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第12話・世界の終末日

ー/ー




―――異次元空間・アリスのお部屋―――

 僕はオーガロードに吹き飛ばされ、気を失った。このまま踏み潰されるか食べられるか……もう考える気力も無い。ゼシカすまない。君達を守れなかった……。
「おい。起きろ」
 アリスの声がする。涙でぐしゅぐしゅの顔を拭きながら、僕は体を起こす。
「僕は死んで……ここは……?」
「わしの作った異次元空間じゃ。お主の胸の宝石の中と言えばわかりやすいかの」
 真っ白な、ただ真っ白な何もない空間。目の前にポツンとアリスだけがいる。
「宝石の中って、こんな風になってたのか」
「ハルトよ。時間がないのじゃ、よく聞け。このままじゃとお主はもうすぐ死ぬ。じゃがそれはお主だからじゃ。お主の体はわしが作った複製体。つまりまた複製をすること事もできる。しかし複製をしたとて、今のままでは絶対に勝てぬ。そこでわしの力を解き放つ。お主の今の魔力なら……もしかしたら数分は持つであろう。わしがお主に命を賭けてやろう」
 複製体……やはり。違和感はあったがこの体はもう僕の本当の体ではなかったのか。
 神にしかできない禁断のスキル……。でも、今は考えてる時間も無い。
「わかった。アリスの言う通りにする。皆を助けれるなら……僕はどうなっても……」
「うむ。では完全同化を始めるぞ。次に目が覚めたら、わしの詠唱に合わせるのじゃ――」
「詠唱……?アリス、みんなを助け――」
 次の言葉を言いかけると、また意識が遠のいていく……。

―――北の大森林―――

「ワァァァァァ……!」
 すぐに騒がしい戦場の音が戻ってくる。騒がしい……頭に怒声が響く。
「はぁはぁはぁ……」
 同化は終わったのか?体が重い。痛い。苦しい。
 ゼシカはどこだ……?せめてゼシカの亡骸(なきがら)だけでも救ってやりたい。
 力をふりしぼり体を起こす。オーガロードの口からゼシカの足が見えた。
「これは夢……じゃない!さっきの続きか……クソやろうがっ!!」
(ドックンッ!)
 その時、僕の中で何かがはじけた!
(ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!!)
「コロスッ!!」
 ――アリスが詠唱を始める声が頭に直接聞こえる。僕はアリスの声をなぞる様に詠唱を真似する。
(汝、我の声に答えよ。闇の精霊よ、今、その力を示せ)
「汝、我の声に答えよ。闇の精霊よ、今、その力を示せ――」
神々之黄昏(ラグナロク)!!!)
神々之黄昏(ラグナロク)!!!』

 キィィィィィィィィン!!

 魔法剣から甲高い金属音が鳴り響き、黒いまがまがしい闘気を帯びた剣が創造されていく。魔法剣がドス黒く、にぶい光を放つと、周りにいた魔物たちが逃げ出す!
「シネィィィッッッッ!!!」
 オーガロードの首をめがけて一振りすると、一撃でオーガロードの首が吹き飛んだっ!
高速移動(ランファースト)……」
 オーガロードの口からゼシカが吐き出されると同時に、宙に舞うゼシカを抱きしめる。食われる前に何とか間に合ったか。
 しかしアリスの詠唱はこれで終わらない!
(汝、我の声に答えよ、光の精霊よ、今、その力を示せ!)
 アリスが続けざまに詠唱を始めたが、僕は既に意識が朦朧(もうろう)とし始める。きっとこの剣の魔力の消費が凄まじいのだ。
 え、詠唱をしないと……!
「な、汝、我の声に答えよ……光の精霊よ、今、その力を示せっっ!」
 僕はアリスの後に続き詠唱するっ!!
生命帰還(リザレクション)!!)
生命帰還(リザレクション)!!』

 パァァァァァァァァァ!!

 ……な、何が起きている?
 光の柱が空から伸び、僕の周りに精霊らしき妖精が無数に現れる。気が付くと、僕の背中から羽根が生え大きく翼を広げていた。
 その時!ゼシカが奇跡的に蘇るっ!
「カハッ!ゴホッ!ゴホッ!」
「ゼ、ゼシカッ!?」
「……ゼ、ゼシカ。良かった。ぐす……」
「ゼシカっ!ゼシカっ!ゔぅぅぅ……」
 エルとリンも無事だった様だ。2人は息を吹き返したゼシカの元へ寄ってくる。
 2人共、生きてて良かった……。
「はぁはぁ……ハルトよ……余韻にひたってるヒマはないぞ。わしの魔力が持たなくなる……」
「はぁはぁ……あぁ、頼む!」
 僕は(うなず)き、さらにアリスに呼吸を合わせる。
完全回復(エクスヒーリング)!!)
完全回復(エクスヒーリング)!!』
 ゼシカ、エル、リンが僕を中心に緑色の光に包まれるっ!
「……うぅ……こ、ここは……?」
「メリダ!?」
 メリダもまた死んではいなかった。ぎりぎりのところで助かったようだ。たまたま回復魔法の範囲に入っていたのだろう。
 アリスは肩で息をし、かなりきつそうだ。僕も肉体の傷は癒えたが、魔力を使い果たしたせいか、頭が朦朧(もうろう)とし立っていられなくなり、片膝を着く。

「はぁはぁ……ハルト、いくぞ。最後の大技じゃ!」
「……はぁはぁはぁはぁ」
 頭がクラクラするが、アリスも頑張ってくれている……こんな所で負けてたまるかっ!!呼吸を整え、最後の詠唱に入る。
(混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……)
『混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……』
 詠唱と共に風がピタリと止み、戦場に黒い雲が広がり始めた。

―――ウェスタン街道―――

「ラルク殿!北の空がっ!!」
「うむ。何か不吉な気配がする。城騎士団!急ぐぞっ!」

―――イースタン・エルフの森―――

「族長!西の空が!」
「あ、あれは……まさかっ!?皆をすぐに集めよ!」
「あぁ、神よ。怒りをしずめたまえ……!」
「エルッ!どうか無事でいて!」

―――サウスタン集落―――

「混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……伝承は本当だったと言うのか?これで世界が滅ぶのか。リン……どうか無事でいておくれ」

―――北の大森林草原―――

「おい……ギル……何だあれは……?」
「ゼシカ様っ!下がって下さい!」
「……わ、私は夢でも見ているのか?」
「嘘よ……こんな……こと……あり得ない」
「あぁ神よ……」
「混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……ばば様。あのおとぎ話は、やはり本当にあったのね……ぐすっ」
 静まり返った戦場に、僕の声だけが響く……。
(――混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……!)
『――混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……!』
(今、その力を解き放てっ!!合成召喚魔法!!)
『今、その力を解き放てっ!!合成召喚魔法!!』








(!!!!!世界の終末日(エンド・ヴァースト)!!!!!)
『!!!!!世界の終末日(エンド・ヴァースト)!!!!!』












 風が止み、空が暗くなり、時が止まったかのような静けさが広がる。
 そして、雲が裂け一筋の光とともに……!!
 それは突如として現れたっ!!
 ……何十キロメートルあろうか。

 ()()()()が空より現れ、すべてを踏み潰す……!!

ゴゴゴゴ……!
ゴゴゴゴゴ……!!
ドスンッッ……!!!

………
……

ズドォォォォォォォォォォォォン!!!!!
ゴォォォォォォォ!!!
ビュウゥゥゥゥゥゥゥ!!!

 一踏みで大地が揺れ、山が潰れ、湖が消える。数万いた魔物達が全て踏み潰され、砂煙があがり、突風が吹き荒れる!!
「に、逃げろっ!!退避!!退避!!」
「リン……ごめんなさい。あの湖はドワーフが作ったものじゃなかったわ……!本当にこんな事が起こるなんて……!」
 蟻のように四方八方に逃げ惑う人間。そして死んでいく魔物達。怒号と悲鳴が聞こえる。まるで地獄絵図だ……。
「……アリス?アリスは……?」
 いつの間にかアリスの姿がない。アリスも命を燃やし尽くしたのかもしれない……。
 ありがとう、アリス。そしてさようなら……僕ももう……限界だ……。
「ハルトッ!!」
 気を失う前に、僕に駆け寄るゼシカ達が見えた……。

……
………

 ――北の大森林の小高い丘の上に2つの人影がある。
「カエデ様、これはレディ様にご報告に行きませぬと」
「そうだな。お前はねぇさんに報告を、私はイスタン帝国に報告に行く」
「はっ!それではお気をつけて!!」
 この北の大森林の戦いは後々、魔物族にとって大きな変化をもたらす事になるのであった。


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 僕はオーガロードに吹き飛ばされ、気を失った。このまま踏み潰されるか食べられるか……もう考える気力も無い。ゼシカすまない。君達を守れなかった……。
「おい。起きろ」
 アリスの声がする。涙でぐしゅぐしゅの顔を拭きながら、僕は体を起こす。
「僕は死んで……ここは……?」
「わしの作った異次元空間じゃ。お主の胸の宝石の中と言えばわかりやすいかの」
 真っ白な、ただ真っ白な何もない空間。目の前にポツンとアリスだけがいる。
「宝石の中って、こんな風になってたのか」
「ハルトよ。時間がないのじゃ、よく聞け。このままじゃとお主はもうすぐ死ぬ。じゃがそれはお主だからじゃ。お主の体はわしが作った複製体。つまりまた複製をすること事もできる。しかし複製をしたとて、今のままでは絶対に勝てぬ。そこでわしの力を解き放つ。お主の今の魔力なら……もしかしたら数分は持つであろう。わしがお主に命を賭けてやろう」
 複製体……やはり。違和感はあったがこの体はもう僕の本当の体ではなかったのか。
 神にしかできない禁断のスキル……。でも、今は考えてる時間も無い。
「わかった。アリスの言う通りにする。皆を助けれるなら……僕はどうなっても……」
「うむ。では完全同化を始めるぞ。次に目が覚めたら、わしの詠唱に合わせるのじゃ――」
「詠唱……?アリス、みんなを助け――」
 次の言葉を言いかけると、また意識が遠のいていく……。
―――北の大森林―――
「ワァァァァァ……!」
 すぐに騒がしい戦場の音が戻ってくる。騒がしい……頭に怒声が響く。
「はぁはぁはぁ……」
 同化は終わったのか?体が重い。痛い。苦しい。
 ゼシカはどこだ……?せめてゼシカの|亡骸《なきがら》だけでも救ってやりたい。
 力をふりしぼり体を起こす。オーガロードの口からゼシカの足が見えた。
「これは夢……じゃない!さっきの続きか……クソやろうがっ!!」
(ドックンッ!)
 その時、僕の中で何かがはじけた!
(ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!!)
「コロスッ!!」
 ――アリスが詠唱を始める声が頭に直接聞こえる。僕はアリスの声をなぞる様に詠唱を真似する。
(汝、我の声に答えよ。闇の精霊よ、今、その力を示せ)
「汝、我の声に答えよ。闇の精霊よ、今、その力を示せ――」
(|神々之黄昏《ラグナロク》!!!)
『|神々之黄昏《ラグナロク》!!!』
 キィィィィィィィィン!!
 魔法剣から甲高い金属音が鳴り響き、黒いまがまがしい闘気を帯びた剣が創造されていく。魔法剣がドス黒く、にぶい光を放つと、周りにいた魔物たちが逃げ出す!
「シネィィィッッッッ!!!」
 オーガロードの首をめがけて一振りすると、一撃でオーガロードの首が吹き飛んだっ!
「|高速移動《ランファースト》……」
 オーガロードの口からゼシカが吐き出されると同時に、宙に舞うゼシカを抱きしめる。食われる前に何とか間に合ったか。
 しかしアリスの詠唱はこれで終わらない!
(汝、我の声に答えよ、光の精霊よ、今、その力を示せ!)
 アリスが続けざまに詠唱を始めたが、僕は既に意識が|朦朧《もうろう》とし始める。きっとこの剣の魔力の消費が凄まじいのだ。
 え、詠唱をしないと……!
「な、汝、我の声に答えよ……光の精霊よ、今、その力を示せっっ!」
 僕はアリスの後に続き詠唱するっ!!
(|生命帰還《リザレクション》!!)
『|生命帰還《リザレクション》!!』
 パァァァァァァァァァ!!
 ……な、何が起きている?
 光の柱が空から伸び、僕の周りに精霊らしき妖精が無数に現れる。気が付くと、僕の背中から羽根が生え大きく翼を広げていた。
 その時!ゼシカが奇跡的に蘇るっ!
「カハッ!ゴホッ!ゴホッ!」
「ゼ、ゼシカッ!?」
「……ゼ、ゼシカ。良かった。ぐす……」
「ゼシカっ!ゼシカっ!ゔぅぅぅ……」
 エルとリンも無事だった様だ。2人は息を吹き返したゼシカの元へ寄ってくる。
 2人共、生きてて良かった……。
「はぁはぁ……ハルトよ……余韻にひたってるヒマはないぞ。わしの魔力が持たなくなる……」
「はぁはぁ……あぁ、頼む!」
 僕は|頷《うなず》き、さらにアリスに呼吸を合わせる。
(|完全回復《エクスヒーリング》!!)
『|完全回復《エクスヒーリング》!!』
 ゼシカ、エル、リンが僕を中心に緑色の光に包まれるっ!
「……うぅ……こ、ここは……?」
「メリダ!?」
 メリダもまた死んではいなかった。ぎりぎりのところで助かったようだ。たまたま回復魔法の範囲に入っていたのだろう。
 アリスは肩で息をし、かなりきつそうだ。僕も肉体の傷は癒えたが、魔力を使い果たしたせいか、頭が|朦朧《もうろう》とし立っていられなくなり、片膝を着く。
「はぁはぁ……ハルト、いくぞ。最後の大技じゃ!」
「……はぁはぁはぁはぁ」
 頭がクラクラするが、アリスも頑張ってくれている……こんな所で負けてたまるかっ!!呼吸を整え、最後の詠唱に入る。
(混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……)
『混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……』
 詠唱と共に風がピタリと止み、戦場に黒い雲が広がり始めた。
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「うむ。何か不吉な気配がする。城騎士団!急ぐぞっ!」
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「族長!西の空が!」
「あ、あれは……まさかっ!?皆をすぐに集めよ!」
「あぁ、神よ。怒りをしずめたまえ……!」
「エルッ!どうか無事でいて!」
―――サウスタン集落―――
「混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……伝承は本当だったと言うのか?これで世界が滅ぶのか。リン……どうか無事でいておくれ」
―――北の大森林草原―――
「おい……ギル……何だあれは……?」
「ゼシカ様っ!下がって下さい!」
「……わ、私は夢でも見ているのか?」
「嘘よ……こんな……こと……あり得ない」
「あぁ神よ……」
「混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……ばば様。あのおとぎ話は、やはり本当にあったのね……ぐすっ」
 静まり返った戦場に、僕の声だけが響く……。
(――混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……!)
『――混沌の闇より生まれし光、我の声に答え、導け。我はこの世界を作るもの也……!』
(今、その力を解き放てっ!!合成召喚魔法!!)
『今、その力を解き放てっ!!合成召喚魔法!!』
(!!!!!|世界の終末日《エンド・ヴァースト》!!!!!)
『!!!!!|世界の終末日《エンド・ヴァースト》!!!!!』
 風が止み、空が暗くなり、時が止まったかのような静けさが広がる。
 そして、雲が裂け一筋の光とともに……!!
 それは突如として現れたっ!!
 ……何十キロメートルあろうか。
 |巨《・》|大《・》|な《・》|足《・》が空より現れ、すべてを踏み潰す……!!
ゴゴゴゴ……!
ゴゴゴゴゴ……!!
ドスンッッ……!!!
………
……
ズドォォォォォォォォォォォォン!!!!!
ゴォォォォォォォ!!!
ビュウゥゥゥゥゥゥゥ!!!
 一踏みで大地が揺れ、山が潰れ、湖が消える。数万いた魔物達が全て踏み潰され、砂煙があがり、突風が吹き荒れる!!
「に、逃げろっ!!退避!!退避!!」
「リン……ごめんなさい。あの湖はドワーフが作ったものじゃなかったわ……!本当にこんな事が起こるなんて……!」
 蟻のように四方八方に逃げ惑う人間。そして死んでいく魔物達。怒号と悲鳴が聞こえる。まるで地獄絵図だ……。
「……アリス?アリスは……?」
 いつの間にかアリスの姿がない。アリスも命を燃やし尽くしたのかもしれない……。
 ありがとう、アリス。そしてさようなら……僕ももう……限界だ……。
「ハルトッ!!」
 気を失う前に、僕に駆け寄るゼシカ達が見えた……。
……
………
 ――北の大森林の小高い丘の上に2つの人影がある。
「カエデ様、これはレディ様にご報告に行きませぬと」
「そうだな。お前はねぇさんに報告を、私はイスタン帝国に報告に行く」
「はっ!それではお気をつけて!!」
 この北の大森林の戦いは後々、魔物族にとって大きな変化をもたらす事になるのであった。