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ep.72 再会

ー/ー



「お嬢様!」

「クラマ!」

 走り出し、互いを確かめるように抱きしめ合う二人。

「どこいってたの!? シャルル しんぱいしたんだよ!?」

「お、お嬢様!? その、随分と幼くなられたというか。えっと……」

 シャルちゃんの変わり様に少し面食らったクラマちゃんだが、そんなことは些細なことかもしれない。
 自分が慕っていた主人が、自分を探してこんな危険な場所まで遥々迎えに来てくれた。
 それだけで十分すぎた。
 そして、それはシャルちゃんも同じ。

 突然姿を消したのは何か理由があったのだろう。けど、そんなことはどうでもいい。
 連絡が取れないのであれば会って確認すればいいだけ。お互いの声が届く距離まで近づけばいいだけだ。
 だから、ここまで来た。
 もう会えないかもしれないとどこか思っていた二人は、離れていた時間を取り戻すかの如く、目蓋を潤ませながら暫くの間かみしめる様に抱擁を続けるのだった。

「えひひ、よかったね、シャルちゃん」

 もらい泣きをしたのか涙腺が緩み、少し涙があふれてきた。けど、これはうれし涙。だからいくら流しても大丈夫なんだ。
 人差し指でそれを拭いながら千寿流は心の底から二人の再会を祝う。
 もちろんあたしだけじゃない、少し離れたところから夜深ちゃんと来希ちゃんも腕を組んだまま優しそうな笑みで二人を眺めていた。

「そんなことがあったんですか!? お嬢様と千寿流ちゃんの身にそこまでっ! うぅ、私はなんてことをしてしまったのでしょうか。いえ、何もできなかった、というべきでしょうか」

 順を追ってこれまでの経緯をクラマに話す。

 三日月館で千寿流と出会ったこと。
 千寿流といっしょに星一朗という青年を交えて話し合ったこと。
 結九里でおいしいお寿司を食べて、千寿流の家族を交えて川の字になって眠ったこと。
 川崎で夜深と、そしてトレモロという病気に侵された少年と会ったこと。
 千寿流の服が奈落の底に消えてしまったこと。

 その他にも思い返せばいろいろあった。
 千寿流が意識を失っていた時のことは内緒だ。きっと千寿流もクラマも傷ついてしまうから。
 楽しいこともあったけど、その分辛いと思うこともあった。けれど、真っ直ぐクラマを探すことだけを考えてこれまでやってきたつもりだ。だから楽しさも辛さも、全部含めて無駄じゃないとそう思えた。
 もっと、話したいことがたくさんある。そうだ、クラマは結局その間何をしていたのだろうか。
 クラマも、もしかしたら自分たちと同じように辛い目に遭っていたのだろうか。だとしたら、早く見つけてあげられなくて悪いことをしたのかもしれない。

「あー、感動の再会と思い出話してるとこ悪いんだけど、とりあえずここから出ない? あたしも好き好んでこんな所にずっといたいわけじゃないんだよねー」

 そう言われて急に恥ずかしくなったのかクラマは顔をさらに赤らめた。
 シャルはしょうがないなーと少し不服そうだったが、いつまでもこんな場所にいるのも嫌なのは同感だったので素直に言うことに従うことにした。

「あ、お兄さん。さっきはごめんね。服とか燃えちゃわなかった?」

「燃えてたら額面以上に吹っ掛けて弁償してもらおうと思ったけど、生憎この通り、まったく汚れてないよ」

 来希の家計が銀学に通えるほど裕福だと読んだ夜深は、そう冗談を交えて軽く返した。身を守るためとはいえ、間違って人を殺しかけたのは事実であり、気に病んでいるのかもしれないと考えた、夜深なりの配慮だった。

「ひとまず、お礼言っておくね。あのうっとうしい魔獣(マインドイーター)の群れをやっつけてくれてありがと! お兄さん、もう少し若かったら好きになってたかも?」

 来希はそう言いながら夜深に向かってウインクをしながら投げキッスをする。その小馬鹿にしたような表情から本心でないことは明らかだった。
 年下の少女の少し色っぽい仕草に、恥じらうような面白い反応が見れると思っただけだろう。

「ああ、そういうのいいよ。君、タイプじゃないし。それに僕じゃないよ。とある人形師さんが助けてくれたんだよね」

 慈悲も何もなく一蹴する。
 夜深の棘のある返しに頬を膨らませている来希の横で、千寿流が小さく声を漏らす。

「え?」

 人形師。その言葉にどこか引っ掛かりを覚えた。
 そうだ、この旅の始まり。あの瀟洒な牢獄での目覚め。
 彼女も確か自分のことを人形師といっていた。

「夜深ちゃん。その人形師って――」


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「お嬢様!」
「クラマ!」
 走り出し、互いを確かめるように抱きしめ合う二人。
「どこいってたの!? シャルル しんぱいしたんだよ!?」
「お、お嬢様!? その、随分と幼くなられたというか。えっと……」
 シャルちゃんの変わり様に少し面食らったクラマちゃんだが、そんなことは些細なことかもしれない。
 自分が慕っていた主人が、自分を探してこんな危険な場所まで遥々迎えに来てくれた。
 それだけで十分すぎた。
 そして、それはシャルちゃんも同じ。
 突然姿を消したのは何か理由があったのだろう。けど、そんなことはどうでもいい。
 連絡が取れないのであれば会って確認すればいいだけ。お互いの声が届く距離まで近づけばいいだけだ。
 だから、ここまで来た。
 もう会えないかもしれないとどこか思っていた二人は、離れていた時間を取り戻すかの如く、目蓋を潤ませながら暫くの間かみしめる様に抱擁を続けるのだった。
「えひひ、よかったね、シャルちゃん」
 もらい泣きをしたのか涙腺が緩み、少し涙があふれてきた。けど、これはうれし涙。だからいくら流しても大丈夫なんだ。
 人差し指でそれを拭いながら千寿流は心の底から二人の再会を祝う。
 もちろんあたしだけじゃない、少し離れたところから夜深ちゃんと来希ちゃんも腕を組んだまま優しそうな笑みで二人を眺めていた。
「そんなことがあったんですか!? お嬢様と千寿流ちゃんの身にそこまでっ! うぅ、私はなんてことをしてしまったのでしょうか。いえ、何もできなかった、というべきでしょうか」
 順を追ってこれまでの経緯をクラマに話す。
 三日月館で千寿流と出会ったこと。
 千寿流といっしょに星一朗という青年を交えて話し合ったこと。
 結九里でおいしいお寿司を食べて、千寿流の家族を交えて川の字になって眠ったこと。
 川崎で夜深と、そしてトレモロという病気に侵された少年と会ったこと。
 千寿流の服が奈落の底に消えてしまったこと。
 その他にも思い返せばいろいろあった。
 千寿流が意識を失っていた時のことは内緒だ。きっと千寿流もクラマも傷ついてしまうから。
 楽しいこともあったけど、その分辛いと思うこともあった。けれど、真っ直ぐクラマを探すことだけを考えてこれまでやってきたつもりだ。だから楽しさも辛さも、全部含めて無駄じゃないとそう思えた。
 もっと、話したいことがたくさんある。そうだ、クラマは結局その間何をしていたのだろうか。
 クラマも、もしかしたら自分たちと同じように辛い目に遭っていたのだろうか。だとしたら、早く見つけてあげられなくて悪いことをしたのかもしれない。
「あー、感動の再会と思い出話してるとこ悪いんだけど、とりあえずここから出ない? あたしも好き好んでこんな所にずっといたいわけじゃないんだよねー」
 そう言われて急に恥ずかしくなったのかクラマは顔をさらに赤らめた。
 シャルはしょうがないなーと少し不服そうだったが、いつまでもこんな場所にいるのも嫌なのは同感だったので素直に言うことに従うことにした。
「あ、お兄さん。さっきはごめんね。服とか燃えちゃわなかった?」
「燃えてたら額面以上に吹っ掛けて弁償してもらおうと思ったけど、生憎この通り、まったく汚れてないよ」
 来希の家計が銀学に通えるほど裕福だと読んだ夜深は、そう冗談を交えて軽く返した。身を守るためとはいえ、間違って人を殺しかけたのは事実であり、気に病んでいるのかもしれないと考えた、夜深なりの配慮だった。
「ひとまず、お礼言っておくね。あのうっとうしい|魔獣《マインドイーター》の群れをやっつけてくれてありがと! お兄さん、もう少し若かったら好きになってたかも?」
 来希はそう言いながら夜深に向かってウインクをしながら投げキッスをする。その小馬鹿にしたような表情から本心でないことは明らかだった。
 年下の少女の少し色っぽい仕草に、恥じらうような面白い反応が見れると思っただけだろう。
「ああ、そういうのいいよ。君、タイプじゃないし。それに僕じゃないよ。とある人形師さんが助けてくれたんだよね」
 慈悲も何もなく一蹴する。
 夜深の棘のある返しに頬を膨らませている来希の横で、千寿流が小さく声を漏らす。
「え?」
 人形師。その言葉にどこか引っ掛かりを覚えた。
 そうだ、この旅の始まり。あの瀟洒な牢獄での目覚め。
 彼女も確か自分のことを人形師といっていた。
「夜深ちゃん。その人形師って――」