虚ろ気だ。直感的にODだなと思った。

『これODしてる?』

『多分そう。レタスだってー』

 レタス――レスタミンのスラングだ――はアレルギーの薬でODするとダウナーな効果が出る。重力が何倍にもなったような感覚や幻覚、呂律が回らなくなり記憶も怪しくなるなどの症状だ。

『ちょっと助太刀呼ぶから、配信画面に何か背景とか景色映らないか観てて。LINEやDMできるならそれで呼びかけて』

『わかったー』

 俺のヘルプに即反応したのは凜々花とボンちゅ~さんだった。

 すぐにLINEのグルチャを作りメメ子を加えた4人グループにする。すぐに3人とも入ってくる。グループ通話開始。

 簡単にそれぞれの自己紹介をしながら俺は着替えを済ます。エスタロンモカ五tとリポビタンDスーパーもドープする。

 傍らでは凜々花が『コンサータ行きます!』と高らかに宣言していた。効くまでの時間は知らないが。

 コンサータはADHDの薬で処方する医者も免許が必要という、中々に入手難易度が高い。ADHD向けだから集中力が増す。一部ではシャブとも囁かれる。スマートドラッグと言えるかもしれない。

 自分の準備は完了だ。

 スマホのバッテリーは五十一パーセントと少し心もとない。予備バッテリーの充電も半分くらいだ。常時通信しながらと考えると持って二時間ほどか。

『今GOタク見たけどタクシーが近くにないから、俺はチャリで浜松駅向かうわ。メメ子さんは今どこ?』

『ワイちゃん今駅内のマックにいるー』

『ナイス。オーケー。向かうわ。ポンちゅ~さんと凜々花ネキは配信とかツイートから居場所わからないか調べて欲しい』

『オッケーだよぉ』『まかせろ』青ちゅ~ポンちゅ~薬中凜々花のお助け隊だ。




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 生きるって決めたんだ――夕食を買いがてらメメ子をJR浜松駅近くまで送っていく間もその後も、その言葉と『必要な子』なら自殺しても死なないという言葉が俺の頭をグルグル堂々巡りしていた。
 生きるために自殺を試みたメメ子……生きることを決めた自殺少女。まるでロシアンルーレットで生き残ったように。
 部屋で独りため息をする。何となくクソゲー日本の未来が見えた気がした。もしかしたら若者の命のガチャが始まるかもしれない。妄想で終わらないかもしれない。
「……やっぱり居場所作んないとな……」
 決意を新たにするように独りごちる。
 そんな俺の謎の危機感をよそに夏は過ぎていく。
 メメ子は俺の貸したアメコミ、バットマン・アーカムアサライムを気に入ってくれたようだ。つげ義春のねじ式が好きなら夢みたいな作品は好きだろうな。今度デヴィッド・リンチの映画でも勧めてみようか。
 ODに関しては今のところ二回目をするか迷っているようだった。ゆっくりやればいいさ。
 そうやって日めくりカレンダーのように日は過ぎて、俺にはKANKEIない夏休みも終盤となった八月二十三日金曜日昼前、相変わらず俺がだらしなく惰眠を貪っているとスマホが鳴った。
 メメ子から通話だ。珍しい。何だろう。
『もしもし、おはよう』
 呑気な俺の挨拶に対し返ってきたのはメメ子の真剣な声色だった。
『ねえ青ちゅ~さん、自殺しようとしてる子がいる』
『今? これから?』
『今これからっていうか、自殺配信してる』
『マジか』
『何度か遊んだことある子で――あっそうだ、浜松なんだその子』
『――それで……どうしたい?』
 ちょっと酷かと思ったが尋ねることにする。
『助けたい』
『お節介でないと言える?』
『わかんない、わかんないけど……助けてって、ここにいるよって言ってる気がして……それで――』
『――ヨシ、助けよう』
『!? ありがとう! ヨシ!』
 配信してるなら急ぐべきだ。とはいえ変に不安を煽っても何だから冷静に行こう。
『じゃあ細かいこと教えてくれる? 配信サイトとか自殺しようとしてる場所とかは?』
 浜松住みらしいが近年の市町村合併で浜松市と一口に言っても結構広い。そうだ車使えるやつがいないか……。ってか市内とも限らないのか。
『ま、待ってね。リンク送る……場所はわからないけどどこかの屋上みたい。飛び降りる気だと思う。名前は七氏ねーセブンとうじー』
 先ほどの真剣さから、いくらか調子をいつものように戻してメメ子が説明してくれる。名無しな七氏さんね。
『浜松市内かわかる?』
『配信観てるけど、タンクとかが映ってて景色が見えないんだ』
『特定がムズイか』
 話しながら俺はLINEのフレンドに『助けてください!』の現場猫スタンプを一斉送信。その後に『自殺配信してる子を助けたい。多分静岡県浜松市かその近くで配信してて場所を特定したい。リンクこれ――』と送る。
 その間に起動したパソコンで配信をチェックする。
 JKらしきマスクの女の子の姿が目に入る。画面は揺れ、女の子自身もどこか虚ろ気だ。直感的にODだなと思った。
『これODしてる?』
『多分そう。レタスだってー』
 レタス――レスタミンのスラングだ――はアレルギーの薬でODするとダウナーな効果が出る。重力が何倍にもなったような感覚や幻覚、呂律が回らなくなり記憶も怪しくなるなどの症状だ。
『ちょっと助太刀呼ぶから、配信画面に何か背景とか景色映らないか観てて。LINEやDMできるならそれで呼びかけて』
『わかったー』
 俺のヘルプに即反応したのは凜々花とボンちゅ~さんだった。
 すぐにLINEのグルチャを作りメメ子を加えた4人グループにする。すぐに3人とも入ってくる。グループ通話開始。
 簡単にそれぞれの自己紹介をしながら俺は着替えを済ます。エスタロンモカ五tとリポビタンDスーパーもドープする。
 傍らでは凜々花が『コンサータ行きます!』と高らかに宣言していた。効くまでの時間は知らないが。
 コンサータはADHDの薬で処方する医者も免許が必要という、中々に入手難易度が高い。ADHD向けだから集中力が増す。一部ではシャブとも囁かれる。スマートドラッグと言えるかもしれない。
 自分の準備は完了だ。
 スマホのバッテリーは五十一パーセントと少し心もとない。予備バッテリーの充電も半分くらいだ。常時通信しながらと考えると持って二時間ほどか。
『今GOタク見たけどタクシーが近くにないから、俺はチャリで浜松駅向かうわ。メメ子さんは今どこ?』
『ワイちゃん今駅内のマックにいるー』
『ナイス。オーケー。向かうわ。ポンちゅ~さんと凜々花ネキは配信とかツイートから居場所わからないか調べて欲しい』
『オッケーだよぉ』『まかせろ』青ちゅ~ポンちゅ~薬中凜々花のお助け隊だ。