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#17 「『運命』だと思っています」

ー/ー



 そう言えば、先程の僕の爆弾発言の時、彼女はどんな反応を示したのだろう。
 やらかしへの驚きと動揺、恥ずかしさにばかり気を取られて、肝心の相手のリアクションを見逃してしまっていた。


吉野仁香(です)。ええと──」


 出席番号の最後、彼女が立ち上がる。
 今回はどんな自己紹介をするのかと眺めていると──


「──ありがとうございます。私も本気で『運命』だと思っています」


 にっこりと、静かに、しかしはっきり堂々と。
 僕の方へ、視線と体を向けて。


 彼女はそう言った。


「………………………………………………………………え……?」


 ──静寂、再び。


「……えっ? 何だ今の……」
「なあ、今の聞いたか?」
「えっ、さっきの染井君の台詞の相手って……もしかして……」
「またドラマのワンシーンみたいなこと言ったぞ……」
「これもエイプリル・フールのネタか? 下らねー」
「ねえねえ、もしかして今の、さっきの愛の告白の返事だったり?」
「マジ? 公開告白? こんなことあるの? ヤバ……」
「入学当日に? それもこんな状況で?」
「ポエマー多過ぎだろ、この学校……」


 当然、クラスメイトたちは再び囁き出す。


 全く同じ台詞。
 当然、全員が先程の僕と結び付け、僕と吉野さんを交互に見比べる。


 驚き、呆気に取られる僕だったが、すぐにその意図を理解した。
 これは吉野さんなりの配慮なのだ、と。


 やらかした僕だけが恥ずかしい思いをしないように、同じ単語を使うことで自分も愚か者(フール)を演じて「共犯者」になろうとしているのだ。
 僕ら以外の誰の記憶にも残らない、全ては無かったことになると。彼女も理解しているからこそ。


 自己紹介が終わって解散が告げられ、全員が自由な時間を迎えた所で。


「なあちょっと、染井君……だったっけ?」
「さっきのアレは何だったんだ?」
「あの子……吉野さんとはどういう関係なんだ?」
「付き合ってたりするの? それともその申し込みだったのか?」


 角砂糖に群がる黒蟻のように、男子たちがドザッと僕の机へ押し寄せて完全包囲した。


 向こうでも、同じように吉野さんが女子たちに取り囲まれて質問攻めに遭う様子が、人の隙間から窺えた。
 入学初日から、早くも僕らは人気者だ。
 小学校でも中学校でも、こんな風にクラス中の興味と耳目を集めたことがあっただろうか。


「それは……だから……そ、そう! 明日! あ、明日きちんと話すよ。だから今日は勘弁してくれるかな?」


 我ながら素晴らしい回避策だと思った。
 何せ明日4月2日は訪れず、また今日4月1日が繰り返されるのだから。
 彼らは答を聞くどころか、何が起きたかさえも綺麗さっぱり忘れてしまう。


「それ嘘じゃあないよな? エイプリル・フールの嘘がOKなのは今日一日限り、明日以降に持ち越すような嘘はNGだぜ?」
「そんなつもりは無いよ。本当に明日話す。嘘だったら今度全員にお昼を奢るよ」
「おっ、言ったね? その言葉を忘れないように。明日を楽しみにしてるよ」


 僕の強気な発言に納得したようで、クラスメイトたちは引潮の如く去っていった。


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みんなのリアクション



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 そう言えば、先程の僕の爆弾発言の時、彼女はどんな反応を示したのだろう。
 やらかしへの驚きと動揺、恥ずかしさにばかり気を取られて、肝心の相手のリアクションを見逃してしまっていた。
「|吉野仁香《です》。ええと──」
 出席番号の最後、彼女が立ち上がる。
 今回はどんな自己紹介をするのかと眺めていると──
「──ありがとうございます。私も本気で『運命』だと思っています」
 にっこりと、静かに、しかしはっきり堂々と。
 僕の方へ、視線と体を向けて。
 彼女はそう言った。
「………………………………………………………………え……?」
 ──静寂、再び。
「……えっ? 何だ今の……」
「なあ、今の聞いたか?」
「えっ、さっきの染井君の台詞の相手って……もしかして……」
「またドラマのワンシーンみたいなこと言ったぞ……」
「これもエイプリル・フールのネタか? 下らねー」
「ねえねえ、もしかして今の、さっきの愛の告白の返事だったり?」
「マジ? 公開告白? こんなことあるの? ヤバ……」
「入学当日に? それもこんな状況で?」
「ポエマー多過ぎだろ、この学校……」
 当然、クラスメイトたちは再び囁き出す。
 全く同じ台詞。
 当然、全員が先程の僕と結び付け、僕と吉野さんを交互に見比べる。
 驚き、呆気に取られる僕だったが、すぐにその意図を理解した。
 これは吉野さんなりの配慮なのだ、と。
 やらかした僕だけが恥ずかしい思いをしないように、同じ単語を使うことで自分も|愚か者《フール》を演じて「共犯者」になろうとしているのだ。
 僕ら以外の誰の記憶にも残らない、全ては無かったことになると。彼女も理解しているからこそ。
 自己紹介が終わって解散が告げられ、全員が自由な時間を迎えた所で。
「なあちょっと、染井君……だったっけ?」
「さっきのアレは何だったんだ?」
「あの子……吉野さんとはどういう関係なんだ?」
「付き合ってたりするの? それともその申し込みだったのか?」
 角砂糖に群がる黒蟻のように、男子たちがドザッと僕の机へ押し寄せて完全包囲した。
 向こうでも、同じように吉野さんが女子たちに取り囲まれて質問攻めに遭う様子が、人の隙間から窺えた。
 入学初日から、早くも僕らは人気者だ。
 小学校でも中学校でも、こんな風にクラス中の興味と耳目を集めたことがあっただろうか。
「それは……だから……そ、そう! 明日! あ、明日きちんと話すよ。だから今日は勘弁してくれるかな?」
 我ながら素晴らしい回避策だと思った。
 何せ明日4月2日は訪れず、また今日4月1日が繰り返されるのだから。
 彼らは答を聞くどころか、何が起きたかさえも綺麗さっぱり忘れてしまう。
「それ嘘じゃあないよな? エイプリル・フールの嘘がOKなのは今日一日限り、明日以降に持ち越すような嘘はNGだぜ?」
「そんなつもりは無いよ。本当に明日話す。嘘だったら今度全員にお昼を奢るよ」
「おっ、言ったね? その言葉を忘れないように。明日を楽しみにしてるよ」
 僕の強気な発言に納得したようで、クラスメイトたちは引潮の如く去っていった。