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第10話・北の大森林

ー/ー




―――宿屋フラン―――

 ――翌朝。
 うぅ……何か重い。重いし……やわらかいものが……手の中に……!?これはもしやっ!!
「う……ん……」
 ゼシカのアレがこうなって、リンのアレがこうなっている……!?よし、ここは寝たフリをしよう!
「ふぁぁぁぁ。おは……!?」
「ん……ふぁぁぁぁ……むにゃ」
 まずい、エルが起きてしまった。
「ゼシカ!リン!起きなさい!あなた達はいつまでたっても寝相が悪いんだから!」  ……いえ、最高です。ありがとうございます。
 バサッと布団をめくられると、あわれのない姿の3人がもつれている。
「ぐ、ぐぅ……ぐ……ぐぅ……」
「はっ!?」
「ふにゃ!」
 寝たフリをする僕。目が覚めたゼシカがそそくさと布団を出る。リンも気付いて慌てて布団から這い出す。
「ぐぅ……チラッ」
「じぃぃぃぃぃぃぃ……」
 エルが見ている!落ち着け!バレてない、バレてないはず。自然に、そう自然に起きるんだ!
「ん……もう朝か。おはよう。あぁ……よく寝た」
「じぃぃぃぃぃぃぃ……」
 エルさんが疑っていらっしゃる。やだなぁもう、事故ですよ、事故。ははははは……。
『ドンドンドンッ!』
 ふいに、部屋のドアを叩く音がした。
「ゼシカ様!大変でございます!下でラルク様がお待ちです!」
 護衛さんナイスタイミング!
「わかった!すぐ行く!」
 ゼシカは慌てて服を着替える。全部丸見えだが、今はそんなことは言ってられない。ラルクのおっちゃんありがとう。

 僕達は着替えをし、急ぎ宿屋の1階へと向かう。アリスはまだ寝ていたのでそのままにしておいた。
「ラルク殿、おはようございます。どうかされましたか」
「おぉ!ゼシカ殿、朝早くからすまない!実は魔物の進軍が思わぬ早くてな。今朝、冒険者の第一陣が出発したのだがおそらく明日には交戦状態になる。指揮官は数名付けてはいるが陣形を取る間もないかもしれぬ。そなたらも準備が出来次第向かってはくれまいか。あと明日出発の補給部隊の回復薬が全く足らなくてな。どうも先に出発した冒険者達が全て買ってしまい、どうしたものかと。手分けして当たっているがどこにもないのだ」
「わかりました。私達も準備が出来次第向かいます。ギル!急ぎ馬車の準備を!」
「はっ!ゼシカ様!わかりました!」
 ゼシカの直属の部下のギルが慌てて宿屋を飛び出す。
「ラルク殿、回復薬はいかほど足りないのですか?」
「うむ。ギルドにあった在庫を出しても最低1000は足りぬ」
「わかりました。ハルト、複製で何とかなりませんか?」
「出来ますが、時間がかかるかと……」
「それではこうしましょう。私達に並走して空の馬車を用意してください。ハルトと向かいながら回復薬を作ります。数が揃えばその馬車に積みそちらの補給部隊と合流させます」
 なるほど、それなら時間がかかっても大丈夫だな。
「なんと!出来るのか!それは助かる!すぐに馬車を用意させよう!」
「それではラルク殿、補給部隊はお任せします。私達は準備し北の大森林に向かいます!」
 さっきまでまったりしてたのに急にバタバタしだした。アリスを起こさなければ。いや寝てても自動的に付いて来るのか……?
「聞こえておった。わしも行けるぞ」
 僕達は準備をし、馬車に乗り込んだ。北の大森林までは馬車で1日かからないらしい。僕が回復薬を作り、ゼシカ達が箱に詰め、空の馬車に積むを繰り返し、慌ただしく時間が過ぎていく。
「よし。回復薬はこれで全部だな。夕刻までには北の大森林に着く。交代で寝ておこう。相手は魔物。夜戦になる可能性もあるからな」
「はーい。すぴーすぴー」
 エルもリンも、寝付き早いな。
 僕達はこの後起きる惨劇を何も知らずに大森林へと向かって行った……。

―――北の大森林―――

 夕刻、北の大森林では既に先発隊が交戦しており、開戦は予想より早かった。500人位は冒険者がいるだろうか。各所で火花が散り怒声が聞こえ、僕達は少し小高い丘から状況を確認している。
「じゃぁお願いね。ぴーちゃん」
「ピィィィィ――」
 エルが近況報告の為、召喚獣の鳥にラルク宛の手紙を持たせ放つ。
 魔物もまだ本体の群れは来ていないようだが、それでも数千の群れが遠くの山まで列を作っている。こちらは明日には補給部隊と城騎士団も着く予定で、各国の援軍は明日の夕刻か、明後日になるそうだ。
 今夜から明日の正午まで耐えれれば、増援が来るだろう。大森林の先には広大な草原が広がり、あの場所に集合されたらやっかいだ。大森林にいるうちに先発隊を叩かないと……。
「妙だな」
 ポツリとゼシカがつぶやく。
「右前方。あそこだけ魔物がいない?リン、見えるか?」
「かしこまりっ!心眼(マインドアイ)!」
 リンがスキルを使い覗き込む。リンのスキルは10キロ先でも見えるそうだ。
「むむむ。冒険者が全滅してるね。1人だけ立ってる人を発見。なぜか魔物が引き上げて行くね」
 本当だ。右方向だけではない。中央も左も魔物が引き上げていく。
「もう暗くなってきている。夜こそ本領を発揮する魔物が引き上げるなんて事があるのか?とりあえず右の森林へ行ってみよう」
 僕達はゼシカの後について、大森林に入って行った……。


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―――宿屋フラン―――
 ――翌朝。
 うぅ……何か重い。重いし……やわらかいものが……手の中に……!?これはもしやっ!!
「う……ん……」
 ゼシカのアレがこうなって、リンのアレがこうなっている……!?よし、ここは寝たフリをしよう!
「ふぁぁぁぁ。おは……!?」
「ん……ふぁぁぁぁ……むにゃ」
 まずい、エルが起きてしまった。
「ゼシカ!リン!起きなさい!あなた達はいつまでたっても寝相が悪いんだから!」  ……いえ、最高です。ありがとうございます。
 バサッと布団をめくられると、あわれのない姿の3人がもつれている。
「ぐ、ぐぅ……ぐ……ぐぅ……」
「はっ!?」
「ふにゃ!」
 寝たフリをする僕。目が覚めたゼシカがそそくさと布団を出る。リンも気付いて慌てて布団から這い出す。
「ぐぅ……チラッ」
「じぃぃぃぃぃぃぃ……」
 エルが見ている!落ち着け!バレてない、バレてないはず。自然に、そう自然に起きるんだ!
「ん……もう朝か。おはよう。あぁ……よく寝た」
「じぃぃぃぃぃぃぃ……」
 エルさんが疑っていらっしゃる。やだなぁもう、事故ですよ、事故。ははははは……。
『ドンドンドンッ!』
 ふいに、部屋のドアを叩く音がした。
「ゼシカ様!大変でございます!下でラルク様がお待ちです!」
 護衛さんナイスタイミング!
「わかった!すぐ行く!」
 ゼシカは慌てて服を着替える。全部丸見えだが、今はそんなことは言ってられない。ラルクのおっちゃんありがとう。
 僕達は着替えをし、急ぎ宿屋の1階へと向かう。アリスはまだ寝ていたのでそのままにしておいた。
「ラルク殿、おはようございます。どうかされましたか」
「おぉ!ゼシカ殿、朝早くからすまない!実は魔物の進軍が思わぬ早くてな。今朝、冒険者の第一陣が出発したのだがおそらく明日には交戦状態になる。指揮官は数名付けてはいるが陣形を取る間もないかもしれぬ。そなたらも準備が出来次第向かってはくれまいか。あと明日出発の補給部隊の回復薬が全く足らなくてな。どうも先に出発した冒険者達が全て買ってしまい、どうしたものかと。手分けして当たっているがどこにもないのだ」
「わかりました。私達も準備が出来次第向かいます。ギル!急ぎ馬車の準備を!」
「はっ!ゼシカ様!わかりました!」
 ゼシカの直属の部下のギルが慌てて宿屋を飛び出す。
「ラルク殿、回復薬はいかほど足りないのですか?」
「うむ。ギルドにあった在庫を出しても最低1000は足りぬ」
「わかりました。ハルト、複製で何とかなりませんか?」
「出来ますが、時間がかかるかと……」
「それではこうしましょう。私達に並走して空の馬車を用意してください。ハルトと向かいながら回復薬を作ります。数が揃えばその馬車に積みそちらの補給部隊と合流させます」
 なるほど、それなら時間がかかっても大丈夫だな。
「なんと!出来るのか!それは助かる!すぐに馬車を用意させよう!」
「それではラルク殿、補給部隊はお任せします。私達は準備し北の大森林に向かいます!」
 さっきまでまったりしてたのに急にバタバタしだした。アリスを起こさなければ。いや寝てても自動的に付いて来るのか……?
「聞こえておった。わしも行けるぞ」
 僕達は準備をし、馬車に乗り込んだ。北の大森林までは馬車で1日かからないらしい。僕が回復薬を作り、ゼシカ達が箱に詰め、空の馬車に積むを繰り返し、慌ただしく時間が過ぎていく。
「よし。回復薬はこれで全部だな。夕刻までには北の大森林に着く。交代で寝ておこう。相手は魔物。夜戦になる可能性もあるからな」
「はーい。すぴーすぴー」
 エルもリンも、寝付き早いな。
 僕達はこの後起きる惨劇を何も知らずに大森林へと向かって行った……。
―――北の大森林―――
 夕刻、北の大森林では既に先発隊が交戦しており、開戦は予想より早かった。500人位は冒険者がいるだろうか。各所で火花が散り怒声が聞こえ、僕達は少し小高い丘から状況を確認している。
「じゃぁお願いね。ぴーちゃん」
「ピィィィィ――」
 エルが近況報告の為、召喚獣の鳥にラルク宛の手紙を持たせ放つ。
 魔物もまだ本体の群れは来ていないようだが、それでも数千の群れが遠くの山まで列を作っている。こちらは明日には補給部隊と城騎士団も着く予定で、各国の援軍は明日の夕刻か、明後日になるそうだ。
 今夜から明日の正午まで耐えれれば、増援が来るだろう。大森林の先には広大な草原が広がり、あの場所に集合されたらやっかいだ。大森林にいるうちに先発隊を叩かないと……。
「妙だな」
 ポツリとゼシカがつぶやく。
「右前方。あそこだけ魔物がいない?リン、見えるか?」
「かしこまりっ!|心眼《マインドアイ》!」
 リンがスキルを使い覗き込む。リンのスキルは10キロ先でも見えるそうだ。
「むむむ。冒険者が全滅してるね。1人だけ立ってる人を発見。なぜか魔物が引き上げて行くね」
 本当だ。右方向だけではない。中央も左も魔物が引き上げていく。
「もう暗くなってきている。夜こそ本領を発揮する魔物が引き上げるなんて事があるのか?とりあえず右の森林へ行ってみよう」
 僕達はゼシカの後について、大森林に入って行った……。