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第17話【テラ編】聖剣ガイアセイバー、本日限定で〝大砲〟に転職させて頂きます!

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第17話【テラ編】聖剣ガイアセイバー、本日限定で〝大砲〟に転職させて頂きます!


​――ドガァァァァァァン!!

​火山地帯の麓に佇む〝ゴブニュ鍛冶工房〟の鉄扉が、凄まじい蹴りによって吹き飛んだ。

「――おい、ゴブニュ!表へ出ろ!この詐欺師が!!」

​土足で踏み込んできたテラの手には、短い鉄の棒と化した〝柄〟が握られている。
それはテラがまだガイアセイバーを手に入れるよりずっと前、この店で奮発して買った細剣〝ゴブニュ・テンレイヤー〟の成れの果てだ。

「テラ様!扉を蹴破るのはお控えくださいと、あれほど!ああ……また経費が……」

​背後でセレネが絶望する中、テラはカウンターに折れた剣を叩きつけた。

「なぁ、ゴブニュ!ずっと納得いかなかったんだよ!昔買ったこの剣、……敵に当たる前、風圧だけでバキバキに折れやがった!返品だ、返品!!」

​カウンターの奥から、ボサボサの茶髪を掻きむしりながら、ひどく面倒くさそうな男が顔を出した。鍛冶師ゴブニュである。

「ガハハ!テラ、お前まだその〝実験作〟を持ってたのか」

​ゴブニュが不敵に笑う。

「いいか、テラ。その剣はな、お前の〝デタラメな腕力〟を一点に集中させるためだけに、硬度を限界まで突き詰めた実験作だ。剣がお前の力に耐えきれず自ら砕けたんだ。お前が〝規格外〟だって証拠さ。返品は受け付けねえな」

「ひぃっ!ごめんなさいテラさん!お兄ちゃんの設計が極端すぎるの……っ!」

​工房の隅から、ゴブニュと同じチョコブラウンの髪を高い位置でお団子にまとめたエプロン姿の女性――妹のクレーネが、涙目で飛び出してきた。
クレーネは半泣きで謝りながら、磁石でテラが持ってきた破片を回収し始める。

「クレーネが謝る必要はねえ。こいつが〝下手くそ〟なだけだ!」

「……テラ様。それはだいぶ前の話です。今は聖剣ガイアセイバーを使ってるじゃないですか」

「うるせえセレネ!納得いかねえもんは納得いかねえんだよ!」

​その時、工房を政府の特務部隊が包囲した。最新鋭の魔導兵器三機が砲口を向ける。

「鍛冶師ゴブニュ、および細工師クレーネ!ネプチューン大臣閣下より伝言だ!」

​部隊長が冷酷に宣言する。

「〝因果律制御回路を完成させるには、お前たちの精密な金属加工技術と、クレーネの魔力刻印が不可欠である〟とのことだ!」

​政府は新たな兵器を開発するための技術を持つ職人を狩り集めていたのだ。役人の声に、クレーネが顔を青くしてゴブニュの背中に隠れる。

「ネプチューン大臣の命により、これより両名の身柄を拘束、政府直轄の兵器工場へ移送する!」

ゴブニュの目は、一瞬で職人の冷徹な光を帯びた。

「悪いが、俺の腕は〝自由〟を打つためのもんだ。型にはまった兵器なんて打たねえよ!」

「問答無用だ。連れて行け!」

「おい、役人ども。私の飲み仲間に、その気色悪い〝兵器〟とやらを作らせる気か?」

​テラが役人の前に立ち塞がる。

「何だ貴様は!あの勇者のような格好のマネをしおって。貴様に何ができる!」

「あぁ?私ができるのは、この〝折れたゴミ〟をあんたらの眉間に叩き込むことだけだ!」

​テラは折れた剣の柄を握りしめた。

「テラ、返品は受け付けねえが、その〝折れたゴミ〟の活用法を教えてやるよ!」

ゴブニュはニヤリと笑い、クレーネが持っていた冷却材を柄の断面にぶっかけた。

『冷たっ!!』と​ガイアセイバーが悲鳴を上げる。

「ガイアセイバーの鞘に、その折れた刃の破片を全部ぶち込め。クレーネの特殊な細工で固定すれば、鞘が即席の〝大砲〟になる」

「は……?」

「剣として振るから折れるんだ。折れた先から爆発させて、弾丸として撃ち込め。……お前みたいな破天荒にピッタリの武器だ!」

「分かった!ガイア、おやつだ、食いやがれ!」

『は!?待て、私は聖剣だぞ、ゴミなんて――うごっ!?』

​テラは折れた剣の破片をガイアセイバーの鞘に無理やり押し込む。
クレーネが手際よく魔法銀の糸を鞘に巻き付け、最後に小さな六角形の瑠璃色の飾りをガイアセイバーの柄の端にカチリと嵌め込んだ。

「おい、クレーネ。そのチャラチャラした飾りはなんだ?」

​テラが不思議そうに覗き込むと、クレーネは少し頬を赤らめながら、真剣な眼差しでその飾りを指で触れた。

「これは……ただの飾りじゃありません。剣は時々、作った本人の制御すら超えて暴走しちゃうことがあるんです。でも、この刻印が触れていれば、その動きを静止させる……そんな願いを込めて打ち出した、私なりの〝おまじない〟なんです」

「ふ~ん、おまじないか。まあ、お前が言うなら付けておいてやるよ」

クレーネが飾りにロックをかける。

「行くぜ、ガイア!剣じゃねえ、今日は〝大砲〟として働いてもらうぜ!」

​テラがガイアセイバーを鞘に納めると、鞘の中に押し込められた「折れた剣の破片」が、ガイアセイバーが放つ膨大な神聖魔力によって強引に圧縮され、臨界点に達する。

「喰らいやがれ!!!」

クレーネの飾りによって制御された鞘を〝銃身〟のように使い、ガイアセイバーを〝撃鉄〟のように勢いよく引き抜いた。

――ドォォォォォォン!!

​鞘の先端から〝弾丸〟となった破片と共に巨大な光の刃が噴き出す。それは剣ではなく、純粋な破壊エネルギーの放出。
テラがガイアセイバーを鞘から抜刀するたびに、魔導兵器の装甲が熱線で焼き切られ、爆発する。

「あははは!見ろよ、折れた方が強えじゃねえか!!」

『おいおい、私の扱いがどんどん雑になってないか!?』

​一振りごとに爆発し、折れた破片を弾丸として撒き散らす破天荒な戦い。特務部隊は一瞬で壊滅した。


※※※


​部隊を蹴散らした後、クレーネは安心したのか、その場にヘナヘナと座り込んでいた。ゴブニュは荷物をまとめ始める。

「テラ、助かった。政府はまたすぐ来る。……俺たちは、中立地帯の闇市場に拠点を移すことにした。あそこなら、材料も実験体も事欠かねえからな」

「へっ、逃げんのか?」

「バカ言え。そのガイアセイバーさえも凌駕するような……〝神の力〟を宿した唯一の武器を、クレーネと一緒に仕上げてやるよ」

​クレーネは少し強まった目付きで、テラの手を握った。

「テラさん。次は……ガイアセイバーさんにも負けない、最高の剣を作っておきます!」

『ほう、そいつは楽しみだ』

​ガイアセイバーが愉快そうに鳴動する。

「……期待しないで待ってるぜ」

​テラとセレネが去った後、ゴブニュとクレーネもどこかへ姿を消した。
クレーネがテラの剣に託した、瑠璃色の輝きが届かぬほど遠い場所へ……。
彼らが打とうとしているのは、単なる剣ではない。神をも驚かせる〝何か〟。
その設計図が完成するまで、職人たちの戦いは遠い地で静かに続くのである。






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第17話【テラ編】聖剣ガイアセイバー、本日限定で〝大砲〟に転職させて頂きます!
​――ドガァァァァァァン!!
​火山地帯の麓に佇む〝ゴブニュ鍛冶工房〟の鉄扉が、凄まじい蹴りによって吹き飛んだ。
「――おい、ゴブニュ!表へ出ろ!この詐欺師が!!」
​土足で踏み込んできたテラの手には、短い鉄の棒と化した〝柄〟が握られている。
それはテラがまだガイアセイバーを手に入れるよりずっと前、この店で奮発して買った細剣〝ゴブニュ・テンレイヤー〟の成れの果てだ。
「テラ様!扉を蹴破るのはお控えくださいと、あれほど!ああ……また経費が……」
​背後でセレネが絶望する中、テラはカウンターに折れた剣を叩きつけた。
「なぁ、ゴブニュ!ずっと納得いかなかったんだよ!昔買ったこの剣、……敵に当たる前、風圧だけでバキバキに折れやがった!返品だ、返品!!」
​カウンターの奥から、ボサボサの茶髪を掻きむしりながら、ひどく面倒くさそうな男が顔を出した。鍛冶師ゴブニュである。
「ガハハ!テラ、お前まだその〝実験作〟を持ってたのか」
​ゴブニュが不敵に笑う。
「いいか、テラ。その剣はな、お前の〝デタラメな腕力〟を一点に集中させるためだけに、硬度を限界まで突き詰めた実験作だ。剣がお前の力に耐えきれず自ら砕けたんだ。お前が〝規格外〟だって証拠さ。返品は受け付けねえな」
「ひぃっ!ごめんなさいテラさん!お兄ちゃんの設計が極端すぎるの……っ!」
​工房の隅から、ゴブニュと同じチョコブラウンの髪を高い位置でお団子にまとめたエプロン姿の女性――妹のクレーネが、涙目で飛び出してきた。
クレーネは半泣きで謝りながら、磁石でテラが持ってきた破片を回収し始める。
「クレーネが謝る必要はねえ。こいつが〝下手くそ〟なだけだ!」
「……テラ様。それはだいぶ前の話です。今は聖剣ガイアセイバーを使ってるじゃないですか」
「うるせえセレネ!納得いかねえもんは納得いかねえんだよ!」
​その時、工房を政府の特務部隊が包囲した。最新鋭の魔導兵器三機が砲口を向ける。
「鍛冶師ゴブニュ、および細工師クレーネ!ネプチューン大臣閣下より伝言だ!」
​部隊長が冷酷に宣言する。
「〝因果律制御回路を完成させるには、お前たちの精密な金属加工技術と、クレーネの魔力刻印が不可欠である〟とのことだ!」
​政府は新たな兵器を開発するための技術を持つ職人を狩り集めていたのだ。役人の声に、クレーネが顔を青くしてゴブニュの背中に隠れる。
「ネプチューン大臣の命により、これより両名の身柄を拘束、政府直轄の兵器工場へ移送する!」
ゴブニュの目は、一瞬で職人の冷徹な光を帯びた。
「悪いが、俺の腕は〝自由〟を打つためのもんだ。型にはまった兵器なんて打たねえよ!」
「問答無用だ。連れて行け!」
「おい、役人ども。私の飲み仲間に、その気色悪い〝兵器〟とやらを作らせる気か?」
​テラが役人の前に立ち塞がる。
「何だ貴様は!あの勇者のような格好のマネをしおって。貴様に何ができる!」
「あぁ?私ができるのは、この〝折れたゴミ〟をあんたらの眉間に叩き込むことだけだ!」
​テラは折れた剣の柄を握りしめた。
「テラ、返品は受け付けねえが、その〝折れたゴミ〟の活用法を教えてやるよ!」
ゴブニュはニヤリと笑い、クレーネが持っていた冷却材を柄の断面にぶっかけた。
『冷たっ!!』と​ガイアセイバーが悲鳴を上げる。
「ガイアセイバーの鞘に、その折れた刃の破片を全部ぶち込め。クレーネの特殊な細工で固定すれば、鞘が即席の〝大砲〟になる」
「は……?」
「剣として振るから折れるんだ。折れた先から爆発させて、弾丸として撃ち込め。……お前みたいな破天荒にピッタリの武器だ!」
「分かった!ガイア、おやつだ、食いやがれ!」
『は!?待て、私は聖剣だぞ、ゴミなんて――うごっ!?』
​テラは折れた剣の破片をガイアセイバーの鞘に無理やり押し込む。
クレーネが手際よく魔法銀の糸を鞘に巻き付け、最後に小さな六角形の瑠璃色の飾りをガイアセイバーの柄の端にカチリと嵌め込んだ。
「おい、クレーネ。そのチャラチャラした飾りはなんだ?」
​テラが不思議そうに覗き込むと、クレーネは少し頬を赤らめながら、真剣な眼差しでその飾りを指で触れた。
「これは……ただの飾りじゃありません。剣は時々、作った本人の制御すら超えて暴走しちゃうことがあるんです。でも、この刻印が触れていれば、その動きを静止させる……そんな願いを込めて打ち出した、私なりの〝おまじない〟なんです」
「ふ~ん、おまじないか。まあ、お前が言うなら付けておいてやるよ」
クレーネが飾りにロックをかける。
「行くぜ、ガイア!剣じゃねえ、今日は〝大砲〟として働いてもらうぜ!」
​テラがガイアセイバーを鞘に納めると、鞘の中に押し込められた「折れた剣の破片」が、ガイアセイバーが放つ膨大な神聖魔力によって強引に圧縮され、臨界点に達する。
「喰らいやがれ!!!」
クレーネの飾りによって制御された鞘を〝銃身〟のように使い、ガイアセイバーを〝撃鉄〟のように勢いよく引き抜いた。
――ドォォォォォォン!!
​鞘の先端から〝弾丸〟となった破片と共に巨大な光の刃が噴き出す。それは剣ではなく、純粋な破壊エネルギーの放出。
テラがガイアセイバーを鞘から抜刀するたびに、魔導兵器の装甲が熱線で焼き切られ、爆発する。
「あははは!見ろよ、折れた方が強えじゃねえか!!」
『おいおい、私の扱いがどんどん雑になってないか!?』
​一振りごとに爆発し、折れた破片を弾丸として撒き散らす破天荒な戦い。特務部隊は一瞬で壊滅した。
※※※
​部隊を蹴散らした後、クレーネは安心したのか、その場にヘナヘナと座り込んでいた。ゴブニュは荷物をまとめ始める。
「テラ、助かった。政府はまたすぐ来る。……俺たちは、中立地帯の闇市場に拠点を移すことにした。あそこなら、材料も実験体も事欠かねえからな」
「へっ、逃げんのか?」
「バカ言え。そのガイアセイバーさえも凌駕するような……〝神の力〟を宿した唯一の武器を、クレーネと一緒に仕上げてやるよ」
​クレーネは少し強まった目付きで、テラの手を握った。
「テラさん。次は……ガイアセイバーさんにも負けない、最高の剣を作っておきます!」
『ほう、そいつは楽しみだ』
​ガイアセイバーが愉快そうに鳴動する。
「……期待しないで待ってるぜ」
​テラとセレネが去った後、ゴブニュとクレーネもどこかへ姿を消した。
クレーネがテラの剣に託した、瑠璃色の輝きが届かぬほど遠い場所へ……。
彼らが打とうとしているのは、単なる剣ではない。神をも驚かせる〝何か〟。
その設計図が完成するまで、職人たちの戦いは遠い地で静かに続くのである。