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第78話 猶予

ー/ー



 三日後、『(つち)の曜日』の放課後。レーキの姿は、天法院の実習室にあった。

「では、よろしくお願いします。コッパー院長代理、アガート先生」

 レーキは院長代理とアガートに一礼し、二人はレーキに返礼した。
 三人は黄色のローブを着て、金細工の祭壇の前に(ひざまず)いている。
『天王との謁見の法』を行う。そのための準備は全て整えた。
 アガートと院長代理の二人には、貴重な時間と天分を消費させてしまう。何としても法を成功し、死の王に呪いを説いて貰わなければ。
 レーキは緊張した面持ちで、祭壇に向き直る。

「それでは始めさせていただきます。『地の母、地の父、全ての生きとし生ける者を統べる定めの王……』」

 今ではすっかり覚えてしまった呪文を、一つ一つなぞるように、三人が唱和する。
 レーキのテノール、アガートのバリトンと院長代理の(しゃが)れ声。三つはうねり、重なって身のうちから力が引き出されて行く。
 次第に、三人の王珠が光を帯びる。
 不安、恐れ、高揚感。感情は混じり合い、溶け合って全てが天分となって祭壇に注がれる。確かな手応え。これなら死の王は訪れる!

「『……我が呼びかけに応えられよ! 至り来たれ! 死を司りし天王!』」

 最後の一言。一瞬の静寂の後に、暴風と共に祭壇の上に光が寄り集まって、死の王の姿を形作る。
 死の王は記憶の中にある年若い男の姿のまま、レーキたち天法士の前に現れた。

『……汝はまた我を呼ぶか』
「……はい。私でございます。三度お目通りいたします。地の父、全ての生きとし生ける者を統べる定めの王、すべての死せる者を束ねる死人の王、地の母の眷属にして刈り取る者、死の王様。私の呼びかけに応じて下さいました事、心よりの感謝を捧げ奉ります」

 畏まり、身を伏せるレーキを見下ろして、死の王は静かに(たたず)んでいる。
 その姿が時折、炎の揺らめきのように(かす)む。

不躾(ぶしつけ)ながらお願いの儀がございます。死の王様が私に賜った呪いをお解きいただきたいのです。どうか、ぞうか、伏してお願い申し上げます!」
『……その時に非ず、と我は告げた』

 死の王の宣告は冷たく、耳に滑り込んでくる。レーキは伏したまま、背中を冷たく這い(のぼ)る恐怖と戦う。

「……! お願いで、ございます!」
『……』

 言い募るレーキに、死の王は表情も無く沈黙する。ああ、また。またしても駄目なのか。レーキは絶望的な心持ちで、死の王に平伏した。
 その時、コッパー院長代理が顔を上げて、「死の王様」と声を発した。

「……(わし)はもうじき貴方様のお国に参ります、しがない年寄りでございます。死の王様のご尊顔を拝するご無礼をお許し下さいませんかのう」

 院長代理は伏した姿勢のまま、死の王に向かって言葉を紡ぐ。その声は遠慮がちで、尊敬を含んでいたが、怯えなどは感じられなかった。

『……許す』

 死の王の言葉で、コッパー院長代理は顔を上げる。好好爺(こうこうや)の笑みを崩さず、院長代理は死の王に問うた。

「有り難う御座います、死の王様。あのう、今がその時で無いのなら、この可哀想な鳥人の子は、どれほどの時をお待ちすれば宜しいのか、お示しくださいませんかのう。このままではこの子は常に怯え悲しまねばなりません。どうぞ、老い先短いこの年寄りを哀れと思し召してくださらんか。お願いでございます」

 そうか。呪いを解く事が今出来ないというなら、それはいつになるのか訊ねればいい。そうすれば、その期間だけでも怯えずに暮らしてゆける。院長代理の助力に、レーキは心から感謝する。
 何かを考え込むように押し黙った死の王は、やがて重い口を開いた。

『……不遜なる者、我が領土を侵せし者。まずは十年後、再び見えようぞ』

 それだけ告げて、死の王は中空に溶けるように自らの王国に戻って行った。

「まず、は……? あの、それは……?! お待ちください! 死の王様!!」

 慌てたレーキの言葉は死の王に届いたのだろうか?
 それを知る術は、ない。ただ、十年後と死の王が宣言した言葉を信じるだけだ。
 肩にのしかかっていた緊張が解けると、どっと疲労感が襲ってくる。レーキは嘆息して、アガートとコッパー院長代理を振り返った。

「……お二人とも、ありがとうございました」

 レーキが深く礼をすると、アガートは肩を回しながら息を吐いた。

「はあ~! 二度目だけど、緊張したねー」
「ふうー。死の王様は意外に寛大なお方じゃったのぉ」

 院長代理は杖にすがって立ち上がり、顎髭(あごひげ)を撫でながら祭壇の前のレーキを見つめた。

「……これで少しは時を稼げたかの、レーキ君。十年後、儂は手助けする事は出来ないじゃろうが……次こそは、じゃよ?」
「……はい!」

 一体何が死の王の琴線に触れるのか、それはまだ解らない。だが、時間は十年ある。それまで、出来るだけのことをするしかない。
 死の王は決して、『呪いを解かぬ』とは言っていないのだから。



 十年後まで、祭壇はアガートが預かってくれることになった。祭壇の材は金無垢では無いとは言え、旅の空に持ち出すには少々重すぎる。それにヴァローナの方が助祭となる天法士を雇い易いだろうと言う判断だ。
 着替えが済んで、アガートに今回の報酬を払おうとして、断られた。

「今はさ、給料があるから金には困ってないんだ。それは君の新しい生活のために使うと良い。オレからの餞別(せんべつ)だよー」
「……ありがとう、ございます」

 新しい生活。アスールに帰って、一体どんな生活が待っているのか。今は想像もつかない。それでも、生きていくために金は必要で。アガートの心遣いがありがたかった。

「十年以内にまた会いたいけどさーアスールとの距離を考えると、次は十年後かなあー」

 寂しげに、アガートは言う。

「せめて『学究祭』までここにいない? もう二週間もないから」
「……そうですね。『学究祭』までここにいます。俺も、このまま直ぐにアスールに行くのは少し寂しいし……それにまだカァラの行く先も決まってませんから」
「ああ、カァラちゃんか。オレも心当たりを……って言いたい所だけど、オレの知り合いに子供を欲しがってる夫婦はいないんだよねー独身の奴らばっかりでさー」

 とほほほーと、アガートは苦笑を浮かべる。アガートとズィルバーにも、カァラの事情は伝えてある。だが、独身教師と学生の二人にはあまり期待は出来ない。

「ともかく、ズィルバー君も今年最後だろ? 張り切って展示とかやるみたいだから、見に来て上げてよー」
「はい。必ず」

『学究祭』の日の再会を約束して、アガートと天法院で別れ、レーキはネリネの家に戻った。



 ネリネとは、自分の食費を出すことと食事を作ることで、『学究祭』まで宿泊する約束を取り付けた。この街での宿代を考えると、破格の値段での滞在だ。

「んーあたしは部屋貸しただけでレーキのご飯が食べられるしね! 言うこと無いわ」
「ありがとう。それに、すまない。今日もカァラを見て貰って」
「今は『始めの島』の資料あたってるトコだから問題無いわよ。カァラちゃん、大人しい子だし」

 当人のカァラはレーキの隣に座って、ネリネに貰った紙に絵を描いている。
 そろそろ食事の支度をせねば。レーキが立ち上がると、カァラは紙から顔を上げた。

「どこ、いく?」
「どこにも行かない。台所で今日の夕飯を作るんだ」
「レーキのご飯、おいしい!」

 今日も味見をする気満々で、カァラは台所までついてくる。

「まだ味見の番じゃない。刃物を使って危ないからネリネの側にいろ」
「やだ!」
「なら、見てても良い。その代わりその台から向こうにいろ」
「うん!」

 この頃カァラは、はっきりと意思表示をするようになった。どこか遠慮がちだった仕草も、子供らしく大胆不敵になってきている。
 それでもまだ、彼女の表情はぎこちなく、笑うことも怒ることも難しいようだ。
 カァラの里親探しはなかなか順調のようで。クランとオウロが頑張ってくれている。
 レーキは手際良く夕食を作りながら、『学究祭』までの予定について考えていた。
 まずはカァラに冬の服を買ってやろう。ヴァローナの冬はグラナートのそれよりずっと寒い。薄着で風邪など引かせてはいけない。
 それから自分の冬用のマントも。これからの季節、旅の空に防寒具はかかせない。アスールへ帰るための旅支度を、本格的に始めなければ。
 アスールに、帰る。ラエティアに会える。その事を考えるだけで心臓が高鳴る。
 天法院を卒業して、もう一年以上が経ってしまった。その間便りを出すことも出来ずに、彼女を待たせている。
 それが心苦しくて、たまらない。
 彼女が諦めてしまっていたら。レーキを待つことを止めてしまっていたら。
 それでも良い、彼女に一目会いたい。彼女に会って、今の彼女がどんな顔をして笑うのか、見てみたい。

 ──どうぞ、ラエティアがしあわせに暮らしていますように。

 それを願わずにはいられない。

「……レーキ! レーキ! カァラにも味見させて!」

 カァラが自分を呼ぶ声で、我に返る。台所に置かれた台の横で、元気良くぴょんぴょんとカァラが飛び跳ねている。

 ──まずはこの子のしあわせ、だな。

「ああ、ほら。これを少し食べて見ろ」

 レーキは微笑みを浮かべて、カァラを抱き上げた。


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 三日後、『|土《つち》の曜日』の放課後。レーキの姿は、天法院の実習室にあった。
「では、よろしくお願いします。コッパー院長代理、アガート先生」
 レーキは院長代理とアガートに一礼し、二人はレーキに返礼した。
 三人は黄色のローブを着て、金細工の祭壇の前に|跪《ひざまず》いている。
『天王との謁見の法』を行う。そのための準備は全て整えた。
 アガートと院長代理の二人には、貴重な時間と天分を消費させてしまう。何としても法を成功し、死の王に呪いを説いて貰わなければ。
 レーキは緊張した面持ちで、祭壇に向き直る。
「それでは始めさせていただきます。『地の母、地の父、全ての生きとし生ける者を統べる定めの王……』」
 今ではすっかり覚えてしまった呪文を、一つ一つなぞるように、三人が唱和する。
 レーキのテノール、アガートのバリトンと院長代理の|嗄《しゃが》れ声。三つはうねり、重なって身のうちから力が引き出されて行く。
 次第に、三人の王珠が光を帯びる。
 不安、恐れ、高揚感。感情は混じり合い、溶け合って全てが天分となって祭壇に注がれる。確かな手応え。これなら死の王は訪れる!
「『……我が呼びかけに応えられよ! 至り来たれ! 死を司りし天王!』」
 最後の一言。一瞬の静寂の後に、暴風と共に祭壇の上に光が寄り集まって、死の王の姿を形作る。
 死の王は記憶の中にある年若い男の姿のまま、レーキたち天法士の前に現れた。
『……汝はまた我を呼ぶか』
「……はい。私でございます。三度お目通りいたします。地の父、全ての生きとし生ける者を統べる定めの王、すべての死せる者を束ねる死人の王、地の母の眷属にして刈り取る者、死の王様。私の呼びかけに応じて下さいました事、心よりの感謝を捧げ奉ります」
 畏まり、身を伏せるレーキを見下ろして、死の王は静かに|佇《たたず》んでいる。
 その姿が時折、炎の揺らめきのように|霞《かす》む。
「|不躾《ぶしつけ》ながらお願いの儀がございます。死の王様が私に賜った呪いをお解きいただきたいのです。どうか、ぞうか、伏してお願い申し上げます!」
『……その時に非ず、と我は告げた』
 死の王の宣告は冷たく、耳に滑り込んでくる。レーキは伏したまま、背中を冷たく這い|上《のぼ》る恐怖と戦う。
「……! お願いで、ございます!」
『……』
 言い募るレーキに、死の王は表情も無く沈黙する。ああ、また。またしても駄目なのか。レーキは絶望的な心持ちで、死の王に平伏した。
 その時、コッパー院長代理が顔を上げて、「死の王様」と声を発した。
「……|儂《わし》はもうじき貴方様のお国に参ります、しがない年寄りでございます。死の王様のご尊顔を拝するご無礼をお許し下さいませんかのう」
 院長代理は伏した姿勢のまま、死の王に向かって言葉を紡ぐ。その声は遠慮がちで、尊敬を含んでいたが、怯えなどは感じられなかった。
『……許す』
 死の王の言葉で、コッパー院長代理は顔を上げる。|好好爺《こうこうや》の笑みを崩さず、院長代理は死の王に問うた。
「有り難う御座います、死の王様。あのう、今がその時で無いのなら、この可哀想な鳥人の子は、どれほどの時をお待ちすれば宜しいのか、お示しくださいませんかのう。このままではこの子は常に怯え悲しまねばなりません。どうぞ、老い先短いこの年寄りを哀れと思し召してくださらんか。お願いでございます」
 そうか。呪いを解く事が今出来ないというなら、それはいつになるのか訊ねればいい。そうすれば、その期間だけでも怯えずに暮らしてゆける。院長代理の助力に、レーキは心から感謝する。
 何かを考え込むように押し黙った死の王は、やがて重い口を開いた。
『……不遜なる者、我が領土を侵せし者。まずは十年後、再び見えようぞ』
 それだけ告げて、死の王は中空に溶けるように自らの王国に戻って行った。
「まず、は……? あの、それは……?! お待ちください! 死の王様!!」
 慌てたレーキの言葉は死の王に届いたのだろうか?
 それを知る術は、ない。ただ、十年後と死の王が宣言した言葉を信じるだけだ。
 肩にのしかかっていた緊張が解けると、どっと疲労感が襲ってくる。レーキは嘆息して、アガートとコッパー院長代理を振り返った。
「……お二人とも、ありがとうございました」
 レーキが深く礼をすると、アガートは肩を回しながら息を吐いた。
「はあ~! 二度目だけど、緊張したねー」
「ふうー。死の王様は意外に寛大なお方じゃったのぉ」
 院長代理は杖にすがって立ち上がり、|顎髭《あごひげ》を撫でながら祭壇の前のレーキを見つめた。
「……これで少しは時を稼げたかの、レーキ君。十年後、儂は手助けする事は出来ないじゃろうが……次こそは、じゃよ?」
「……はい!」
 一体何が死の王の琴線に触れるのか、それはまだ解らない。だが、時間は十年ある。それまで、出来るだけのことをするしかない。
 死の王は決して、『呪いを解かぬ』とは言っていないのだから。
 十年後まで、祭壇はアガートが預かってくれることになった。祭壇の材は金無垢では無いとは言え、旅の空に持ち出すには少々重すぎる。それにヴァローナの方が助祭となる天法士を雇い易いだろうと言う判断だ。
 着替えが済んで、アガートに今回の報酬を払おうとして、断られた。
「今はさ、給料があるから金には困ってないんだ。それは君の新しい生活のために使うと良い。オレからの|餞別《せんべつ》だよー」
「……ありがとう、ございます」
 新しい生活。アスールに帰って、一体どんな生活が待っているのか。今は想像もつかない。それでも、生きていくために金は必要で。アガートの心遣いがありがたかった。
「十年以内にまた会いたいけどさーアスールとの距離を考えると、次は十年後かなあー」
 寂しげに、アガートは言う。
「せめて『学究祭』までここにいない? もう二週間もないから」
「……そうですね。『学究祭』までここにいます。俺も、このまま直ぐにアスールに行くのは少し寂しいし……それにまだカァラの行く先も決まってませんから」
「ああ、カァラちゃんか。オレも心当たりを……って言いたい所だけど、オレの知り合いに子供を欲しがってる夫婦はいないんだよねー独身の奴らばっかりでさー」
 とほほほーと、アガートは苦笑を浮かべる。アガートとズィルバーにも、カァラの事情は伝えてある。だが、独身教師と学生の二人にはあまり期待は出来ない。
「ともかく、ズィルバー君も今年最後だろ? 張り切って展示とかやるみたいだから、見に来て上げてよー」
「はい。必ず」
『学究祭』の日の再会を約束して、アガートと天法院で別れ、レーキはネリネの家に戻った。
 ネリネとは、自分の食費を出すことと食事を作ることで、『学究祭』まで宿泊する約束を取り付けた。この街での宿代を考えると、破格の値段での滞在だ。
「んーあたしは部屋貸しただけでレーキのご飯が食べられるしね! 言うこと無いわ」
「ありがとう。それに、すまない。今日もカァラを見て貰って」
「今は『始めの島』の資料あたってるトコだから問題無いわよ。カァラちゃん、大人しい子だし」
 当人のカァラはレーキの隣に座って、ネリネに貰った紙に絵を描いている。
 そろそろ食事の支度をせねば。レーキが立ち上がると、カァラは紙から顔を上げた。
「どこ、いく?」
「どこにも行かない。台所で今日の夕飯を作るんだ」
「レーキのご飯、おいしい!」
 今日も味見をする気満々で、カァラは台所までついてくる。
「まだ味見の番じゃない。刃物を使って危ないからネリネの側にいろ」
「やだ!」
「なら、見てても良い。その代わりその台から向こうにいろ」
「うん!」
 この頃カァラは、はっきりと意思表示をするようになった。どこか遠慮がちだった仕草も、子供らしく大胆不敵になってきている。
 それでもまだ、彼女の表情はぎこちなく、笑うことも怒ることも難しいようだ。
 カァラの里親探しはなかなか順調のようで。クランとオウロが頑張ってくれている。
 レーキは手際良く夕食を作りながら、『学究祭』までの予定について考えていた。
 まずはカァラに冬の服を買ってやろう。ヴァローナの冬はグラナートのそれよりずっと寒い。薄着で風邪など引かせてはいけない。
 それから自分の冬用のマントも。これからの季節、旅の空に防寒具はかかせない。アスールへ帰るための旅支度を、本格的に始めなければ。
 アスールに、帰る。ラエティアに会える。その事を考えるだけで心臓が高鳴る。
 天法院を卒業して、もう一年以上が経ってしまった。その間便りを出すことも出来ずに、彼女を待たせている。
 それが心苦しくて、たまらない。
 彼女が諦めてしまっていたら。レーキを待つことを止めてしまっていたら。
 それでも良い、彼女に一目会いたい。彼女に会って、今の彼女がどんな顔をして笑うのか、見てみたい。
 ──どうぞ、ラエティアがしあわせに暮らしていますように。
 それを願わずにはいられない。
「……レーキ! レーキ! カァラにも味見させて!」
 カァラが自分を呼ぶ声で、我に返る。台所に置かれた台の横で、元気良くぴょんぴょんとカァラが飛び跳ねている。
 ──まずはこの子のしあわせ、だな。
「ああ、ほら。これを少し食べて見ろ」
 レーキは微笑みを浮かべて、カァラを抱き上げた。