22 イケメンが怨霊になった日

ー/ー



 イケメン達からしっかりお清めしてもらったミチルだったが、その元凶が意外にもすぐにまた現れた。
 アーテル帝国皇帝・金髪ソフモヒ・シャントリエリ。
 彼はミチルを自分の妃にし、毎日三回以上の♡♡♡を目的としている。
 そんなキモチガワルイ皇帝は、ハンサムで冷酷な笑顔をミチルに向けていた。

「プルケリマよ、余から逃げられると思っていたのか? 愚かで可愛いこと……」

「ヒイィイ!」

 ミチルは立ちはだかってくれたチルクサンダーの背中に隠れる。
 もうアイツの顔は見たくないし、見られたくもない。

「クソ皇帝よ。オマエには二度とミチルを見せぬ」

 チルクサンダーの表情は、皇帝よりも更に冷たい。
 イケメン達に向けた挑戦的な態度とは違い、皇帝には最大の怒りを向けているように見えた。



「あれが、テン・イー……」

 ミチル達から少し離れてしまっているイケメン達の輪の中で、アニーは皇帝以外の人物に着目していた。
 自分の両親を殺し恩人を裏切った、仇の姿をようやく掴んだのである。

「アニー殿。気持ちはわかるが、今は堪えてくれないか」

 その固く握った拳を上から握って、ジェイが言う。アニーは他でもないジェイにそう言われて、顔を強張らせたまま頷いた。

「……わかってる。今は俺の事よりも、ミチルだ」

 ミチルの怯え方は尋常ではない。皇帝に対峙するチルクサンダーは恐ろしく頑なで、イケメン達が知らない所でとんでもない事があったのだろうと推察された。



「さあ、プルケリマよ。余とともに来い」

「行くかぁ! バーカ!!」

 チルクサンダーの後ろで叫ぶミチルの言葉は力強いが、その発声が震えている。
 ミチルは必死の思いで恐怖と闘っていると、イケメン達の全員が悟った。

「そうか、閨での振る舞いを気にしているのか? ふふふ、余はそんなに心の狭い男ではない」



 ()()()()()()()……!?

 その言葉にイケメン達の胸がザワリと騒ぐ。



「ふざけんなァ! オメェがあんな事するから、オレの股間が蒼く光ったんじゃい!」

 ミチルはそれでも勇敢に叫んでいた。
 シャントリエリはそれを意にも介さず笑っていた。



 ()()()()()()()()()()()……!?

 イケメン達の頭にショッキングな雷がバリバリッと走った。



「ああ……プルケリマよ、案ずるな。余は全て許す、それほどにお前が愛しい。余の腕の中で鳴いた可憐な声、余の指に吸いつくような柔らかな肌、お前の()を余はもう忘れられぬのだ……」

 皇帝シャントリエリは叙情詩を謳うように、朗々とセクハラを吐く。



 ()ってドコの!?
 それとも、ソコから出た()のコト!?

 イケメン達のセクハラ思考が突き抜けるッ!!
(※シャントリエリはミチルの顔中にキッスしまくったので、おそらくほっぺの汗かと思われます。この時点でも変態ですね)



 どんより、どよどよ、どよよよーん
 
 ものすごく不吉な精神的周波数による音が響いた。
 それとともに、再びペルスピコーズの上空に黒雲が。



「クソ皇帝……その下品な口を閉じろ」

 ミチルを背に隠しているため、チルクサンダーは忌々しげに呟くだけで動けない。
 当のミチルも耳が腐りそうなセクハラに、目をぎゅっと閉じて震え上がっている。

 それではお待たせしました。
 思いっきり暴れられる五人の登場です。



 ばおおおおーん!!

 怨嗟の黒い炎を撒き散らし、五つの()()()()()()()()影が天高く伸びた。



『ミチルの♡間を触ったのは、おーまーえーかーぁああ……』
『シウレンの♡を××て泣ーかーせーたーだーとーぉおお……』
『おれを超える回数だったのかーぁあーあぁーぁあー……』
『ソコをペロペロするのはぼーくーだーぁああ……』
『むーむーむーむーぅううう……(言語化不可能)』

 地を割り空を裂く、戦慄の叫び声が木霊する!
 イケメン達は怨霊に成り果ててしまった。どうしよう、陰陽師がいない。



「落ち着け、バカ共」

 陰陽師はいた。チルクサンダーの明朗とした祝詞が響く。

「ミチルは汚されてなどいない。お前達の愛情(怨念)が結界となってミチルを守ったのだ」

『え……マジ……?』

 五つの黒い影は急激に縮んでいった。

「真実だ。蒼く光った、とはその結界のこと」

『オレタチガ……ミチル、マモッタ……』

 怨霊は祓われ、黒い影は再び人の形を取り戻す。
 黒雲も緩やかに晴れていった。



「なんだこの茶番は。カリシムス共の奇術ショーか?」

 さすがの皇帝は、五人が人外となりまた人に戻る奇天烈展開に怖気付くことはなく。
 そのそばに侍るテン・イーも、全てを悟るような顔でスンとなっていた。

「陛下、当代のプルケリマとカリシムスは稀代のアホなのです……」

「ふっ、そうか」



 テメエ、コノォ!
 バカにしたなァ!!

 ……と揃って叫んだイケメン達に、シャントリエリは余裕の笑みを返す。

「稀代の、とは結構ではないか。流石、余の妃だ。プルケリマ……必ず連れて帰る」



「許さない!」

 ミチルに向かって皇帝が半歩踏み出した時、ジェイの怒号が響き渡った。
 蒼く輝く大剣を抜き、チルクサンダーとミチルを背にして立ちはだかる。

「ミチルの名すら呼ばないキサマに、私の愛は渡さないッ!」

 蒼き戦士(カエルラ・ベラトール)の気迫が、皇帝に襲いかかった。
 だが、やはり国を統べる者は騎士程度の言葉には耳を貸さなかった。

「ミチル、か。プルケリマの名だったな。そんな陳腐な名は捨てさせよう」

「なっ……!」

「そうだな……フリチラリア、と言うのはどうだ? 『天上の愛』という意味だ」

 皇帝のあまりの傲慢な振る舞いに、続けて怒ったのは毒舌師範。

「ふざけるなァ! シウレンの名前を勝手に変えるなど、人格無視ではないか! なんという非道!」

 そんな彼の怒りはもちろん理解されない。

「オメーが言うなよ」

 エリオットはセプターを出しつつ呆れていた。

「フリッ、フリチ……! 舌噛みそう、却下!!」

 アニーもナイフを取り出して続いた。


 
「おい、お前達」

 血気に逸った目の前のライバル達に、チルクサンダーは後ろから声をかけた。

「我はミチルに皇帝の姿を見せぬようにするだけで手一杯だ。やれるな?」

「チルクサンダー……」

 ミチルはその頼れる背中のマントを掴む。
 すると彼は振り向いて微笑んだ。

「しばし目を閉じていろ。すぐ終わる」

「……ほわぁ♡」

 超絶鉄壁イケメンが眩しすぎます!



「……当たり前だ」

 ジェイは大剣を構えて目の前の敵を睨む。

「いけるか、ルーク!?」

 ジンの掛け声に、出遅れていたと思われたルークが高らかに吠える。

 ワオーン……!

 ルークは蒼い犬に姿を変え、颯爽と走り、ジェイの足元を陣取った。

「ガウゥゥ……」

「へえ、やるじゃねえか」

 それを見たエリオットは、気合いを入れてセプターを構えた。



「陛下、お下がりください……」

「うむ」

 しかし、シャントリエリはすぐに数歩下がり、代わりのテン・イーがイケメン達と対峙する。

「よもや、(ワタクシ)を倒さずして陛下に向かえるとは思うまい……?」

 その暗く邪悪な笑みに、アニーは身震いして笑った。



「ヤッベエ……合法的にヤレるんじゃない?」

 アニーのナイフが蒼く輝いていた。



「みんな……」

 ミチルはイケメン達の姿をチルクサンダー越しに見守る。
 
 オレは、何も出来ないんだろうか?
 みんなはオレのために命をかけるのに。



 乾いた風がどこからか。
 決戦の合図のように、高らかに吹いた。


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 イケメン達からしっかりお清めしてもらったミチルだったが、その元凶が意外にもすぐにまた現れた。
 アーテル帝国皇帝・金髪ソフモヒ・シャントリエリ。
 彼はミチルを自分の妃にし、毎日三回以上の♡♡♡を目的としている。
 そんなキモチガワルイ皇帝は、ハンサムで冷酷な笑顔をミチルに向けていた。
「プルケリマよ、余から逃げられると思っていたのか? 愚かで可愛いこと……」
「ヒイィイ!」
 ミチルは立ちはだかってくれたチルクサンダーの背中に隠れる。
 もうアイツの顔は見たくないし、見られたくもない。
「クソ皇帝よ。オマエには二度とミチルを見せぬ」
 チルクサンダーの表情は、皇帝よりも更に冷たい。
 イケメン達に向けた挑戦的な態度とは違い、皇帝には最大の怒りを向けているように見えた。
「あれが、テン・イー……」
 ミチル達から少し離れてしまっているイケメン達の輪の中で、アニーは皇帝以外の人物に着目していた。
 自分の両親を殺し恩人を裏切った、仇の姿をようやく掴んだのである。
「アニー殿。気持ちはわかるが、今は堪えてくれないか」
 その固く握った拳を上から握って、ジェイが言う。アニーは他でもないジェイにそう言われて、顔を強張らせたまま頷いた。
「……わかってる。今は俺の事よりも、ミチルだ」
 ミチルの怯え方は尋常ではない。皇帝に対峙するチルクサンダーは恐ろしく頑なで、イケメン達が知らない所でとんでもない事があったのだろうと推察された。
「さあ、プルケリマよ。余とともに来い」
「行くかぁ! バーカ!!」
 チルクサンダーの後ろで叫ぶミチルの言葉は力強いが、その発声が震えている。
 ミチルは必死の思いで恐怖と闘っていると、イケメン達の全員が悟った。
「そうか、閨での振る舞いを気にしているのか? ふふふ、余はそんなに心の狭い男ではない」
 |閨《・》|で《・》|の《・》|振《・》|る《・》|舞《・》|い《・》……!?
 その言葉にイケメン達の胸がザワリと騒ぐ。
「ふざけんなァ! オメェがあんな事するから、オレの股間が蒼く光ったんじゃい!」
 ミチルはそれでも勇敢に叫んでいた。
 シャントリエリはそれを意にも介さず笑っていた。
 |あ《・》|ん《・》|な《・》|事《・》|す《・》|る《・》|か《・》|ら《・》|股《・》|間《・》|が《・》……!?
 イケメン達の頭にショッキングな雷がバリバリッと走った。
「ああ……プルケリマよ、案ずるな。余は全て許す、それほどにお前が愛しい。余の腕の中で鳴いた可憐な声、余の指に吸いつくような柔らかな肌、お前の|味《・》を余はもう忘れられぬのだ……」
 皇帝シャントリエリは叙情詩を謳うように、朗々とセクハラを吐く。
 |味《・》ってドコの!?
 それとも、ソコから出た|味《・》のコト!?
 イケメン達のセクハラ思考が突き抜けるッ!!
(※シャントリエリはミチルの顔中にキッスしまくったので、おそらくほっぺの汗かと思われます。この時点でも変態ですね)
 どんより、どよどよ、どよよよーん
 ものすごく不吉な精神的周波数による音が響いた。
 それとともに、再びペルスピコーズの上空に黒雲が。
「クソ皇帝……その下品な口を閉じろ」
 ミチルを背に隠しているため、チルクサンダーは忌々しげに呟くだけで動けない。
 当のミチルも耳が腐りそうなセクハラに、目をぎゅっと閉じて震え上がっている。
 それではお待たせしました。
 思いっきり暴れられる五人の登場です。
 ばおおおおーん!!
 怨嗟の黒い炎を撒き散らし、五つの|カ《・》|リ《・》|シ《・》|ム《・》|ス《・》|だ《・》|っ《・》|た《・》影が天高く伸びた。
『ミチルの♡間を触ったのは、おーまーえーかーぁああ……』
『シウレンの♡を××て泣ーかーせーたーだーとーぉおお……』
『おれを超える回数だったのかーぁあーあぁーぁあー……』
『ソコをペロペロするのはぼーくーだーぁああ……』
『むーむーむーむーぅううう……(言語化不可能)』
 地を割り空を裂く、戦慄の叫び声が木霊する!
 イケメン達は怨霊に成り果ててしまった。どうしよう、陰陽師がいない。
「落ち着け、バカ共」
 陰陽師はいた。チルクサンダーの明朗とした祝詞が響く。
「ミチルは汚されてなどいない。お前達の|愛情《怨念》が結界となってミチルを守ったのだ」
『え……マジ……?』
 五つの黒い影は急激に縮んでいった。
「真実だ。蒼く光った、とはその結界のこと」
『オレタチガ……ミチル、マモッタ……』
 怨霊は祓われ、黒い影は再び人の形を取り戻す。
 黒雲も緩やかに晴れていった。
「なんだこの茶番は。カリシムス共の奇術ショーか?」
 さすがの皇帝は、五人が人外となりまた人に戻る奇天烈展開に怖気付くことはなく。
 そのそばに侍るテン・イーも、全てを悟るような顔でスンとなっていた。
「陛下、当代のプルケリマとカリシムスは稀代のアホなのです……」
「ふっ、そうか」
 テメエ、コノォ!
 バカにしたなァ!!
 ……と揃って叫んだイケメン達に、シャントリエリは余裕の笑みを返す。
「稀代の、とは結構ではないか。流石、余の妃だ。プルケリマ……必ず連れて帰る」
「許さない!」
 ミチルに向かって皇帝が半歩踏み出した時、ジェイの怒号が響き渡った。
 蒼く輝く大剣を抜き、チルクサンダーとミチルを背にして立ちはだかる。
「ミチルの名すら呼ばないキサマに、私の愛は渡さないッ!」
 |蒼き戦士《カエルラ・ベラトール》の気迫が、皇帝に襲いかかった。
 だが、やはり国を統べる者は騎士程度の言葉には耳を貸さなかった。
「ミチル、か。プルケリマの名だったな。そんな陳腐な名は捨てさせよう」
「なっ……!」
「そうだな……フリチラリア、と言うのはどうだ? 『天上の愛』という意味だ」
 皇帝のあまりの傲慢な振る舞いに、続けて怒ったのは毒舌師範。
「ふざけるなァ! シウレンの名前を勝手に変えるなど、人格無視ではないか! なんという非道!」
 そんな彼の怒りはもちろん理解されない。
「オメーが言うなよ」
 エリオットはセプターを出しつつ呆れていた。
「フリッ、フリチ……! 舌噛みそう、却下!!」
 アニーもナイフを取り出して続いた。
「おい、お前達」
 血気に逸った目の前のライバル達に、チルクサンダーは後ろから声をかけた。
「我はミチルに皇帝の姿を見せぬようにするだけで手一杯だ。やれるな?」
「チルクサンダー……」
 ミチルはその頼れる背中のマントを掴む。
 すると彼は振り向いて微笑んだ。
「しばし目を閉じていろ。すぐ終わる」
「……ほわぁ♡」
 超絶鉄壁イケメンが眩しすぎます!
「……当たり前だ」
 ジェイは大剣を構えて目の前の敵を睨む。
「いけるか、ルーク!?」
 ジンの掛け声に、出遅れていたと思われたルークが高らかに吠える。
 ワオーン……!
 ルークは蒼い犬に姿を変え、颯爽と走り、ジェイの足元を陣取った。
「ガウゥゥ……」
「へえ、やるじゃねえか」
 それを見たエリオットは、気合いを入れてセプターを構えた。
「陛下、お下がりください……」
「うむ」
 しかし、シャントリエリはすぐに数歩下がり、代わりのテン・イーがイケメン達と対峙する。
「よもや、|私《ワタクシ》を倒さずして陛下に向かえるとは思うまい……?」
 その暗く邪悪な笑みに、アニーは身震いして笑った。
「ヤッベエ……合法的にヤレるんじゃない?」
 アニーのナイフが蒼く輝いていた。
「みんな……」
 ミチルはイケメン達の姿をチルクサンダー越しに見守る。
 オレは、何も出来ないんだろうか?
 みんなはオレのために命をかけるのに。
 乾いた風がどこからか。
 決戦の合図のように、高らかに吹いた。