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45.再会を望み、戦いに備えゆ

ー/ー



 大陸から隔離された場所で過ごした時間は、ゼン達の疲れを癒すとともに、これから歩む道への覚悟を定める時間となった。

「アダル……これから先、私の新生魔族達は地上にいるすべての者達を食らうため動き出すことになる……勇者であろうとなかろうと、関係なく……」
「それが運命(さだめ)ならば仕方ない……私もゼンと行動を共にする人間、こちらとて容赦はしない」
「なんと潔い……さすが私が見初めた男だ……それでも……あなたに万が一があれば……」

 ギュッと力強くアダルヘルムに抱きつくグリゼルダ。続ける言葉が出てこない様子を見て、アデル王子が口を開いた。

「その時は、僕が参ります……父も母も、守ります」
「ありがとうアデル……だが、自分の命を落とすような無謀なことは、絶対にするんじゃないぞ」
「っ……はい、父様」

 最後に3人で抱き合い、グリゼルダとアデル王子は魔界へと戻っていった。

「アダルくんは悪い男だネ〜」
「女の扱いに慣れすぎて、俺でも怖くなってきたわ」
「あら……そんなこと言って、こうなっていなければ無駄に魔族と戦争をして、アダルの子を亡き者にする事になっていたかもしれないのよ?良いことじゃない」
「クロエ嬢まで……失礼かつ物騒な話をするんじゃない、まったく」
「あにぃ、たじたじ……家族サービスも、大変、ね」

 ミウにもお見通しと言わんばかりの言葉を投げられ、少しへこむアダルヘルム。とはいえ、人数が減っても変わらない騒がしさに、少しだけホッとしていた。
 気を取り直し、旅の続きをするための手荷物の確認をする。最後に手にしたのは地図。

「……この地図に載っている範囲だけが我々の世界か……改めて見ると、少しばかりやるせない気持ちにはなるものだな」
「やめても、構わねぇぞ」
「ふっ……なにを今更そんな事を。さぁ、ゼン……次はなにを『破壊』する?」

 前回の旅を辿る旅の続きをやめるわけではない。時を戻しながら進む旅……『破壊』の為に、進む旅だ。

「お前は、言うな」
「っ……すまない、そんなつもりじゃ……」

 ドンッと強く胸を殴られ、『破壊』が失言であったことに気付き謝る。アダルヘルムとしては、共感し共通し、同じ道をゆくことを示したつもりだったのだが……ゼンにとっては違ったようだ。

「気にしないでいいのよ、アダル……さ、行きましょう」
「ゼンの嫌いな魔法で移動ダヨ!」
「ミウも、これ……嫌い」

 4人を包む法陣。ファインはその中にいない。

「ファイン殿?」
「も〜アダルくん〜〜?忘れないでヨ?」
「まずは表の仕事ですよ、アダル」

 ポンッと手を合わせ、思い出し、ファインに一礼して転移していった。続いてファインも移動しようとした。

「あ」

 サラサラと海に溶けていく【離島アインザーメ】。

「帰る場所はここではないけれど……最後の思い出も消してしまうんだ?ゼン、君ってほんとに……」

 島の姿が消えるまで見守り、ファインはクスリと笑ってその場から消え去った。この海域にあった島が消えてなくなったことを知っているのは、ゼンとファインだけ。さして、重要なことではない……そこで過ごした時間は、記憶には確実に刻まれ、そこにあったのだから。


 ドンッ!ドドンッ――……

 小さな町には溢れんばかりの人に囲まれ、見たことのない機械が広場に並ぶ。

「ギリギリだった〜〜……」

 相当急いでくれたのだろう、ファインの息はあがっていた。だらしなく、大の字で地面に転がった。

「そうみてぇだな」

 アダマンタイト鉱山のある方角の空を見上げるゼン。遠くに、うっすらと白い煙のようなものが上がっているのがわずかに見える。

「ここからはギルドの仕事だな、ファイン殿、ありがとう」
「運び終わったら教えてくださいね、アダル。点検をしていきますので」
「ミウは危ないから、ゼンと一緒に【奏鉄堂(そうてつどう)】で待っていてくれ」
「ん、あにぃ……頑張って」

 物珍しさで騒がしかった広場の雰囲気が変わっていく。声を掛け合い、各工房へ加工用の機械を運び始める。事前に通達があった事もあり、ギルド所属の者たちだけでなく、町民たちも協力してくれていた。

「そこも邪魔になるだろ、行くぞ」

 ゼンはファインの首根っこを掴み、引きずって広場から移動していく。ミウはその後ろを歩き、ニマニマとファインの顔を見る。

「なんだよ〜おチビ……」
「ふっ……あくま、ぶざま」
「そこはゼンの為に働いたボクをいたわるってもんじゃないのぉ〜?」
「あれくらいで、ヘタってる……あくま、ださい」
「いくら嫌いな魔法で移動したのがヤダかったからって!そこまで言うことないジャン!」

 ぎゃあぎゃあとうるさい背中……ため息だけつきながら町の中心部から少し離れた建物を目指す。
 そこは、石のレンガで作られた素朴で小さな工房。扉のうえにぶら下がっている木の看板は、なぜか片方だけ外れ、キィキィと……耳障りな音を風に揺れるたびに響かせていた。

「職人のくせに直さねぇのか?」
「職人だから偏屈なんじゃナイ?」

 ファインは服についた土を落とし、ゼンとミウと並んで入店する。扉をくぐる際、微量の魔力がピリリと肌に触れた。

「不審者ぁ!!!!」
「うお?!」

 ファインが伝える前に、何十本もの刃が襲いかかる。ゼンは思わず腕で振り払いながら、目の前に迫った刃を粉々に『破壊』し、残骸が床に散らばった。

「わぁぁあ?!僕の傑作たちがぁ!!!」
「ミウ」
「ん」

 ミウは素早く店の奥へ飛び込み、声の主の首を絞め、銃を突きつけながらゼンの前に引っ張り出した。

「クソぉ!この!僕の大事な子供たちをこんなにしてぇ!!」
「うるさい、だまって」
「ミウの言うとおりだ、んな喚くなら投げんじゃねぇよ」
「あ〜!これアダマンタイトの破片じゃない?もったいなぁ〜い」

 ファインが拾い上げた小さな1枚……刃の色と、破片だけでも分かる磨かれ、鍛え抜かれた鋭い刃の部分を見れば、傑作と言っているのは間違いないのが分かるほど、美しいものだった。

「え、え、え、え?!というかこれはなに?!このこれ!君のこれ!!」
「え……あっ、やっ!」

 後ろを取っていたにも関わらず、物凄い力と素早さでミウを床に押し倒し、鼻息も、吐く息も荒く、目まで血走らせてミウの眼前に迫った。

「教えて!ねぇ!この美しい形状、精巧な細工に……フンスフンス……これは?なんの匂いだろう?爆薬と同じ?こんな小さな筒から?ねぇ!ねぇ!君のようなしょグホッ!!」
「離れろ、ど変態が」

 わき腹をゼンに強く蹴り上げられ、ぶっ飛ばされた青年。腹を抱えてうずくまって苦しそうな声を上げながら転がり続けている。
 ミウは半べそを描きながら起き上がると、ファインとゼンの後ろに回り、ふたりのズボンの裾をギュッと握り、青年を睨みつける。

「お前アダルヘルムの息子のクセして節操ってもんがねぇのかコイツは」
「まぁ、ある意味節操ないところを継いだのかもだけどネ〜はははは……アダルくんの子じゃなかったら……殺してるヨ?君」
「あにぃに、言いつける……」

 今まで、殴られたこともなかったのだろう、初めて受けた人からの暴力の痛みで、意識が薄れかけている青年。不審者と思っていた人物から、父の名が出たことで、自分に非があったと気付き、声をかけたのだが……、

「パパの……うっ……」
「あ、気絶しちゃった」
「弱すぎだろ、俺の蹴りごときで」
「どする、ゼン……あにぃきたら、怒られるやつ」
「めんどくせぇ」

 青年を囲み、仕事を終えて、ここ、【奏鉄堂(そうてつどう)】に集まるまでに……青年の意識が戻るのを、願う。


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次のエピソードへ進む 46.無機質の熱は、心を冷ます


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「アダル……これから先、私の新生魔族達は地上にいるすべての者達を食らうため動き出すことになる……勇者であろうとなかろうと、関係なく……」
「それが|運命《さだめ》ならば仕方ない……私もゼンと行動を共にする人間、こちらとて容赦はしない」
「なんと潔い……さすが私が見初めた男だ……それでも……あなたに万が一があれば……」
 ギュッと力強くアダルヘルムに抱きつくグリゼルダ。続ける言葉が出てこない様子を見て、アデル王子が口を開いた。
「その時は、僕が参ります……父も母も、守ります」
「ありがとうアデル……だが、自分の命を落とすような無謀なことは、絶対にするんじゃないぞ」
「っ……はい、父様」
 最後に3人で抱き合い、グリゼルダとアデル王子は魔界へと戻っていった。
「アダルくんは悪い男だネ〜」
「女の扱いに慣れすぎて、俺でも怖くなってきたわ」
「あら……そんなこと言って、こうなっていなければ無駄に魔族と戦争をして、アダルの子を亡き者にする事になっていたかもしれないのよ?良いことじゃない」
「クロエ嬢まで……失礼かつ物騒な話をするんじゃない、まったく」
「あにぃ、たじたじ……家族サービスも、大変、ね」
 ミウにもお見通しと言わんばかりの言葉を投げられ、少しへこむアダルヘルム。とはいえ、人数が減っても変わらない騒がしさに、少しだけホッとしていた。
 気を取り直し、旅の続きをするための手荷物の確認をする。最後に手にしたのは地図。
「……この地図に載っている範囲だけが我々の世界か……改めて見ると、少しばかりやるせない気持ちにはなるものだな」
「やめても、構わねぇぞ」
「ふっ……なにを今更そんな事を。さぁ、ゼン……次はなにを『破壊』する?」
 前回の旅を辿る旅の続きをやめるわけではない。時を戻しながら進む旅……『破壊』の為に、進む旅だ。
「お前は、言うな」
「っ……すまない、そんなつもりじゃ……」
 ドンッと強く胸を殴られ、『破壊』が失言であったことに気付き謝る。アダルヘルムとしては、共感し共通し、同じ道をゆくことを示したつもりだったのだが……ゼンにとっては違ったようだ。
「気にしないでいいのよ、アダル……さ、行きましょう」
「ゼンの嫌いな魔法で移動ダヨ!」
「ミウも、これ……嫌い」
 4人を包む法陣。ファインはその中にいない。
「ファイン殿?」
「も〜アダルくん〜〜?忘れないでヨ?」
「まずは表の仕事ですよ、アダル」
 ポンッと手を合わせ、思い出し、ファインに一礼して転移していった。続いてファインも移動しようとした。
「あ」
 サラサラと海に溶けていく【離島アインザーメ】。
「帰る場所はここではないけれど……最後の思い出も消してしまうんだ?ゼン、君ってほんとに……」
 島の姿が消えるまで見守り、ファインはクスリと笑ってその場から消え去った。この海域にあった島が消えてなくなったことを知っているのは、ゼンとファインだけ。さして、重要なことではない……そこで過ごした時間は、記憶には確実に刻まれ、そこにあったのだから。
 ドンッ!ドドンッ――……
 小さな町には溢れんばかりの人に囲まれ、見たことのない機械が広場に並ぶ。
「ギリギリだった〜〜……」
 相当急いでくれたのだろう、ファインの息はあがっていた。だらしなく、大の字で地面に転がった。
「そうみてぇだな」
 アダマンタイト鉱山のある方角の空を見上げるゼン。遠くに、うっすらと白い煙のようなものが上がっているのがわずかに見える。
「ここからはギルドの仕事だな、ファイン殿、ありがとう」
「運び終わったら教えてくださいね、アダル。点検をしていきますので」
「ミウは危ないから、ゼンと一緒に【|奏鉄堂《そうてつどう》】で待っていてくれ」
「ん、あにぃ……頑張って」
 物珍しさで騒がしかった広場の雰囲気が変わっていく。声を掛け合い、各工房へ加工用の機械を運び始める。事前に通達があった事もあり、ギルド所属の者たちだけでなく、町民たちも協力してくれていた。
「そこも邪魔になるだろ、行くぞ」
 ゼンはファインの首根っこを掴み、引きずって広場から移動していく。ミウはその後ろを歩き、ニマニマとファインの顔を見る。
「なんだよ〜おチビ……」
「ふっ……あくま、ぶざま」
「そこはゼンの為に働いたボクをいたわるってもんじゃないのぉ〜?」
「あれくらいで、ヘタってる……あくま、ださい」
「いくら嫌いな魔法で移動したのがヤダかったからって!そこまで言うことないジャン!」
 ぎゃあぎゃあとうるさい背中……ため息だけつきながら町の中心部から少し離れた建物を目指す。
 そこは、石のレンガで作られた素朴で小さな工房。扉のうえにぶら下がっている木の看板は、なぜか片方だけ外れ、キィキィと……耳障りな音を風に揺れるたびに響かせていた。
「職人のくせに直さねぇのか?」
「職人だから偏屈なんじゃナイ?」
 ファインは服についた土を落とし、ゼンとミウと並んで入店する。扉をくぐる際、微量の魔力がピリリと肌に触れた。
「不審者ぁ!!!!」
「うお?!」
 ファインが伝える前に、何十本もの刃が襲いかかる。ゼンは思わず腕で振り払いながら、目の前に迫った刃を粉々に『破壊』し、残骸が床に散らばった。
「わぁぁあ?!僕の傑作たちがぁ!!!」
「ミウ」
「ん」
 ミウは素早く店の奥へ飛び込み、声の主の首を絞め、銃を突きつけながらゼンの前に引っ張り出した。
「クソぉ!この!僕の大事な子供たちをこんなにしてぇ!!」
「うるさい、だまって」
「ミウの言うとおりだ、んな喚くなら投げんじゃねぇよ」
「あ〜!これアダマンタイトの破片じゃない?もったいなぁ〜い」
 ファインが拾い上げた小さな1枚……刃の色と、破片だけでも分かる磨かれ、鍛え抜かれた鋭い刃の部分を見れば、傑作と言っているのは間違いないのが分かるほど、美しいものだった。
「え、え、え、え?!というかこれはなに?!このこれ!君のこれ!!」
「え……あっ、やっ!」
 後ろを取っていたにも関わらず、物凄い力と素早さでミウを床に押し倒し、鼻息も、吐く息も荒く、目まで血走らせてミウの眼前に迫った。
「教えて!ねぇ!この美しい形状、精巧な細工に……フンスフンス……これは?なんの匂いだろう?爆薬と同じ?こんな小さな筒から?ねぇ!ねぇ!君のようなしょグホッ!!」
「離れろ、ど変態が」
 わき腹をゼンに強く蹴り上げられ、ぶっ飛ばされた青年。腹を抱えてうずくまって苦しそうな声を上げながら転がり続けている。
 ミウは半べそを描きながら起き上がると、ファインとゼンの後ろに回り、ふたりのズボンの裾をギュッと握り、青年を睨みつける。
「お前アダルヘルムの息子のクセして節操ってもんがねぇのかコイツは」
「まぁ、ある意味節操ないところを継いだのかもだけどネ〜はははは……アダルくんの子じゃなかったら……殺してるヨ?君」
「あにぃに、言いつける……」
 今まで、殴られたこともなかったのだろう、初めて受けた人からの暴力の痛みで、意識が薄れかけている青年。不審者と思っていた人物から、父の名が出たことで、自分に非があったと気付き、声をかけたのだが……、
「パパの……うっ……」
「あ、気絶しちゃった」
「弱すぎだろ、俺の蹴りごときで」
「どする、ゼン……あにぃきたら、怒られるやつ」
「めんどくせぇ」
 青年を囲み、仕事を終えて、ここ、【|奏鉄堂《そうてつどう》】に集まるまでに……青年の意識が戻るのを、願う。