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第103話 強い海人

ー/ー



あれから、しばらくの時が経った。
俺はもちろん、樹や煌汰、イルが一度に複数人かつ入れ替わりに戦っているが、マーガルはまだ倒れない…というか、怯む様子すら見せない。

別に、攻撃が当たっていないわけではない。
一度に複数人で攻撃しているので、攻撃自体は奴に当たっている。
だが、それを数回繰り返しても奴が倒れないのである。

まあ、技や術を出してないからかもしれない。
先ほどのリトの件があるので、みんな技も術も使わずシンプルな攻撃をしているのだ。
実際、奴に攻撃を当てた者は数秒後に同じ傷を負っている。
それがまた、皆を萎縮させる原因になっている。

ただ武器で突いたり斬ったりするだけなら、返されても大したダメージはない。しかし、技となると別だ。
下手に強力な技を出して、それを返されたらどうなるかは、誰でも容易に想像出来る。
紗妃がいればよかったな…と猶がぼやいてたが、その発言の真意はわからない。

とにかく、このままでは埒が明かない。
そこで、俺は一か八か賭けに出た。

「変われ!」

奴の相手をしていた樹とイルの中に飛び込み、[フレイムポール]を繰り出す。
「…ふっ、血迷ったか。私を傷つければ、お前も傷つくことになるのだぞ」

「承知の上だ」
火をまとった斧で切り上げ、炎を噴き上げて吹っ飛ばし、落ちてきた所を斧で叩き割るように切る。
奴は低い唸り声を上げ、仰向けに倒れた。

その直後、俺にも同じことが起こった。
斧の攻撃は痛いが、炎は大したことはない。言うまでもなく、火に耐性を持っているからだ。

そして俺は、少し怯んだがすぐに立ちあがる。
今の技は、火によるダメージが大半を占めている。故に、火に耐性があれば対したダメージを受けないのだ…もちろん斧のダメージはキツいが。

そんな俺の様子を見て、マーガルは気づいたようだった。
「そうか…お前は火に耐性があるのだな。ならば、こうだ」
奴は槍を斜めにし、術を唱えた。
「月術 [静寂の鏡面]」

一瞬、奴の全身を包むように、紫っぽい色の月のような鏡が現れたかと思ったら、あたりの空間が何やら歪み、同時に全身の魔力がふっと抜けたのを感じた。
どうやら、術を封じられたようだ。

「術封じか…」
樹も気づいたようだ。
「けど、今ので封じれるのは火と光の術だ。オレたちはまだ健在だぜ!」
そして、樹は術を放った。
水の術かと思ったのだが、思いきり違った。
「星術 [ガイアディープ]」

やつがそう唱えると、地面が激しく揺れ、マーガルの足元の床が割れて複数の大きな岩が飛び出した。
同時に水も若干噴き出ていて、これもダメージソースになっていそうだ。

これを食らったマーガルは吹っ飛んでから地面に叩きつけられた。
口では「やるな…」なんて言ってたが、割と効いてるように見えた。

「お前たちの中に、星術を扱える者がおったとは。だが、これならどうだ!」
マーガルは手を合わせた。
「奥義 [深海四重奏]!」
4つの波が俺達の前後左右に現れ、順番に襲いかかってきた。
樹が結界を張って防いでくれたが、それでも結界に当たった波は盛大に跳ねていたあたり、相当な威力があったのだろう。

そうして、樹は技…ではなく術を繰り出した。
「星術 [サテライトフォール]」
空中に複数の丸い岩のようなものを呼び出し、それをしばらく回転させた後、全てまとめてマーガルの頭上から落とした。
結構効いていたようだったので、樹の身が心配だった…が、意外と大丈夫だった。というか、そもそも攻撃が返ってこなかった。

「やっぱり、そういうことか…」
樹は、マーガルを睨みつけて言った。

「返されるのは武器を使った攻撃と技だけだ。だから姜芽の術を封じたんだろ?」

「…だとしてどうする!お前が扱う星術は、水と地を内包する術。私にはさしたる有効打にはならんわ!」

「確かに、オレはな。だが、他の奴らならどうかな?」
マーガルが目線を移すと共に、猶やイル、リトが術の構えを取る。

「こっちには、術を使える奴が3人はいる。リトはともかく、他の2人の術を受けて耐えられるかな?」

「…私を馬鹿にしおって!よかろう、お前たちの術を全て捌いてくれる!」

「だってよ。なあみんな、見せてやってくれないか?」
樹が言うまでもなかった。

「風法 [ハリケーンブレード]」
猶が放った術は鋭い竜巻を呼び出し、マーガルの体を切り刻んだ。

「光法 [白夜の災禍]」
続けてイルがまばゆい光を照らし、マーガルの視界を遮りつつダメージを与える。

「風法 [裁断刃風]」
リトが風の刃を瞬速で飛ばし、マーガルの体を切り裂く。

これら3人の怒涛の攻撃で、マーガルは膝をついた。
「ぐっ…お…おのれ…!」
奴は、槍を杖代わりに立ち上がった。
「貴様ら…許さんぞ…!!この上は、貴様らみな、深海に引きずりこんで…!」

その時、リトが飛び出した。

「…?」

「させない。そんなこと、許さない」

「なん…だと…?」

「彼らを深海に引き込むなんてことは、私が生きてる限りさせない。そして…」
リトは真剣な顔で薙刀を構え、その刃に魔力を溜める。

「私は、あんたを絶対に許さない。あんた達は、私達から父さんと母さんを奪った。海人みんなの気持ちをないがしろにして、横暴な振る舞いをした。その報い、今ここで私が受けさせてやる」

そして、リトは力の限り薙刀を振るった。
[花形切り]。そうつぶやくと共に振るわれた薙刀は、一瞬飛び散る血をかすかに浴びたが、それはすぐに洗い流された…辺りに満ちる海の水によってではなく、彼女の涙で。

陸人の行いに怒り、陸人を根絶やしにせんとした海人の野望は、他の種族の海人によって絶たれた。
しかし、それをなし得た海人も大きな犠牲を払った。

実際、リトはマーガルを切り捨てた後、涙と共に言葉を流していた。
「父さん…母さん…ごめんなさい。ごめんなさい…」






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あれから、しばらくの時が経った。俺はもちろん、樹や煌汰、イルが一度に複数人かつ入れ替わりに戦っているが、マーガルはまだ倒れない…というか、怯む様子すら見せない。
別に、攻撃が当たっていないわけではない。
一度に複数人で攻撃しているので、攻撃自体は奴に当たっている。
だが、それを数回繰り返しても奴が倒れないのである。
まあ、技や術を出してないからかもしれない。
先ほどのリトの件があるので、みんな技も術も使わずシンプルな攻撃をしているのだ。
実際、奴に攻撃を当てた者は数秒後に同じ傷を負っている。
それがまた、皆を萎縮させる原因になっている。
ただ武器で突いたり斬ったりするだけなら、返されても大したダメージはない。しかし、技となると別だ。
下手に強力な技を出して、それを返されたらどうなるかは、誰でも容易に想像出来る。
紗妃がいればよかったな…と猶がぼやいてたが、その発言の真意はわからない。
とにかく、このままでは埒が明かない。
そこで、俺は一か八か賭けに出た。
「変われ!」
奴の相手をしていた樹とイルの中に飛び込み、[フレイムポール]を繰り出す。
「…ふっ、血迷ったか。私を傷つければ、お前も傷つくことになるのだぞ」
「承知の上だ」
火をまとった斧で切り上げ、炎を噴き上げて吹っ飛ばし、落ちてきた所を斧で叩き割るように切る。
奴は低い唸り声を上げ、仰向けに倒れた。
その直後、俺にも同じことが起こった。
斧の攻撃は痛いが、炎は大したことはない。言うまでもなく、火に耐性を持っているからだ。
そして俺は、少し怯んだがすぐに立ちあがる。
今の技は、火によるダメージが大半を占めている。故に、火に耐性があれば対したダメージを受けないのだ…もちろん斧のダメージはキツいが。
そんな俺の様子を見て、マーガルは気づいたようだった。
「そうか…お前は火に耐性があるのだな。ならば、こうだ」
奴は槍を斜めにし、術を唱えた。
「月術 [静寂の鏡面]」
一瞬、奴の全身を包むように、紫っぽい色の月のような鏡が現れたかと思ったら、あたりの空間が何やら歪み、同時に全身の魔力がふっと抜けたのを感じた。
どうやら、術を封じられたようだ。
「術封じか…」
樹も気づいたようだ。
「けど、今ので封じれるのは火と光の術だ。オレたちはまだ健在だぜ!」
そして、樹は術を放った。
水の術かと思ったのだが、思いきり違った。
「星術 [ガイアディープ]」
やつがそう唱えると、地面が激しく揺れ、マーガルの足元の床が割れて複数の大きな岩が飛び出した。
同時に水も若干噴き出ていて、これもダメージソースになっていそうだ。
これを食らったマーガルは吹っ飛んでから地面に叩きつけられた。
口では「やるな…」なんて言ってたが、割と効いてるように見えた。
「お前たちの中に、星術を扱える者がおったとは。だが、これならどうだ!」
マーガルは手を合わせた。
「奥義 [深海四重奏]!」
4つの波が俺達の前後左右に現れ、順番に襲いかかってきた。
樹が結界を張って防いでくれたが、それでも結界に当たった波は盛大に跳ねていたあたり、相当な威力があったのだろう。
そうして、樹は技…ではなく術を繰り出した。
「星術 [サテライトフォール]」
空中に複数の丸い岩のようなものを呼び出し、それをしばらく回転させた後、全てまとめてマーガルの頭上から落とした。
結構効いていたようだったので、樹の身が心配だった…が、意外と大丈夫だった。というか、そもそも攻撃が返ってこなかった。
「やっぱり、そういうことか…」
樹は、マーガルを睨みつけて言った。
「返されるのは武器を使った攻撃と技だけだ。だから姜芽の術を封じたんだろ?」
「…だとしてどうする!お前が扱う星術は、水と地を内包する術。私にはさしたる有効打にはならんわ!」
「確かに、オレはな。だが、他の奴らならどうかな?」
マーガルが目線を移すと共に、猶やイル、リトが術の構えを取る。
「こっちには、術を使える奴が3人はいる。リトはともかく、他の2人の術を受けて耐えられるかな?」
「…私を馬鹿にしおって!よかろう、お前たちの術を全て捌いてくれる!」
「だってよ。なあみんな、見せてやってくれないか?」
樹が言うまでもなかった。
「風法 [ハリケーンブレード]」
猶が放った術は鋭い竜巻を呼び出し、マーガルの体を切り刻んだ。
「光法 [白夜の災禍]」
続けてイルがまばゆい光を照らし、マーガルの視界を遮りつつダメージを与える。
「風法 [裁断刃風]」
リトが風の刃を瞬速で飛ばし、マーガルの体を切り裂く。
これら3人の怒涛の攻撃で、マーガルは膝をついた。
「ぐっ…お…おのれ…!」
奴は、槍を杖代わりに立ち上がった。
「貴様ら…許さんぞ…!!この上は、貴様らみな、深海に引きずりこんで…!」
その時、リトが飛び出した。
「…?」
「させない。そんなこと、許さない」
「なん…だと…?」
「彼らを深海に引き込むなんてことは、私が生きてる限りさせない。そして…」
リトは真剣な顔で薙刀を構え、その刃に魔力を溜める。
「私は、あんたを絶対に許さない。あんた達は、私達から父さんと母さんを奪った。海人みんなの気持ちをないがしろにして、横暴な振る舞いをした。その報い、今ここで私が受けさせてやる」
そして、リトは力の限り薙刀を振るった。
[花形切り]。そうつぶやくと共に振るわれた薙刀は、一瞬飛び散る血をかすかに浴びたが、それはすぐに洗い流された…辺りに満ちる海の水によってではなく、彼女の涙で。
陸人の行いに怒り、陸人を根絶やしにせんとした海人の野望は、他の種族の海人によって絶たれた。
しかし、それをなし得た海人も大きな犠牲を払った。
実際、リトはマーガルを切り捨てた後、涙と共に言葉を流していた。
「父さん…母さん…ごめんなさい。ごめんなさい…」