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弱者

ー/ー



「おい、私をのけ者にして話をするな。泣くぞ」

「あっ、ハイ。すみませんね、ユキミさん」

 氷の姫騎士様は、強く美しく、気高かったが。メンタルが最弱であった。

ユキミ大江うさぎ先生
(イラスト:大江うさぎ先生)


「さてさて、今日もお仕事お疲れ様。俺!!」

 冒険者ギルド併設の食堂。その端で、男が一人、飯を食らっていた。

 肩まで伸びた暗めの茶髪に、無精ヒゲ。安物の服と武器。

 冒険者は飛び抜けたSランクから最下層のEランクまであるが、二十代後半に差し掛かった男のランクはD。

 その年で大抵Cランク以下であれば冒険者は引退して別の仕事を探すのだが、彼は違う。

 周りからあの年で負け組だ、底辺だのと、ひそひそ言われようとも彼は気にしない。

 そんな事は自分で分かりきっている。

 あぁそうだ、俺は底辺だ。それで何が悪いと。

「見ろよアイツ。また一人で飯食ってるよ」

「ついに組んでくれるパーティも居なくなったってね」

「ああなったらお終いだよな」

 わざわざ男に聞こえるように、他の冒険者が声を出す。

 だが、一つも腹は立たない。戦ったところで彼らには勝てないし、何より事実だ。

 プライドも自尊心も、そんなものは飯の種にならない。

 騒ぎを立てず、低いランクの依頼をこなして、適当に飯食って、適当に飲んで、たまに女遊びをする。

 それで良いんだ、それが俺の人生哲学。男はそう思うのであった。

 眼前の肉に夢中になっていると、一つ席を空け、誰かが座る。

 男はチラリと横目で見ると「おっ」と思わず声が出た。

 青みがかった銀髪と、青い鎧。そして何より白く美しい整った顔立ち。目の上と唇に鎧と同じ青色で戦化粧を施している。

 最近、冒険者ギルドで噂になっている氷の姫騎士様だ。

 それこそ、最初はその容姿に目がくらんだ男達によって話しかけられ、口説かれていたが、全て返事は返ってこなかったらしい。

 その内、気高さと近寄りがたさから、誰も話しかけなくなってしまったのだ。

「氷の姫騎士様ねぇ、まぁ俺には関係ないや」っと男は目の前の肉にかぶり付いていた。

 大人しく食べていた男だったが、何やら視線を感じる。

 また氷の姫騎士様を見ると、チラチラとこっちを見ていたのだ。

 男の人生哲学に『下手な矢も数撃ちゃ当たる』というものがある。

 人間関係も数を打てばどうにかなるものだ。ダメだったらさっさと損切りし、消えればいい。

「良かったらまだ手を付けてないんで、一緒に食べませんかい?」

 酒の勢いもあって、氷の姫騎士様に声を掛けてみた男。

 その瞬間、姫騎士はビクリとし、美しい顔だけをこちらに向けてきた。

 男は「やっちまったか?」と思ったが、よく見ると彼女の空色の唇がちょこちょこと動いている。

 何か冷たい言葉で罵っているのかと警戒するが、よく耳を澄ますと、蚊の鳴くような声で何かを話していた。

「……のか?」

 男は首を傾げて少し姫騎士に近付く。

 すると、彼女は瞳孔を開いて、またビクリとした。

「いいのか?」

 今度は聞き取れた、いいのか……。男は数秒、頭で考えて「良いのか」と言っている事に気付く。

「あ、えっ、えぇ。どうぞ」

 男の方も無駄に緊張が移り、皿を女の前にまで持っていった。

「……きます」

 またも姫騎士は何かを呟く。男は聞き取ろうと必死だ。

「え、えーっと……」

「い、いただきます」

 食事の前に挨拶をしているだけだった。

 そして、男はハッとする。

「おっといけねぇ、フォークを貰ってきますわ」

 食器を借りてきた男は、さりげなく隣に座る。

「どうぞ」

 フォークを渡すと(かす)かに手が触れてしまう。何だか男は久しぶりにドキドキとしてしまった。

「……りがとう」

 多分「ありがとう」と言ったんだなと理解し、男はフフッと笑う。

「それじゃ、食べてくださいや」

 姫騎士は肉料理を口に運ぶ。そして、目をうるうるとさせていた。

「……りがとう、本当に……りがとう」

 注意して聞かなければ聞き逃すぐらいの声量で姫騎士は礼を言っていた。

「どういたしまして」

 そう言い返して、男は酒を飲む。

「本当に、もう駄目かと思った……」

 姫騎士は少しずつ聞こえるぐらいの声を出してくる。

「みっか……」

 姫騎士の呟いた言葉を男は聞き返した。

「三日?」

「食べてなかった……」

「えぇ!?」

 思わず男は目を丸くする。何か事情があったのかと質問をした。

「何でそんなに?」

「あ、え、あ……」

 姫騎士は長いまつ毛の付いた目を伏せ、頬を赤らめてから言う。

「注文、する、タイミングが、取れなくて……」

「え、えーっと。ギルドの店員さんに?」

 男がそう言うと、姫騎士は小さく頷いた。

「ギルドでダメならその辺の店とか……」

「こ、こえ、でなくて……」

 こうして話をしているのに、声が出ないとは何だろうかと、男は考えたが、そういえばと思い出し、尋ねる。

「でも、あれじゃない? 色んな人から声掛けられてたんじゃ?」

「そ、それは、その、怖くて……」

 それで男は確信した。この姫騎士、コミュニケーション能力が無いんだと。

「で、でも、それじゃ駄目だって、今日こそ、話そうと思ったけど、怖くて」

「それで、ちょうど俺が話しかけたと……」

 なるほどなと男は思った。

「それじゃお腹減ってるでしょう? 何か食べたい物はありますかい?」

「ダメ、お金ない……」

「食事ぐらいはおごりやすよ」

 その言葉に姫騎士は思わず男を見る。その美しい顔がこちらに向けられ、男は思わずドキリとした。

「で、でも……」

「いや、こうして話せたのも何かの縁。ごちそうさせてくださいや」

「……りがとう」

 男は笑って店員を呼んだ。

「それじゃ、食べたいモン指でさして貰えますかい?」

 話が苦手な氷の姫騎士様の為に、メニューを差し出す。

 その白くすらっとした指が示したのはミートソースパスタだった。

「オッケーです。酒は飲めますかい?」

「お、お酒、苦いの苦手で……」

「それじゃ、なにが良いですかね?」

 シュンはユキミに確認を取ると、ぽやぽやした顔をしていた。

「じ、ジンジャーエールで……」

「オッケー、すいませーん。ミートソースパスタ一つとビール。あと、ジンジャーエール」

「かしこまりましたー」

 注文を終えたので、男は何か会話を繋げようとする。

 そういえば、まだ名前を聞いていなかったなと、自己紹介を始めた。

「俺は、シュン・カケナベっていいますわ。シュンでいいです。お名前、聞いてませんでしたね」

「えっ、あっ、あの、ユキミ……。ユキミ・サヴィ……」

「ユキミさんか、よろしく」

「よ、よろしく……」

 シュンはなるべく怖がらせないようにと、距離感を測る。

「そうだ、お腹空いているでしょう。食べて下さいや」

 シュンはテーブルの上にある肉に手を向けて、ユキミに食べるよう促す。

「あ、ありがとう……」

 ユキミはフォークで肉を刺し、ゆっくりと口へ運ぶ。

「お、おいしい……」

「そりゃ良かった」

 シュンは思わず笑顔になり、本心からそう言った。

「ユキミさんは何でこの街に来たんですかい? あぁ、食べながらでいいです。どんどん食べて」

「え、えっと、その、地元に居るだけじゃダメって父上に言われて、もっと外の世界も見て来いって……」

 父親の事を父上と言うあたり、本当に良い身分の人なのかもなとシュンは思う。

「なるほど、可愛い子には旅をさせよって事ですかい」

「か、かわ、かわいいだなんて……」

 ただの慣用句だというツッコミを言いかけて言葉を呑み込んだシュンは、更に質問をしてみる。

「ちなみに、冒険者のランクはなんですかい?」

「あ、え、えと、D……」

「あぁ、Dか。俺と同じだな、って言ったら嫌かな」

「い、嫌じゃない!」

 ユキミの否定する様がシュンには可愛く見える。

「その様子だと、冒険者としてクエストも受けていない感じかな?」

 ユキミは黙ったままコクコクと頷く。

「それじゃ、もしよければ明日から一緒にクエストを受けないか?」

「!!」

 ユキミはパァーっと顔が明るくなっていく。

「いいのか?」

「えぇ、もちろん! っていうか、お腹空いているでしょうし、食べて食べて」

 ユキミは肉をフォークで刺してもしゃもしゃと食べ始めた。

 なんだかシュンも嬉しくなり、その様子を横目で見る。

 しばらく食べ続けると、ウェイトレスがやって来た。

「お飲み物お待たせいたしましたー」

 机に置かれるビールとジンジャーエール。

 シュンはビールのジョッキを持って言う。

「せっかく仲間になった事だし、乾杯しましょうや」

「な、仲間!?」

 ビックリしてユキミが言うので、シュンはあーっと声を出して気まずそうにする。

「仲間はちょっと嫌だったかな?」

 すると、ユキミは物凄い勢いで首を横に振った。

「ちが、ちがくて!! 仲間ができて!! うれし……くて」

 言葉は最後の方になるにつれて声が小さくしぼんでいった。

「はは、それなら良かった。それじゃユキミさんもグラス持って!」

 ユキミはジンジャエールの入ったグラスを持ち上げて腕を伸ばす。

「はい、かんぱーい!」

 ジョッキとグラスをカチンとぶつけ合わせ、シュンはビールを飲み始める。

 ユキミもちびちびとジンジャエールを飲んでいた。


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「おい、私をのけ者にして話をするな。泣くぞ」
「あっ、ハイ。すみませんね、ユキミさん」
 氷の姫騎士様は、強く美しく、気高かったが。メンタルが最弱であった。
(イラスト:大江うさぎ先生)
「さてさて、今日もお仕事お疲れ様。俺!!」
 冒険者ギルド併設の食堂。その端で、男が一人、飯を食らっていた。
 肩まで伸びた暗めの茶髪に、無精ヒゲ。安物の服と武器。
 冒険者は飛び抜けたSランクから最下層のEランクまであるが、二十代後半に差し掛かった男のランクはD。
 その年で大抵Cランク以下であれば冒険者は引退して別の仕事を探すのだが、彼は違う。
 周りからあの年で負け組だ、底辺だのと、ひそひそ言われようとも彼は気にしない。
 そんな事は自分で分かりきっている。
 あぁそうだ、俺は底辺だ。それで何が悪いと。
「見ろよアイツ。また一人で飯食ってるよ」
「ついに組んでくれるパーティも居なくなったってね」
「ああなったらお終いだよな」
 わざわざ男に聞こえるように、他の冒険者が声を出す。
 だが、一つも腹は立たない。戦ったところで彼らには勝てないし、何より事実だ。
 プライドも自尊心も、そんなものは飯の種にならない。
 騒ぎを立てず、低いランクの依頼をこなして、適当に飯食って、適当に飲んで、たまに女遊びをする。
 それで良いんだ、それが俺の人生哲学。男はそう思うのであった。
 眼前の肉に夢中になっていると、一つ席を空け、誰かが座る。
 男はチラリと横目で見ると「おっ」と思わず声が出た。
 青みがかった銀髪と、青い鎧。そして何より白く美しい整った顔立ち。目の上と唇に鎧と同じ青色で戦化粧を施している。
 最近、冒険者ギルドで噂になっている氷の姫騎士様だ。
 それこそ、最初はその容姿に目がくらんだ男達によって話しかけられ、口説かれていたが、全て返事は返ってこなかったらしい。
 その内、気高さと近寄りがたさから、誰も話しかけなくなってしまったのだ。
「氷の姫騎士様ねぇ、まぁ俺には関係ないや」っと男は目の前の肉にかぶり付いていた。
 大人しく食べていた男だったが、何やら視線を感じる。
 また氷の姫騎士様を見ると、チラチラとこっちを見ていたのだ。
 男の人生哲学に『下手な矢も数撃ちゃ当たる』というものがある。
 人間関係も数を打てばどうにかなるものだ。ダメだったらさっさと損切りし、消えればいい。
「良かったらまだ手を付けてないんで、一緒に食べませんかい?」
 酒の勢いもあって、氷の姫騎士様に声を掛けてみた男。
 その瞬間、姫騎士はビクリとし、美しい顔だけをこちらに向けてきた。
 男は「やっちまったか?」と思ったが、よく見ると彼女の空色の唇がちょこちょこと動いている。
 何か冷たい言葉で罵っているのかと警戒するが、よく耳を澄ますと、蚊の鳴くような声で何かを話していた。
「……のか?」
 男は首を傾げて少し姫騎士に近付く。
 すると、彼女は瞳孔を開いて、またビクリとした。
「いいのか?」
 今度は聞き取れた、いいのか……。男は数秒、頭で考えて「良いのか」と言っている事に気付く。
「あ、えっ、えぇ。どうぞ」
 男の方も無駄に緊張が移り、皿を女の前にまで持っていった。
「……きます」
 またも姫騎士は何かを呟く。男は聞き取ろうと必死だ。
「え、えーっと……」
「い、いただきます」
 食事の前に挨拶をしているだけだった。
 そして、男はハッとする。
「おっといけねぇ、フォークを貰ってきますわ」
 食器を借りてきた男は、さりげなく隣に座る。
「どうぞ」
 フォークを渡すと|微《かす》かに手が触れてしまう。何だか男は久しぶりにドキドキとしてしまった。
「……りがとう」
 多分「ありがとう」と言ったんだなと理解し、男はフフッと笑う。
「それじゃ、食べてくださいや」
 姫騎士は肉料理を口に運ぶ。そして、目をうるうるとさせていた。
「……りがとう、本当に……りがとう」
 注意して聞かなければ聞き逃すぐらいの声量で姫騎士は礼を言っていた。
「どういたしまして」
 そう言い返して、男は酒を飲む。
「本当に、もう駄目かと思った……」
 姫騎士は少しずつ聞こえるぐらいの声を出してくる。
「みっか……」
 姫騎士の呟いた言葉を男は聞き返した。
「三日?」
「食べてなかった……」
「えぇ!?」
 思わず男は目を丸くする。何か事情があったのかと質問をした。
「何でそんなに?」
「あ、え、あ……」
 姫騎士は長いまつ毛の付いた目を伏せ、頬を赤らめてから言う。
「注文、する、タイミングが、取れなくて……」
「え、えーっと。ギルドの店員さんに?」
 男がそう言うと、姫騎士は小さく頷いた。
「ギルドでダメならその辺の店とか……」
「こ、こえ、でなくて……」
 こうして話をしているのに、声が出ないとは何だろうかと、男は考えたが、そういえばと思い出し、尋ねる。
「でも、あれじゃない? 色んな人から声掛けられてたんじゃ?」
「そ、それは、その、怖くて……」
 それで男は確信した。この姫騎士、コミュニケーション能力が無いんだと。
「で、でも、それじゃ駄目だって、今日こそ、話そうと思ったけど、怖くて」
「それで、ちょうど俺が話しかけたと……」
 なるほどなと男は思った。
「それじゃお腹減ってるでしょう? 何か食べたい物はありますかい?」
「ダメ、お金ない……」
「食事ぐらいはおごりやすよ」
 その言葉に姫騎士は思わず男を見る。その美しい顔がこちらに向けられ、男は思わずドキリとした。
「で、でも……」
「いや、こうして話せたのも何かの縁。ごちそうさせてくださいや」
「……りがとう」
 男は笑って店員を呼んだ。
「それじゃ、食べたいモン指でさして貰えますかい?」
 話が苦手な氷の姫騎士様の為に、メニューを差し出す。
 その白くすらっとした指が示したのはミートソースパスタだった。
「オッケーです。酒は飲めますかい?」
「お、お酒、苦いの苦手で……」
「それじゃ、なにが良いですかね?」
 シュンはユキミに確認を取ると、ぽやぽやした顔をしていた。
「じ、ジンジャーエールで……」
「オッケー、すいませーん。ミートソースパスタ一つとビール。あと、ジンジャーエール」
「かしこまりましたー」
 注文を終えたので、男は何か会話を繋げようとする。
 そういえば、まだ名前を聞いていなかったなと、自己紹介を始めた。
「俺は、シュン・カケナベっていいますわ。シュンでいいです。お名前、聞いてませんでしたね」
「えっ、あっ、あの、ユキミ……。ユキミ・サヴィ……」
「ユキミさんか、よろしく」
「よ、よろしく……」
 シュンはなるべく怖がらせないようにと、距離感を測る。
「そうだ、お腹空いているでしょう。食べて下さいや」
 シュンはテーブルの上にある肉に手を向けて、ユキミに食べるよう促す。
「あ、ありがとう……」
 ユキミはフォークで肉を刺し、ゆっくりと口へ運ぶ。
「お、おいしい……」
「そりゃ良かった」
 シュンは思わず笑顔になり、本心からそう言った。
「ユキミさんは何でこの街に来たんですかい? あぁ、食べながらでいいです。どんどん食べて」
「え、えっと、その、地元に居るだけじゃダメって父上に言われて、もっと外の世界も見て来いって……」
 父親の事を父上と言うあたり、本当に良い身分の人なのかもなとシュンは思う。
「なるほど、可愛い子には旅をさせよって事ですかい」
「か、かわ、かわいいだなんて……」
 ただの慣用句だというツッコミを言いかけて言葉を呑み込んだシュンは、更に質問をしてみる。
「ちなみに、冒険者のランクはなんですかい?」
「あ、え、えと、D……」
「あぁ、Dか。俺と同じだな、って言ったら嫌かな」
「い、嫌じゃない!」
 ユキミの否定する様がシュンには可愛く見える。
「その様子だと、冒険者としてクエストも受けていない感じかな?」
 ユキミは黙ったままコクコクと頷く。
「それじゃ、もしよければ明日から一緒にクエストを受けないか?」
「!!」
 ユキミはパァーっと顔が明るくなっていく。
「いいのか?」
「えぇ、もちろん! っていうか、お腹空いているでしょうし、食べて食べて」
 ユキミは肉をフォークで刺してもしゃもしゃと食べ始めた。
 なんだかシュンも嬉しくなり、その様子を横目で見る。
 しばらく食べ続けると、ウェイトレスがやって来た。
「お飲み物お待たせいたしましたー」
 机に置かれるビールとジンジャーエール。
 シュンはビールのジョッキを持って言う。
「せっかく仲間になった事だし、乾杯しましょうや」
「な、仲間!?」
 ビックリしてユキミが言うので、シュンはあーっと声を出して気まずそうにする。
「仲間はちょっと嫌だったかな?」
 すると、ユキミは物凄い勢いで首を横に振った。
「ちが、ちがくて!! 仲間ができて!! うれし……くて」
 言葉は最後の方になるにつれて声が小さくしぼんでいった。
「はは、それなら良かった。それじゃユキミさんもグラス持って!」
 ユキミはジンジャエールの入ったグラスを持ち上げて腕を伸ばす。
「はい、かんぱーい!」
 ジョッキとグラスをカチンとぶつけ合わせ、シュンはビールを飲み始める。
 ユキミもちびちびとジンジャエールを飲んでいた。